ウルムナフが居間の入口で、ぴょこり、と頭を下げた。  
「おとうさん、おかあさん、おやすみなさいっ」  
「おやすみ、ウル」と、甚八郎。  
「ちゃんとお布団を掛けて寝るのよ」アンヌは微笑む。  
「はぁい!」  
パタン、と戸が閉まり、軽い足音が遠ざかっていく。  
二人はそれを聞いてから、目を合わせた。  
「年々、貴方に似てくるわ、あの子」  
「俺の子供の頃を見ているようだよ」  
「あら、貴方、あんなにいたずらっ子だった?」  
「子どもの頃はな」軽く笑って。  
 
甚八郎は、掌をじっと見つめた。  
「……ウルには、力のことをそろそろ教えないといけないのだろうが…」  
「やはり、間違いなく持っている?」  
「ああ。あの赤い瞳は融合者の刻印だ」  
「ウルは、まだ、自分では気付いていないのね」  
「おそらくな。この血を持つことがが良い方向に働けばいいが…」  
「貴方も苦労したの?」アンヌは覗き込む。  
「…いや、それほど。俺は、父や祖父という導き手がいた。闇を抱くことを教えて貰った。  
今度のヤマが片付いたら、ゆっくりと相手をしてやれるだろう」  
アンヌは長椅子に沈み込んで、深々とため息をついた。  
「ウルももう10歳。年月って、本当に早いものね…」  
「お前には、本当に苦労をかけているな」  
「いいのよ、貴方。私、幸せですもの」  
「そう言ってくれるか」  
甚八郎はアンヌの横に座り、肩を抱いた。  
アンヌは抱かれるままに肩を寄せる。  
「いよいよ、本陣に乗り込むのね?」  
「ああ。ここまで長かったよ」  
「私、貴方が勝つことを信じているわ」  
「必ず戻る」  
「ええ、もちろん。二人で待ってるから」  
 
自然、二人の手は重なって。  
甚八郎は、アンヌの唇を求めた。  
「まだ、ダメ…。あの子が寝たかどうか確かめないと…」寸前で押し止めて。  
「ウルの寝つきの良さはわかっているだろう?」  
「それはそうだけれど…」そわそわと。  
「そんなに心配なら、アンヌ、二人で確かめに行こうじゃないか」  
アンヌの手を引いて、甚八郎は居間を出た。  
二人とも、忍び足で。  
息を殺して子供部屋の扉をそっと開くと、寝台の上に手足を投げ出したウルが見えた。  
「ああ、やっぱりウルったらお布団掛けてないわ…」  
「寝相は相変わらずだな…」  
二人で部屋に忍び入る。  
アンヌは、優しい手つきでウルに上掛けをかけた。  
ウル本人はすやすやと寝入って、起きる気配もない。  
しばし、その無邪気な寝顔を二人で見下ろして。  
そして頷き合って子供部屋を出た。  
 
居間には戻らずに、そのまま夫婦の寝室に向かい、  
部屋に入るなり、甚八郎は遠慮せずにアンヌの唇を奪った。  
奪われたアンヌも積極的に唇を開き、甚八郎を迎え入れる。  
「んっ、ぁっ…」  
二人の間で交換された唾液があふれて糸を引くほど激しく舌を絡め合い、  
その間にも二人の手はお互いの服を脱がせていく。  
結い上げられていたアンヌの髪も、甚八郎がほどいた。  
豊かな髪がアンヌの素肌に降りかかる。  
シンプルな十字架だけを身につけたアンヌを抱き上げると、甚八郎は寝台に足を運ぶ。  
「アンヌはいつも綺麗だな」  
肉感的な身体を見下ろして、甚八郎は呟いた。  
「貴方にそう思って貰えるなら、嬉しいわ」  
丸い乳房は垂れもせずに天を向き、体のラインは子供を産む前と殆んど変わらない。  
すらりと伸びた足が、東洋人との違いを際立たせる。  
 
甚八郎の大きな手が、アンヌの乳房を柔らかく揉みしだく。  
「あぁっ……うぅんっ……」  
アンヌは首を振って、愛撫を受け入れる。  
ウルを産んでからというもの、アンヌの乳房は更に性感を増している。  
片乳は乳首を転がし、つまみ、もう片乳を絞って吸う。  
勿論、母乳が出る筈もないが、それでも、アンヌの母としての本能が、  
吸われるという行為に反応してしまう。  
「ん…ふっ……、はぁっ………」  
アンヌは甚八郎の耳朶から筋肉のついた肩までを撫で下ろしては撫で上げる。  
固い髪に手をすきいれては、赤子を抱くように抱く。  
甚八郎は更に下がって、アンヌの膝を開いた。  
夜目にも、もうそこはいやらしく雫を含んで。  
「………アンヌ?」  
片手を差し伸べ、ぴちゃぴちゃと水音を響かせる。  
「ごめんなさい、私……あぁ…」  
「どうして謝る。体が喜んでいる証しじゃないか。俺は嬉しいぞ」  
両手で花びらを寛げて、愛液を舐め上げる。  
強烈な女の匂いが甚八郎の男を刺激する。  
花びらからはとめどなく愛液が溢れでて。  
指を一本、また一本と差し入れる。  
「はうっ……ぁ……」  
子どもさえも通すその産道は柔軟に伸びて、甚八郎の指を受け入れる。  
中は更に滑って。  
壁の内側を探れば、微妙な凹凸が指に触れる。触れる度にアンヌが震える。  
「…ひぁ……ん……くぅ……………もうだめ!」  
アンヌはやおら身を起こすと、甚八郎に抱きつき、体を入れ替えて上になった。  
 
筋肉質の締まった体をなぞり、反り上がる男性器にアンヌは手と舌を這わせる。  
躊躇なく口に含んで。  
唾液を使い、滑らかな頭部を舌で舐め上げる。  
筋から本体へ優しく指で撫で下ろす。  
片手は本体を上下にゆっくりと扱いて。  
「…むぅ……」  
アンヌの舌技に甚八郎は更に太く固くなる。  
首から下げられた十字架が股間にあたり、そこだけひやりと冷たい感触を与える。  
「アンヌ、おいで」  
甚八郎は両手でアンヌを招く。  
ずり上がるアンヌの腰を捕まえ、そのまま、男性器に導く。  
十分すぎるほどの潤いを湛えたそこは、滑らかにそれを銜え込む。  
「ん……ああぁ…、あっ…あっ…あっ…あっ…」  
前傾姿勢となったアンヌの乳房は美しい形で甚八郎の目の前に示され、  
アンヌが体を揺らす度に、十字架と一緒に揺れる。  
誘惑に耐えきれず両手で乳房を揉むと、アンヌの声調が高まる。  
腰を揺らし、男性器に蜜を塗りたくりながら、アンヌが悶える。  
「…貴方っ…!!」  
一際強い締め付けとともに痙攣し、アンヌは甚八郎の上にくずおれた。  
 
二人の体はまだ繋がったまま。甚八郎はフフフと微笑んだ。  
「アンヌ、今日はいつにも増して頑張るじゃないか」  
「……とうぶ、ん……会えな…いん…です…も…の……」切れ切れに。  
「そうだな、なら俺も応えなくてはな」  
抱き抱えたアンヌごと体を起こし、一旦体を離して、アンヌを四つん這いにさせる。  
この体位は、アンヌがとても恥ずかしがるのだ。  
「よし、挿れるぞ」  
「いやぁ………くはっ…ぁん…」体は従順に反応して。  
大きく腰を前後させると、その度に水音が蜜壷から漏れる。  
滴る液体は既に二人の腿を伝い、敷布を濡らしている。  
「あんっ……貴方ぁ……ああっ……いぃ……いい…!」  
豊かな臀部に打ち付けるように小気味良く律動を刻む。  
アンヌは高まりを示すように甚八郎をますます締め付ける。  
「ア、アンヌ…、凄い…良いぞ…」  
「…貴方……今日は、…私に……ください」  
アンヌが自分から中へ、と願うのはとても珍しいことで。  
「いいのか…? ん? 二人目が欲しいのか?」  
「く、ください…。全部…」  
「わかった…。全部だな」  
ウルに兄弟ができても良いかも知れない。腰の昂りはいよいよ最高潮に達しようとしている。  
「…いっ…いいっ……いぃっ…」  
「アンヌ、いきそうか…?」  
「…はいっ…い、いいです……」  
俯いた顔の表情は見えないけれども。背中は汗ばんで、身体中が緊張している。  
「よし……、いくぞっ…」  
「あっ…ああっ…ぁ…」  
体の中を熱いモノが流れる感覚。一気にそれをアンヌの奥深くに流し込んで。  
熱に反応したアンヌが搾り取るように狭まることで、最後の余韻まで出しきった。  
 
二人で倒れるように寝台に横になる。  
軽い口づけを交わして。  
「そうだ…」  
アンヌが十字架を外し、自ら甚八郎の首に架けた。  
「お守りとして持っていって」  
「これは…、アンヌの大切なものだろう?」  
「ええ。貴方は私の大切な人。だから…」  
「ありがとう。愛しているよ、アンヌ」  
「私も愛しています、甚八郎」  
 
その夜は、とても長かった。  
 
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