小学校から帰ると、アパートの扉には鍵が掛かっていた。
黒いセーラー服の少女は彼から貰った合鍵を取り出し、それをドアノブへと差し込む。
「ただいま」
志乃の言葉に応える者は居ない。
時刻は午後3時半。部屋の主はまだ大学から戻っていないのだ。
志乃は構わず上がり込み、背負っていた赤いランドセルを下ろす。
そして部屋の中央、テーブルに置かれていたモノを手に取った。
それは、銀色に光る手錠。以前に志乃が事件現場からくすねた本物だった。
少しの間だけ躊躇った後、志乃は手錠を自分の右手首へと嵌める。
鍵がかかり、鉄の輪が手首から抜けないことを確認すると
さらに両手を後ろに廻し、残ったもう一方の輪を左手首にも嵌め込んだ。
――家に帰ったらすぐ、自分を拘束しておくこと。
どうしても自慰癖の抜けない志乃に、彼が言いつけた命令だった。
手錠の鍵は彼が管理している。
一度嵌めてしまえば、彼が帰宅しない限りは志乃は自由を取り戻すことが出来なかった。
後ろ手に両手の自由を奪われた少女はフラフラと歩を進め、日の差す窓辺に畳んで置かれた布団へ倒れこむ。
同時に、布団に残った彼の香りが志乃を包み込んだ。
制服のスカートが捲れて剥き出しの秘所が露わになるが、構うことは無かった。
彼に束縛されている、そう思うだけで身体が熱く火照りはじめるのを感じる。
「んっ・・・ぅ」
布団の上で腰を捩れば制服と擦れた肌が僅かな快感を生むが、それだけだ。
けれど、その焦れったさすらも心を満たしてくれる事に志乃は気づいていた。
彼が部屋に帰ってくるのは夕方の5時。
志乃はそれまで、この不自由な身体を楽しむことにした。