「……で、どうしたのその服装は?」  
「あら、似合ってませんか?」  
にこやかな笑みを浮かべながらそう言い放つ真白ちゃんの服装は、  
紫色の上下……スパッツと呼んでのだろうか。  
とにかくぴっちりして薄い紫色のアンダーウェアに  
その上からライダージャケットのような厳めしい上着を羽織った服装だ。  
「友達に言われたんですよ。『真白ちゃん似てるよねー』って。ほら、このキャラですよ」  
大きなお友達じゃないだろうな、と思いつつ真白ちゃんの差し出した漫画の表紙を見ると  
そこにはほぼ同じ服装をした女の子が。  
どんな格好なんだこれは。乳首がもうモロに……  
はっ、と気づいて思わず真白ちゃんの体のある部分に目が行ってしまう。  
中学生とは思えない規格外に豊満な胸の、頂点。そこには。  
「真白、ちゃん。ひょっとしてその下」  
「えぇ、何も履いてませんよ?」  
ぴっちりとして胸に張り付くその生地は、真白ちゃんのふっくらとした乳房と  
その頂点にある突起の形を露わにしていた。  
「それとこれ、通気性が悪くて……」  
真夏の部屋の中、ふぅ、と溜息をつく真白ちゃんの頬を汗が伝う。  
伝った汗は首筋の生地に、じゅわりと吸いこまれていった。  
目をそらせない僕に、真白ちゃんが近づく。  
「どうですか?貴方が喜ぶと思って着てみたんですが」  
女の匂い。志乃ちゃんとは明らかに違う、雌の匂いがする。  
スパッツに吸い込まれた汗と、その吐息が質量を以て僕の胸を圧迫しているようだ。  
「知ってますよ?支倉さん、修学旅行なんですよね」  
腕をとられた。そのまま、胸の谷間へ。  
押しつけられると同時に僕の腕にじわり、と真白ちゃんの汗が染み出る。  
 
「――――バレませんよ?」  
今度は全身で。むせ返るような匂い。  
バレるに決まってる。志乃ちゃんがどれだけ僕を好きか――――どれだけ真白ちゃんを嫌いか考えれば。  
これだけ彼女の匂いをつけられてしまえば、たとえ3日後だろうと1週間後だろうと志乃ちゃんは気付く。  
「それに、悪いのは誘惑した私ですから」  
心理的な外堀を埋めるようなその言葉も、僕の耳にはもはや入っていなかった。  
バレる。バレないわけがない。そんなことは僕が一番よく知っているけれど。  
真白ちゃんを抱きたくてたまらなくなっている自分がいる。  
「ですから、来てください」  
 
「『お兄ちゃん』」  
 
自制心が乾いて砂のようになっていくのを感じた。  
サラサラと崩れて、決して激しく崩壊したりはしない。  
が、それだけに。気付けば僕は優しく真白ちゃんをベッドに横たえて。  
真白ちゃんの匂いを楽しむように、ゆっくりと。全身で抱き潰した。  
 
思いだせるのは漏れる彼女の吐息と、久し振りに「女」を抱きしめているという静かな興奮だけが記憶に残っている。  
 
 

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