コンサートを終えた晶と落ち合い、ツアーの宿舎となっているホテルに一緒に泊まる。
そのまま愛しあい、何度も絶頂を迎え、疲れ果てて僕たちは眠りに就いた。
明け方に目を覚ました僕は尿意を覚えた。
そっとベッドから抜け出す。だけど隣で眠っていた晶がその気配で起きてしまったようだ。
「トイレ?」
まだ覚醒しきらない声がする。
「起こしちゃった? ごめん」
「平気……」
そう答えて晶が目を閉じた。
トイレから出ると、ドアの下に新聞が差しこまれているのに気が付いた。
昨日の記事が出てるかもしれない。そう思って紙面をめくる。……あった。
ベッドの晶を見やる。
僕のほうに顔を向けている。その眼は閉じられていない。僕を見ている。……起きてるんだ。
それを確認して声をかけた。
「昨日の評が書いてある。写真も載ってるよ」
「そう? 見せて」
言いながら晶が起き出す。そうして僕のほうに歩み寄る。
背後には昨夜の激情を物語るように寝乱れたシーツが見える。
晶は一糸まとわぬ姿だ。トレードマークのヘアバンドもつけていない。
ほの暗い中に浮かぶ裸身が妙になまめかしく、ドキリとした。
顔にかかる髪を片手でかきあげる仕草に晶のオンナを意識する。
「晶、なにか着たら?」
興奮が呼び覚まされ、わずかに声が震える。
「あら? 私の裸なんて見慣れてるでしょ? それに、あなただって裸じゃない」
いたずらっぽい笑みで晶が返した。
隣りで僕にくっつくようにして新聞を覗きこむ晶から、愛用のコロンと混ざった甘い香りが漂う。
それと同時に肌が触れている部分からぬくもりが伝わる。晶という存在を意識する。
性欲が刺激される。……ゆうべ、晶にあんなに精を放ったというのに。
「晶」
呼びかけられた晶が僕の顔を見た。
その表情に戸惑いが浮かぶ。
「ちょっと……嘘でしょ?」
僕の言葉に含まれた響きと、そして自分に向けられる眼差しにその意味が理解できたようだ。
もう何度も体を重ねている。お互いの性的な感情を察することも出来る。
「晶……」
もう一度名前を呼ぶ。そして抱きしめるために晶に向きなおる。
「バ、バカ! なに興奮してるのよ……」
天を指しつつあるモノにちらりと目をやった晶は言いながら後ずさるが、そちらにあるのはベッドだ。
「昨日あんなにしたでしょ? ちょっと……ダメだったらぁ」
力なく言う晶の顔は困惑している。本気で僕を拒む気はないみたいだ。
「あっ!」
ベッドに足を取られて晶が倒れこんだ。すかさず組み伏せる。
「もうっ! ダメって言ってるでしょ……んっ!」
その言葉をキスでふさぐ。そのまま唇を割って舌をもぐりこませた。
晶の舌は口の奥で怯えたように縮こまっている。
僕は舌を使って晶の口の中を丹念に愛撫した。歯列を舐め、頬の内側を攻め、上あごをくすぐる。
「んっ、んんっ……」
やがて晶の吐息に艶が混じってくる。そして……晶の舌が僕にからんできた。
そのまま激しい口付けが始まる。
同時に手は胸をまさぐり、ふくらみを揉み、頂のつぼみを転がして晶を高めていく。
「んふっ…んんっ」
もう晶は抵抗しなかった。それどころか僕の股間に手を伸ばし、勃起をしごくように手を動かしている。
唇を離す。……二人の唇の間に銀の糸がかかった。
「晶、好きだよ」
「……強引よ」
ほほを染めて晶がつぶやいた。
胸を玩弄していた手をゆっくりと下に持っていく。おへそを過ぎ、なだらかな腹部をすべり降り、下腹部へ。
指が恥毛に触れた。
そのあたりで圧を加えるように押して揺さぶる。恥毛を指にからめ、わずかな力で引っ張ってみる。
「あんっ、ぁあ…くぅん……」
切なげに晶が鳴く。
そして腰を突き上げるようにして僕に次の行為を促している。
それだけじゃない。晶の手の動きも激しさを増してきている。
亀頭に這わせた指が先端の割れ目を撫でつづけている。僕はそこが弱いと知ってるからだ。
あふれた先走りがぬちゃぬちゃと湿った音を発している。
射精感の高まりを意識しながら、晶の瞳を覗きこんで意地悪く聞く。
「晶、もっとしてほしいの?」
「!」
カーテン越しの朝の光の中でもはっきりわかるほど晶が赤くなった。
「ふふっ、かわいいよ晶。晶のこんな顔、知ってるのは僕だけだよね」
言い終わると同時に恥裂に指を挿しこんだ。
ぬちゅっ!
すでに充分にほとびっていたソコから淫らな水音が立った。
「ああんっ!」
嬌声が上がる。
「もうこんなになってる」
溝の中をかき回しながらささやく。
「バカぁ……」
晶の準備は整っている。僕も我慢がつらくなってきている。
「入れてほしい?」
それでも晶から『その言葉』を言わせたくて執拗に膣の周りを攻め立てた。
「ねぇ……」
やるせなさそうに晶がサイドテーブルに視線をやる。その先には使い切らなかったコンドームが残っていた。
「晶……晶の中に出したい」
避妊しなければいけないのはわかってる。
だけど今日は晶の中で射精したい。耳を甘噛みしながら、僕はずっと以前からの希望を伝えた。
「今はまだ…だめ……」
切れ切れの息で晶が訴える。まだ、ダメか……。
気持ちを切り替えた。晶みたいなステキな女性を抱けるだけでも感謝しなくちゃ。
「晶、着けて……」
小さな正方形の包みの一つを取り、晶に手渡す。受け取った晶が封を切った。
それを見てひざ立ちすると、晶は僕の股間に顔を寄せ、口を使ってコンドームをはめていく。
軽くウェーブのかかった晶の髪を手でもてあそびながら僕はそれを見下ろした。
あの遠藤晶がこんなことをするのは、そしてこんなことをさせられるのは世界中で僕だけだ。
そんな誇らしい気持ちや優越感、晶を屈服させた征服感、それらが心に広がる。
「入れて……お願い、来て」
装着させ終えた晶が潤んだ瞳で僕を見上げ、足を開いて横たわる。
その足の間に身を移すと、僕は晶に覆いかぶさった。そして位置を合わせ、一気に……貫いた。
「ぁあんっ!」
背中を大きく反らせて晶がうめいた。
その肩を両手で抱くようにして肌を合わせる。そして奥まで収めて一旦動きを止めた。
「ぁ…あ……」
入れられただけで軽くイッたらしく、晶が眉根を寄せて小さく痙攣している。
「もっと感じさせてあげる」
ゆっくりと引き抜く。そして抜けそうになるギリギリまで戻すとまたゆっくりと挿入していく。
それを二、三度くり返してから入り口の付近で小刻みに剛直を前後させた。
「あっ、あっ、んんっ……」
膣壁をカリがこする感覚が気持ちいいらしく、晶は僕にすがりつきながら淫らな声を洩らした。
また奥まで肉茎を沈めていく。
今度は根元まで収めたまま、そこで円を描くように腰を押し付けた。
「はっ…んっはぁぁぁん、やっあっぁぁん」
先端が子宮口に当たっているのを感じる。当然それは晶も感じているはずだ。
「くぅん……んっ!」
苦悶にも似た声を上げ、晶は僕の首に両腕を回してしがみついた。
「晶…愛してる。大好きだよ、晶」
耳元に息を吹きかけるようにして想いを伝える。
「私、もっ…んっ、私もあなたが…っ……好き……大好き」
性の快感に抗しながら晶も言葉を返す。
言葉を交わし、思いを一つにして僕たちは高みへと昇っていく。
「ぁ、ぁぅッ! やぁはぁぁん……」
強張りをねっとりと包みこむ晶のソコは、僕から精液をしぼり取ろうとするように収縮する。
避妊具のゴムが隔てていても伝わるその蠕動は、少しでも気を抜くと精を吐き出してしまいそうなほど強烈なものだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
大きく深呼吸して動きを止める。そして射精感が遠のくのを待ってから晶を抱え起こした。
ベッドの上で向き合うようにして座り、晶のお尻を抱えこむ。
そして顔の前にある乳房に顔をうずめると、晶の鼓動が僕を取りまいた。
しばらく抱き合って呼吸を整えているうちに僕も落ち着いてくる。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
せわしなかった晶の息も鎮まりつつある。
「晶……っ!」
名前を呼びながら、太ももの上の晶を突き上げるようにしていきなり腰を振った。
「ひゃんっ!」
予想もしていなかったタイミングで突かれたらしく、晶が背中を反らせて身悶えた。
そのままベッドの弾力を利用して腰を動かし、前後させ、突き上げた。
「あんっ! んくぅっ、やぁっ…っ!」
熾きのようだった晶の体にまた火が着いた。淫猥な声を立てて晶も腰を振る。
「くふぅっ! あふぁあ……」
晶と心まで一つになりたい。晶をもっと感じたい。そんな衝動が高まる。
何かに急き立てられるように僕は晶の唇を求めた。
「んんっ!」
唇をすり合わせる。舌と舌を絡ませる。唾液を交換し、音を立ててすすり合う。
僕たちは獣のように性の悦びを、そしてお互いをむさぼりあった。
性感が刺激される。くすぶっていた悦楽にまた火が点る。
一旦は遠のいたはずの射精感が腰の奥で生まれた。それがどんどん大きくなっていく。
……今度は我慢できそうもない。出したい。晶の中で思いっきりぶちまけたい。
「晶っ!」
体重を預け、晶を投げ出すようにベッドに横たえる。
僕の様子から終わりが近いことを晶も察したようだ。
貪欲に快楽を得ようと、下になった晶は僕の腰に足をからめてきた。
二人の結合が深くなる。晶の一番深いところを僕のモノがかき回す。
「きゃん、あぅっ! ぁん…ぅうん! ぁうっ!」
情欲をそそる声が晶の口からこぼれる。より一層性感があおられる。イキそうだ……。
だけどあと少し。せめて晶が達するまでは我慢しなくては……。
「あんっ、イクっ…イッちゃう……あぁっ!」
声に含まれる切迫した響きが色濃くなっていく。晶も絶頂が近そうだ。
「あ…だめ……イッちゃう、イク、イクのっ! あっ、……っっ!」
息を飲んだ晶がぎゅっと目をつぶって僕にしがみついた。
ビクンッ
跳ねるように晶の体が震えた。
その直後、痛痒感に似た衝撃が僕の腰から背すじを一息に駆け上がった。
どくんっ! どびゅっ! びゅるっ!………
根元までこみ上げていた熱い塊が尿道を駆け抜けていく。
「んっ、くっ……」
精液が射ち出されるたび、息が止まる。
晶を、愛する人を抱きしめたまま最後の一滴まで出し尽くして……僕は果てた。
頂上を極めた余韻も少しずつ去っていく。僕は身を起こすと力を失った性器を晶から抜いた。
そして晶にもティッシュを渡し、それぞれ後始末にかかる。
「ゆうべあんなにしたのに……まだこんなに出るの?」
コンドームをはずすのを見ていた晶が、中を満たした白濁に驚いたように言う。
「晶だからね」
「……ちょっと、それどういう意味なの?」
小首を傾げて聞き返す。
「魅力的だし、大好きだし、一番大切な人だから。……かな?」
一瞬の間のあと、最後に言った言葉の意味を解したらしく晶が耳まで赤くなった。
「ばか……あなたも……私の一番大切な人なんだからね!」
そう言うと、晶は僕の胸にほほを寄せた。