志乃ちゃんの希望を通した。幼なじみヒロインルートに入る。  
「あんたなあ…。」  
先輩は呆れているようだった。僕は何かしてしまったのだろうか。  
「まあ、既定路線ということですね。嫉妬はよくないですよ?」  
「ちゃうわ!」  
真白ちゃんの言葉に先輩が反発する。  
その顔は赤く染まっているように見えて不覚にも「可愛いな。」なんて思ってしまった。  
背中を悪寒が走り抜けたのはそのときだった。僕の背中に鋭い視線が突き刺さっている。  
そしてその方向には一人しか…僕の大切な女の子しかいない。  
志乃ちゃん…なんで怒っているの?  
「そろそろ帰りましょうか。…殺されちゃいますよ。」  
「殺されるって、アホか。」  
先輩も真白ちゃんも笑いながら帰っていったけど、真白ちゃんの笑顔はいつになく嘘くさかった。  
それがむしろ僕には「私は冗談なんて言ってませんよ?」と伝えてきているように感じられた。  
そして部屋には二人が残された。志乃ちゃんの機嫌は幾分よくなっているように見えた。  
どうしたものかと暫く考えてしまったのだけど、志乃ちゃんと二人でエロゲーをやる必要なんてない。そのことにすぐに思い至らなかった自分に苦笑した。  
「志乃ちゃん、とりあえずパソコンは電源落としちゃうけど、どうしようか。」  
宴会でお腹は膨れているし、お茶でも入れてゆっくりするのもいいかもしれない。  
僕はそう思っていたのだけど  
「…いい、続けて。」  
志乃ちゃんの返答は意外なものだった。  
「続けてって…これ?」  
僕はパソコンを指さす。それにこくんと頷く志乃ちゃん。  
…ちょっと状況がよく分からなくなってきた。  
志乃ちゃんと二人でこういったゲームをするのはやっぱり教育上よくないよな、  
と思い説得しようと志乃ちゃんに向き直る。すると志乃ちゃんの漆黒の瞳が僕を捉えた。  
どこか深淵に続いているようなその瞳は志乃ちゃんの真剣さを伝えてきていた。  
それでも僕は何か説得の言葉を探したのだけど、  
途端に真白ちゃんの嘘つきな笑顔が浮かんで怯んでしまった。  
真白ちゃんの意図は分からなかったけど、もしかしたらここまで読んでの呪いだったのかもしれない。  
 
胡座をかいた僕の上に志乃ちゃんが座っている。  
最初はそれぞれ座ってモニターをのぞき込んでいたのだけど、いつの間にかこうなってしまっていた。志乃ちゃんは主人公とヒロインがいちゃつき始めるのを落ち着かない様子で見守っていた。  
とはいってもあくまでも志乃ちゃんにしてはということなので、  
他の人が見たらいつもと変わらないように見えるのだと思うのだけど。  
大変だったのは主人公が他のヒロインと話しているときだった。  
わなわなと震えていたかと思えば、あるときは僕の体をつねり、  
またあるときは僕の顔に非難がましい視線を送ってきた。  
僕が視線で、「何?」と問いかけても小さく溜息をつくような素振りを見せてから  
モニターに向き直るだけである。  
そんな志乃ちゃんの反応もあってか、僕は主人公の八方美人っぷりには辟易し始めていた。  
同時に僕にはこれは出来ないな、とも思う。  
そして…まあそういうゲームだから当然のことなのだけど、  
志乃ちゃんにはまだ早い刺激の強いシーンが挿入される。  
志乃ちゃんは体を堅くして僕の意見を聞き入れないぞ、  
という姿勢を示していたので勝手にパソコンの電源を落とそうとしたのだけど、  
腕を思い切りはたかれた…結構痛かった。  
そういったシーンが進んでいくうちに、僕の下半身が反応し始める。  
そして胡座をかいた僕の上には志乃ちゃんが座っているのである。  
変化はすぐにバレた。  
 
志乃ちゃんは僕に非難の視線を送る、そしてゆっくり立ち上がるとノートパソコンをパタンと閉じた。  
「志乃ちゃん…?」  
あれだけ興味を示していたのにどうしたのだろうか。  
やっぱり気分が悪くなってしまったかな。  
僕はそう思っていたのだけど、志乃ちゃんは全く違うことを話し始めた。  
「…自己投影は所詮自己投影でしかなかった。例えキャラクターでも…許せない。」  
そして、下を向くと表情は見えなくなってしまった。  
具合が悪くなってしまったのだろうか。そう思って近づいた僕の唇を志乃ちゃんが唐突に塞いだ。  
「…ふっ。」  
そうしてゆっくりと体を離す。  
「志乃ちゃん!?」  
志乃ちゃんが僕の言葉を遮って話し始める。  
「…あなたが言いたいことは分かる。でもきっと十年経っても同じことを言うと思う。だから…」  
それで僕の「まだそういうことは早いよ。」という半ば欺瞞染みた言葉は封じられてしまった。  
志乃ちゃんは僕をゆっくりと押し倒すと首筋に舌を這わせながら、  
僕の下半身をまさぐった。そして、僕のモノを取り出すとゆっくりと手でしごき始めた。  
「…んっ、ちゅっ。」  
「志…志乃ちゃん…。」  
「やめて。」という言葉は言葉として発せられることはなかった。  
それはどこかで僕もこんな状況を享受してしまっていたからかもしれない。  
志乃ちゃんは僕の先走りを手のひらにまぶし、竿をまさぐっていたかと思うと、先端を指で刺激した。  
「くっ…。」  
思わず声が漏れる。僕の大切な女の子にこんなことをさせている…そんな状況に酔い始めていた。  
だけど、同時に志乃ちゃんが手慣れているような感じがして僕は少し悲しくなった。  
そんな僕の感情の機微を感じ取ったのだと思う。  
志乃ちゃんはちゅっと名残惜しそうに首筋から唇を話すと喋り始めた。  
「…誤解しないで欲しい。今はインターネットの時代。資料はいくらでもある。それに…」  
そして僕の瞳を見つめて、少し黙っていたかと思うとゆっくりと言い放つ。  
「…あなた意外に興味はない。」  
僕はそれを聞いて頭が真っ白になった。  
そして気がつくと志乃ちゃんを押し倒して唇を奪っていた。  
志乃ちゃんに貪るようなキスを繰り返す。志乃ちゃんは最初こそ戸惑っていたようだったけど、  
僕が大げさに水音を立てるのを繰り返すと最後には舌で応えてくれた。  
「…んっ、ちゅ。ん。」  
それでも羞恥が勝るのか中々声を出してくれない。  
僕は志乃ちゃんの上着をはだけさせると、まだ小さい、それでも自己主張の激しい突起を指で弾いた。  
「…あ。」  
志乃ちゃんの唇から年相応の可愛らしさと女としての艶の混じったような不思議な声が紡ぎ出される。  
でも、まだ足りない。  
僕は志乃ちゃんの乳首にときには指先でつつき、ときには手のひらで転がす  
ような愛撫を続けながらもう片方の手を下半身へと伸ばしていった。  
そしてスカートの中に手を潜り込ませるとショーツの上から志乃ちゃんの割れ目に指を何度もこすりつける。  
「つっ…ふっ…。」  
志乃ちゃんの舌から段々と力が抜けていく。  
僕は更に激しく舌を絡ませることで「駄目だよ?」という意志を伝えながらショーツを脱がして、  
その果実を摘んだ。  
「あんっ…。」  
志乃ちゃんが矯正を漏らす。  
僕はそれに満足していたのだけど、志乃ちゃんは違ったらしい。  
唇を離すと非難がましい眼で僕を睨んでくる。  
だけど、口許はお互いの涎で汚れてしまっていたし、  
頬には端から見ても分かるようなはっきりとした朱が差していて説得力は皆無だった。  
「…じれったい。もう、あなたが欲しい。」  
僕はそれに頷くと、愛撫を止めて志乃ちゃんの脚を開かせた。  
そして、志乃ちゃんの陰部に自信を何度か擦りつけて場所を確かめると一気に突き入れた。  
「…んっ。」  
「志乃ちゃん、大丈夫?」  
志乃ちゃんからは初めての証拠である赤い筋が流れていた。  
当たり前だけど志乃ちゃんは初めてなのだ。痛くないわけがない。  
 
「…大したことない。それより…もっと。」  
志乃ちゃんはそれでもやはり強い娘だった。  
目の端に涙を浮かべながらそう言ったのを確認すると僕はゆっくりと腰の動きを早めていく。  
抜けてしまうギリギリのところまで引っ張って、そして思い切り突き入れる。  
「…もっと、あん。早くても…いい…あ。」  
僕は志乃ちゃんの様子を見ながら速度を調節していたのだけど、  
それで何かのタガが外れてしまった。もっと快感を、志乃ちゃんを感じたくて腰の動きを早めていく。  
志乃ちゃんの中は言ってしまえば当たり前だけどきつかった。  
だけど、お互い潤滑油にはことかかなかったので注挿に支障が出ることはなかった。  
だけど、僕がいくら我慢してもいつか限界は訪れる。  
「志乃ちゃん、もう…!」  
僕が限界を伝えたのと同時に志乃ちゃんの中が蠢き出す。  
そして、志乃ちゃんは何を思ったか僕の腰を脚でがっちりとホールドした。  
「志乃ちゃん…!?」  
「…大丈夫。」  
その言葉と同時に志乃ちゃん自身も腰を動かし始めた。  
「くっ、ふっ…んっ。あんっ。」  
もう隠すことをしない、志乃ちゃんの嬌声に包まれながら僕は決壊した。  
 
翌朝、志乃ちゃんはいつになくご機嫌だった。  
また、その一方で僕は罪悪感に苛まれていた。  
僕はあくまで志乃ちゃんの保護者だったはずなのに…  
それを汚してしまったのはそうそう割り切れるものではない。  
「…私を妻として迎えれば何も問題ないと思う。」  
そんな僕の心情を察してか志乃ちゃんが声を掛けてくれる。  
だけど僕はやっぱり参っていたんだと思う。でなかったら、あんな受け答えはしなかったはずだから。  
「あのね、志乃ちゃん。肉体関係を持ったからといってイコール結婚とは…うっ。」  
志乃ちゃんが怒っていた。  
それはもう、志乃ちゃんとの付き合いに慣れていない人でももしかしたら分かるくらいはっきりと。  
そして僕はそれに対して更に最悪の受け答えをしてしまった。  
「そうだね、志乃ちゃんが僕でいいならね。」  
僕はアハハと我ながら軽薄な笑みを浮かべて言ったのだけど、志乃ちゃんなら実現しかねないことに思い至って頭が痛くなった。  
…まあ、いいか。今、僕の隣には花のような笑顔を浮かべた僕の大事な女の子がいるのだから。  
 
終  
 

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