巨大な大木に囲まれた森林地帯。そこが獣牙族と聖龍族の国境にある場所だった。
しかし主だった戦いが今は無いため、とても静かでときおり鳥の鳴き声や草木の風にゆれる音が聞こえるのみである。
地形的にもそれほど重要な拠点となりえぬため、両軍とも無駄に兵を派遣することもない。戦争とは無縁で実に平和なひと時が育まれている。
そんな静かな場所へ体から熱い熱気を漂わせながら、ゆっくりと歩いてくる男がいた。獣牙族の軍師、白面のセツナだ。萌えるような熱気は落ち葉や枝を揺らす。
上半身の鍛えぬかれた裸体に、無造作に上着といった簡単な服装だ。しかしけして遊びに来たわけではない。その目は燃えるように赤くなっており、視界に入るもの全てを吹き飛ばすように睨み付けている。
しかし数十メートルほど歩いたとき、ふいに立ち止まると視線の先にある大木に声をかけた。常人ならば何も気づかずに通り過ぎるが、セツナにはその大木に潜む者の気配を確実に感じ取っていた。
「……姉上か」
物音がして、生い茂る草木の陰から一人の女が姿をあらわす。地面を埋めるようにふっている落ち葉を踏みしめて出てきたその女こそ、忍者集団である朧頭領四代目を受け継ぐクオンその人だった。
セツナと同じく美しい灰色の髪をなびかせたまだ幼げな美女が、何もいわずにじっとたたずんでいる。その姿を見たセツナはじっと赤いまなざしで、なめるようにクオンの姿を見つめていた。
本当なら忍者という身分から顔を隠すため仮面をつけているはずなのに、今日に限って自分の顔を惜しげも無く出している。
見た目はそこいらの女と比べ物にならないほど美しいが、この顔で何十人もの敵を殺してきたと思えば油断は出来なかった。
しかし武装した様子は無い。腰に忍ばせているはずの忍刀もなければ、暗器を仕込んでいる様子さえ見受けられない。
「なぜ俺を呼んだんだ?」
普段なら私と名乗る礼儀正しいセツナも、敵対しておりなおかつ身内でもあるクオンの前では乱暴な言葉遣いとなっていた。
「頼みたいことがあってな」
「頼みごと……だと?」
セツナはいぶかしげな様子で頭を働かせた。てっきり決闘でもあるのかと思い、すっかりと戦闘形態に早代わりしていた。
尻尾だけは出ていないが、それなのに戦いではなく頼み事があると切り出してきたクオンに拍子抜けしていた。
戦闘形態を解くことなく注意しつつも、セツナは話だけでも聞いてやることにした。
「何だというのだ。話せ」
「……お前は、この戦いをどう思う?」
「戦い?ふん。くだらないな。ただの戦争だ。黄龍帝フガクが消え、その後を誰が支配するかだけだ」
セツナは見た目よりも以外と激情家でもあり、熱い男でもある。
自らの王であるエドガーに影響されたわけではないが、その冷静な性格とまるで違うものを持っている。
支配という言葉を使うのも、世界が実質、力によって収められていることを皮肉って言ったのだった。
「この戦いが全て仕組まれているものとすればどうする?」
クオンは独自の諜報活動により、中央大陸で巨大な何かがこの世界を操り始めることに気づいていた。
しかし己の軍団や一国では対抗できず、状況を打破するためにセツナに会いに行ったのだった。
(ふむ……力を貸してくれ。和平の仲介をしろと言うことか?)
確かに中央の大陸からは不穏な空気が流れ込んでいる。その影響でたびたび普段はおとなしいモンスターが町を襲っている。
セツナとて薄々はわかっていたことだ。何か巨大なものがうごめいているという事を研ぎ澄まされた五感で感じ取っていた。
(だがそれはそれだ。だからといってわざわざ、ここで戦いをとめる理由など無いが……)
戦いの手を一時的に止めてやることに損は無い。現在の力関係は聖龍族の戦力の建て直しにより、均衡した状態で一月にもなる。
このままどちらも戦いつづければ、戦力の疲労を招き他の部族、また中央大陸からのとっさの出来事にも対応できなくなる。
しかしかといって何もせずただ帰してやり、用件だけ伝えるのもどうかと思っていた。しばし沈黙して大木にもたれかかっていたセツナだったが、何か思いついたのか、ニヤリと笑う。
「条件がある。姉上、あなたの熱意を見たい」
クオンはふいに言われた一言に、繭一つ動かさぬ能面のような顔を揺るがせた。明らかに動揺の色が広がっている。
理解の深い弟であるセツナならば、楽観的といわれようが少なくとも了解は取れると思っていた。それが予想に食い違いが出始めている。
「熱意……とは? 」
「いかに自分の身を犠牲にしても、この願いを叶えてくれという強さを見せることだ」
セツナはメガネを外すと、上着を脱ぎ脇に放り投げた。その後、ゆっくりと近づきふいにクオンの体を抱きしめ唇を奪っていった。
まったく予想できぬ状況にシオンは慌てふためきつつも、なんとか手足を動かそうとする。しかし両腕を万力ではさまれたように、いくら歯を食いしばっても動くことがない。
不用意に近づかれ油断したわけではないが、それでも弟相手に強く戦う気があったわけではない。
その弱みを狙われたわけではなかったが、クオンは後悔するほか無かった。このやさしげな口付けさえ、何か狙っている可能性がある。
「ムグッ、グッ…! や、やめろォっ」
「姉上とのキスは久しぶりだ。それも口の中まで味わえるとは」
そうしているうちにとうとう舌が口内に侵入してくる。舌は口内を縦横無尽に這いずり回り、お互いの唾を混ぜ合わせていた。クオンは耐え切れない思いと、実の弟にここまでされる事にショックを受けていた。
しばしの口付けが終わると、やっと両腕が自由になる。よろめきながら下がりつつ、きつい目でセツナを睨んだ。
「どういうつもりだ!」
「だから、どれほどの犠牲を払ってくれるか、見極めているだけだ。……姉上は俺の気持ちを知らないわけではないだろう」
「……くっ、セツナ。お前」
クオンの顔が青白くなりながらも、セツナに対して目は赤く燃え上がるようだった。頭の中では昔の修行時代がフラッシュバックしていく。師範を相手に修行した日々、そのほとんどの生活が姉弟のみで行われていた。
日々の中でセツナは、クオンに助けてもらい手取り足取り、いろいろなことを教えられたものだ。武芸や生きるために身に付けるもの全てを、体に叩き込まれていた。
いつしか姉への尊敬が許されない愛へと変わる日も遠くは無かった。何しろ幼少の時代から、異性というものはクオンだけだったのだ。
日常でもいっしょに行水をしたり、眠ったり裸体を直に見たり接触する機会は十分にあった。それゆえにセツナは自分の心を隠しつつも、許されない想いを大事に持っていた。
それが今では敵となったクオン相手に公開し、ぶつけることも辞さなかった。むしろ今これを利用し自分の思うが侭にしてやろうという気があった。
「私たちは……姉弟だぞ?それを! 」
「別に断ってもいいさ。その代わり、この交渉はナシだ。それでもいいんだな」
「それは……!! わかった。自由にするがいい」
はき捨てるように呟いたクオンの言葉に、気分を良くしたセツナはさっそく近づいていった。上半身を裸にしたセツナはクオンの目から見れば、もう弟などというやさしげなものではない。
筋骨を十分に発達させた姿は立派なオスである。長い間、会わなかったために肉親という情が薄れていた事も関係していた。
「これから先は、手荒に扱わせてもらう。逃げても良いぞ。ただし、話はそれで終わりだがな」
「いいから早くやれッ!」
言葉に苛立ちが混じってきた。クオンの心の中では、葛藤や後悔、複雑な思いが交錯しつづけていた。しかし現実は非情だ。
セツナは心の中で舌なめずりをしながら、ズボンの前に大きなテントを張らして興奮し、今にも襲い掛かりそうなほど体温を高めている。
(くそっ、あれほど大きくして)
クオンも目がゆっくりと下を向き、テントの張りを確かめてしまう。己の気持ちではこんなものをみたくも無いのに、なぜなのか、心が動き心臓の鼓動が早くなっていった。
「なかなか柔らかい胸だな。誰かに触られているのか?」
いきなり下を向いていたクオンの体に、セツナが手を触れてくる。手を触れた場所はよりにもよって、誰にも触れられたことの無い乳房だった。
服の上からであってで直接触られた訳ではなかったが、体中に悪寒が走り気分が悪くなっていく。
「どうした、何も言わないのか。姉上は俺が子供のころ、よくいたずらをしたら怒ったものだが」
セツナは子供時代を思い出しながら、さらに両手を使い乳房を弄んでいる。忍者としての隠密活動にはほとんど関係ない女の部分が、段々と年をとるにつれ発達する胸を嫌らしく思っていた。
それがここにきて更にセツナによって嫌悪感が増す結果となっている。黙っているままの女を弄んでもつまらなく思ったのか、セツナは鍛えぬかれた筋力を使う。服を掴むとクオンの服を引きちぎるように脱がしていった。
「うっ! クソッ」
小さく歯を噛み悔しがるがどうすることも出来ない。素早く腕で胸と腰周りを隠したが、それでも肌のほとんどは見られ、この仕草でさえ男を誘うように見えた。
紐は簡単に解け服は草叢に投げ出され、美しい体のラインがセツナの目にありありと映ってきた。
(綺麗だな)
思わずに心に浮かんだ言葉が「美しい」だった。ふっくらとした肌に加え、両手で隠されているものの、体の曲線が浮かんで見える。女であることを無駄に胸も尻も主張し、仕草が更に花を添える。
「ほら、俺のシッポも姉上と交われると聞いて興奮しているよ」
セツナが自分の尻を指指すと、とたんに無数とも思えるほどの巨大なシッポが生えてきた。それもそれぞれがウネウネと気味悪く動いている。
「なっ」
シッポがまるでひとつひとつ意思をもっているかのごとく、執拗な動きに呆気にとられるほか無かった。クオンも尾はもっているが、あれほどに上手くは動かすことが出来ない。
聖龍族と獣牙族では、尾の有る無しが顕著にわかり、おおっぴらに使うことができなかったために、いつしかクオンの中で能力が衰えてしまっており、シッポはただの飾り同然だ。
その点、獣牙族だったセツナは場所を選ばず鍛錬が出来た。そのおかげで右へ左へと長いシッポは踊るように波うち、思うままに動かすことが出来る。
「何を……する気だ? 」
「楽しいことだ」
恐れたクオンは後ずさりして逃げようというそぶりをみせたが、立ち止まって次を行為を仕方なく待った。心の中では忍びの頭領としての度胸などなく、ただ女として恐怖の色に染まっていく。
しばし動くだけの行動しか見せなかったシッポは、やがて速度をつけるとムチのような速さでクオンの体に巻きついていく。
「ウッ! 」
「痛みはほとんどないだろうが、ちょっと強くさせてもらうぞ」
動物の尾というものは意外と強く、様々な用途に使えるようになっている。獣牙族、セツナのシッポも例に問わず、強い力を持っており魔力によって更に硬い鋼のようにもなれるのだった。
胸と股を隠す手は、シッポによっていとも簡単にどかされていく。ほんのりピンク色にそまった秘所が丸見えになってしまい、光を受けて鈍い光を放っていた。
(嫌だ……、いくら弟とはいえ、こんな男に見られるとは)
嫌悪感と痴情が混ざり合い、なんともいえぬ奇妙な空気を出していた。姉の葛藤をよそにセツナの冷たい目は膨らんだ胸の乳首と、秘所の部分に注がれている。
「もうすこし穏やかと思っていたが、いやいや、女らしいじゃないか。あの王様にでも触られているのか」
「あの方を馬鹿にする気かッ! 」
顔に怒りの表情を浮かべて、クオンは叫んだ。己の主であるサイガは、クオンが心の奥に潜める大事な人でもあった。
もちろん世界の行く末は大事だが、それよりもサイガの喜ぶ顔が見たいという一心でここまでやってきた。それほどに強い思いを持っていたのだ。
(ふん、いい気になって。俺の気持ちなど知らずに)
セツナ自身は、クオンの怒りをもっともと知りつつも、己の心を隠しつづけた手前、逆にいらだちも勝ってきた。自分のことをほとんど気にせず、愛するものしか見ていなかったと姉の身勝手さを許すことが出来ない。
「そのじゃまな口を閉じさせてやるか」
シッポに念を送ると、たちまちに残ったシッポが秘所や尻の穴にもぐりこんでいくのだぅった。シッポには毛で覆われていたために、クオンに痛みはほとんどなかったが、それでも巨大なシッポが簡単に侵入していく様には驚きと異常を感じていた。
何よりこのような奇怪なものに体を自由にされることがなかったために、しばし緊張して汗が大粒となってにじみ出る。その間にも、尻穴の内側に挿入されたシッポは動きつづけ、内部をやさしく愛撫していた。
「ウウン……フゥン」
頭の中では、けして流されないように意識を保っているはずだったが、体は妙に反応を良く帰してくれる。体を這いずり回るシッポに加え、大事な部分を初めて触られたというのにこうも上手い動きを繰り返されてはあがらうのは難しかった。
しかし無理も無い。セツナは今までも何十人もの女を抱いてきた熟練者なのだ。処女で未だに経験の無いようなクオンとはまるで違う。その気になればすぐに篭絡できるが、あえて執拗にしつつも焦らす事で更に高ぶりを増していく。
「クゥゥ、体が……熱いッ」
次第に感度も高まり、特に普段から触れることの無い尻穴への愛撫は強烈だった。たちまちに腰に不思議な感覚があり、秘所から愛汁が溜まって来たのだ。
また胸の乳首にもまとわりつくようにシッポが触れられ、毛の一本一本で突き刺されると体に電流が走ったかのような気分になる。途端に愛汁も飛び散り、更に奥底から染み出してくるのだった。
「これほどまでに淫乱とは、俺の姉ながら情けないな」
「う、うるさ……アアッ」
あまった両腕で乳房をわしづかみにして指で乳首の先端を弄繰り回して遊んでいた。時々であったが、口を近づけ赤ん坊のように先端を吸ってくる。
そのたびにクオンは逆らうことも出来ず、また嬲りに耐えることも出来ないまま、舌をダラリと下げて嬌声を上げつづけているばかりだ。
シッポを使った愛撫と、両手と口を使った楽しげな遊びはそれから実に数十分にも及んだのだった。
「誰かァ……」
長い長い執拗な愛撫のせいで、もう汗まみれになったクオンは、痺れて動くことさえ出来なかった。体力も限界に近づいており、力を振るうことが出来ない。
つらいのはクオンだけではない。もちろんセツナも戦闘形態となっており、十分な力があった。しかしシッポを同時に数十分も動かせば、流石に疲れは出る。
それにもっと危険だったのは、先ほどから怒張し膨らんで今にもはじけそうな男根だった。
愛撫する前とて猛っており、かなりの勢いを見せていたが、ここにきてグロテスクにも、血管をいくつもうかびあがらせている。
先端の赤い亀頭が、生暖かな風ひとつにさえ反応してクチを開く。玉に貯められた精液を早く出したい、と叫んでいるかのようだ。
「姉上。そろそろ遊びも終わりだ。もう体がもたんからな」
シッポを使い両手首と両足の五体を縛り自由を奪う。そして足をゆっくりと開かせて、先ほどから拝見しつづけていた秘所を後悔する。
「……やめてくれ」
白い顔を真っ赤に染めて恥ずかしがるが、抵抗できずただ何度も言葉を繰り返す。
セツナは耳に届くか細い声に気をとられることも無く、ズボンを脱ぎ全裸になると男根を正しい位置に当てた。
(これならちょうど中に入れることが出来るな)
正上位にして場所を確かめる。亀頭は幾度も秘所に当たって、挿入の機会を待ち構えていた。
(とうとう入るのか。姉上の中に、俺が)
姉を犯す瞬間に来て、ますます悦びは高まっていった。普段なら砂や土に足や体をつける事を嫌がるのに、もう気づいてもいない。
近親相姦という禁断を破る事に意識が集中されている。クオンも自分が汚れる瞬間に、怯えるものを感じつつも体がオスの物を受け入れる用意を作りあげている。
相手が弟だろうが、下手をすればそこらの魔物だろうが構わなかった。体の疼きを一刻も早く収めて欲しい、そう願っている。
「いくぞ」
「んっ。……アハァ……イイッ」
一声あげたかと思ったら腰を強く打ち付けて、亀頭を秘所にめり込ませる。秘所からは待ってましたというように、中へとたやすく受け入れる。
人間と違い体のつくりが動物と似たクオンにとっては、初めての体験とて熟練したように受け入れることが出来た。まるで獣のように相手を望み受け入れている。
(これが姉上の中か? 気持ちいい……他の女が比べ物にならないくらいだ)
獣牙族にいたときに、肉欲が目的で数名の女としばし楽しみを繰り返したことはあった。だがこれほどのものではなかった。
それが相手が姉であるクオンならばまるで、鍵が決まった鍵穴に当てはまるかのごとくピッタリとした相性になる。
実に調子よく気分をいやしてくれ、体内に入れているだけで不思議と満足感が満たされた。
肉壁は痛いほどに絡みつき押し付けてくるが、次から次へと溢れる淫汁のおかげ滑りを作ってくれる。おかげで痛みをやわらぎ、送出を楽に行える。
気分が良いのは姉弟とも同じなのか、前後運動で子宮まで突き上げられそうなほどの衝撃が下半身を襲ってくる。
気が壊れそうになりつつも著しい快楽をむさぼっていた。残ったシッポも、胸や尻の穴を再び攻め、快楽を増やす手伝いをしてくれる。
上半身を責めれば、たちまち下半身も秘所や尻穴がすぼめ締まっていく。体の反応が段々と良くなっている証拠だ。
「まるで淫売だな。本当に初めてなのか? やはり姉上は、性欲が強いのだな。その実、俺など比べ物にならないほどに」
耳元でささやかれる声さえも、快楽へを増加させる。柔らかく耳に触れる吐息を感じるたびに、トロトロと秘所の潤いは増していくのだった。
尻と腰があたるパンパンという小気味良い音が、何度も何度も静かな大地に響き続けた。普段はさむく冷えるはずの森も、二人の熱い熱気に支配される。
今日は不思議と暖かい気温に包まれていた。そのせいでクオンもセツナも寒さを感じることなく、快楽をむさぼることが出来た。
やがて何度も肉棒を挿入し、引き離すという動作を繰り返しつづける。するとだんだんと弓の弦を引き絞るかのごとく、終わりが近づいてくるのが二人にはわかった。
肉壁をする硬い鉄のようなセツナの男根は、クオンの秘所の愛汁で濡れない場所は無かった。今にも亀頭がクチを開けば、中から大量の精液が飛び出していきそうなほどの予兆を見せていた。
「そろそろ、いくぞ。俺も体力が続きそうに無い」
「……あ? あぁっ、や、やめてぇ……ン」
口では嫌がっているが、体では太ももを使い腰を固定してくる。もう自分ではほとんど考えることが出来ていない。
ここで止めてしまえば、下手をすればクオンはおかしくなってしまう。セツナもやめるわけにはいかず自分の腰に再び力を入れると、最後に小さく頬に口付けをしてやった。
「姉上。俺の子種を受け取ってもらうぞ」
(子供……イヤァ。でも……体が)
ますます速度を増したピストン運動は、クオンの体をガクガクと揺らした。砂と泥が苦衷で舞い散るほどの、強烈な性行為だった。
クオンが出来ることは、必死に体をしがみつかせて爪と足で子供のように抱きかかえられることぐらいだった。
玉の内側からせりあがってくる快感をたよりに、セツナは一気に己の欲望を解き放った。
「グッ、姉上よ、これが俺の思いだ。受け止めろッ」
血管が著しく肥大したかと思うと、管をとおる精液はたちまちに亀頭の口元から白き精液をぶちまけていった。
密着された肉壁の中では精液は逃げる場所をもたず、一心不乱にクオンの子宮めがけて泳いでいった。
「ひいいっ、アアァァ……熱いッ、ハゥンッ」
淫靡なメスと化したクオンは、ただ精液を受け止めるだけで精一杯で享楽に酔いつづけている。胎内を焦がす熱い精液は、いまだ途絶えることが無く秘所からにじみ出るほどに充満していく。
実の弟に孕まされる危険があるというのに、女という喜びが優先されて快楽の権化となっていた。頭の中ではこの腹に満たされる精液を一生浴びつづけたいと思っているほどだ。
クオンの爪は強くセツナの背中を掴み、血を滴らせた。その痛みでさえ心地よい刺激となってクオンは更なる放出を行ったのだった。それから一分足らずも二人はいっしょになってお互いを受け止めあった。
事が終わって十数分、まったく身動きしない二人は倒れるように横になっていた。
秘所からドロリと生暖かい精液が零れ落ちていく。尻と秘所のあたりを汚す白い精液をセツナはなぜか綺麗だと思ってしまった。
汚されて朦朧とした目でクオンは行きも絶え絶えだったが、なぜか意識だけは不思議なほどはっきりしていて自分の胎内に送られた命の種に静かな快感を感じた。
(収まりがつかなくなったな)
自嘲しつつセツナは再び、巨大なシッポでやさしくクオンを抱きしめながら営みを再開した。先ほどの荒さは微塵も無く、今度はゆっくりと互いを見つめて愛し合っていた。
クオンも抵抗する様子は見られず、なぜか時々、不思議と体を絡めあうなどといった積極的な行いを見せた。最終的に、営みの回数は三度にも数えられたのだった。
ふたりの濃厚な性行為が終わると、もう辺りは夕闇に覆われている。セツナは満足した体と対照的に、心の奥で危ないと思っていた。いくら対等な力を持つとわかっていても、夜になれば有利なのはクオンだ。
復讐とばかりにいきなり切りつけられる、また襲い掛かられては抵抗などできなくなりやられてしまう。しかしそう思っていても、クオン相手に行った射精回数は五、六回にも数えられた。
これほどの放出をしては、大の男でもそうそうと動けるものでもない。
(クソッ……俺としたことが馬鹿をしたな)
おそるおそる隣に寝転がるクオンを見た。湿った大地で激しい性行為をしたせいで、ふたりのからだは泥まみれになって汚れている。姉弟の美しい髪は砂と土混じりになっていて見る影もない。
「ウン…。クウッ」
先にゆっくりと起き上がり立ち上がったのはクオンだった。ふいに冷たいものがセツナの背に走った。しかしクオンは攻撃を行うことなどしなかった。
「では……伝えてもらうぞ。これで私の思いはわかったはずだ」
「……姉上は俺のことを何も思っていないのか。殺したいとは思わんのか」
思わず拍子抜けしてしまう。これほど汚し残酷なことをしたというのに、あくまでも忍者としての本分を守ろうとしていた。それに感心と驚きの情が交わる。
「ふん。お前など殺す価値もないという事だ。……それにどんな愚弟だろうが、私の弟だしな」
それだけ言うと一瞬にして飛び上がり、木の枝をいくつも揺らしながら姿を消していった。セツナは横目でクオンの美しい背中姿を見届けるしか出来ない。しかし、それからしばらくして森の中に響き渡るほどの高い笑い声を上げた。
(面白いじゃないか。それなら和平でもなんでもしてやろう。そうすればまたお前を汚せるというものだ。まだゲームは……終わっていない)
姉のやさしい思いなどセツナにはまるで効果がない。ただ彼女を求める、欲望にまみれた男がいるだけであった。セツナは姉の残り香を楽しむように鼻を利かせ、懐かしい思い出に身を任せていた。
それから一週間もたたずして、対立していた部族同士が各地で和平を行われる。その場にセツナとクオンも同席していた。だが何故か彼らは一言も言葉を発することなく、互いを不思議なまなざしで見つづけるだけであった。
またその後、ともに行動しようと申し入れたセツナの提案をクオンは断り、大層セツナは残念に思い、血がにじみ出るほどに歯を強くかみ締めたといわれている。