今、僕の目前には見目麗しい女性がいる。
スラリと伸びた手足、僕と変わらない身長に、出るところの出た体形を持つ美しい女性。
しかし、そのモデルとして通用しそうなボディライン以上にその容貌が目を引く。
墨を流したような髪に、虚ろな瞳は映すもの全てを引き付け飲み込むように黒い。
そんな彼女――――支倉志乃ちゃんは、僕にその暗い瞳を向けて言う。
「もう、我慢ができない」
状況を理解できず立ち尽くす僕の前で、セーラー服のスカーフを解く。
「ずっと待っていた、貴方が行動を起こすまで……」
「行動って……え?ご、五年間とか?いや、待ってよまずなんで脱ぐのか説明してよ」
空気の読めない質問だったらしい。若干の殺意が篭もった視線が突き刺さる。
「……どう計算したらそうなるのかを知りたい。待った時間は十余年、出会った時から」
そして質問を聞いちゃいない。脱ぎ続けてとうとう上下ともに下着になってしまった。
わざと小さなサイズの下着を着けてでもいるのか、はちきれそうなモノが自己主張著しく胸部に鎮座し、
真っ白な肢体は黒い下着によって締め付けられて背徳的な魅力を醸し出している。
性的な魅力を過剰に振りまいて、半裸の志乃ちゃんは僕に迫る。
「婚姻可能な年齢に達するまで、長かった」
距離がとても近い。志乃ちゃんの匂いが僕の鼻腔をくすぐる。
何も言えずにいる僕を上目遣いに見上げ、『ぽすん』と僕の胸に飛び込んだ。
「志乃ちゃん、ほら、その。冗談も大概に」
ぐい、と。
言いかける僕の頭を引っつかんで。
志乃ちゃんが、僕の唇を塞いだ。