設定的には1のエンディング後で、主人公が死ななかった世界の話です。  
 
 
「もうっ! 合格するまでオアズケって言ったじゃない!」  
 叱声とともに美由紀の太ももに伸びていた手が払われる。  
「美由紀ぃ〜」  
 未練がましくまた伸びた手が、今度は少し強く叩かれた。  
 
 差出人の書かれていない手紙がポストに入っていたのは去年の春休みのことだった。  
 誰が出したのかはわからなかったけど、心当たりのある女の子は12人いた。  
 手紙の主を探して、僕は高3の一年間、日本中を訪れた。  
 彼女たちと会って、僕自身忘れていたことをいろいろと思い出した。一緒に過ごした日々が懐かしく思い出された。  
 そうした日々の中、差出人が美由紀だということを知った。  
 それは卒業が目前に迫った2月だった。  
 そのときにはもう、僕にとって美由紀はなくてはならない存在になっていたんだ。  
 ……そうして僕たちは恋人になった。  
 
 だけど、そうした時期に迎えた受験は全滅。  
 一年間、勉強もしないでバイトを重ね、日本中を飛び回っていたんだから当然の結果だろう。  
 そんな僕とは違って、美由紀は第一志望の大学に見事合格した。  
 そして春から東京に住むようになったんだ。  
 ワンルームのマンションは実家に比べると狭いはずだけど、美由紀は楽しそうだったなぁ。  
 ほぼ時を同じくして、美由紀は浪人が決まった僕に家庭教師を買って出てくれた。  
 『来年は一緒に同じ大学に通おう』。そう言ってくれた。うれしかった。  
 だから僕もまじめに勉強した。美由紀にふさわしい男になるため、必死になってがんばった。  
 それが実ったのか、毎月の模擬試験の成績はどんどん上がっていった。  
 7月には合格圏内にあと一歩のところまで迫っていた。このまま行けば大丈夫。  
 いま思えばそれが気のゆるみを生んだのかもしれない。  
 勉強はいつも美由紀の部屋でしていた。若い男女が密室で二人きり。しかもお互いに好意を持っている。  
 夏の薄着も僕には刺激的すぎた。……僕たちが結ばれるのに、そんなに時間はかからなかった。  
 
 性の悦びを知った僕たちは、狂ったように毎日お互いを求めあった。  
 想像していたことや興味のあることはなんでも試した。美由紀の新たな一面も知った。僕自身の性癖も再認識した。  
 そうした生活が続いたある日、模試の結果が届いた。……夏より3ランクも落ちてる。  
 原因はすぐに考えついた。美由紀も同じことを思ったようだ。  
 そうして美由紀の提案で、僕たちは合格まで『我慢』することに決めたんだ。  
 
 と言っても、僕はオナニーがやめられなかった。むしろ回数が増えたかもしれない。  
 美由紀との初体験の感激、そして重ねた経験が強烈すぎ、抜かないと収まりがつかなかったんだ。  
 この日も家を出る前に美由紀を想像して性欲を処理していた。だから溜まってはいないはずだ。  
 だけど目の前すぐのところに大好きな女の子がいる。  
 最初はちょっとしたいたずらのつもりで太ももに手を伸ばしたんだけど、歯止めが効かなくなりかけていた。  
「じゃ、じゃあさ……一問正解するたびにキス。それでいいでしょ?」  
 しつこく食い下がる僕に、困り果てた、という顔で美由紀が返す。  
「一緒に大学に通おうよ。ね?」  
 浪人しているという自分の立場は理解している。だけど、そんな美由紀の表情にも情欲があおられる。  
「美由紀は…僕がキライ?」  
 顔を覗きこみながら、ささやくように問いかける。  
「! ……嫌いなわけないでしょ。でも……」  
 レンズの奥の目が、一瞬潤みかけた。  
「美由紀、だったら……」  
 言いながら、眼鏡のツルに手をかけ、そっとはずす。  
「……溜まってるの?」  
 僕から視線を逸らして美由紀が聞く。  
「いや、そういうわけじゃないけど……美由紀が欲しい」  
 しばらくの沈黙ののち、  
「ダメだよ。約束でしょ? ……でも、手で…ならいいよ」  
 小さな声が聞こえた。  
 
 下着ごとズボンを脱ぎ去ると、僕は美由紀の近くに移動して腰を下ろした。  
 すでに限界近くまで充血し、ビクビクと脈を打つ肉茎に美由紀のほっそりとした指がからんでくる。  
「スッキリしたら勉強の続きだからね」  
 言いながら指が茎部を前後する。もう片方の指は亀頭をさするようにして僕を高めていく。  
「み、美由紀……それ、いい……」  
 とろけそうな愉悦が下半身から全身に広がっていく。  
「気持ちいいの?」  
 寄り添うようにして美由紀が上目遣いで聞く。  
「う、うん。最高……」  
「うれしいな」  
 美由紀の手が動きを増した。  
 
ぬちゃ、くちゅ………  
 先走りが湿った音を立てる。美由紀の指が濡れて光っていく。  
 カリの溝を指先がこそぐようにすべり、先端の割れ目を指の腹が這いまわる。  
 亀頭を揉むようにしたかと思うと、包皮が根元まで押し下げられて茎がこすりたてられる。  
 射精感が次第に高まっていく。  
 僕の息がせわしなくなっていくのに合わせて、美由紀の頬も紅潮していく。  
「み、美由紀……」  
 限界が近いことを知らせようとした僕の言葉に、美由紀が顔を上げた。  
「……うん」  
 そして何を勘違いしたのか、美由紀は口を大きく開けると僕の男性器に顔を寄せた。  
「くぅっ!」  
 強烈な快感が股間で生まれた。  
 あたたかく、ぼってりした美由紀の舌が尿道口をこじ開ける。  
 唇がカリ首をはさみ、しごくように動かされる。剛直が強く吸われる。  
 その間にも手は睾丸をやわやわともみ、茎をしごき上げている。  
はむっ、ぴちゃ、ちゅっ………  
 淫猥な水音に、僕は思わず目を下に向けた。  
 美由紀は形のいい額を誇示するかのように、栗色の髪をカチューシャで留めている。  
 それが僕のモノを玩弄するたびに股間で上下する。  
「美由紀ぃっ!」  
 横座りするようにして僕を口撃する美由紀のスカートへと手を伸ばした。  
 そのまま足の付け根に手をもぐりこませる。  
「んんっ!」  
 くぐもったような美由紀の声がした。  
 指が湿った感触を捉えた。クロッチはたっぷりと水分を含んでいた。  
 ……僕のモノを手や口で愛撫しながら、美由紀も興奮していたんだ!  
 陰唇の形をなぞるように指が動くと、くちゅくちゅと湿った音が立つ。  
「ん…ぁっ」  
 ペニスから口を離し、小さく美由紀がうめく。  
 ここぞとばかりに僕は美由紀を攻めることにした。  
 何度も肌を合わせた僕たちは、お互いが感じる場所を知っていた。そこを狙う。  
 
「ひぁうっ!」  
 指先にコリッとしたものが当たった。  
 下着の上からでもはっきりとわかる突起は、僕の指から逃げるように左右にその位置を変える。  
 固定するように両脇を人差し指と薬指ではさんだ。そして中指で弾くように軽く押す。  
「はっ…ぁあっ!」  
 もう美由紀のフェラチオは止まっていた。体が硬直している。僕に奉仕するどころではないようだ。  
 ぎゅっ、と目をつぶり、小刻みに体を震わせている。  
「美由紀、気持ちいい?」  
 その言葉に、美由紀は肯定するようにガクガクと大きく首を振った。  
「だ、だって…久し振りなんだもん」  
 狂ったようにオナニーに没頭していた僕とは対照的に、美由紀は自分を律していたらしい。  
 奔放なお姉さんへの反発からか、美由紀は自分をあまり表に出すのを好んでいない。  
 セックスのときもそうだった。どちらかといえば慎み深いほうだと思う。  
 だけど今は違う。快感に打ち震えている。こんなに美由紀が乱れるところ、初めて見た……。  
 
 下着の中に手をこじ入れる。  
 力なく身を投げ出す美由紀の足の間に、僕の手は苦もなく入りこんだ。  
 厚みのある肉ひだが僕の指を左右から包みこむ。  
 その中でかきまぜるように指を動かすと、ねっとりした液体が指にからみつく。  
 その粘液をまとった指でもう一度、今度は直接クリトリスに触れてみた。  
「ひゃあっ…あっ!」  
 美由紀の嬌声は僕のオスを刺激した。……美由紀を抱きたい。美由紀の中で射精したい!  
「美由紀っ!」  
 ショーツの両脇をつかむと一気に引きおろした。  
 そしてスカートをまくりあげると、美由紀の足の間に体を移した。  
 と、  
「ま、待って。お布団敷くから……」  
 立ち上がろうとひざを立てた美由紀の足を抱えこむ。  
「きゃっ!」  
 小さく悲鳴を上げて美由紀はカーペットに倒れこんだ。その背後から馬乗りになろうとする。  
「もぅっ、ダメだってばぁ……」  
 言いながら起き上がるために身を起こした美由紀の足の間に手を突っ込んだ。  
「あっ!」  
 小さな叫びとともに美由紀が足を閉じようとする。  
「美由紀……」  
 ひざに手を置いて、まっすぐに美由紀の目を見る。……観念したように足の力が抜けた。  
 ゆっくりと少しずつ、じらすように両ひざを割っていく。  
 僕の目の前には充血してヒクつき、いやらしく濡れた女性器があった。  
 そこに顔を寄せていく。  
きゅっ  
 反射的に美由紀の足が閉じられた。  
 無言で太ももをさすると力が緩まる。僕は行為を再開した。  
 
 薄紅色をした複雑な形状の肉ひだが目の前に迫る。  
 光を反射してヌメヌメと光る粘膜から美由紀のメスの匂いが漂う。  
 そっと舌を伸ばした。  
「ひぁっ!」  
 舌先が粘膜の中に埋まると美由紀が小さく叫んだ。  
 続けて僕は舌先に力をこめ、その中をかき回した。  
「あっ、あっ! はぁ、んっ…はぁぁ、ひっ!」  
 僕の舌の動きに合わせて美由紀があえぎ、腰が跳ね上がる。  
 太ももを抱えるようにして美由紀を押さえると、僕は膣の中に舌を差し入れた。  
 あまり深くは舐められないため、入り口のあたりで細かく舌を出し入れする。  
「ぁはっ! はぁ…」  
 力が入るのか、美由紀の足がぎゅっと筋張る。  
 女性器から立つ濡れた音と、美由紀のあられもない声だけが部屋に響いていく……。  
 
 抱えていた太ももから手を外し、ひざの裏に手を当てるとそのまま立てていく。  
 そのまま僕は股間の小さな突起に目標を変えた。  
「ひゃんっ!」  
 クリが弾かれた途端、美由紀が身を反らした。  
 同時にいやらしい液体が量を増してにじみ出てくる。  
 あごでそれを感じながら、僕は美由紀の股間の肉芽を舌の先で転がしつづけた。  
「ひゃぁっ! ぅあぁ……イッ、イッちゃいそう……」  
 淫声と共に足が大きく開かれる。  
 美由紀の手が僕の髪をつかみ、股間に押し付けるようにしてくる。  
 そして腰を突き上げるようにして身を硬直させる。  
 息が苦しくなるほど顔が密着した直後、美由紀の体から力が抜けた。  
 
 ぐったりと身を投げ出す美由紀とは対照的に、僕の股間はいきり立っていた。  
 しかも射精の直前まで昂ぶっていた性感が、まだくすぶったままだ。  
「美由紀」  
 声をかけると、美由紀は僕を力なく見上げた。そして、  
こくん  
 静かにうなずく。  
 ひざでにじり寄り、僕は美由紀と性器を合わせた。  
 イッた直後ですっかりぬかるんでいる美由紀の膣から  
くちゅ…  
 湿った音が立ちのぼる。  
 この前美由紀を抱いたのはいつだったっけ? コンドーム残ってたかな?  
 一瞬そんな思いがよぎった。だけど放出を待ち望む気持ちがそれを上回った。  
「行くよ」  
 そう声をかけ、僕は腰をゆっくりと突き出した。  
 
「っっ!」  
 声にならない声を上げて美由紀がのどを反らす。同時に膣がきゅっ、と締まった。   
 ぬくもりに包まれたまま、少しずつ腰を突き出し、屹立を沈めていく。  
 膣の中のあたたかく、そしてぬめった粘膜が押しひろげられていくのを感じる。  
「あっ、あぁっ!」  
 やわらかく、それでいて僕を力強く締めつける美由紀の内部が蠕動する。  
 それはまるで僕から精液を搾り取ろうとするかのような動きだった。  
 こうして体を重ねるのが久し振りのせいもあるけど、体中で、そして心で美由紀を感じているのがうれしかった。  
 言葉に出来ないほどの快感と感動が生まれる。  
 根元まで収める。コツンとした感触があった。先端が子宮の入り口に当たっているようだ。  
 わずかの力でゆっくりと腰を引く。膣全体が僕にからみついてくる。カリにコリコリしたものが引っかかるように感じる。  
「ぉおぅっ!」  
 思わず随喜の声が洩れた。  
 奥に向けて腰を突き出し、抜ける寸前まで腰を引く動作を幾度となくくり返す。  
 もう少し美由紀とのセックスを愉しんでいたいのに、意思とは無関係に腰の動きがあわただしくなる。  
「あっ、あっ…いぃの」  
 それに合わせて美由紀の声にも艶が混じってくる。  
「あっ! はぁん、ぅあっ! うぅん……」  
 あえぎ声と  
ぬちゃっ、ずぷっ、くちゅっ………  
 二人の結合部から立つ音とが共鳴する。  
「美由紀、美由紀っ!」  
 何度も名前を呼びながら、僕は激しく腰を使った。  
「あっ、あっ、ひっ、ぅあっ!」  
「美由…紀ッ! くっ!」  
「あっん…んあっ、ひゃ…あぁん!」  
「美由紀、くっ! 声が…んっ、大きいよ。ここ…壁、あっ! 薄いんだから」  
「!」  
 ふと思い出したことを口にした僕の言葉に美由紀が泣きそうな顔になった。  
 そして手の甲を口元に当てて少しでも艶声が洩れるのを防ごうとする。  
「ぅあっ、あっ…ひゃああ!」  
 当てた手の下から、それでも嬌声がこぼれる。  
 僕は美由紀に胸を合わせ、腰だけを上下させた。空いた手が僕の背中に回される。二人の足がからみ合う。  
 限界が近い。  
「美由紀っ、イクっ!」  
「中は、中はダメぇっ!」  
 悲鳴に似た声を上げ、美由紀が僕の胸を強く押した。  
 僕は背中を反らしたけど、その分二人の腰が密着する形となった。  
「っっ!」  
 こらえきれずに射精が起きる。  
びゅっ! どびゅっ! びゅっ!………  
 熱いものが尿道を通り過ぎる。膣の奥深くに精が注ぎ込まれていく。  
「あ…ああ……」  
 美由紀は目を見開いて僕の射精を受け止める。  
 そのまま、僕が精を放ち終えるまで身じろぎもしなかった……。  
 
 
「着けなかったよね? 大丈夫な日だったと思うんだけど、赤ちゃん出来ちゃったらどうしよう……」  
 僕に組み敷かれたまま、困ったように美由紀がつぶやく。  
「美由紀がイヤじゃないなら、僕は学生結婚してもいいって思ってる」  
 その言葉に美由紀の顔がぱっと輝いた。頬に朱が差す。  
 でもすぐに厳しい顔になり、  
「そのためには合格が先でしょ? ほら、勉強しなくちゃ。試験までもう2ヶ月ちょっとだよ?」  
 そう言うと、もっと余韻を楽しんでいたかった僕を押しのけるようにしてティッシュに手を伸ばした。  
「美由紀ぃ〜」  
「拭いてあげるから、勉強しましょ?」  
 美由紀はにっこり笑うと、勉強する気のすっかりなくなった僕を制しながら力を失った男性器に手を伸ばし、  
「合格したら、いっぱいさせてあげるね」  
 はにかんだ笑顔でそう続けた。  
 
 
           おわり  
 

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