「――――ちゃん、―――――てよ」  
何や、うるさい  
「――ラちゃん、――――う――」  
もう少し寝かせてぇな  
「キララちゃん、もう時間だよ」  
――――『キララちゃん』?  
「キララちゃんってば!遅刻しちゃうよ!」  
「……馴れっ馴れしいわ!!誰がキララちゃんじゃボケ!」  
「…………また寝ぼけてる、ほら、早く起きて」  
 
目を覚ますと、半裸のあいつと一緒に布団の中にいた。  
「な…………ぁえ?」  
上半身に何も着てないあいつは、いつもの猫っ毛を寝癖でハネさせている。  
「僕が午後からだからって、また一緒に休むとか言わないでよ?小父さんと小母さんに怒られちゃうからね」  
細身の体にそれなりについた筋肉。男の匂いがする。  
布団の中はあいつの体温で暖かい。  
「聞いてるの?キララちゃん」  
けれど、普段ならニヤついてしまうはずのそんな状況に、うちはついていけなかった。  
「ほら、早くシャワー浴びて制服着ようね」  
同じく布団の中にいるうちは、半裸どころか下に至るまで何も着けていなくて。  
「今からご飯作るから、その間にね」  
そして何より、あいつが――――大きい。  
いつもそれに抱かれて眠ることを妄想しているその腕も。  
思い切り飛び込んで抱きしめたいと思うその胸も。  
頭をなでられたいと願ったその手も。  
そのすべてが大きい。  
「…………キララちゃん、大丈夫?」  
いや、違う。違うのだけれど、頭がそれに追いつかない。  
 
「ほら、早くしないと小学校遅れちゃうよ?」  
 
うちが、鴻池キララが――――小さくなっている、という事実に。  
 
 

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