『…私はお前がキライだが、カワイイ事を言うな!』  
『ワシだってお前なんか嫌いじゃい!』  
『クス…』  
『フッ…』  
 
 …昨夜の京都地下迷宮でのちょっとしたアクシデント。よりによって、この私が満潮永澄の命を救うとは。  
 それもこれも…奴のせいだ…。  
 
「…フナムシ、ワレ最近燦さまに近付き過ぎなんと違うか?」  
 
 瀬戸燦の護衛役、巻。  
あのデルタ翼おかっぱヘアとちょっとだけ長いもみあげが!  
あの薄く小さな唇から紡がれる脅し文句が!  
瀬戸燦の前でのみ見せる、あの愛らしい見た目相応の口調が!  
袖から少しだけ覗かせた小さな手で懸命に物を掴む仕草が!  
裾を短く切った着物から惜しげも無くさらけ出した、スパッツに包まれた健康的な脚が!  
私の心を、視線を、掴んで離そうとしない!  
 何てことだ…ターゲットは瀬戸燦と満潮永澄だというのに…気を抜くとずっと巻の方を見てしまう!  
 
「……さん、不知火さん?」  
「…あ?ああ、もう奈良に着いたのか?」  
「ううん、不知火さんさっきからボーッとしとるし、バスに酔うたんかな思って」  
 
 隣の席に座った瀬戸燦(バスの席は班で分けられていない。酔う者がいるからな)が、私の顔を心配そうに見ていた。  
巻が永澄の方に行っていて助かった…。  
 
「なに、少し考え事をしていただけだ。それに、私は車酔いをするほどヤワではない」  
「そ…そうじゃね。でも不知火さん、もしもの時は言うてね。私、エチケット袋持って来てるから」  
「…必要無い。それよりお前の班の…ほら、何だ、あいつだ、委員長。奴の方が危険そうだぞ」  
「え?」  
 
 瀬戸燦は、あー…えー…何だ、その、委員長の席へあの袋を渡しに行った。  
 それからほどなくして、バスは奈良に到着した。  
 
 奈良公園の周囲には、書道用具を売る店が何軒かある。観光客や学生向けの手ごろな物から、  
書道有段者向けの高級な物まで、色々と揃っている。私はそれなりの墨と筆を何本か購入した。  
 
「不知火さん、渋い物買ったんだね」  
 
 満潮永澄。私の本来のターゲット…なのだが、私は奴の学ランのポケットが気になっていた。  
マスコット人形のフリをする巻…悩ましい…悩ましすぎる…!  
 
「もしかして不知火さん、習字を習っているとか?」  
「…あ?あ、ああ…精神修行の一環として、たしなみ程度にな」  
「そうなんだ…そういえば不知火さん、サルや三河はどうしたの?」  
「あの2人か?知らん」  
「知らん、ってそんな」  
「あの2人は私といるより2人だけの方が楽しいのだろう。私も1人でいる方が楽だ」  
「でもそんな修学旅行楽しくないだろ?!だからさ、俺と一緒に回ってみない?京都の時みたいにさ」  
「…またロクでもない企み事をしているのではないだろうな?」  
「そんな事は……ごめん、実は巡達とはぐれてちょっと困ってた」  
「フッ…悩ましい。いいだろう、その辺を巡りながらでよければ一緒に探してやる」  
「ありがとう!」  
 
 巻と一緒に奈良の寺社仏閣巡りか…悩ましい。  
 私達3人は奈良公園に入り、東大寺に向かった。途中でインスタントカメラを購入し、  
鹿に食われる満潮永澄の様子を鹿の頭の上で眺める巻を撮影する。鹿と戯れる巻…なんと悩ましい。  
 そうこうしていると、不意に私と巻が2人きりになれるチャンスが訪れた。公衆トイレの前を通りかかった時だ。  
 
「不知火さん…ごめん、行って来ていいかな?」  
 
 満潮永澄は言葉を濁したが、視線はトイレの方を向いている。女子の前では言いにくいのだろう。  
 
「悩ましい…行ってこい」  
「ありがとう。それと、巻を連れて入るわけにはいかないから、預かっててもらえないかな?」  
 
 ……何?今、何と言った?!『私に巻を預ける』だと!!?  
おおおおおおおおちつけ落ち着け不知火明乃!今焦ってしまっては、せっかくのチャンスを失いかねん!  
冷静だ、冷静に答えるんだ!(注:所用時間0.4秒)  
 
「…わかった」  
「巻、もう不知火さんに変な事するんじゃないぞ!」  
「ハッ、そりゃ向こうの出方次第じゃのぅ?」  
「巻!」  
 
 いつまで話をしているつもりなのだ!早く巻をこちらに、こちらによこさないか!  
私は巻の背負った貝を掴むと、自分の肩の上に乗せた。…か、可愛い!  
 
「イキナリ何するんじゃワレェ!」  
「フッ…話がつかないせいで漏らされては困るからな。早く行ってこい」  
「あ、あぁ。ありがとう。巻の事よろしく。巻、本当に京都の時のような事はするなよ!」  
 
 それだけ言うと満潮永澄は男性用の方へと入っていった。…京都だと?もしやあの時の…!?  
 
「…おい。清水での水弾攻撃、もしや」  
「今頃気ぃ付いたんかい。鈍い試験官殿じゃのぉ。下半身は敏感なくせに」  
 
 巻の人を小馬鹿にしたような口調での肯定の言葉。それが私の心の中の何かを砕いた。  
 
「おう、全部ワシの計画じゃ。お前は燦さまの敵じゃからな…潰せる時に徹底的に潰す…たとえば、今とかなァ!!  
 喰らえ!!零距離超速攻殻撃(ゼロきょりジェット・ラム・アタック)!!!」  
「甘い!」  
 
 私は巻が超速攻殻撃を出すために貝にまたがったのを見てから即叩き落とした。巻はそのまま  
高速で地面に叩きつけられ、気絶する。どんな技を出すかを叫んでから攻撃するとは…悩ましい。  
私は気絶した巻と貝を拾い、別々のポケットに入れた。  
……人魚試験の妨害をするだけではなく、殺そうとまでするとは……  
 
「……どうやら、お仕置きが必要そうだな。悩ましい…」  
 
 私はトイレから出てきた満潮永澄に声をかけた。  
 
「…私達も行ってくる」  
「そう?じゃあ巻を…」  
「”私達も”だ。…2度も言わせるな。悩ましい…」  
「あ……ごめん」  
 
 私の心にあった、『巻を愛らしいと思う気持ち』はほとんど無くなっていた。  
今の私の心の大半を占めるのは復讐心、『巻をめちゃくちゃにしてやりたい』というドズ黒い負の感情だった。  
 
 女子トイレの個室に入り、気絶した巻を取り出して洋式トイレの蓋の上に仰向けに寝かせ、写真を撮る。  
そして手足を大の字に開け、持っていたバンソウコウで手足を貼り付け、写真を撮る。  
 さて、いよいよお楽しみだ。  
 まずは巻の着物の襟をはだけさせた。さらしに包まれた小ぶりな(本当に小ぶりな)胸が現れる。写真を撮る。  
 
「う…うん……」  
 
 胸をはだけさせられて寒気がしたのか、巻は身を震わせた。この分だと案外早く目を覚ますかもしれない。  
…しかし、その方がより屈辱を与えられるだろう。私は特別急がない事にした。  
次に、着物の裾を開けさせ、滅多に見せる事のないスパッツに覆われた股間をさらけ出させた。  
 
「……やはりな」  
 
 激しい運動をしたせいで…巻のスパッツは股間に食い込み、恥ずかしい筋が浮き出ていた。  
しかも、下着を身につけていないときた。もちろんカメラに収める。  
 
「フッ…いい事を思い付いた。だがその前に」  
 
 私は持っていた木刀入れの封を解きはじめた。  
 
「おい、起きろ」  
 
 巻の頬をつついてやる。ただし指でではない。  
 
「うっ…な…な、何じゃこれは?!」  
「ようやく起きたか。瀬戸燦の護衛役のくせに暢気な事だな」  
「何じゃとワレ…うっ!?」  
「口の聞き方には気をつけろ。それと、動くなよ…」  
 
 私は愛用の刀の切っ先を巻の眉間に突き付ける。頬を叩いていたのもこれだ。  
脂汗を垂れ流す巻をカメラに収め、切っ先をゆっくりと動かして行く。鼻、唇、顎、喉…胸骨の辺りで止める。  
 
「瀬戸燦の護衛・巻…お前は人魚試験を妨害した。従者の罪は主人の罪。瀬戸燦には重い罰が与えられるだろう」  
「燦さまが?!そんなもん横暴…うっ!」  
「口答えするな」  
 
 私は巻の胸を本の少しだけ突いてやった。血がうっすらと流れ出す。  
 
「だが、私も鬼ではない…お前の出方次第によっては、この事を上に報告しないでおいてやらない事もない」  
「不知火……オドレ、何が目的や?」  
「簡単な事だ。…猫の毛の筆という物を手に入れてな、今すぐ使ってみたくなったのだが…すずりが無い」  
 
 猫と聞いて巻は顔を強ばらせる。やはり猫は恐いか…悩ましい。しかし、それでこそお仕置きと言う物。  
 
「お前の身体でおろさせてもらうぞ」  
「や、やめんかぃワレェ!!」  
 
グリッ、グリッ、グリッ  
 
「あ、あがっ!嫌、痛い!痛い!」  
 
 さらしに包まれた巻の胸の上で、新品の固い筆先をぐりぐりとにじりつけていく。  
胸を押し潰される苦しさと、地面に叩きつけられた時の傷の痛、そして天敵である猫の毛の感触…  
3つの苦痛が巻の小さな身体を苦しめる。ちなみに猫の毛というのは嘘だ。  
しかし、巻は顔を真っ赤にして必死に堪えている。  
 
「先ほどまでの威勢はどうした?まだおろす筆はこれだけ残っている。さあ、2本目行くぞ」  
「嫌ァ!まだ、心の準備…あぁぁぁっ!」  
 
 何が『嫌ァ!』だ…口答えはするなと言っておいた。それもわからんうつけ者には、もっとお仕置きが必要だな…悩ましい。  
悲鳴を上げる巻の様子を2枚3枚とカメラに収め、さらしをほどくように筆を擦りつけていく。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
「よく耐えたな」  
「もう、勘弁して……」  
「次は2本同時に行くぞ。胸と、ココにな」  
「嫌っ…やめ…やめて……」  
 
 私は巻の哀願に耳を貸さず、筆の先をはだけかけたさらしとスパッツに刻み込まれた筋に当てがい…一気に押し付けた。  
 
グシャッ!  
 
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  
「やかましい」  
「ひっ!」  
 
 いかに巻の身体が小さいとはいえ、絶叫されれば声が外に漏れる。私は愛刀の刃を喉元めがけて立ててやった。  
今の心が萎えた巻には、これだけでも十分な脅しとなる。しかし私は念を押す事にした。  
 
「瀬戸燦がどうなってもよいのか?」  
「う…くぅっ……」  
「それにお前の恥ずかしい様を写真に撮っている事を忘れるな。この写真をばら撒かれたら…どうなるだろうな」  
「……ご、ごめんなさい……です……」  
 
 瀬戸燦の前でしか見せない態度を見せたか…悩ましい。  
 
「筆はこれを入れてあと3本だ。耐えろ」  
「はい……ですぅ………」  
 
 ついに観念したか、巻は目をつぶりおとなしくなる。私は刀を仕舞うと、遠慮なく胸と股間への責めを再開した。  
 
グリッ、グリッ、グリッ  
 
「くぅぅぅんっ…ぅ…んんっ!!」  
 
 筆を通して巻の股間が痙攣するリズムが伝わってくる。一丁前に感じているという事か…悩ましい。  
程よくさらしが解け、可愛らしい乳首が露になってきた。写真を撮った後、まるで落ち葉を掃くように筆先でさらしをよけ、  
申し訳程度の胸乳をさらけ出させ、写真を撮る。巻の顔が羞恥で赤く染まり、瞼がよりキツく閉じられる。  
私は一旦責めを止める事にした。  
 
「はぁ…はぁ…はぁ…も、もう終わり…デスか…?」  
 
 巻が目を開けた瞬間、私は巻の胸と股間への責めを再開した。…先程よりも速く。  
 
カサカサカサカサッ…  
 
「ひあぁぁぁかはぁぁんあんぁぁあ!!」  
「目を閉じる事は許さん。瀬戸燦のために自分が受けている罰、最後まで見届けろ」  
「は、は…はい…ですぅあぁぁぁぁ…!」  
 
 巻は涙をこぼし、だらしなく開いた口からよだれを垂れ流し続ける。だが、瀬戸燦のためという使命を与えられた瞳が、  
片目はキツく閉じたままだったので片目だけとはいえ、己の身体を容赦なく這いずりまわる筆先を見据える。  
その悲壮な様が、私の心に火を付けた。  
 
この娘をもっと、もっとめちゃくちゃにしてやりたい!  
私のモノにしたい!私無しでは生きられないようにしてやりたい!  
 
 私は2本の筆による責めをやめ、股間を責めていた筆先を触る。指に湿り気を感じると、私は最後の筆を取り出した。  
 

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