二人で夕食の材料を買った帰り道。
真白ちゃんは僕らの前に現れた。
「こんにちは。相変わらずお仲の宜しいようですね。
小学生を侍らせて、デート中だったでしょうか?」
「君こそ… 相変わらず突拍子も無いことを言うね」
挨拶代わりとばかり僕に攻撃を仕掛ける真白ちゃんと、それを何とかかわす僕。
けど、僕の傍らの志乃ちゃんは押し黙ったままだ。
真白ちゃんと目も合わせようとしない。
まったく、この子は…
「ほら、志乃ちゃん。挨拶は?」
「…………ん」
脇目に真白ちゃんをちらりと見て、それだけ。
この子の真白ちゃん嫌いは筋金入りのようだ。
「嫌われてしまっているようですね。悲しいです…」
そう言いながらも、全然悲しそうじゃない真白ちゃん。
でも、やっぱりこのままじゃ良くないだろう。
「志乃ちゃん? 会った人には挨拶しないとね?」
「………………」
やんわりと言ってあげるが、とうとう僕からも視線を逸らしてしまう。
これは…お仕置きするしか無いかなあ…
ため息と一緒に、僕はポケットの中のスイッチをONにした。
瞬間、志乃ちゃんの小さな身体が面白い位に跳ね上がる。
「あ…っ く、ぅ………!」
細い両腕で自分の身体を抱き、たたらを踏む彼女。
みるみる内に顔は赤くなっていく。
「志乃ちゃん、ほら」
促してあげるけど、いやいやと頭をふる志乃ちゃん。
…強情だな。
僕はコントローラーのスイッチを『強』にする。
「きゃっふ……ん!」
志乃ちゃんの目が思い切り見開かれたと思うと、彼女は地面に膝をついてしまった。
軽くイっちゃったのかな?
でも、とうとう志乃ちゃんは陥落しなかった。
「……お楽しみのようですね」
「保護者として躾けはちゃんとしないとさ。…ごめんね、真白ちゃん」
僕らのやり取りを見ていた真白ちゃんの目は爛々と輝いている。
彼女もなかなか好き者のようだ。
「ふふっ、構いませんよ。良かったら… 今度私にも『躾け』、参加させてください」
「そうだね、考えておくよ」
真白ちゃんは満足げに僕らの前から去っていった。
結局、志乃ちゃんに挨拶させることはできなかったな…
この子を礼儀正しく育てるための躾けは、まだまだ欠かせないみたいだ。
「ほら志乃ちゃん、帰ろう。家でお仕置きの続きだ」
「あ、んぅ」
スイッチは入ったままだ。
膝立ちで震える志乃ちゃんの腕を取り、僕らは歩き出す。
志乃ちゃんを立派に育て上げるため、僕の苦労はいつも絶えない。