ここは高方原・・・今まさに、この時代を逆行させようとしていた加藤を倒した瞬間だった。  
 
ウル「川島中佐が泣いてるぜ」  
 
加藤の上官で最愛の人、上海で命を落とした抜群にカッコ良くてイイ女・・・加藤が惚れるのも無理ないぜ。  
 
加藤「あの人の事は・・・言わないで下さい・・・」  
 
ウル「お互い大切な・・・本当に大切な人を失ったけど、お前の気持ちは分からねぇよ。  
   お前が愛した人が愛した世界だろ??守ってやろうと思わないのかよ?大事にしようと思わないのかよ?」  
 
加藤「フッ・・・貴方の言うことはもっともだ。ですが、どうしても許せなかったんです。  
   あの人を奪った時を。こんな歴史になった時代を・・・」  
 
ウル「・・・ばかやろう・・・」  
 
加藤「貴方は生きて下さい。生きてこの世の中で苦しんでいる人達を救ってやって下さい。  
   貴方にはそれを実現出来るチカラがある。正義の心もある。」  
 
ウル「・・・」  
 
加藤「呪いで苦しんでいるというのに付き合わせてしまい、申し訳ありません。  
   私はもう自分では抑えが効かなくなってしまっていました。貴方が止めてくれて良かったんです・・・  
   またあの頃に戻りたいですね・・・お互い・・・愛する人のそばに居るだけで幸せだったあの頃に・・・グフッ・・・」  
 
加藤「・・・もうここは・・・間もなく・・崩れ落ちます・・時の彼方に消えてしまう前に、脱出してください・・・」  
 
ウル「ここから出られるのか??」  
 
加藤「祈るのです・・・幸せを感じた時代を、愛する人を。そうすれば・・・奇跡は起こり・・ま・・す・・・」  
 
ウル「加藤しっかりしろ!!」  
 
加藤「ありがとう・・・そしてさらば、と・・も・・よ・・」  
 
その瞬間、加藤の体は光に包まれ、弾けて消えてしまった・・・  
 
ウル「・・・あばよ・・・」  
 
   ウルは後ろで心配そうにしている仲間の所に行き、今の状況を伝えた。  
 
カレン「みんな、約束通り絶対に生きて帰りましょう!!」  
 
ヨアヒム「もちろんだっち!!帰って師匠と新しい必殺技の特訓するだら」  
 
蔵人「アナスタシアさん・・・貴方とはこれから一生を共にする人だ。必ず一緒に帰りましょう」  
 
アナスタシア「ハイッ!蔵人様(ハァト」  
 
ゼペット「ホッホ。ワシはちぃとばかし過去に戻るかの。奇跡が起こるのならば見てみたいもんじゃ」  
 
ブランカ「バウッ!!」  
 
ルチア「わたしはぁ〜、やっぱりおばぁちゃんの所に戻るわぁ。南の島にバカンスに行っちゃおうかなぁ?ウフッ」  
 
ヨアヒム「そんでウルはどうするだらか??」  
 
   しかしウルは答えない。いや、正確には答えに戸惑っているようだ。  
 
カレン「まさか、ウル・・・」  
 
ゼペット「帰らない、いや、死ぬ気か??」  
 
   しばしの沈黙が周りを包む・・・・・・・そして・・・  
 
ウル「・・・いやぁ〜、俺だって色々考えてさぁ、死ぬのが一番ベストかなって思ったんだよね。」  
 
パシンッ!!ウルがそれを口にした途端、頬をカレンの平手が飛んできた。ビックリして呆然となるメンバー  
 
カレン「・・・何言ってるの??今なんて言ったの?死ぬですって?ここまで頑張って来たのに?・・・  
   どこをどう考えたか分からないけど、みんなの、アリスさんの気持ちを踏みにじるの?  
   もっと生きようって、幸せ見つけようって思おうよ??私も手伝うから!!ずっとずっと一緒に居るから!!」  
 
   カレンの目から大粒の涙が溢れ出す。それは止まる事無く流れ続けている・・・  
 
蔵人「ウルさん・・・貴方はカレンさんを泣かせたままにするつもりですか?」  
 
ゼペット「ウルよ、おぬしが帰らないというのなら、ワシもお供しようかの。」  
 
   よっこらしょっと、地面に座り込んでしまった人形使いのじいさん。  
 
ヨアヒム「だな。ウルのお陰でここまで来れた。これからもウルはいなくちゃいけない存在だっち」  
 
   ヨアヒムは戦艦ノーチラスを磨き始めた。・・・中からなんか聞こえるが気にしない・・・(汗  
     
   みんなウルが帰ろうと言うのを待っている。共に激しい戦いを駆け抜けた仲間だからだ。  
 
カレン「ねぇ、ウル・・・貴方は、この世界に幸せを感じないの??  
   確かに今この時代は戦争で、苦しい思いをしている人達がたくさんいる。  
   でもね、楽しい事も必ずあるはずよ。この世界にいたい。  
   この世界が好きだって感じれば、ヤドリギの呪いなんて跡形もなく無くなるのよ。」  
 
ウル「カレン・・・」  
 
カレン「呪いなんかに負けないで!!私の大好きなウルは、もっといつも前向きに生きているわ!!  
   出来ることなら私にその呪いを頂戴。私の今の貴方への思いの前には、何も通用しないわ!」  
 
ウル「・・・ありがとう、カレン・・・・・・そうだよな、こんなの俺じゃねぇよな。  
   それにもう、俺の身代わりに大事な人が居なくなるのは耐えられないぜ・・・」  
 
ウル「ゴメン、みんな・・・俺は・・・生きるぜ!!親父が必死で守ったこの世界。  
   母さんがいたこの世界。そして、アリスが愛したこの世界!!もう俺は・・・・・・負けない!!」  
 
   その瞬間・・・・・・・・・暖かい光がウルの胸から発生して、全身を包み込む・・・・・・  
 
カレン「ウル!!」  
 
   光が止んだ・・・そこから現れたウルは、清々しい顔をしていた・・・首に下げているタリスマンが青色に戻っている。  
 
ウル「へへっ、心配かけたな。今グレイブヤードに入ったらもう跡形も無くヤドリギは無くなっていたよ・・・  
   俺が今この場で幸せを見つけたからかな・・・・・って、おわぁっ!!」  
 
   思わずカレンがウルに抱きつく  
 
ルチア「これで一件落着って訳ね??」  
 
ブランカ「バウッバウッ」  
 
ウル「おっし!!!さぁ〜〜て、長居しちまったな。みんな帰ろうぜ」  
 
   それぞれが、それぞれの所へ帰る・・・  
 
   ウルは、死ぬ事を止め、仲間達の、カレンの想いによって幸せを見出すことが出来た。  
     
   もちろんアリスは確かにウルの心の中にいるし、ウルもそれを忘れない。  
 
   10歳のあの頃から自分の存在価値に疑問を抱いてきた悲しきハーモニクサーは、  
 
   今やっと、自分の過去と決別する事が出来たのだ・・・・・  
     
   そして自分の事は二の次で、ウルのことをいつも一番に考えてくれたカレンを生涯を賭けて愛する女だと決めた。  
 
   そして無事に戻ってきて間もない日のこと・・・・  
 
ウル「なぁ、あんまりくっつくなよ」  
 
カレン「良いでしょ??こうしていたいんだもん」  
 
ウル「・・・なぁ、カレン」  
 
カレン「え??」  
 
ウル「・・・・・・・・・」  
 
   カレンの顔が途端に真っ赤に、そしてそのあと涙がとめど無く流れてくる・・・  
 
ウル「お、おい!泣くなよ」  
 
カレン「・・・うぅ・・・ヒック・・・ヒック・・・だって、初めて言ってくれたんだもん・・・うぅ・・・」  
 
   この二人はもう心配いらないだろう。喜びも悲しみも、二人で分かち合う事が出来る。  
     
   幸せってなんだろう。確実に言える事は、今この二人の幸せは、確かにここにある・・・  
 
ウル「愛してるぜ、カレン」  
 
   ・・・この言葉は永遠に・・・・・・  end  
 
 

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