新年会と同じメンバーで何故か鍋パーティーをすることになり更に何故か先輩が大量に日本酒を放置したまま帰ってしまった。  
潰れかけて、迎えを呼ぶのは流石ですけどね。  
ちなみに法律を気にするなら先輩しか飲めないのだが……  
ここはどっちかと言えば気にしない人が多い訳で。  
「早くあなたも帰ると良い」  
「あら、もう少し位楽しませて下さいよ」  
「……なら、飲み比べでもする?」  
真白ちゃんがお酒に弱いのは前回知ってるから、潰す気だろう。そして真白ちゃんが潰れた場合、十中八九放り出される。  
「彼をかけるなら良いですよ?」  
ちょっ、何で勝手に……  
「上等」  
まあ、いくら何でも真白ちゃんが勝てるとは思わないけどさ……  
でも一応、僕にも話を通すべきだと思いますよ。  
「ルールはそうですね……、お互いのコップが空になってから五分以内に次を開けられなかった方の負け、でいかがですか?」  
「構わない」  
……ん? このルールだと初めの一杯が飲みきれない場合どうなるんだろう。多分杞憂だろうけどさ。  
「では……」  
一杯目、志乃ちゃんはゴクゴクと無表情で、真白ちゃんは笑顔を歪めながら少し遅いペースで。  
二杯目、志乃ちゃんがちょっと不機嫌そう、真白ちゃんは一杯目と同じ。  
三杯目、志乃ちゃんがかなり不機嫌そう、顔が赤いとかは無いから多分水腹になりかけているんだろう。真白ちゃんは、あれ? いない。と思ったら戻ってきた。また元のペースで飲んでる。  
四杯目、志乃ちゃんの顔がほんのり赤くなる。真白ちゃんはやや遅くなったものの表情変わらず。って流石にヤバくない志乃ちゃん?  
五杯目、志乃ちゃんが船を漕ぎ始める。ちなみに視線は真白ちゃんに向けられ睨みつけている。真白ちゃん苦しそうに飲み干す。泥仕合だなぁ。というか、確実に明日後悔するよ二人共。  
六杯目、志乃ちゃんコップ半分残してダウン。真白ちゃんの方を慌てて見ると……また、いない? 引き分けか助かっ、てない! 真白ちゃんが戻ってきて、志乃ちゃんを見て残りを一気に流し込んだ。  
「あの、真白ちゃん? お酒弱かったよね?」  
「お酒に弱いのって2タイプあるのご存じですか」  
こめかみを押さえながら真白ちゃんが応じる。  
 
2タイプと言われて新歓コンパを慌てて思い出した。道の真ん中で寝てしまうような人、それから……!  
「私は気持ち悪くなる『だけ』なんですよ」  
途中でトイレに行ったきり戻ってこない人だ。って、時折姿を消してたのは……  
流石にズルいでしょ、それは。  
「ええ、お察しの」  
そこまで言って固まる真白ちゃん。まるで見てはいけないものを見てしまったような……  
「まだ、俺は潰れてないぜ」  
見ると顔を真っ赤にしたクロスくんが空のコップを片手に据わった目をしていた。  
そういえば、初めから居たっけ……  
流石に予想外だったのか、笑顔を崩して真白ちゃんダウン。  
唸ってるあたり、意識はあるみたいだけど流石に飲めないだろう。  
「いや、助かったよクロスくん」  
彼がまさか僕を欲しがるとは思えないし。ちなみに真白ちゃんもわりとどうでも良いはずなのに……  
「はぁ、何言ってるんだ?」  
彼は心底不思議そうな顔をすると、僕の肩に手をかけた。  
「お前を貰っとけば志乃も会いに来るだろ?」  
満面の笑みを浮かべる彼を見て思った。  
先輩戻ってきて下さい!  
 
 

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