「――疲れました。靴を脱がせてくださるかしら?」  
「仰せのままに。志乃お嬢様」  
お嬢様と執事に扮した一時間ほどの『外遊』から帰ってきた僕たち。  
畳の部屋に彼女の華麗なワンピースは似合わないけれど、二人はまだ衣装を脱ぐことはしない。  
だって………この遊びはまだ終わっていないのだから。  
 
彼女の今の服装は、目一杯のフリルで飾られた黒いワンピースドレス。  
黒髪を飾るヘッドピースと、胸元の大きな赤いリボンがアクセントだ。  
靴下までを黒で合わせている彼女は半ば黒づくめの状態だけれど、  
手足や顔の肌の白さが余計に映えるからか、それが不思議と似合っている。  
丹精な顔立ちと相まった華奢な容姿は、いかにも深窓のご令嬢、と言ったところだろうか。  
 
一方の僕は飾り気の少ない燕尾服……いわゆる執事服だ。  
案外に動きにくいという事も無く、結構気に入っている。  
……髪をオールバックにして厳しい面にしたのは彼女の趣味だけれど。  
 
そんな二人の遊戯は、これからが本番だ。  
近所を長々と歩き回って来たのは、いわば前戯のようなものでしかない。  
 
「――それで、お嬢様。この度の外遊はお楽しみ頂けたでしょうか?」  
「…言葉の意味が分かりません。何を楽しんだと言うのですか」  
 
僕の問いの真意は分かっているくせに、敢えて白々しい返答をする彼女。  
しらを切った所で僕の責めが激しくなるのは分かっているだろうに……  
そんな態度の原因が自身の被虐嗜好から来ている事実には、彼女もまだ気づいていないようだ。  
――お嬢様の『教育』は順調、かな。  
思わず人の悪い笑みを浮かべてしまいそうな口許を引き締め、僕はできるだけ丁寧な言葉で彼女に再度問いかける。  
 
「どうしても僕は知りたいのですよ。どうか教えて頂けませんか、志乃お嬢様?  
 それとも、お嬢様自身が無理矢理暴かれる事をお望みならば……」  
「巫山戯るのも大概にしなさい! そのような事されなくても、私は十分……!」  
 
口にした言葉の意味に、ハッとした顔になる小さなご令嬢。  
自ら墓穴を掘り、自分を追い込んでしまう彼女が可愛らしくて仕方ない。  
普段の彼女だったら、僕との会話でこんな下手を打つはずは無いのに。  
……そう。彼女はこうして『演じる』ことで、初めて本当の願望を曝け出すことができる。  
それは二人の間にいつしか出来上がってしまった、歪なコミュニケーションだ。  
邪悪な微笑みに口角が歪むのを、僕は抑え切れなかった。  
 
「十分、満喫して頂けたのですね? では是非、お嬢様自ら教えて頂きたい次第です。  
 ……スカートを捲りなさい。志乃お嬢様」  
 
自らに言葉の枷を嵌めてしまった彼女は、僕の命令に心底悔しそうな顔をする。  
けど、その表情の奥に見え隠れする期待の色を、僕は見逃してはいなかった。  
か弱い自分が、目下の下僕に屈服させられる。  
歪んだ願望に支配された彼女が、いかにも好みそうなシチュエーションじゃないか。  
 
フリルが可愛らしい黒いワンピースの、膝丈のスカート。  
その裾に震える手をかけた彼女はしかし、なかなか腕を引き上げようとしない。  
羞恥心が邪魔をするのか、それとも……自らを焦らしているのだろうか。  
そんな繊細なお嬢様に僕は一言、勇気付けてあげることにする。  
 
「――さあ。それともお嬢様はまた、一週間ずっと下着無しの罰をご所望ですか?」  
「………っ!」  
 
僕の言葉に彼女は思い切り顔を引きつらせ、その上頬を一瞬で真っ赤に染め…  
そして、おずおずとスカートの裾を捲り始めた。  
 
徐々に露わになる細くて真っ白な太ももと、……ある筈の布地が存在しない下腹部。  
部屋に差し込む光で照らされた無毛の秘所は透明な蜜が湧き出し、産毛と絡んでチラチラと輝いていた。  
内股を擦り合わせるように歩いたのだろうか、流れ落ちた愛液で塗れた太ももの内側ははべっとりと濡れ光っている。  
スカートを握る小さな拳が小刻みに痙攣しているのは、何かを我慢しているからだろうか。  
 
「随分と堪能されたようですね。はしたないお嬢様だ」  
「……………」  
ほくそ笑む僕と顔を合わせようとしない彼女。  
おそらく図星なのだろう。  
 
僕の真心こめた『教育』の成果だろうか、彼女は露出の味を躯でもって理解できるまでに成長した。  
少しずつ羞恥の快楽を刻み込まれた身体は、今ではノーパンのまま歩くだけで浅ましく発情してしまう。  
僕に教育を施されて幾月、彼女は恥ずかしさがもたらす快感に逆らえない身体に造り変えられてしまった。  
 
「ヒラヒラした服で周りの注目を集めて、布一枚下では厭らしく涎を垂らして……  
 清楚な顔をして、とんだ淫乱お嬢様ですね?」  
「それは……っ、貴方が私を………、ひぅっ!?」  
 
反論を遮るように、だらしなく蜜を流す秘所へ手を伸ばす。  
冬の外気に晒されていたはずのソコは、既にしっとりと熱を帯びていた。  
限界まで焦らされた身体は、肉芽を軽く弄ってあげるだけで面白いくらい敏感に反応してくれる。  
 
「は…っ! ぁ……っく、ぅん……!」  
「ほらお嬢様、段々手が下がって来ているじゃないですか。  
 ちゃんと持っていられなかったら……お仕置き、ですよ?」  
 
僕の言葉に、必死でスカートを握り締めるお嬢様。  
あんな態度を取っておいて、結局は僕の命令に絶対逆らえないんだから可愛いものだ。  
でも、靴下まで愛液が伝う細い脚はガクガクと震えていて、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。  
そろそろ限界が近いんだろう。  
 
やっぱりこの子は必死で堪えている姿が一番可愛いな、なんて思いながら  
僕はおもむろに中指を彼女のスリットへあてがい、ゆっくりと中に差し込んでいく。  
 
「ひっ!? あ、だ、だめぇ……!」  
今までに散々馴らされた彼女のナカは未だにキツいけれど、それでも難なく僕の指を飲み込んでゆく。  
キュウキュウと締め付ける内壁を容赦なく掻き回してやると、小さな身体はガタガタと大きく震えだす。  
まるで壊れた玩具みたいだ。  
 
「ひゃっ…! あぅっ わ、もう私……っくきゃあああんっ!」  
子犬のような可愛らしい声を上げて、細身の体躯が飛び跳ねる。  
そのまま彼女は糸の切れたマリオネットの如く、畳に崩れ落ちてしまった。  
言いつけを守って懸命にスカートを握り締めていた両手も、絶頂の電流には耐えられなかったようだ。  
 
「はっ……、ぁ………ふ」  
よっぽど深くイってしまったんだろう。見開かれた瞳からは半ば光が失われている。  
黒髪を汗で頬に張り付かせて肩で息をする姿は、幼いながら中々に扇情的じゃないか。  
蜜でべっとりと濡れた中指を舐めてみると、濃厚な彼女の味が口に広がった。  
 
「少し弄られただけで簡単に達してしまって…… どうやら志乃お嬢様には我慢が足りていないようだ。  
 やはり、再度のお仕置きが必要でしょうか?」  
「………!」  
瞬間、彼女の瞳に失われていた光が戻り、僕の顔に焦点を合わせる。  
その顔は絶望的な表情で僕を見上げていた。  
 
「ぃや…… お願いです、から…っ お仕置きだけは……!」  
今のお嬢様は過剰なくらい『お仕置き』という言葉に対して敏感だ。  
以前に玩具を仕込んだままご両親とのお食事に付き合わせた事が、余程堪えているのだろうか?  
見れば、黒いドレスに包まれた細い肩は小刻みに震えている。  
それ程までに僕の『お仕置き』を恐れているんだろう。  
恐怖に震えて目を見開くお嬢様は大変可愛らしいけれど……僕はまだ彼女との遊びを止めるつもりは無い。  
 
執事服のポケットから出したのはピンク色のオモチャ。いわゆるローターだ。  
僕はそれを、だらしなく涎を垂れ流すお嬢様のスリットに差し入れると、リモコンのスイッチを『弱』にした。  
 
「んんぅっ……!」  
僕の悪戯に抵抗のそぶりを見せなかった彼女も、ローターの振動には反応せざるを得ない。  
僕に開発された躯は今ではすっかり敏感だけれど、この程度の刺激ではイくことは出来ないだろう。  
暫くは意地悪な刺激に身体を疼かせていてもらおう。  
 
「さあ志乃お嬢様。このまま寝てしまっては、風邪をひかれてしまいますよ?」  
イったまま力が入らない彼女の身体を抱き起こしてあげる。  
畳にぺたんと座る格好になると、秘部を淫らに責める玩具は豪奢なスカートに隠されてしまった。  
だが彼女の躯を支配するリモコンは未だ僕の手の中だ。  
今度はどんな仕打ちを受けるか分からず戸惑った表情の嬢様に、僕は言い聞かせるようにして話しかける。  
 
「お嬢様の我慢弱さ、それに先程の粗相は、お仕置きをする理由として十分なものです。  
 しかし… それではお嬢様が少々可哀相です。だからもう一度、チャンスを差し上げましょう」  
要するにまだ休ませてはあげない、という事だ。  
脚をもじもじとさせながらも恐る恐る見上げるお嬢様を前に、僕はスラックスのチャックを引き下げる。  
下着を押しのけて布の隙間から屹立する肉棒に、お嬢様の切れ長な瞳が釘付けになる。  
 
「ご奉仕して頂きましょうか。出来るだけ丁寧に。もし歯を立てたり、零したりしたら… 分かりますね?」  
冷徹な僕の命令に志乃お嬢様はひときわ瞳を潤ませ………  
「は――ぃ… ご奉仕、致します……」  
服従の言葉を口にした。  
 
腕を伸ばし、お嬢様はまるで腫れ物を扱うかのような手つきで僕のモノに触れる。  
そして膝立ちになって顔を近づけ、おずおずと伸ばした舌をチロチロと絡め始めた。  
彼女にはもう何度も仕込んでいるのに、その仕草は未だに控えめだ。  
まあ、がっつくでも無い、どこか上品な上目遣いはそそるモノがあるけれど……  
けれど、頬を染めて不浄な陰器に舌を伸ばす少女の表情は、もはや気品高い令嬢のそれでは無かった。  
 
「以前にも教えたでしょう。舌だけでなく、口全体を使ってご奉仕して御覧なさい?」  
「んちゅっ――ぅ は、はい……」  
僕に命じられ、彼女はやっと竿の先を口に含もうとする。  
 
お嬢様が本当に苦手なのは、この行為だ。  
小さくて可愛らしい口では、怒張した僕のモノを満足に頬張ることすら儘ならない。  
せいぜい先端をやっと咥えるのが精一杯だ。  
それでも彼女は必死になって僕に奉仕しようとする。  
 
「んぐっ……、ぅん、……っふく、んんっ…!」  
彼女はいつも以上に無理をして、ペニスの中程までを口に押し込もうとしていた。  
おそらく舌を動かす隙間も無いのだろう、小さな咥内はけれど、僕にもどかしい快感を与えてくれる。  
苦しさから閉じた目尻に浮かぶ涙の粒に、ますます僕の興奮は増幅する一方だ。  
 
これだけ懸命な少女に対し、埋め込まれたローターは休むことなく甘い責め苦を与え続ける。  
無意識なのだろう、見れば彼女は腰をくねらせ、より強い刺激を得ようとしていた。  
その期待に応えて差し上げたくて、僕はお嬢様の胸元を服の上からまさぐってみる。  
相変わらず膨らむ気配すら感じられない胸郭だけど、目的のそれは直ぐに見つかった。  
ワンピースの布地を押し上げる、二つの突起。  
散々発情させられて勃ち上がった乳首は、もはや一枚だけの布では隠し切れない。  
相変わらずこのお嬢様は胸が弱い。  
敏感になったソコは少し触るだけで電流が走るのだろう、彼女は快感に身を悶えさせる。  
 
「嫌々にこんな事をさせられて、未熟な乳首を一人前に勃たせて……  
 無理矢理にされて悦ぶような浅ましい娘に教育して差し上げた覚えはありませんよ?」  
「んうぅ、ぐっ、んんーっ!」  
勿論分かっていて言っているのだ。  
いつからだろうか? この小さな主人が被虐の快楽に溺れるようになってしまったのは。  
口には出さないものの、確かに彼女は僕に対して容赦の無いサディズムを求めていて……  
まあ、その求めに嬉々として応じてしまう僕の方にこそ問題があるのかもしれない。  
 
こうして役割を『演じる』ことは、互いの歪んだ欲望を満たすためにはお誂え向きなようだった。  
 
喉の奥を続けざまに突かれ、彼女は今や涙を流しながら必死に僕のモノを頬張っていた。  
愛らしい少女の健気で懸命な奉仕に、僕の方もそろそろ限界に近い。  
下腹部の奥から熱いものが噴出しそうになるのが分かる。  
僕は小さな頭を両手で押さえ、彼女が決して逃げられ得ないように固定する。  
お嬢様もそれに逆らおうとはしない。僕の吐き出す欲望を素直に受け入れようとしていた。  
 
「――っ! お嬢様、出しますよ…!」  
言い終わらない内に、竿先から迸る感覚が下半身に広がる。  
開放感に彼女を拘束する手を緩めると、白い喉が上下に動いて液体を嚥下する様子が見て取れた。  
『一滴も零さない様に』と、彼女には普段から厳しく言付けている。  
彼女は今、必死に僕の命令を守っているのだ。  
けれど……  
 
「――ッ! ぐっ、ぅ… げほっ、けほ……っ!」  
僕の吐き出した粘液があまりに多いのか、まだ気管の未成熟なお嬢様は喉をつかえさせてしまったようだ。  
僕のモノから咄嗟に口を離し、苦しそうにむせ込み始めてしまう。  
口には小さな手を当てていたけれど、その隙間からは飲み込みかけた白濁液が飛び散り、  
彼女のワンピースのみならず僕のスラックスまでを汚してしまった。  
 
「っほ―― ぁ…ごめ、ごめんなさっ、けほ…っ く……」  
辛そうにしながらも、お嬢様は何とか僕に謝ろうとしている。  
喉の奥までを乱暴に扱われたからか、その声は半ば掠れていた。  
たぶん……お仕置きが怖いんじゃない。僕の命令に従えなかったことが申し訳ないのだろう。  
ズボンのチャックを閉めながらも、そんな一途なお嬢様を見ていると、僕も少しだけ……胸が痛くなって。  
 
「……志乃お嬢様っ!」  
僕は咄嗟にしゃがみこみ、腕を伸ばして彼女の背中を優しくさすってあげていた。  
そのまま自分の服が汚れるのも構わず抱きしめる。  
柔らかな感触。彼女の上品な香りが、淡く鼻腔をくすぐる。  
言葉は必要無い。触れる肌の温もりだけで僕らは語り合うことが出来た。  
 
暫く互いの温かさを共有していると、彼女の苦しそうな咳き込みも次第に収まってきた。  
大分落ち着いてくれた所で、出来る限り穏やかに、声をかける。  
 
「大丈夫ですか? 言いつけを守るのも大切ですが、無理をするのも良くありませんよ。  
 健やかな貴女あっての僕なのですから」  
「あ……ぅ はい。ごめんなさい…」  
こんなに華奢な身体で、時折このお嬢様は僕のため、とんでもない無理をしすぎてしまう。  
きっと僕も彼女が愛しくて仕方ないからこそ、その無理を止めてあげられない。  
だから―――優しく言いつける。  
 
「しかし、『お仕置き』には変わりありません。お洋服を汚した罰ですよ。  
 お嬢様には明日からまた暫くの間、下着を着けずに過ごして頂きます」  
僕は、手にしたリモコンのスイッチを『強』にした。  
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 
翌朝、月曜日。  
 
「志乃ちゃん、今日は何時頃に帰って来れそう?」  
「……たぶん7時頃」  
二人、他愛も無い会話をしながらちゃぶ台を囲んで朝食の最中だ。  
時刻は7時半。  
当然のように学校の授業が待っている志乃ちゃんと比べ、午後から大学に出ればいい僕は楽なもんだ。  
こういう日は出来るだけ、開いた時間を志乃ちゃんの為に使ってあげる事にしている。  
朝食作りから食器洗い、着替えの準備まで。さながら志乃ちゃんの身の回りの世話をする従者みたいだ。  
 
「ごちそうさま」  
食事中もモジモジと落ち着かなかった志乃ちゃん。  
立ち上がって学校の準備を始めるけれど、その仕草も何処かぎこちない。  
片手でスカートの後ろを押さえながら動き回る志乃ちゃんを、僕はにやけながら見ていた。  
 
もちろん、僕の言いつけたお仕置きが原因だ。  
下着の類を禁じられた志乃ちゃんは今、  
素肌の上に黒いセーラー服の上下だけしか身に付けることを許されていない。  
上半身に着けるスリップやキャミソールだって、もちろん不許可に決まっている。  
 
スカート丈も事あるごとに短くさせている。  
昔は膝丈まであったスカートも、今では白い太ももを半ばまで露出させていた。  
 
「はい、靴下」  
「…………」  
せっかく学校指定のソックスを取ってあげても、受け取る彼女は無言。  
僕に視線を合わせてもくれない。  
……けれど、背中を向けてそそくさとソックスを身に付ける志乃ちゃんすら、僕は堪らなく愛しくて。  
後ろから抱きしめたい衝動を必死で堪え、せめてかけるのは言葉だけにしておく。  
 
「周りの人にバレないようにね?」  
「―――っ!!」  
言うか言い終わらないかの内にぐるんっ! と振り返り、凄い形相で睨みつけてくる志乃ちゃん。  
『おまえが言うな』とでも叫びたそうな顔だ。  
けれど、その頬は酷く紅潮していて、僕を見つめる瞳は半ば潤んでいる。  
――ははあ、既にだいぶ余裕が無くなっているな。  
こんな状態で学校に行ったら、どうなってしまうことやら……  
まあ、聡いこの子のことだ。周りに事が露見しないよう、いつも上手くやっているんだろう。  
周囲にスカートの中がバレないように学校生活を送る志乃ちゃんを見れないのが残念なところだ。  
 
一通りの身支度を終えた志乃ちゃんがすっくと立ち上がる。  
そして振り向いた彼女は、何かを言いたそうに… でも言えなさそうに、上目遣いに僕を見やる。  
言いたい言葉を、ちょっとしたプライドが邪魔しているんだろう。  
こんな時は、こっちから声をかけてあげるのが一番だ。  
 
「どうしたの、志乃ちゃん?」  
「ぁの……」  
「ん、どうかした?」  
 
「あの、どこか… 変じゃない?」  
首元まで真っ赤にして言う志乃ちゃん。  
どうやら、彼女なりに外見を気にしていたらしい。  
万が一と言うことが無いよう、恥を忍んで僕に確認を頼みたい、という事だろう。  
志乃ちゃんもやっと人並みの羞恥心を持つことが出来て来たみたいで、何だか僕も嬉しくなってしまう。  
 
「大丈夫、変な所は無いんじゃないかな。いつも通り可愛いよ」  
「…本当?」  
本当だ。  
比較的厚手の黒い布地は、彼女の身体を苛む甘い疼きの症状を、比較的良く隠してくれる。  
傍から見た志乃ちゃんは、可愛くてちょっとスカートの短い、ごく普通の小学生だ。  
彼女からボロを出さない限り、その幼い身に秘めた、淫靡な部分が発覚することは無いだろう。  
 
「……あ、でも、ほっぺたが赤くなっちゃうのは気をつけてね。風邪だと勘違いされちゃう」  
言って、頭を撫でてあげる。  
髪形が崩れないように優しくさすってあげると、彼女は目を細めてとても気持ちよさそうにしてくれる。  
 
「そうだ、こんど大きい鏡を買おうか。やっぱり女の子には必要だよね?」  
「………うん」  
いつも、頭を撫でてあげている間の志乃ちゃんはとても大人しい。  
このまま押し倒してしまいたいけど……それは我慢だ。  
彼女の学業を邪魔してはいけない。  
代わりに、桜色の唇にそっと口づける。  
 
「………っん」  
唇同士が触れ合うだけの、とても穏やかなキス。  
この温もりを貰うお陰で、僕もまた一日頑張ることができる。  
彼女もまた同じだろう。  
 
「さ、もう時間だよ。そろそろ出なくちゃ」  
「うん。大丈夫」  
あまり引きとめても悪いだろう。  
赤いランドセルを背負った志乃ちゃんを玄関まで見送ることにする。  
けど、最後にちょっとだけ悪戯を。  
 
後ろから志乃ちゃんの細い胸元をランドセルごと抱きしめる。  
少しだけ身を強張らせるけれど、決して嫌がる素振りを見せない彼女の耳許に口を近づけ、囁く。  
 
「今日も存分に楽しんで来て下さいね、お嬢様」  
「…………ばか」  
返ってきたのは、ほぼ図星とも取れる口調の言葉。  
それが聴けただけで僕は満足だった。  
 
拘束する腕を解いて彼女を送り出す。  
開いたドアから入り込む冬の風に、濡れ羽色の黒髪がなびいて広がった。  
 
「……行ってきます」  
「うん、行ってらっしゃい」  
 
未だ恥ずかしそうに頬を染めたままの少女に、優しく見送りの声をかける。  
名残惜しそうに部屋のドアを閉める彼女に、僕は最後まで笑いかけてあげていた。  
 
階段を下りる小さな足音が聞こえなくなると、辺りに響くのは小鳥の鳴き声だけだ。  
一人になると、押し込めたはずの眠気が急にぶり返して来るから困ったものだ。  
あくびをかみ殺しながら食器を洗い終わったが早いか、出したままだった布団に倒れこむ。  
午後の授業までもう一眠りできる筈だ。  
 
横になって考えるのは、やっぱり彼女のことばかり。  
さっき抱きしめた時、僕の両手はセーラー服越しに自己を主張する突起をしっかり確認する事ができた。  
――彼女もまた、この『お仕置き』を愉しんでいる。嫌がる振りをするのは、そんな自分が怖いからだ。  
人一倍賢い彼女も、僕にだけは沸き上がる期待を隠し通すことは出来ない。  
今日も一日、志乃ちゃんは露出の快感に身を焦がしながら、密かな興奮に蜜を滲ませるんだろう。  
 
――ああ、次は何をしようかな。  
なんだか最近そればかり考えているような気がする。  
どうやって責めたら彼女は感じてくれるのか。何をして苛めれば彼女を悦ばせてあげられるか。  
ひょっとしたら、それを叶える事だけが僕の存在意義なのかもしれない。  
志乃ちゃんを満たしてあげる事ができれば、僕はそれだけでいいんだ。  
 
そうだ。今度の日曜は一緒に姿見を買いに行こうか。  
出来るだけ鏡面が大きくて、でも場所を取らないのがいいな。  
お店に行って、二人、じっくりと品物を選びながら。一緒に愉しもう。  
そして、買ってきた姿見で君が自分自身を見つめられるように。  
きっと……悦んでくれるよね?  
 
 
「……全ては貴女の望むままに。志乃お嬢様」  
 
まどろみの中でふと口をついた戯れ言。  
それこそ、僕の望む全てだったのかもしれない。  
 
 

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