「さぁさぁシタリ。早くわちきを楽しませておくれよ。こないだみたいにさぁ」  
シタリの背にしなだれかかり、太夫が艶かしくせがんでくる。  
そんな太夫の様子を見ながらシタリはやれやれ、と首を振り溜息をつく。  
まったく、鬼のいぬ間の何とやら、とは良く言ったもんさね。  
 
以前、三味線を破壊され失意に沈む太夫を何とか慰めようとしているうち、  
何故か二人はそういう関係になってしまった。  
場の勢い、としか言いようがない事故のようなものだったが、それ以来  
太夫はこうして二人きりの時は甘えた様子を見せ、シタリを求めてくる。  
だが太夫は別にシタリに想いを寄せているわけでも、シタリ自身を欲して  
いるわけでもない。  
 
こいつがそんなにいいもんなのかねぇ。  
シタリはずるり、と口元から垂れる触手の一本を持ち上げ、くねくねと宙で  
躍らせてみる。  
太夫はその様子を見ただけで「あぁ・・・」と吐息を漏らし、火照った体を  
くねらせながら悩ましげに身悶えている。  
太夫が欲しいのはこれであった。シタリのこの髭とも触手ともつかぬ代物。  
生殖器官を持たないシタリが代わりに使ったこの触手。太夫はこれで  
体の疼きを慰められ責め抜かれることが大のお気に入りになってしまった。  
こうして二人は割り切った触手の関係、とも言うべきおかしなパートナー  
シップにて結ばれている。  
 
ドウコクが戻るまで、か。これで太夫の機嫌が良くなるなら仕方ないさね。  
シタリはずい、と触手を伸ばし、太夫のふくらはぎにしゅるりと巻きつけた。  
肌にぬらりぺたりと貼りつく触手。ぬめぬめと湿ったひんやりとした肌触り。  
人間の女ならこれだけで卒倒するほどのおぞましさを感じるだろう。  
だが太夫は高まる欲望に鼻を啜りながら、早く早くと急き立てるようにその  
触手を手で掴み、まるで愛しい男の物にするかのように上下にしごく。  
 
「シタリ、早く。もっとそれを」  
待ちきれない、といった顔で催促する太夫。応じたシタリはさらに他の  
触手も伸ばす。太夫の体に何本もの触手が絡みついて、その肌の上を  
うねうねと這い回る。  
そのうちの一本が太夫の顔の前で揺れる。太夫は「おぉ」と飛びつかん  
ばかりの勢いでその先端を掴み、自ら大きく口を開けて咥え込んだ。  
「むぐ・・・むぅ。ふふ、ふ」  
喉の奥まで飲み込むように咥え、苦しげに眉を寄せながらも含み笑いを  
漏らしている。己の口の中にあるものが愛しくて愛しくて仕方ない、と  
いった様子で、目を閉じうっとりとした表情で舌を絡めてくる。  
 
うぅむ。そんなふうにちろちろと舐められたら。あたしだってそりゃぁ・・・。  
シタリも年甲斐もなく興奮し、いきり立つ。伸ばした触手で太夫の襟を掴み、  
着物を破らんばかりの勢いで左右から一気にがば、と胸を開く。  
その勢いで太夫の豊かな乳房がぼろん、とこぼれ出る。  
太夫は嬉しそうだ。クク、と喉を鳴らしながらシタリに向かってその見事な  
乳房を自らゆさゆさと揺らし、「どうだ」とばかりに見せつけてくる。  
青白い太夫の肌がうっすらと紅潮してきた。シタリは触手でその両の乳房を  
丸く握るように持ち上げ、揉みしだく。  
触手により右に左に好き放題に掴まれこねくりまわされる乳房。頬を上気  
させつつにんまりと口元に微笑を浮かべる太夫。  
その乳房の先端が興奮に固く尖ってくる。それを見たシタリは「ふむ」と頷き、  
触手の先にある吸盤を、太夫の両の乳首にぺたりと押し当て吸いつかせる。  
「むぅ、ふふふ」  
太夫は悦びにその身を捩らせる。吸盤は太夫の乳首を包み込み貼りつき  
締めつける。そしてきゅーっと無造作に引っ張り、ぽんと音を立てて離す。  
 
これを太夫は気に入った。「んー!ヒタ、リ・・・」とよがりながら呟く。  
きゅー、ぽん。きゅー、ぽんっと左右で交互に繰り返される乳首への責め。  
太夫は乱れに乱れる。もう堪えきれないといった様子で太腿が開かれる。  
太夫は咥えていた触手を吐き出す。荒い息を吐きつつシタリをせっつく。  
「シタリ。ここに・・・頼む」  
言いながら太夫は膝を立て股を大きく開く。突き出された股の間の薄布が  
既にじっとりと湿っている。  
シタリはその様子を見てニタリと笑うと、触手の先を太夫の太腿に巻きつけ  
じわじわとその付け根へと這わせていく。  
 
薄布の上からそこをさわさわと撫でる。絞れば滴るほどにぐっしょりと濡れた  
その布が太夫のそのやわらかな場所へ張り付く。  
こんな邪魔なもの・・・。  
太夫は慌しく薄布を脱ぎ捨てようと手を伸ばすと、触手がその手を掴んだ。  
「何を」  
「まぁまぁ、落ち着きなさいよ。ほっほっほ」  
シタリは太夫の腕を押さえたまま、さらに股ぐらを布越しに撫で回し続ける。  
濡れて透けて見えるほどの薄布。強めに引けば裂けてしまう程の薄さだが  
その薄さでも太夫を苛立たせるには充分だった。  
邪魔な布など外して、あのねとつく触手で直に弄くりまわされたい、という  
欲望が沸騰しそうなほどに沸き立ってくる。  
シタリに対しても怒りにも似た感情が呼び起こされる。シタリめ、わちきを  
焦らしているのか。この、このど助平の狒々爺めが!  
内心で罵倒しつつ、そのシタリのいやらしさと焦らされる苛立ちも太夫の  
快感をさらに燃え上がらせる刺激薬となる。布越しにつつかれ撫で続け  
られながら太夫は悶えに悶えまくる。  
 
と、突然シタリの触手が、太夫の薄布をビリリと引き裂いた。  
破り捨てられる薄布。突如露わにされた太夫の股ぐら。そこにあるものが  
期待に震えながらヒクヒクと息づいている。  
「おお!」  
太夫は喜びに喘ぎつつさらに限界まで脚を開きシタリにそれを見せつける。  
そこはもう濡れている、などという生易しい状態ではない。薄布の抑えが  
取り払われた途端、溢れ出す雫が太腿の半ばまで流れ出てくる。  
 
「ほっほぅ。大洪水だぁねぇ」  
シタリは下卑た笑みを浮かべながら触手の先で太夫のそこをぐちゅぐちゅと  
わざとらしく音を立てながら掻きまわし、すくい上げのたうちまわらせる。  
「三途の川の水もこれくらい溢れてくれたらねぇ」  
太夫はシタリの軽口に反応する余裕がない。既に気が狂うほどに感じて  
いるため、ただ快楽の波に身を捩り、悦びの声を上げ続けるのみ。  
ひと際太い触手が二本、太夫の股間に伸びる。前と後ろ両方の穴の周囲を  
機嫌を伺うかのようにつんつん、とつつく。  
シタリの意図を察した太夫が狂喜しながら待ち受けると、今度は焦らすこと  
なく触手は一気にずぶりと二つの穴に同時に突き入れられた。  
「ひぃっ!!ぐはぁっ!!」  
太夫の嬌声は既に雄叫びに近い。口の端から涎が垂れていることにも  
気付かずに体をガクガクと震わせている。双方に突き入れられた触手が  
さらに奥へと突き進んでいく。同時に先程太夫の乳首に吸いついた吸盤が  
今度は股間の最も敏感な突起にむしゃぶりついて吸い始める。  
「おお!・・・シタリ、そうだ、そう!そこを!」  
あまりの快楽にガクリと床に伏せ膝をつき、尻を高く上げる太夫。両の穴に  
じゅぶりじゅぶりと出し入れされる触手。太夫の白い尻がぶるぶると震え、  
くねらせ回転したりもしながらさらにその咥え込んだ触手を奥へ奥へと  
飲み込んでいく。その様子はシタリから丸見えだ。  
 
ふぅ、こいつはちょっとばかりしんどいね。あたしゃ疲れてきたよ。  
複数の触手を同時に操るのは老齢のシタリにはなかなか骨が折れるのだが  
ここで止めたら太夫は激怒するだろう。この場で八つ裂きにされかねない。  
命大事なシタリは必死になって太夫を責め続ける。すると咥え込まれた  
触手がシタリが痛みを感じるほどに締めつけられてきた。  
ひょう、痛い痛い。何て締まりの良さかね。しかしようやく逝きそうだねぇ。  
ここが踏ん張りどころとシタリは触手をさらに縦横無尽に暴れまわらせる。  
「ほれほれ太夫。どうだい?いいのかい?ほれ、ほれほれほれぇぇっ!」  
 
太夫の頭の中でいくつもの光が爆発する。もうだめ、もういく。もうっ!!  
「おお!い、いくぞ。いくぞ!いくっ、いぃぃぃっ、っくぅ!!!」  
太夫は背を逸らし、がはぁと息を吐きながら絶叫する。  
快楽の極みに達した太夫の尻が再び波打ち震えるのを眺めながら、シタリは  
自身も上がりきった血圧によって目の前が暗くなり、ふらりとよろめいた。  
 
床にうつ伏せに寝そべったまま、満足げな笑みを浮かべている太夫。  
シタリはようやく落ち着いてきた心臓の鼓動を確かめ、ふぅ、と溜息をつく。  
「今日のも、まぁまぁ良かったぞ、シタリ」  
笑いながら言う太夫に、シタリは冗談じゃない、という表情で激しく首を振る。  
「まあまあだって?よしとくれよ太夫。あたしゃ死にかけたんだからね!」  
背筋が震えるほどの恐怖を覚えるシタリ。あんなのはもう二度とごめんだ。  
 
「大袈裟なことを言うな。外道がこんなことで死ぬものか」  
体を起こした太夫はその両足を伸ばし、シタリの胴を蟹のようにぐいと挟む。  
「もう一回だよ」  
「ひっ!だ、太夫!勘弁しとくれよ」  
挟まれたまま太夫の側へ引きずられ悲鳴を上げるシタリ。だが太夫はまるで  
意に介さず、クククと喉を鳴らしながら容赦なくシタリを引き寄せる。  
 
「助けてくれぇ!ドウコク!早く戻ってきてくれぇ!このままじゃあたしゃぁ!」  
嘆きの叫びを上げたシタリ。だが続く言葉は太夫が口元に押しつけてきた  
巨大な乳房によって、すっぽりと塞がれてしまった。  
 
終わり  
 

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