「なるほど、貴方が節約をしようとする理由はわかりました。  
 でも、そのために体を壊したら元も子も無いと思うんですが」  
 
「はは、それと同じ事を志乃ちゃんにも言われたよ」  
 
――12月も半ばに差し掛かった頃、ついに僕は風邪を引いてしまった。  
さすがに二人抱きしめ暖めあうだけではまずかったのだろう。実際、志乃ちゃんが帰ってくるまでは  
着込むくらいでしか寒さを凌ぐ方法が思いつかなかったのだから。  
 
で、僕はアパートで寝込んでいたのだが、なぜか真白ちゃんがやってきた。  
学校をサボって遊びに来たというので追い返そうとしたのだけど、勢いで押し切られてしまった。  
看病してくれるというので仕方なく、僕はその好意に甘えることにしたのだ。  
 
「それに支倉さんの為に節約していて、実現するまで理由を明かさないなら、  
 節約していること自体を内緒にするべきとも思いますね。  
 目標額までもうしばらくかかりそうですから、そのうち支倉さんに感づかれてしまいますよ?」  
 
「いやぁ、さすがにそれは無い……と思う」  
 
「どうでしょうね?聞けば貴方は相当な大根役者だとか。…っと、もうすぐお昼ですね。  
 昼食を作ってあげます……って、食材がほとんど何も無いですね。買ってきます」  
 
「ああ…うん、ありがとう。財布は、えっと……」  
 
「お金なら持ってますよ。気にしないでください」  
 
「ええ!?そんなの悪いよ。看病までしてもらってるのに」  
 
「看病してあげてるからこそ、ですよ。納得できないというのなら、そうですね…  
 そうだ、いままでの食べ物代の返済と思ってください。ほら、ファミレスから逃げる時とかの」  
 
「え、あの時のことは気づいてやってたの?」  
 
「もちろんですよ。というか気づかない方がどうかしてます。  
 その様子だといざ逃げる時まで気づいてなかったようですが」  
 
「う……」  
 
「図星ですね?まあ、それも貴方らしいのかもしれませんね。では行ってきます」  
 
「…行ってらっしゃい」  
 
――――――――――――――  
 
「ただいま帰りました〜」  
 
すこしうとうとしていたが真白ちゃんの声で一気に覚醒する。  
 
「さて、今から昼食を作りますが、病人食がいいですか?それとも普通の?」  
 
「普通のがいいかな。そこまで弱ってもないしね」  
 
「わかりました。それでは鍋にしますね」  
 
「うん。ありがとうね、わざわざ」  
 
「だから気にしないで下さい。私が好きでやってることなんですから」  
 
そして台所からトントンと小気味のいい包丁の音が聞こえてくる。  
自分以外の人間が台所で料理に立つのを始めて見た気がした。  
 
またしばらくしていい香りが漂い始めた頃、真白ちゃんがこちらにやって来た。  
 
「ふう…カセットコンロでもあればこっちでもできたんですが、仕方ないですね」  
 
「見てなくていいの?」  
 
「あとは少し煮込むだけです、火も弱めですし。あとはもう一つのお世話をさせていただきますね?」  
 
「もう一つのお世話…?――ってなにするの真白ちゃん!?」  
真白ちゃんは僕が寝ている布団に横から潜りこんできたのだ。それも頭から!  
 
「なにって…もう大体わかってるんじゃありませんか?下の世話ですよシモの」  
 
「じゃあなんでそんなことっ……!」  
 
「それもですよ、好きでやってるんです。あと今回のは単純に興味もありますけどね」  
言いながら、僕のズボンとトランクスを一気にずり下げる。  
 
「日々募る性欲を小学生である支倉さんにぶつけるわけにはいかないとか思ってそうですしね。  
 実際、この前久しぶりに来てみたら二人してがっちり抱き合って、でも致してなくて、  
 貴方は真っ赤な顔で辛そうな顔してましたし。それなりに溜まってるでしょう?  
 それに、男性は体力が落ちてるときは精力が高まるという話を小耳に挟んだもので」  
 
「そんな話いったいどこで……っ」  
真白ちゃんは僕の、まだ小さいままのモノを弄り始めた。  
 
「むう、まだ勝手がよくわかりませんね。さあさっさと大きくしてください、  
 大きくなったら口でしゃぶったりしてあげますよ」  
 
そう聞いて僕は想像してしまった、大きくなった僕のモノをその口にくわえる真白ちゃんを。  
真白ちゃんは美少女なのだ。そんな子のフェラを想像してあっけなく勃起してしまった。  
 
「おお…それじゃあ約束どおりしゃぶってあげますね。―――あむっ…ちゅぱ……ちゅ……」  
 
「っつ!…くぅっ……」  
 
「…ちゅぷ……ふふっ、どうやら気持ち良いようですね。先っぽからぬるぬるしたものが出てきました。  
 カウパー…って言うんでしたっけ?なによりです……はむ…れろぉ……」  
 
本当ならやめさせるべきなんだろうけど、溜まっていたのは事実で、  
気持ち良いうえに風邪でそれなりにだるさを感じる体では、抗うことができなかった。  
 
「ちゅ……そうだ…ねぇ、想像してみてくださいよ。今のこの行為を、私ではなく支倉さんがする様子を。  
 この逞しいモノであの小さな口を犯すんですよ、貴方が。きっと、一生懸命奉仕してくれますよ」  
 
そしてまた想像してしまう。  
この前、酒に酔った志乃ちゃんに体中を舐めまわされたこともあり舌使いまでリアルに想像できてしまった。  
真白ちゃんの言うように、少し苦しそうに、でも一生懸命に僕のモノを咥える志乃ちゃんを…。  
 
「…れろ、ちゅぱぁ……うふふ、さすがの支倉さん効果ですね、さっきより大きくなりました。  
 さて、もうそろそろフィニッシュでしょうか?だいぶ大きく脈打ってるんですが」  
 
「…っ、うん…そろそ、ろ…かな…ぅうっ……」  
 
「あむ…ずずっ……わかりました。鍋も出来上がった頃でしょうし、そのまま私の口に出してください。  
 あむっ…ちゅぷ……ちゅ…ちゅ…れる……んふぅっ…じゅ、ぢゅぱ……」  
 
「ふぁあっ…っ、出っっ……!!」  
その瞬間、真白ちゃんの口の中に射精していた。普段自分で処理したときより多く出た気がする。  
 
「…これは……たひかに、おいひいとひえる、ようなものでは、あいまへんね。(ごくん)…  
 でも…まあ、せっかくだから飲んでみました。…うぅ、喉が粘つきます……」  
 
「…ふぅ、ありがとう。でも無理に口に出させること無かったのに…」  
 
「何度も言わせないで下さいね?さて、鍋も出来上がった頃でしょうし、こたつで待っていてください」  
 
――――――――――――――  
 
そうして二人で昼食をとる。鍋は台所に、それぞれ器によそったものを食べる。  
じっくり煮込んだだけあって味が染みておいしかった。  
ただ、真白ちゃんはよそったあとで自分のには何か入れたようで、赤い色をしていた。キムチ臭もする。  
 
「真白ちゃんって…辛党?」  
 
「この程度で辛党を名乗ったら世の本当の辛党が怒りますよ。たまに食べたくなって、たまたまそれが  
 今日だっただけです。あとは、精液の臭いを隠したかったとか。…貴方も食べます?」  
 
「いや、僕は遠慮しておくよ、このままでも十分おいしいしね。  
 っていうか後者が本当の理由な気がするんだけど…。にしても、今日の真白ちゃんやたら強引だったから、  
 鍋のことが無ければあのまま本番まで行きそうで怖かったよ」  
 
「おや、私とそこまでの関係をお望みで?鍋なんて火を止めれば済むことですし、  
 私はそれでも良かったんですが、貴方まだ童貞でしょう?  
 貴方の童貞を奪って支倉さんに狙われるのは勘弁ですからね」  
 
「たとえ僕が童貞でなくなったとして、志乃ちゃんがそれに気づくことは無いと思うけど…  
 それに狙うってどういう…?」  
 
「童貞なのは認めるんですね。私はまだここに遊びに来たいんです。  
 今でさえ貴方は私の目を見れないくらいに照れているのに、本番までしたらどうなることやら、  
 それで私が遊びに来たら支倉さんには一発でなにかあったと思われますよ。  
 彼女はあれで独占欲が強そうですから、彼の童貞は私が奪うんだ、くらい思ってるかもしれませんし。  
 貴方と私が話しているのも快く思っていないようですから、私が童貞を奪ったと知った日には…。  
 やっぱり狙われそうです。あの鋭い瞳で睨まれながら『月夜ばかりと思うなよ』。震えが止まりませんね」  
 
「志乃ちゃんの怒った視線も余裕で受け流せるくせによく言うよ…」  
 
「支倉さんの本気で怒った目も見てみたいですね…。あ、おかわりいります?」  
 
「…なんか眠くなってきたから……うん、ごちそうさま。おいしかったよ、ありがとう。  
 ごめん、ちょっと寝るね?」  
 
「どうぞ。いろいろあって疲れたんでしょう、おやすみなさい」  
 
『この疲れの原因は君じゃないかな』、と言えたのかもわからないまま、僕は眠りに落ちた。  
 
「―――貴方にお出ししたほうには特別な隠し味があったんです。睡眠薬と言う名の、ね。  
 それでは失礼して…」  
 
――――――――――――――  
 
学校を終え、彼のアパートに帰ると彼の隣で涼風真白が寝ていた。  
 
「なに…やってるの?」  
そこは私の特等席なのに、とはさすがに言えなかった。  
 
「あ、支倉さん、お帰りなさい。おじゃましてます。見てのとおり、添い寝ですが」  
 
「質問を変える。何故、ここにいるの?…あとこのキムチ臭についても」  
 
「彼の看病をして、昼食も作ってあげました。その際、私用にキムチ風のものを作りました」  
 
「そう、わかった。彼の看病をしてくれたことについては感謝する。  
 でも、片付け等と、あとの看病は私がするから、貴女はもう帰って」  
 
「もう少しこのままでいさせてください。最近人の温もりが恋しくてですね…」  
 
「そんなに近くにいると風邪を移してしまうかもしれない。そうなると悪いから、早く」  
 
「そんなこと言ったらここに住んでる支倉さんも風邪を引いてしまうかもしれませんよ?  
 明日はまだ平日ですし学校があるでしょう」  
 
「問題ない。明日から冬季休業に入る。講習も免除してもらった」  
 
「冬休みですか。なんか少し早くないですか?」  
 
「インフルエンザが流行してるから、その対策のため」  
 
「…そんなことだろうと思いました。  
 さて、それじゃあ私は帰りますが、支倉さん、今日の夕飯はどうするおつもりで?」  
 
「店屋物で済ますつもり」  
 
「支倉さん、それじゃあ駄目ですよ。弱っている男性には手料理が効くのです。  
 実際、彼は私の料理をおいしいおいしいといって食べてくれました。もう少しアタックをかければ  
 もう体を許してくれそうな勢いでしたよ」  
 
「…貴女の指図は受けない。だからさっさと出て行って」  
 
「おおこわいこわい。馬に蹴られたくないので退散しますね。さようなら〜」  
 
全く怖がった様子も無く、涼風真白はようやく出て行った。ふと、真白の言っていたことを反芻する。  
 
(弱っている男には、手料理…)  
 
自身がほとんど恋愛事の知識を持っていないことに改めて気づく。  
このままではいつか本当に彼をアレに盗られてしまうかもしれない。  
アレの言葉に従うのは癪だが、彼の望みは『私が普通の女の子になる』事。  
ここはひとつ、彼のために、盗られないために…普通の女の子らしく、料理を作ってあげるべきだと思った。  
 
――――――――――――――  
 
目が覚めると、目の前に志乃ちゃんの顔があった。  
 
「あれ、志乃ちゃん、おかえり。…真白ちゃんがいたはずなんだけど、もしかして帰った?」  
 
「(こくり)そろそろ夜だからと言って帰っていった」  
 
「うわ、ほんとにもう夜だ。ごめん志乃ちゃん、急いで夕ごはんの準備するね?」  
 
「その必要は無い。……私が用意したから」  
 
「え?…あ、ほんとだ。ありがとう志乃ちゃん。でも料理なんて初めてでしょ?  
 起こしてくれたらせめて手伝ったのに」  
 
「貴方は風邪を治すことを最優先にするべき。それに、ぐっすり眠っていて起こせそうに無かった」  
 
「それは…ますますありがとう。それじゃあ記念すべき志乃ちゃんの初手料理、味わって頂くよ」  
 
志乃ちゃんが作ったのは、ドリアと味噌汁。妙な組み合わせだったが、それでも嬉しかった。  
志乃ちゃんの通う進学校は家庭科は無かったはずだから、料理本を見ながら必死で作ったのだろう。  
彼女は器用だから、怪我をしたり、あわてたりする様子は想像できないけどね。  
 
「……どう?味見はしたけど、貴方の好みに合うかどうかは…分からないから」  
 
「心配しないで。初めてにしては上出来だよ。うん、このドリアもお味噌汁もとってもおいしいよ」  
 
「そう…良かった……」  
 
志乃ちゃんは心底安堵したようにつぶやいた。  
 
「志乃ちゃんは器用だし、初めての料理でこれだけ出来るんだから、もっと何回も作ってれば、  
 きっとすぐに僕なんか追い越されちゃうね。中学校は僕が通ってたのにするんでしょ?  
 そっちは家庭科の授業があるから、今のうちにいろいろ作ってみて覚えようよ」  
 
「貴方が…教えてくれるなら」  
 
「よぅし。じゃあ明日から頑張ろうね!」  
 
「うん…」  
 
それから毎日、志乃ちゃんはエプロンをつけて僕と一緒に料理をするようになったのだった。  
 
 
おわり  
 

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