若菜が約束の時間に来なかった。
今までデートをすっぽかしたことのない若菜がどうして?
病気なのか? 事故にでも遭ったんじゃないか? ……よくない想像が心によぎる。
気になった僕は若菜のプライベートナンバーに電話をかけた。が、誰も出ない。
綾崎家に電話をしても要領を得ない。まるで何かを隠してるような雰囲気も伝わってくる。
……こうなったら直接確かめるしかない。
僕は若菜の家に向かった。
月の明かりに照らされて浮かび上がった綾崎家の蔵の白壁を僕は必死によじ登った。
(そういえば……)
唐突に在りし日の記憶が甦る。既視感ではない。
そうだ。確かにずっと前にもこんな風にしてこの蔵の中に忍び込んだ事があった。
今と同じように、自分の手作りのおむすびを携えて。
明り取りの小さな窓に手が掛かった。腕の力で身体を引き上げて頭を突っ込み、
あの頃よりもずっと広くなった肩幅を精一杯に縮めて窓を潜り抜ける。
「だ……誰ですか?」
誰何する彼女の声が聞こえた。
「若菜!……やっぱり此処に……僕だよ」
彼女を安心させるためにそう呼びかけながら窓から上半身を乗り出した。
「……そんな……本当に、本当に来て下さるなんて……」
彼女の声は聞こえるものの、一体何処にいるのだろうか? あの長持ちの陰? どうして顔を見せてくれないんだ?
蔵の外に脚だけを出しているこんな所を誰かに見られる訳にはいかない。
訝しみながらも、逸る気持ちを抑えきれずに僕はさっさと蔵の中に隠れてしまおうと思った。
「うわあっ!?」
「だっ、大丈夫ですかッ?!」
窓を潜り抜ける瞬間、僕はバランスを崩して蔵の床に背中をしたたかに打ちつけた。一瞬、呼吸が止まった。
何年もの間に溜まった埃が舞い上がる。僕はゴホンゴホンと咳き込みながらも上体を起こして周囲を見回した。
「……若菜?……」
「こ……此処です……」
僕は持って来ていた懐中電灯を取り出し、周囲を見回した。声はすれども姿は見え……ん?
すらりと伸びた白いふくらはぎが光の輪の中を通り過ぎた。
「若菜っ!」
僕は背中の痛みも忘れて彼女の元へいざり寄った。あの柱の向こうに若菜が!
「若……!」
彼女の姿を見た瞬間、息が止まった。
「は、早く……これを解いて下さい……」
若菜の身体は太い縄で幾重にも縛められて自由を奪われていたのだ。腰を下ろした状態で柱を背負わされて麻縄が巻き付いている。
躾だかお仕置きだか知らないがあの爺さん、なんて酷い事を……
などと頭の中で憤りながらも、僕は目の前の光景に完全に心を奪われてしまっていた。これが縄の魔力か。
只でさえ超が付く程の美少女が荒縄で拘束されている姿というものはこれ程までに壮絶で凄惨な美を醸し出すものなのか。
とりわけ僕の視線を惹きつけて止まないのが彼女の胸元だった。
麻縄で不自然に縊り出された二つの膨らみはいまにもブラウスのボタンを弾き飛ばしてしまいかねない程だった。
「そっ……そんなに見詰めないで下さいっ……」
懐中電灯の光がずっと胸元に当てられているのを若菜がそれとなく嗜めた。
「ごっ、ごめん」
……だが、僕は自分の内側で目覚め始めた獣性を抑える事が出来なかった。
「……今、解いてあげるよ」
立ち上がり、月に光に照らされた僕の顔を見上げた若菜の瞳に一瞬、怯えの色が浮かんだ。
若菜は勘が良い。僕の目の中に普段とは違う何かを見てしまったのだろうか。
彼女にとっては残念な事に、その勘は当たっていた。
救いの王子様だった筈の僕の手から逃げるようにして若菜が脚でいざろうとする。だが縄の縛めは強固でびくともしなかった。
「い……嫌ッ……止めて下さいッ……」
月の光を浴びて、僕の中の狼が若菜に牙を剥いた。
部屋着らしい楚々としたブラウスに麻縄が食い込んでいる。
痛々しいというより、その姿に興奮する。暴れたために裾の乱れたスカートから伸びる太ももも僕の劣情を煽る。
「若菜っ!」
名前を呼びながら飛びかかった。そして太ももの上にまたがるようにして若菜を抱きしめた。
「っ!」
逃げられない若菜が息を飲んで体を硬直させる。
付き合いはじめて半年近く。僕たちはすでにキスを済ませていた。
だけどこんな乱暴な行為はしたことがなかった。恐怖なのか、若菜の体が小刻みに震えている。
「若菜……」
唇を重ねた。
「!」
若菜の体が小さく跳ねた。
暗闇が苦手な若菜は極度の緊張状態の中にいたのだろう。唇が乾ききっている。
その閉じられた唇を僕の舌で湿らせるように何度もなぞった。
くり返すうち、唇に込められていた力がゆるんでいくのがわかった。
舌を若菜の口の中にすべりこませる。ほほの内側のやわらかな粘膜をなでさすり、唇をすり合わせる。
舌先で歯の裏側や上あごをくすぐるように刺激する。唾液を交換し、音を立ててすする。
「ん…ふぅ……ん…」
若菜が鼻から声と同時に息を洩らした。キスの快感を知っている若菜が性感に溺れはじめているみたいだ。
僕も昂ぶっていた。下半身を前後させ、勃起を若菜の下腹部にこすりつける。
性の衝動が高まるにつれ、鼓動が激しくなり、息苦しくなってくる。
名残り惜しいけども唇を離す。
「はぁはぁはぁ……」
空気をむさぼるように大きく呼吸する。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
暗闇でもはっきりわかるほど頬を紅潮させ、若菜も大きく胸を弾ませて息をついている。
麻縄によって強調された二つのふくらみが僕を魅了する。
「若菜……」
そのふくらみに僕はそっと手を伸ばした。
「あっ……」
顔を伏せるようにして若菜が僕の視線から逃げた。それでも忌避の声は出ない。そのまま続ける。
ボタンを外す。
わずかに出来たすき間から手を差し入れ、ブラジャーの上から静かになでまわす。
……やわらかい。女の子の胸ってこんな手触りなんだ。
初めての経験に息苦しさをまた感じる。
「な、縄を……」
懇願するような声が聞こえた。だけど僕の体は意志とは無関係に動きつづけた。
ブラジャーを押し上げ、直接ふくらみに触れた。
下から持ち上げるようにして手のひらに収めると、ずっしりとした重量感に気付かされた。
それと同時に温かさと若菜の鼓動が伝わってくる。
「若菜……」
顔を寄せた。そのまま顔中で乳房の感触を楽しむ。乳首が頬に当たるコリコリした肌触りがなんとも心地よい。
続けて僕は乳房を口に含んだ。
「あっ……」
戸惑ったような若菜の声が頭の上でした。
舌で先端の突起を転がし、そのまわりで円を描くようにうごめかす。口の中で突起が少しずつ固くなっていく。
乳房全体に舌を這わせ、軽く歯を立て、唇でこすり、その舌触りを堪能する。
「あん……いや、です……」
艶を帯びた、それでいて小さな抵抗の声を洩らして若菜があらがう。
それが僕をますます駆り立てていく。僕は若菜から下りるとスカートに手を伸ばした。
反射的なのだろう。若菜は足をすぼめてひざに力を入れた。だけど手をくびられ、床に腰を下ろした状態では逃げようがない。
太ももをなでさすりながら僕の手は足の付け根に達した。そしてショーツ越しに下腹部をまさぐる。
「そ、そんな……」
困惑した若菜の声をキスで封じ込める。そして左手で胸を、右手を恥毛のあたりでうごめかした。
しばらく続けるうち、若菜がひざをこすり合わせるようにして体をよじりはじめた。
「ん、んん……」
鼻にかかったような濡れた声も立てている。
僕は指をショーツの中にもぐりこませた。
「んんっ!」
唇をふさがれて声を出せない若菜がビクンッと跳ねる。
それに構わず、僕の指は若菜の恥毛をかき分けて中心部へと進んでいく。
いつしか足の力がゆるんでいた。それほどの抵抗もなく、僕の指は若菜の恥ずかしい部分に到達した。
ぬるっ
ぬめった感触を指が察知した。その粘液をまとわらせ溝の中をゆっくりとかきまぜる。
「んんっ!」
若菜が大きく首を振った。はずみで僕たちの唇が離れる。
「だ、だめです……」
力なく首を振る。
「若菜?」
「は、恥ずかしいです。こんなになって……」
くちゅくちゅと湿った音が若菜の股間から立ちつづけている。
「僕はうれしいよ。……ずっと、ずっと若菜とこうしたかったんだ」
言いながら動かしていた指が肉ひだの合わせ目にある敏感な突起に触れた。
「ひあっ!」
腰を浮かせるようにして若菜が鳴いた。
自分のやり方が間違っていないことを確信した僕は執拗にソコを攻めた。
溝の間の粘液を指先に塗りたくってクリトリスを転がす。
揉みこむように回したり、そっと弾いたり、軽く押し込むようにして愛撫していく。
「あふぁあ、くふっ…んんっ! んぅ……」
そんなことを続けていくうちに若菜の息が気ぜわしくなっていく……。
どれだけ続けたろう?
若菜の声が切迫してくる。
「い、いやです! 変に、変になってしまいますっ!」
オナニーの経験があるのだろう、若菜は感じやすいようだった。そしてイキそうなのか、絶え絶えの息で訴える。
「だめ、だめです……あふっ! や、やめてください! ……っ!」
このまま、できることなら若菜をイカせたいとは思うけど、おかしくなりそうなのは僕も同じだった。
ジーンズを突き破りそうな勢いで勃起している。
それだけじゃなく、不快感を覚えるほど先走りが下着を濡らしている。
童貞の僕が暴発しないのが不思議なほど興奮の極致にいた。
もしかしたら興奮しすぎていて、かえって感覚が鈍くなっているのかもしれない。
射精感こそあるものの、まだまだ絶頂は先のように感じられた。
「もっと、もっと変にしてあげる……」
浮かされたようにつぶやくと、僕は若菜の下着に手をかけた。
ショーツをゆっくりと脱がしていく。
目の前の事態に混乱しているのか、若菜は抵抗しなかった。
靴下を履いた足先からショーツを抜き取ると僕は若菜の両ひざに手をかけ、力をこめた。
ぐっ!
足を大きく割り開き、そこに身を入れる。そして内ももを押さえながら顔を近づけた。
「い、いやっ! 汚いです!」
腰を振って若菜は逃げようとするけど、柱に縛り付けられた状態ではそれも無駄だった。
床に腹ばいになる。そして恥毛に唇を押し当てる。そのまま顔を下げていく。
シャリシャリした感触が鼻に当たり、僕は思いっきり大きく息を吸いこんだ。
……女の子の淫らな匂いが胸一杯に広がる。
そうしてから舌と唇を使って若菜のいやらしい部分をじっくりと攻めはじめた。
粘膜の隅々まで舐めまわし、股間に小さく頭をのぞかせる突起をついばむ。
「あ、そんな…だめ…だめです……」
若菜の声を頭の上で聞きながら、僕はさらに舌を使った。
若菜の体から出てくる液体をすくい取り、音を立ててすすり、飲み込む。
そのたびに若菜は腰をよじって身悶えた。
肉ひだを唇ではさんで引っ張り、尖らせた舌を膣に差し込んでかきまぜる。
「あっ、んくぅっ! ふぁあ……」
徐々に若菜の声が潤んでいくのがわかった。
体を弓なりに反らせるかのように腰を突き上げもしてくる。
……感じているんだ。
「あ、あぁん、あぅっ!」
もう快感を隠すことなくあられもない声を上げている。このまま若菜をイカせたい!
だけど床に勃起がこすられ、僕は我慢ができなくなっていた。このままでは射精してしまう……。
「若菜…若菜がほしい……」
顔を上げ、目を見てささやく。
「!」
若菜は一瞬、動きを止めた。だけどすぐに潤んだ瞳でうなずいてくれた。
「あなたの…好きにしてもいいんですよ」
下着ごとジーンズを脱ぐ。
「っ!」
勃起を見た若菜が息を飲んだ。
ビクビクと脈打ち、先端から先走りをしたたらせた兇悪な姿が怖いのだろう。
「若菜……」
「私の初めて……もらってくださいね」
静かに、だけど力強く若菜が言った。
僕たちが結ばれるのに縄をほどいたほうがいいとわかっているのに、性の衝動がそれをさせない。
少しでも早く若菜とつながりたかった。少しでも早く若菜を僕のものにしたかった。
ひざを立てた若菜の足の間に入り、そこに座って足を伸ばす。たしか対面座位とかいう体位だった気がする。
そうして性器の位置を目で見て合わせる。
「きれいだよ、若菜」
充血した女性器が僕を魅惑する。
「そ、そんなに見ないでください……」
恥ずかしさからか、泣きそうな顔で若菜が答える。
剛直を手で持って若菜の肉ひだの中で上下させ、粘液をまぶす。
「行くよ」
くちゅっという濡れた感触とともに亀頭が若菜の膣にあてがわれた。
「あ、熱いです……」
若菜の声を聞きながらゆっくりと腰を突き出した。
ぐぐっ
先端の部分が肉の壁を押しひろげる。
「あぁっ!」
きつい……。まるでミシミシと音を立てそうなほど若菜の膣は狭かった。
苦悶の表情を浮かべ、それでも唇を噛みしめて若菜は痛みに耐えていた。
逃げることも、痛みを軽減させるために姿勢を変えることもできないまま若菜が貫かれていく。
罪悪感が心に広がる。若菜のことを思うならやめたほうがいい。
そう思うのに、性欲は僕の体を止めようとしない。若菜を分け入って埋まっていく。
メリメリという音が聞こえた気がした。若菜の目尻から涙が一筋こぼれた。
……そして僕は根元まで若菜に収まった。
「入ったよ、若菜。僕たち、ひとつになったんだよ」
そっと若菜を抱きしめながら耳元でささやく。若菜が無言でうなずく。痛みでしゃべることができないのか?
勃起全体がきつく握られたかのように締めつけられている。抜くことはおろか、動くこともできそうにないほど若菜の膣は僕を引き絞っていた。
それどころか、中で細かなひだが小刻みに動いているようにも感じる。
亀頭のあたりで何かがうごめいていて、それがカリをこすっているような気もする。
それらが快感として僕を追いつめていく。
「若菜ごめん……出る」
あまりに早い絶頂は男として情けなかったけど、とても我慢できるようなものではなかった。
「若…菜……っっ!」
引き抜くこともできず、そのまま膣の中で射精した。
びゅくっ! びゅるっ! びゅっ!………
目の前が真っ白になった。背すじを強烈な快感が走りぬけ、そのたびに若菜の奥深くに精を注ぎ込む……。
精液を射ち出してやわらかくなったモノが膣の圧力で押し出される。若菜の膣からは乳白色をした粘液が垂れてきた。
……処女の証によってかすかに朱が混じっている。
「ごめん、僕、中で……」
「後悔はしていません。あなたの好きにしていいと言いましたから」
まだ痛むのだろう。それでも若菜はぎこちない笑みを返してくれた。
ティッシュで情交の跡を清めようと若菜の股間にひざまずいた。すると若菜は足を閉じてしまう。
「若菜、拭くから足を開いて」
「あの、縄を……」
赤面した若菜が小さく言う。
「あ……ご、ごめん。そうだよね」
ようやくそれに思い至った僕は柱の後ろにまわった。
かなりきつく縛られていたようで、ほどくのに思ったより時間がかかってしまった。
だけどようやく若菜のいましめを解くことができた。
「大丈夫? 痛いところはない?」
若菜にティッシュを手渡し、服についた埃を払いながら聞く。
「はい。おじい様が古武術の縛り方をしてくださいましたので、抜けられないだけで痛くはないんですよ」
「そうなんだ」
あのじいさん、思ったよりも思慮深いんだな。そんなことを感心していると、
「それより、あなたも服を着たほうが……」
僕から目を逸らして若菜が口にした。
「え?」
下を見る。……下半身が丸出しだった。ティッシュを使い、あわててジーンズに足を通す。
「あ、あは、あははは」
決まりが悪く、笑うしかない。
その間に若菜も僕に背を向けて二人が交わった跡を拭き清めていた。
「でも、来てくださって本当にありがとうございました」
若菜がはにかんだ笑顔を僕に向ける。
「あ、ううん、それはいいんだけど……どうして縛られてたの?」
「この前のあなたとのデートで門限に遅れてしまったことの罰なんです」
「だからって……」
「約束を破って咎めを受けるのは当たり前のことです」
凛として若菜が答えた。こういうところは名家なんだって思わされるな……。
そうだ!
「だったら今日のデートの約束も何かであがなってくれる?」
「……と、言いますと?」
「また若菜を抱きたいな。今度はちゃんとベッドで」
「!」
意地悪く言った僕の言葉に若菜は一瞬目を見張ったけど、その顔が見る見る真っ赤になっていく。そして
「……はい。いつでもあなたのお好きなときに」
聞こえないほど小さな声で答えが返ってきた。
おわり