彼を異性として意識し始めたのはいつからだったか。  
彼の匂い、体温、吐息、声色、仕草……彼のあらゆる面に欲情するようになった。  
男性が女性と関係を持つということを示す、『食べる』という表現がある。  
品の無い表現だと思った、けれど実際にこうして彼を想うようになってよく分かる。  
今、風呂上りの彼が目の前にいる。水滴がわずかに付いた上半身を晒して、バスタオルを肩に掛けた服装で。  
 
――――食べてしまいたい。  
 
そう感じてしまうのだ。  
もちろん彼のことは好きだし愛しているが、それすら越えて純粋な欲望が私を支配する。  
食欲に似た単純な衝動。  
押し倒してしまいたい。裸の彼に甘えたい。甘えさせてあげたい。交わりたい。  
馬乗りになって交接したい。  
そんな思いが浮かぶのだ。  
 
今現在のこの無防備な体勢の彼に襲いかかったらどうなるだろうか。  
非常ベルを押したくなる心理というものが少し理解できる気がする。けれど、目の前の彼が放つ魅力はそんなものの比ではないのだ。あぁ、これを、この身体を。彼を。食べたい――――  
「ちょ、志乃ちゃん!いきなり、止めてって!」  
気づくと、背後から彼に抱きついていた。予想以上の温かさ、張りのある皮膚に、その下の筋肉。そして、彼の匂い。雄の匂い。  
広い背中に身体を投げ出し、両腕は彼の首に。  
圧迫されているわけでもないのに鼓動は高鳴り、呼吸は浅くなる。顎がかみ合わない。半開きの口から唾液が流れ出そうになる。  
「もう……何か急に甘えん坊だね。でもちょっと待ってね、水滴付いちゃうから一回離れて」  
この状況にあっても、私が女として欲情しているとも知らずに保護者として私に接する彼。  
今は、このまま。一方通行の思いでいい。  
けれどいつか必ず、女として思いを遂げてみせる。  
今までは、子供や妹として見られるのが癪でならなかったけれど。  
父親としての貴方、兄としての貴方。そしてこれから先、男として、夫としての貴方を独占できると考えれば今のこの時間も決して無駄ではないと、そう思う。  
 
 

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