注意:鬱な展開や闇化が苦手な方は読まない事を推奨します。
とりあえず、前半投下。
あの事件以来、支倉さんの事が気になっていた。
私の知らない世界を生きている。だけど、私の現実を理解できる。そんな不思議な少女。
だけど、どうしたいのか自分でも分からなかった。
友達になりたい? 違う。多分彼女は友達を必要としていない。
じゃあ、何かを教えて欲しい? それも違う。彼女は理解はしても、きっと上手く説明してはくれない。
これが、マセたクラスメートが言うような、恋? もしかしたら、そうかも知れない。私は今まで恋なんてした事が無いから、分からないだけ。
そう考えたら、どうしたら良いか少しだけ分かった気がした。
これが恋だとして、私は何をすれば良い?
支倉さんに告白する? 多分、拒絶される。
じゃあ友達から。それも、支倉さんには通用しない。
問題が解けない時は、間違った答えを消していけば、残った答えが「正解」。
後、残ってるのは……
「突然呼び出して、何?」
何となく不機嫌そうな支倉さん。いきなり、変な場所に呼び出されたからだろうか。
「あのね……」
支倉さんから見えないように、持っていたペットボトルから中身を口に含む。変な味がした。
それを支倉さんに口移ししようとして、あっさりと口を押さえられた。
そのまま鼻もつままれ、私は口に含んだ液体を嚥下してしまった。
「何を飲ませようとしたの?」
首を振った。これが何であるか説明するのが凄く恥ずかしい事に思えたから。
支倉さんは私が持っていたペットボトルを素早く奪うと、それを私の口にねじ込んだ。
少しだけ息を止めて、でも結局飲み込んだ。
「毒?」
「違うっ!」
そんなもの支倉さんに飲ませたいとは思わない。
「……じゃあ何?」
少し悩んで、「素直になる薬」と答えた。インターネットで勧められた時はそう教えられたし、嘘ではないと思う。別の呼び方も知ってるけど。
そう答えた後、急に意識が飛んだ。
気がつくと腕は後ろで固定され、口には布が噛まされていた。
「何を尋問しようとしたか知らないけど、少し頭を冷やした方が良い」
尋問? 何のことだろう?
「自白剤を飲まされそうになるとは思わなかった」
支倉さんはかすかに眉を吊り上げたようだった。
「違う」と叫びたかったけど、布を噛むだけで、言葉にならなかった。
「しばらくしたら戻るから、それまでに言いたい事をまとめておいて」
冷たく言い残すと、支倉さんは踵を返した。
もしかしたら、間違った答えを選んだのかもと思ったけど、多分もう遅い。
二人分飲んだ私が、果たして支倉さんの言ったしばらくに耐えられるのか自信がなかった。
暑かった。身体の奥底から熔岩が湧き上がってくるみたい。
冷たいはずのコンクリートの床に身体を擦り付けても、まるで冷えない。
むしろ、胸の先とかを床に擦り付けてしまう度に火箸を当てられたように熱さが増す。
動けば、熱くなると分かっていても止められない。止まると、今度は鈍い痒みのようなものが襲ってくる。
それは、下半身から広がる。頭が沸いてしまいそうになる。
それから逃れるために熱さを求めた。這うように全身を床にこすりつける。
下半身が凹凸に引っかかった時、頭に電撃が走った。良く分からない感覚。怖かった。
でも、動きは止まらなかった。身体から怖いと感じた心が剥がれてしまったみたいに勝手に動いた。
腕を拘束されていて、良かったかも知れない。手が使えたら、きっと自分でむちゃくちゃにしてしまう。
布を噛まされて、良かったかもしれない。何度も布が千切れそうな位に力を入れている。これが舌だったら、きっと噛み切ってる。
もしかして支倉さん、分かってたのかな。私が何を飲んだのかなんて。
じゃあ、しばらくしたら支倉さんの手で、どうにかしてくれるのかな。
そう考えたら動いちゃいけない気がした。ううん、きっとそう。支倉さんは私が動けないようにしていった。それが答え。
布を噛みしめて、沸き上がりそうな頭を必死に抑える。
支倉さんは私には分からない。だけど、きっと正しいから。
どれくらい経ったか良く分からない。多分もの凄く長いような気がする。時間なんかまともに感じられない位。
足音が聞こえた時、私はやっとかと思った。だけど直ぐに猛烈な違和感を感じた。
1人分の足音とは思えなかった。1人分にしては音が多くてリズムもおかしい。
おかしくなったかと思った頭でこんなに冷静に考えられるものかと、現実逃避しそうになった。
誰だろう。どうなるんだろう。また、頭がぐるぐるとまとまらなくなる。
焦点が合わない目に映ったのは果たして、支倉さんだった。でも良かったと思ったのは一瞬で終わった。
後ろから、中学年くらいの男の人がついてきた。何で? 何をされるの?
「おい、俺は何で呼ばれたんだよ」
それは私も知りたかった。
「何かあったら、無理矢理止めて欲しい」
何か? 何をされるのだろう。
支倉さんは私の口の布を取った。
「もう一度聞く、何を尋問しようとしたの?」
違う。そんなことしようとしてない。私はどんな答えを求められてるの?
「ちょっと待て、様子が妙じゃないか?」
私の方を見て男の人がそう言った。その後、誰も発言しないからか、言葉を続けた。
「俺には一服盛られたようにしか見えないんだが」
その通りだった。でも、支倉さんがそれに気づいてないはずがない。
「一服? 自白剤なら、」
「おい、お前。何を飲んだ?」
こちらに話を振ってきた。何と答えれば良いんだろう。
私が答えに窮しているのに気づいたのか支倉さんの方に向き直る。
「こいつは『何を』飲んだって言ったんだ?」
支倉さんは少し間を空けて、「『素直になる薬』」と私の言葉をなぞった。
「なるほどな。それで、『自白剤』か。お前らしいと言えばそうなのかな。……こいつが飲んだのは『媚薬』だよ。十中八九な」
呆れたような顔になる。私がソレを用意した事にだろうか。気づかない振りをしている支倉さんにだろうか。
「媚薬?」
「知らないのかよ」
支倉さんが知らないはず……
「まあ、じゃなきゃこんな事しないか……」
違う! そんなはずない!
「って、おい! どこ行くんだ!」
支倉さんはいつの間にか歩き出していた。
支倉さんは私が何を飲んだか分かってて、この場所を離れた。
女の子同士でそういう事するのはおかしいって教えようとしてるんだよね。
うん、私も支倉さんが男の子だったらもっと早くこうしてたと思う。
「たく、とりあえず今日は帰れ。後、実力行使は相手見てからにしろ」
そう言いながら、腕の拘束を外す男の人。腕が自由になると同時に、彼に飛びついた。
「何しやがる」
彼は馬乗りになった私の手首を掴んだ。私は頭を近づけて口づけた。
息が上手くできなくて、苦しくて、でもふわふわと良い気分でもあった。
「何しやがる! お、俺のファーストキスが……」
女の子ですら気にするかどうか半々な事を真顔で口走った彼に思わず苦笑した。
「な、何がおかしい!」
彼は威嚇するように地面を叩いた。そのせいで自由になった片手を彼の下半身へ伸ばした。
やはり、と言うべきか、彼は興奮していた。そうならないなら、彼を連れて来るはずがない。
「こんなに正直なのに」
ファスナーを下ろして、男の証を引っ張り出した。
慌てて私の手を掴もうとする彼の手を逆に押さえた。
またキスが出来そうな位に顔を近づけて、言葉を紡いだ。
「キスだけじゃ、ないよ?」
でも、とりあえずはキス。さっきよりも長く、舌を絡めて深く。
よほど驚いたのか掴んでいたもう片方の手も外れた。
その隙を逃さず、自分のスカートの中に手を入れて下着をずらすと、彼とつながった。
充分な湿り気を帯びているにも関わらず削り取られるような感覚。一気に腰を落としたからか、まるで木の杭でも打ち込まれたかのような激痛。
あまりの痛さに笑い声が漏れる。
「おい! 洒落になんねえよ」
彼はそう言うと、私の腰に手をかけ抜こうとする。
支倉さんがお膳立てしてくれたのに、このままじゃ中途半端に終わってしまう。
彼の肩に手をかけるとそれを支えに腰を動かした。
「なっ」
彼は呻きにも似た叫びを上げた。
私はそれを気にしないように、動きを続ける。
やすりか何かで神経を削ぎ落とすような鋭利な痛み。それが私の動きに合わせて幾度となく繰り返す。
でもそれはとてもとてもとても心地よかった。
支倉さんは分かってたんだ。私でも分からない望みが。
今まで知らない場所へと登るような錯覚の中、終わりに近づいた。
私はきっと、こんな風に壊れてしまいたかったんだろう。
笑いながら、腰の動きを速く、そして深くした。
一番奥にぶつかる度、また別の痛みと心地良さを感じる。
「本当に待て、本気でやべえ」
彼のモノが脈打つのを感じた。
だからゆっくりと抜ける直前まで腰を引いて、一気に落とした。
ゆりかごが壊れるんじゃないかと思う位の衝撃。ほんの少し間を空けて、頭に電撃が走った。
それと同時に私の女の子が彼のモノを加えたまま狭まり、ミチミチと壊れそうな音を立てる。
ゆりかごの入り口にキスしたまま彼のモノは欲望を吐き出した。
「な、なぁ。もう良いだろ? 満足だろ?」
泣き出しそうな声で、聞いてくる男の人。本当ならもっと壊れてしまいたかったけど、流石にかわいそうなのかな……
「初めては志乃とヤリたかったんだよ!」
気持ち悪い叫びと同時に、どうするか決めた。気にする必要、ないや。
支倉さんだって女の子だから、いつかはそういう人に出会うはず。だけど、彼だけは絶対に違う。
だから……
肩に乗せた手を首にかける。その後、少しだけ力をいれる。
彼の顔に恐怖が浮かぶ。私の力でどうこう出来るはずないのに。
「選ばしてあげる」
言いながら顔を近づける。それと同時に首を絞める強さを増す。
「首を絞めるのと絞められるの……どっちが好き?」
戸惑った表情になる彼。でも、多分答えは決まってる。
「くそ、『デッドエンドコンプレックス』の関係者かよ」
何を言ってるか分からない。だから、何も言わない。
「死にたがりなら勝手に死んでろよ!」
どんな答えを作ったのか知らないけど彼は激昂した。私の首に手をかけるとそのまま、押し倒した。
床に頭が当たって痛かった。でも、そんな感覚は直ぐに吹き飛んだ。彼が手に力を入れたから。
それにしても下手だなあ。血管まで押さえてる。これじゃあ直ぐに意識が飛んじゃうよ。
意識が薄れる中、彼を受け入れている場所がミチミチと嫌な音を立てる。
「な、何で……」
多分、意識が朦朧として来て全身が緊張してるんだと思う。
慌てて結合を抜こうとする彼に足を絡めた。
彼は必死に抜こうとしたけど、入り口付近で果てた。
それで何かが切れたのか、彼は腰を動かし始めた。首にかかる手にも力が入る。
薄れゆく意識の中、私が壊れて行くのを感じた。
「鼎、大丈夫か?」
あれ? 何でおねーさんが目の前に?
ふと辺りを見渡すと、相変わらずの無表情で立っている支倉さん。その隣には正座した彼。
「あれ? 私……」
「動かん方がええ、とにかく落ち着きや」
むしろおねーさんの方が落ち着いてと言いたくなる位早口でまくし立てられた。
ふと、自分の姿に目をやれば主に下半身が白と赤に染まっていた。
なるほど、確かにこれを見たら慌てる。
「とりあえず、これ飲みや」
おねーさんはそう言って、ミネラルウォーターと何かの薬を差し出す。
「何? これ」
「子供出来たら笑えへんから、その対策や。本当やったら男の方が気にするもんやけどな」
そう言って彼の方を睨みつけるおねーさん。彼は目を逸らした。
トドメ、差してあげるよ。
彼の方を見て、一言。
「幸せに……して下さいね?」
「せやな。クロ助、鼎の幸せがアンタの幸せやと思っとった方がええで」
流石おねーさん。私の思ったとおりの言葉を繋いでくれた。
「女って怖い」と呟いた彼はさておき、支倉さんが持ってきてくれた服に着替える。
ほんの少し小さかったけど、それが支倉さんのものだと思うと……
多分、今夜は眠れないと思う。