お父さまは予感していらっしゃったのかも知れない。
いつもはそんなことをおっしゃったことがないのに。
あの日に限って、蔵人さまの所へしばらく遊びに行っておいで、と、
強く私に勧めた。
あの日、飛空挺から見た雪の冬宮が、そのまま見納めになってしまった。
お父さまもお母さまもアレクセイも、蜂起した民衆や兵士たちの手で、
どこかに捕らわれているか、或は既に殺されてしまったか。
ここ犬神の里からロシアは遠くて、でも確かめにいけよう筈もない。
帝国軍人からも守られたこの里に隠れ住むようになって、もう一ヶ月になる。
蔵人さまは勿論、咲お母さまも里の人たちも、とても優しくしてくれる。
ここにいる限り、私の生活はとても平和なものなのだけれど。
でも、平和すぎるのも私には苦しくて。
蔵人さまはこの2週間、川島さまの用事で、帝都に出かけている。
来週には戻るのかしら。早く帰ってきてくれるといいな。
お屋敷にいただいた私の部屋からは、東の庭が見下ろせるようになっている。
春になれば、沢山の花の揺れる様子がよく見えるだろうけれど、
今は、雪を被って、月明かりに白く輝くばかり。
私はベッドに戻って、天井を見上げた。
蔵人さまが東京へ発つ前の夜。
私は意を決して、お部屋を訪ねた。
蔵人さまは驚いていたわ。こんな夜更けにって。
そして、お式が済むまではいけません、とはっきりおっしゃって、
お部屋にも入れて下さらなかった。
私、咲お母さまにその晩のことを報告したのよ。
そうしたら、お母さまは苦笑なさって、
なるべく早く、お式を挙げましょうねっておっしゃった。
だから私、過ちがあっても全く問題なかったの。
若い男性なんだからきっと色々あるに違いないのに、我慢して。
夜着の合わせをはだけて、私の体を見下ろすと。
小さめの胸。腰も肉が薄くて。
私の体は子どもっぽいかも知れないけれど、
それでも女として、蔵人さまを迎え入れる準備は出来ている。
月のものだってちゃんと来ているんだから。
私は、その「時」のことを想像すると、ものすごくドキドキする。
宮廷で恋愛沙汰を見聞きしてきた分、
もしかしたら蔵人さまより詳しいかも知れないわ。
蔵人さまは最初にどうするのかしら。
たぶん、キスから始まると思う。
私は、唇に触れて、蔵人さまにキスされている感じを想像する。
蔵人さまはディープキスなんて知らないわね。
そうしたら私が、蔵人さまを迎えにいくわ。
唇を開いて、舌が絡まるのを想像しながら、指を舐める。
次は、首から胸にかけて愛撫してくれるの。
蔵人さまの優しい手を想像して、両手を胸にあてる。
優しく揉んで、それからもしかしたら、そこにもキスしてくれるかも知れない。
どんな顔をするのかしら。
たぶん照れたような、微笑み。
想像しながら、手を動かす。
自分でこんなことをするのは初めてだけれど、体が何か、熱くなってくる感じ。
夜着が何だか邪魔に感じて、帯を解く。
触っているのは胸なのに、なぜか体の奥の方でざわめく感覚。
その感覚に呼ばれるように、右手を下ろす。
私の秘密の場所。
その「時」になったら、蔵人さまのものになる。
足を少し開いて、指を茂みの中に滑らせる。
茂みは二つに別れていて。
その間に、私を女たらしめている部分がある。
こうやって意識して触れるのは初めてのこと。
大きな襞の中に小さな襞があって、更にその奥に窄まりがある。
ここに、蔵人さまの男の部分が入るのだ。
流石に男の人のそれはまだ見たことはないけれど、
蔵人さまだもの、きっと綺麗に違いないわ。
私のそこがどんな風になっているのか確かめたくて、
そおっと中指を差し入れてみる。
平らではない肉の壁は、結構圧力があって。
少し、ぬるりとしている。
指を一杯に差し入れても、まだ奥には着かない。
壁の内側には、滑らかな部分と、綾のような部分があって。
指の腹で凹凸としたその面に触れると、
ざわめく感覚が一層増した。
そのまま、指を抜き差ししてみる。
男の人にされるのって、こんな感じなのかしら。
体が動く度に中の圧力も変化して、
擦っている指も、擦られている壁も、なんだか気持ちいい。
ふと気が付いた。
今触れているこの壁も「私」なのだから、私が動かせるんじゃないかって。
指を差し入れたまま、お腹に力を入れてみたり、お尻に力を入れてみたり。
そのうちになんとなくわかってきた。
窄まりの入口と、中程と、奥を、それぞれきつくしたり緩くしたりできる。
これが「シマる」ってことなのね。
沢山シマる方が、男の人は気持ちいいらしいから、
蔵人さまを迎え入れたら、意識してきつくしてみよう。
気持良くなってもらえるかしら。
蔵人さまに全身で抱かれて、体の奥で繋がって、
そうしたら私もすごく気持ちよくなれるに違いない。
だって指で触れている今でさえ、こんなに気持ちいいんだもの。
差し入れていた指を抜くと、中の粘りが絡み付いて、ねっとりとしている。
ぬるぬるとした指で、そのまま周囲の襞を探る。
蔵人さまに舐められたら、きっとこんな感じなんだわ。
襞の手前側の端に、コリコリとした突起があった。
濡れた指でそれに触れた時。
ピリっと、内腿が揺れた。
体のざわめきが更に強まり、全身に広がって、どうにも止められない。
左手も下ろして、突起が滑ってしまわないよう襞を押し広げる。
中指はぬかるんだ窄まりに差し入れて。
親指で突起を刺激する。
立てた膝が、小刻みに震える。
お尻から背中にかけてものすごく緊張して。
息が浅く、早くなる。
段々、意識が白くなってきて。
「あぁ……ぁ、…蔵人さまぁ……」
登りつめた頂上から解放される時、
蔵人さまの腕の中にいるような気がした。
…蔵人さま、アナスタシアはいけない子です。
早く帰ってきて下さらないと、毎晩、
この手で気持ち良くなってしまいそうです。
蔵人さまに抱いていただける日を、心待ちにしています。