元の主人を失った住処。  
一通り家宅捜索の済んだ大垣の家の鍵を、真白は持っていた。  
 
「ただいま」  
誰に言うでもなく口にし、部屋の中に上がりこむ。  
彼女の言葉に応えてくれる人は、もうそこには居なかった。  
 
「………ふう」  
制服が皺になるのも気にせず、ベッドに横になる。  
購入して何年経ったのだろうか。くたびれたスプリングがギシリ、と鳴った。  
 
かつて、ほんの一年前まで、この部屋には2人の男女がいた。  
だけど、今は一人。彼はもう行ってしまった。  
それは二人、合意の上でのことだったのだろう。  
彼自身の死に互いが納得している、そう思っていた。  
 
けれど真白には一つだけ、誤算があった。  
 
 
身体が疼くのだ。  
 
 
ひょっとして彼は最初から計算づくだったのだろうか?  
大垣は死して尚、真白の身体を解放してくれなかった。  
幼い頃からの調教が、彼女に淫らな従順さを植え付けていた。  
彼の手によって快楽を刻み込まれた躯は、まるで呪縛のように主人を求めてやまない。  
 
「はぁ… ん…っく」  
青いスカートの中に手を這わせる。  
既に熱く火照ったソコは、ショーツを履いていない。  
『下着を着けずに生活しろ』という大垣の命令を、真白は未だ忠実に守っていた。  
 
ポケットから出したハンカチを口にかみ締め、真白は声を押し殺す。  
そこには居る筈の無い誰か――彼に、声を聴かれてしまう気がしたのだ。  
幼い頃から開発されて敏感になった身体は、少しの刺激ですぐに熱を孕んで発情しだす。  
奥から流れ出した蜜を指にからめ、既に綻び出した秘所の上を何度も往復させる。  
 
ブラを着けていない胸の先は制服の布を押し上げ、その存在を主張していた。  
ブラウスの裾から空いた左手を侵入させ、歳相応な、成長途中の膨らみをやわやわと揉み込める。  
白い布がはだけ、細い腰と形の良い臍が露になった。  
 
(良く… 彼の前でもっ、こうやって…ぅ、実演させられましたっけ、ねっ…!)  
調教の成果か、真白の指は巧みに自身へと快楽を送り込む。  
全てが大垣に教え込まされた事だ。  
細い指を3本にまとめて膣の中へゆっくりと沈めていく。  
既に準備は整っていた。刺激を待ちわびていた膣内は白い指を強く締め付ける。  
 
「んむっ……う、くぅんっ!」  
ベッドの上で細い躯が弾む。古びたスプリングがギシギシと音を立てた。  
胸の先がブラウスに擦れ、チリチリと切ない快感を生む。  
それだけでは物足りなくて、胸の膨らみ全体を左手で痛い位に揉みしだいた。  
膣の奥まで到達した指で思い切りナカを掻き回す。  
途端、鋭い電撃のような快感が全身を暴れまわった。  
 
「ぅあっ!、あぁん、ひゃンッ!」  
一際大きく身体が跳ねる。  
調教済みの幼い身体は、いとも簡単に絶頂へ達してしまった。  
快感に力が入らなくなった口から、水分を吸って重くなったハンカチが落ちる。  
 
「はっ、はっ… ふ――ぁ」  
絶頂の余韻に、身体の痙攣が続く。  
つぅ――、口許から唾液が筋を引いた。  
普段は凛とした瞳も今は快楽に蕩け、焦点を合わせていなかった。  
 
朦朧とした頭に浮かぶのは――彼らだ。  
何時か自分たちが来たのと同じ道を真っ直ぐに歩む二人。  
真白からすれば、彼と彼女が今、どのような関係なのかは一目瞭然だ。  
きっと彼女も今は快楽と欲望に溺れている頃だろう。  
 
けれど、もうすぐ…… 選択の時が来る。  
自分と同じ過ちを繰り返すかどうかは、彼女次第だ。  
 
「さて、貴女なら何を選択するんでしょう? …支倉さん」  
 
愛液に濡れた指をそっと舐めとる。  
自分のそれは、どこか悲しい味がした。  
 

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