* * *
「さ……流石にもうぐったりだね」
全裸の亜沙が大の字になって人工芝に寝そべる。カレハがその亜沙にシャワーを浴びせた。
楓の蜜のシャワーでベトベトになっていたので亜沙は気持ち良さそうにそれを受ける。
悪戯なカレハは一通り流し終えると、亜沙の開いた股間にシャワーを集中した。
始めはくすぐったそうにしていた亜沙もカレハが執拗にソコばかりを狙うので起き上がって
股間を両手でガードする。
「もう、カレハ……こんなトコばかり狙わないでよ」
「クスクス……亜沙ちゃんがはしたない格好をしているからですよ」
「口で注意すれば済むでしょ。私にもそれ貸して――えい!」
「ひゃあん!! 冷た〜い! 亜沙ちゃん、お尻の穴を狙うなんてずるいです!」
「カレハはマンコ狙ったでしょ? 仕返し〜〜!!」
「だめぇ〜〜! ああん♪」
カレハと亜沙はシックスナインの体勢でお互いの股間をシャワーで責め合っている。
先輩達の痴態を呆然と見ながら、楓がポツリと呟く。
「そう言えば……亜沙先輩、まだ電気アンマされてませんね――」
「いっ!?」
楽しそうにカレハを責めていた亜沙の動きが突然止まる。楓の声に動きが止まったのは
亜沙だけではなかった。レズってたプリンセス二人も、麻弓を洗っていたプリムラも亜沙の
方を見る。
「え……えっとぉ〜〜」
全員の注目を集め、亜沙が内心焦る。このバトルロイヤルの最中にみんなの関心を集めると
いう事は、一番危険な状態なのだ。実際、亜沙はそれを避けてきた。常に誰かに注目させ、
関心をそちらに向けて自分は裏方に徹して難を逃れる。そのやり方は結構成功してはいたが、
流石に亜沙の魅力を隠しとおせる事は無理で、楓に狙われる羽目になった。
だが、今は楓だけでなく、全員が自分に注目している。亜沙は危機感を感じていた。
「ま、まぁ……そ、そうかもね。偶然……だと思うけど」
この昼下がりの猛暑なのに額から冷や汗が流れる。亜沙は懸命に笑顔を装い、慎重に言葉を選んだ。
「……で、でも、ボクはマン蹴り沢山食らっちゃったし――こ、ここ打つと痛いんだよ〜、
みんなだって分かると思うけど……お、女の子の急所だもんね。だから……」
「マン蹴りと電気アンマって……違うと思う……」
背中からボソッとした声を聞き、亜沙は飛び上がる。振り返るとソコにはプリムラがいた。
「り、リムちゃん! ……で、でもほら、楓も言ってたけど、電気アンマよりマン蹴りの方が
辛いんだよ? だから、ボクも電気アンマされたことにして、いいんじゃない、かな〜?」
プリムラの両肩に手を置いて宥めるように言う亜沙。懸命な説得だったが、プリムラは無表情に
亜沙を見つめた後、ゆっくりとかぶりを振った……。亜沙の笑顔が凍りつく。
「リムちゃんの言うとおりかも……」
また背後で声が聞こえ、亜沙の耳がピクン!と動く。
「うん……。やっぱり一人だけ電気アンマ受けてないのはずるいっす」
「そう言えば、亜沙ちゃん、リムちゃんの時も自分の番になるとうまく逃げましたね」
ネリネの疑念にシアが同意しカレハが追い打ちをかける。天然系異世界組3人の理想的な
コンビネーションで亜沙は一気に窮地に陥った。
(こ、このピンチを逃れるには〜〜)
自分と同じ立場の仲間を引き込まなければならない。上手く行けばその子に標的を差し替え
られるし、最悪逃げられなくとも負担は半分に減る。そして、今、亜沙の仲間と言えば――。
「ま、麻弓ちゃん。そんな事ないよね? ボクだってじゅ〜ぶん、非道い目に遭ってるよね?」
亜沙の焦った笑顔を向けられ、麻弓は飛び上がりそうになった。急に振られても困る――
と言うか、迷惑だ。自分まで巻き込まれてしまう。
さりとて、さっきまでつるんでいた?亜沙を無碍にするわけにも行かず、
「えっと……それはその……」
何とか口を濁してごまかそうとしたが――。
「麻弓ちゃん、亜沙先輩にさっきのお礼をしたいんです――手伝ってくれますか?」
背後から静かだがはっきりと伝わる声――麻弓にはその声の主が誰かは一瞬にして分かった。
「う……うん……」
麻弓は亜沙から視線を逸らせて俯いた。その背後からに抱きつくのは勿論楓だった。
「良かった――。亜沙先輩、強くて頭がいいから私一人じゃ手に負えなくて」
楓が無邪気に喜ぶ。麻弓が困った笑顔で同意するように頷く。
「さっきは漏らしちゃうまで電気アンマされたし――それに恥かしい言葉まで叫ばされて。
あ、麻弓ちゃんは心配しなくてもいいですよ。亜沙先輩に脅迫されて仕方なく手伝っただけ
ですよね? そうでなかったら容赦しませんけど、私はちゃんと分かってますよ」
決して大きな声ではない。だがその一言一句全てが脳裏に刻み込まれるような声だった。
麻弓は同意の意志の表明すら出来ないぐらい、笑顔が固まっている。
(これは……ボクにとって生まれてこの方最大のピンチかもしれない――)
もしかしたら魔力を押さえきれずに死にそうになってた時よりもw。
楓は電気アンマで仕返しをする、と言ってるが、きっとそれだけでは済まさないだろう。
さり気無くマン蹴りを混ぜたりしてくるはずだ。
「楓さんはマン蹴りとかしちゃうんですか?」
「はい……勿論です。狙っていきますね♪」
カレハの質問に明るく答える楓。どうやら『さり気無く』ではなさそうだ。
「う〜ん……亜沙ちゃんちょっと可哀想かも。でもまぁ、治癒魔法を使えば回復できますし……」
「はい! カレハ、ボク、魔法は嫌いです!」
挙手して抗議する亜沙だが、
「でも、使わないと辛いですよ、亜沙ちゃん。折角魔法嫌いを克服したんですから使いましょう
――さっきみたいに、ね?」
「…………」
どうやら止めてくれると言う選択肢はカレハにもなさそうだ。亜沙は既に彼女たちの脳内では
『いじめてもいい人物』にされてしまっている。
(本職の女子プロレスラーだってこんなに急所攻撃を受けた事はないんじゃ……?)
亜沙は思わず内股になりながら自分のかわいそうなソコを優しく撫でた。
* * *
「さぁ、それでは順番とか担当とか決めましょうか?」
一人ぽつんと佇む亜沙を他所に、他の6人は輪になって相談している。
「シアちゃんはたっぷりと電気アンマしたいんですね? そうですね、シアちゃんは今日は
あまり出来てないようですから――楓ちゃんは電気アンマの合間合間にマン蹴りですか?
するなとは言いませんけど、亜沙ちゃんだって女の子ですから力加減はしてあげてくださいね。
それから……」
(するなと言え! つーか、なんでキミが仕切ってるのかな――?)
亜沙はカレハが生き生きしてみんなの意見をまとめているのを間違っているように感じる。
だが、今の雰囲気ではどうにも覆しようがなかった。既に生贄は決まったのだ。その生贄が
とるべき策は――。
「では、私が治療担当をしますね。亜沙ちゃんがキツそうだったら私が止めますから、指示には
従ってくださいね。治療した後、その人には優先してさせてあげますから。それと……」
「カレハお姉ちゃん、亜沙、逃げた」
プリムラがポツリと指摘する。そう言えば、この子の亜沙に対する呼び方もずっと『亜沙』に
降格しっぱなしだw。
「もう……無駄ですのに」
カレハが溜め息を突く横でネリネが呪文を唱えた。そしてバレーボールサイズの雷球を生み
出すと、それを亜沙の進行方向に向かって投げつけた。雷球は亜沙の進路で爆発する。
「きゃああ!?」
今逃げて来た方向に吹っ飛ばされる亜沙。一歩間違えば惨事に発展するが、こういう時に限って
ネリネの攻撃は正確だ。
「いたたた……お尻打った。……連中、本気ね」
「勿論ですよ、亜沙先輩♪」
お尻を押さえてい立ち上がった亜沙に冷や水をぶっ掛けるような明るい声――。
それは楓の声だった。隣にはプリムラもいる。
「うっ……楓……」
亜沙はさり気無く股間を守りながら後退りする。楓はその亜沙の姿を見ながら屈みこんで
プリムラに何か囁いた。
「……うん、分かった。楓が亜沙を押さえている時に私が攻撃すればいいんだね?」
「そうですよ、リムちゃん。そこはリムちゃんがパンチをするのに丁度いい位置にあります
からね。遠慮なく力一杯叩いてあげて下さい」
「はい、楓お姉ちゃん。……ごめんね、亜沙。可哀想だけど、楓お姉ちゃんの命令だから……」
と言いながらプリムラは薄く笑った。とても楓に強要されて、には見えないんだけど――?
と、亜沙は思う。他の子になら可哀想でやらない事も、亜沙にはやって良いと言う空気が出来
上がっているようだ。
今の会話も、どこを狙っているかを隠しているようにも聞こえるが、実際には二人して亜沙の
股間をじっくりと見つめながら話している。しかもヒソヒソ話ではない。わざと亜沙に聞こえる
ように言っているのだ。
「二人とも酷いよ……一体ボクが何をしたって言うの?」
亜沙はこれまでの悪行を棚に投げて、瞳を潤ませながら二人を非難する。
「一杯ありますよ……」
楓が溜め息をつくように言う。またしらばっくれて、この先輩は……、と言いたげに。
「この闘いをここまでエスカレートさせたのは先輩ですよ? この責任は取って頂かないと
――。他にも純真なリムちゃんにエッチな事を教えたり、私にやりすぎなぐらい電気アンマ
したり、アニメ版ではちゃっかり自分だけいい目を見て、私たちの扱いが酷かったり――」
「さ、最後のはここのボクには関係ないでしょ! ……元へ。だ、だからと言ってみんなで
一人を襲うなんてずるいと――」
「先輩。もうずるいとかずるくないとかの問題じゃないんです。いじめるか、いじめられるか
。狩るか、狩られるか――先輩は私たちの獲物に決まったのですから、大人しく生贄になって
下さい」
楓がじりじりとにじり寄る。そうしている内にシアとネリネが亜沙の背後に回り込んだ。
もう亜沙には逃げ道はない。
(闘うしか――ないんだね)
亜沙は覚悟を決めた。嬲り者にされるのは避けられないか? だけど、先輩の意地として
最後まで抵抗してやる。
(まず、絶対に食らっちゃダメなのは――マン蹴りね)
楓、そして彼女と共同戦線を張るプリムラのマンパンチ攻撃を受けてはいけない。これらの
攻撃は痛すぎて動けなくなる。闘う気力も根こそぎ奪われてしまう悪質な技だ。
むしろ電気アンマされている方がマシかもしれない。その間、マン蹴りは食らわないのだから。
そしてこの二人には電気アンマも食らってはいけない。特に、楓にがっちりと電気アンマを
極められたら、おそらく地獄だろう。快感責めと急所攻撃を使い分け、亜沙を生かさず殺さず、
ネチネチといじめるに違いない。
「――と言うことで!」
動かなかった亜沙の瞳が光ると、楓たちに背を向け、背後にいるシアとネリネに襲い掛かった。
「きゃああ!?」
「はわっ!?」
不意を突かれた二人のプリンセスは亜沙の勢いに人工芝に転倒させられた。シアが左、ネリネが
右――亜沙は迷わず右に襲い掛かってその足首をつかむ。
「あ、亜沙さん!?」
いきなり標的にされたネリネが目を丸くしている間に亜沙は電光石火の動きを見せ、だんッ!
っとグランディングした時にはキッチリと電気アンマの型が決まっていた。
「あうぅ! 踵が……踵が〜〜!!」
「こっちも必死なの。悪く思わないでね、リンちゃん!!」
だだだだだだだだだだだだだ……!!
「きゃああああああ〜〜!!!」
ネリネの悲鳴がプールサイドにこだまする。いきなり激しい踵電気アンマから入ってきた。
ネリネの下半身が激しく揺れて体が大きく仰け反る。
「こ……こんな、いきなり……ああああっ!!」
「大丈夫、さっきまでシアちゃんとたっぷり濡れてたんだから、痛くないでしょ!?」
「そ、そんなぁ〜〜! ……はぁあああん!!」
勿論亜沙はネリネとシアの貝合わせをちゃんと目撃していた。それでなくてもこのバトル
ロイヤルでネリネはたっぷりといじめられていた。だからいきなり激しい電気アンマを
しても痛くは無いと亜沙は踏んでいた。そしてそれは正解だった。
「ひゃう! ……あああっ!! 亜沙さ……はぁうううッ!!」
ネリネはあっという間に性感が高まり、亜沙の足をつかんでイヤイヤするように髪を
振り乱して悶える。きゅん!と何度も電気アンマされている所の奥から痺れるような
疼きが体内を駆け巡る。
「もういい感じだね? それそれそれそれ〜〜〜!!!」
いきなりのラストスパート――これは正に電気アンマの定説を崩す電気アンマだった。
女の子への電気アンマはとにかく時間が掛かるもの――それは自分で体験した事のある
女の子にとっては一部の隙もない真実のはずだった。セックスでもそうだが、女の子の
性感は高まるスピードが緩く、そして長く持続する。快感技である電気アンマも例外ではない。
緩い刺激から徐々に徐々に性感が高まり、そこからは強い刺激を長く受けて果てるまでの間を
耐える。これが女の子の電気アンマの基本だった。そうでない性急な電気アンマは女の子の
急所への攻撃でしかない。もっとも女の子の場合、この急所を蹴られても、他の場所と違って
痛いだけではないので、わざとそういう電気アンマを使うこともしばしばあるが。
「ああああっ!! だ、ダメです! そこは……弱い……はぁううん!!!」
だが、亜沙が今ネリネにやっている電気アンマは一気呵成、性急で速攻型でありながら快感型の
電気アンマだった。この二つの要素が相反する電気アンマが如何にして出来るのか?
これはネリネが既に濡れている事、高まりの持続なり余韻なりがまだ残っている事、そして
何よりもネリネの弱点を知り尽くしている事、これらの要素が全て揃って、初めて可能な事
だった。前の二つはともかく、今日初めてでしかも亜沙は直接絡んでいないネリネに対し、
いきなり彼女のツボを捉えているのは見事と言うほかはない。亜沙の女の子の観察眼が非常に
優れている証拠だった。麻弓がやった手順をしっかりとトレースし、しかも――。
「こ、こんな凄いの……初めてです……あぅん!! 」
「見ただけなのに……私のやった電気アンマより凄いの? 亜沙先輩のは……」
ネリネの官能的な悶え声に麻弓が思わずゴクリと唾を飲みこむ。そのクチュクチュと淫靡な
音を立てている光景と亜沙の驚異的な慧眼と電気アンマの技術、それに見入ってしまったのだ。
「リンちゃん、行くよ……最後まで。これで……逝きなさい!!」
ぎゅるる……だだだだ……ぐりぐりぐり〜〜……だだだだだだだだだだだだ!!
亜沙はネリネの股間を踵でぐりぐり圧迫し、そこに更なる縦の振動を加えた。そしてそのまま
圧倒的な力で押し込む。ネリネの太股は激しく揺れ、やがて耐え切れなくなったようにキュッ!
っと内股になった。その状態で更に股間に踵が激しく食い込み、直接振動が伝わる胴体は
大きく震え、88cmのバストが激しく揺れる。そして――。
「はぁあああああああああああ〜〜〜!!!!」
ぷしゃぁあああ〜〜〜〜!!
あっという間にネリネは腰をガクガクと震わせながら蜜を吹き上げ、全身を大きく仰け反らせて
絶叫した。そして頂点に達すると急に力が抜け、ガックリと人工芝にお尻をついて脱力した。
正に驚異の秒殺――下地はあったとは言え、それでも恐るべきテクニックだった。
「ふぅ……。まずは一人目」
ぐったりと失神したネリネを他所に、亜沙は額の汗を手の甲で拭いながら立ち上がる。
「前戯がいらないんだから、天国に送るのに時間は掛からないよね……。これで1対5――
次の相手は……誰?」
自分の周囲を取り囲む『敵』達に対し、亜沙は不敵に微笑みかけた。
* * *
「随分と強気ですね。リンちゃんはこの中で一番弱い子ですよ?」
ネリネを倒し、調子に乗りかけている亜沙に楓が釘を刺す。だが、亜沙は笑顔で返した。
「一対多の場合、一人ずつコツコツと倒してくのが鉄則だもん。一対一なら楓、キミにだって
負けたりしないよ」
「そうですか……。でも、それって人間同士の戦いの時の鉄則ですよね?」
「えっ……? あっ……!?」
亜沙の挑発に動じない表情で楓が答え終わった瞬間、亜沙の体がふわっと浮いた。
「きゃあああ!? な、なにこれ!? きゃーーー!?」
亜沙の体が空中で浮いたり沈んだりする。亜沙は懸命にバランスを取ろうとするが思うままに
ならない。
「そのまま人工芝に落としちゃって下さい、リムちゃん」
良く見るとプリムラの目が光っている。どうやら彼女が魔力で亜沙を浮かせたのだ。呪文も
唱えず、僅かな集中と魔力放出だけでこれだけの制御が出来るとは末恐ろしい子だ。
「はい……お姉ちゃん」
プリムラは亜沙を2mぐらいの高さに固定して人工芝マットに移動させると、そのまま魔力の
放出をやめた。
「は……れ? ……きゃああ!? ……ぐはっ!?」
亜沙は急降下し、ガン☆! とお尻から人工芝に落ちた。一応下はクッションになっていたが、
それでも衝撃は吸収しきれず、激痛が全身を駆け抜ける。
「いたた……なんて事するの……」
亜沙が痺れるお尻を擦りながら立ち上がろうとした時――。
「――貰ったッス!」
「きゃん!? ……あうっ!!」
亜沙にタックルを仕掛けたのはシアだった。中腰状態の亜沙の腰にタックルをかまし、
縺れ合って人工芝を滑っていく。
「こ、こら! シアちゃん!! 離しなさい!!」
「だめです! 電気アンマのチャンスだもん!」
「いっ!? ちょ、ちょっと待った! ……ひゃあん!?」
懸命に抵抗する亜沙だが、意表を突かれた攻撃に対応が追いつかない。シアは亜沙の右足を
取ると左足をつかむ前に自分の右足を亜沙の股間にあてがって震わせた。
「きゃあん〜!! シアちゃん、ダメ……ああん!!」
逃げ切れず股間を踵で刺激される亜沙が悶える。片方の足だけをつかんだ『崩れ電気アンマ』
の体勢だ。両足をがっちり固定した電気アンマほど安定しないが、技自体は掛けやすく、
乱戦で先手を打つには効力のある技だ。
「この、この、この〜〜!! うりうりうり〜〜〜!!」
「ひゃあああぁあん!! だ、だめぇ〜〜!!」
このバトルロイヤル中で初めて亜沙が電気アンマで悶えさせられる悲鳴を上げる。
それでも、もう片方の足はとらせまいと巧みにシアの右手をその足で払う。
「う〜〜ん……、巧いっす」
シアは固定型の電気アンマを諦め、膝十字固めの様に両手で亜沙の右足をつかんで体をその
足に巻きつかせた。そして右足の踵でグリグリと電気アンマをする。
「くっ……!? あああぁッ……!!」
亜沙が仰け反って悲鳴を上げる。シアが体ごと巻きついているため、右足の腱に負担が掛かる
状態で股間はしっかりと電気アンマされている。単独のノーマルな電気アンマより股間への
攻撃に自由は利かないが、体に掛けられる負担は大きい。
「くっ……うっ!! や、やるじゃないシアちゃん……」
「はいっ! もっと電気アンマしてあげたいっす♪」
「ボ、ボクじゃなくてもいいでしょ、その相手は……。ま、まあいいけど……シアちゃん、
この掛け方は……逆転もしやすいんだよ?」
「はぇ……? ……ひゃあん!?」
電気アンマを掛けているはずのシアが悲鳴を上げた。亜沙が体勢を立て直し、シアの体と自らの
体が一直線上になるように腰を動かす。そうする事によって股関節の負担が減り、そして――。
「こうやって……ウリウリ〜〜♪」
「きゃあん!? だ、だめぇ〜〜!!」
シアが体を仰け反らせて悶える。亜沙は空いている左足をシアのお尻と人工芝の間に滑り込ませ、
指でそのあたりをかき回したのだ。亜沙の指はシアの股間部分の会陰部と菊門を直撃し、
その度にシアは電気が走ったように硬直して悲鳴を上げる。
(この状態でシアちゃんに隙が出来れば――)
自分の足に巻きついているシアの左足を外すか、右足の動きが止まったところをつかめば、
そのまま一気に『電気アンマ返し』に持っていける。若干シアの方が自分より足が長いようだが
問題のない範囲だ。今は懸命にシアも右足に振動を送って抵抗し、亜沙を悶えさせるが、
亜沙の責めがシアの股間に届いている以上、集中が切れるのは時間の問題だろう。
「あうん……! だ、だめ……集中できない……よぉ……」
シアの頬が官能的に火照ってくる。体勢的には電気アンマを極めているシアの方が有利のはずだが、
亜沙の足技はそのハンデを覆し、シアの股間を責め立てる。
「フフ……も、もう少し……だね……」
ただ、亜沙も責めに徹しているわけではない。シアの電気アンマはしっかりと決まっていて、
やや単調なリズムながらも股間はさっきからグリグリされっぱなしなのだ。この状態で足責めを
敢行するのはかなりの集中力を要し、体力を消耗する。
(け、結構キツイね……この体勢は……。でも……これでシアちゃんを落とせば――)
対戦人数が1対4になる。カレハは向こう寄りとは言え亜沙を攻めてくる事はないだろうから、
実質1対3だ。電気アンマ初心者のプリムラを速攻で下せば、この不利極まる戦いに勝機が
見えてくる。だが――。
「シアちゃん、負けないで!」
「あっ……!?」
シアの股間を責めていた亜沙の左足を取ったのは――麻弓だった。
「ま、麻弓……ちゃん」
「亜沙先輩、この勝負、同時攻撃無しじゃありませんからね♪」
麻弓は亜沙の左足を取ると、そのままレッグスプリットするように大きく開脚した。
「ッ痛ぅ……!! ……アアッ!!」
亜沙が股間を押さえて悲鳴を上げる。ツープラトンの股裂きが極まり、股関節に痛みが走った。
(くっ……! き、効いちゃって……る!)
とっさに体を捻り、股を前後に開かれる体勢に持っていければ股裂きの苦痛はなかったが、
シアが足に巻きついていたのでそれが出来なかった。しかも――。
「私も……こうすれば!!」
「きゃああああッ……!!!!」
亜沙の絶叫がプールサイドに響き渡る。それもそのはず、麻弓もシアと同じく足に巻きつき、
しかもアキレス腱を極めたのだ。亜沙の左足から脳天に掛けて激痛が駆け抜ける。
「うぁああ……!! ぐうぅ……!!」
歯を噛み締め、全身から汗を噴出させて激痛に耐える亜沙。股関節とアキレス腱を完璧に
極められたのだ。並大抵の痛みではない。それに、シアには電気アンマを極められたままだ。
下半身の急所を悉く責められ、亜沙は上半身で悶えて激痛と苦悶に耐える。
「な、なんか……亜沙先輩の様子が変わった?」
「私がアキレス腱を極めたから、なのですよ♪」
「で、でも……私もこうやって足を捻ってるけど、亜沙先輩痛がってないよ?」
「関節技はポイントが違うと意味がないのです。普段から打撃ばっかりだからそのコツが
分からないのですよ、シアちゃん♪」
「う〜〜〜……」
麻弓は得意気に、シアは不満そうな表情で亜沙を挟んで格闘談義をする。されている亜沙から
すればたまったものではない。こうやって二人に足を一本ずつ巻きつかされていているだけでも
膝裏や太股の裏側に大きな負担が掛かるのに、麻弓にはしっかりと関節技を極められ、シアには
電気アンマされっぱなしなのだ。しかも股裂きはツープラトンである。このピンチは簡単には
逃げられない。
「シアさんは足首をつかんで捻ってみたらどうでしょうか?」
関節技に悪戦苦闘しているシアに声を掛けたのは楓だった。にっこりと微笑みかける。
「あ……カエ……ちゃん……」
シアは楓の顔を見ると不安そうに顔を曇らせてしまう。どうやら楓は自分の事を嫌っている
雰囲気だった。嫌っていると言うより疎ましいと感じていると言った方が良いか。
とにかく、友達と思っている子が自分にいい印象を持ってくれないのがとても辛い――。
だが、その楓が自分から声を掛けてくれた。しかも微笑みながら。
「持ち方はこうです……右手で足の指先を――」
「あっ……」
楓がシアの手を掴んで亜沙の足先に導いてくれた。もしかしたら自分の思い過ごしで、本当は
嫌われてないのだろうか? 楓だって嫌いな子の手を触ったりはしないだろう。
「こうして……こんな感じです。そこで力を入れてみてください」
「こ……こう?」
シアが楓の言うとおりに力を入れると――。
「ぎゃああああ……!! いたたたたたた……!!!」
亜沙がバンバンと人工芝を叩いて悶える。どうやら効いたみたいだ。
「アンクル・ホールドですよ。プロレス技が得意でない人にはアキレス腱固めよりこちらの方が
効果的に使えます」
楓はシアを見てにっこりと微笑んだ。シアも思わず微笑を返す。
「あ、ありがとう――カエちゃん! その……教えてくれて……」
それを聞いた楓はシアから視線を外す。そして――
「今だけですけどね――亜沙先輩を責める時だけです」
抑揚のない口調でボソッとつぶやくように言う。友人と親密に話す口調とはとても思えなかった。
「えっ……?」
シアの笑顔が凍りついた。楓はニコニコと微笑んだままだ。だが、技を教え終わると踵を
返してシアから離れ、二度とそちらを見ようとしなかった。
「…………」
シアの心の中は再び曇った。その曇り方はさっきより濃くなっていた。
* * *
シアの心境はともかく、プールサイドでは亜沙への集中電気アンマ責めが続いていた。
「くっ……! あああっ!!」
二人掛りで来られては電気アンマ返しは使えない。しかもアンクル・ホールド、アキレス腱固め、
レッグ・スプリットと3つの関節技も極められているのだ。亜沙の股間にはほぼ無抵抗状態の
電気アンマが執拗に続けられていた。
「シアちゃん、私も電気アンマしたい」
麻弓がシアに提案する。
「あ、うん……交代しようか?」
シアが股間にあてがっていた右足を外そうとすると、
「違うって。ツープラトンでやるのです♪」
麻弓がニッコリ微笑む。確かに通常の電気アンマとは違い、股裂きを掛けながらの電気アンマ
だから二人分の足を股間にあてがう事が出来る。
「うん、わかったっス♪」
少し沈んでいたシアの表情も麻弓の笑顔に同調するように明るくなっていた。割れ目に食い込む
ようにあてがってた踵を少しずらし、麻弓の足が入れられるスペースを作る。すかさず麻弓は
左足をシアの右足と並べるようにして股間にあてがった。
「せーの、で同時に行こうか? 二人同時に電気アンマされるシーンって私も初めて見るよ」
「そうなの? でも、亜沙先輩ならこのぐらい平気っす♪」
「アハハ、そうだねきっと♪ ……じゃあ、始めるよシアちゃん――せ〜〜のッ!!」
だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ…………!!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…………!!
「こ、こら! 二人係なんてズルイ…………はぅうううううぅううううぅううう……!!!」
今までよりも更に大きく亜沙の上半身が仰け反る。ダブル電気アンマの威力は絶大だ。
なにしろ二人分の力で急所を圧迫されるのだ。割れ目に沿う縦の振動、子宮を貫く奥行きの
振動とも強烈で亜沙は大きく身悶えする。
「はぁうあ……あッ! ああッ……!!! ……うッ……くぅん!!」
ショートカットの髪を乱してかぶりを振りながらシアたちの足を退けようとする亜沙。
しかし――。
だだ……だだ……だだだだ……だだだ……ン! だだだだ……だだだだ……だだ…………!!
ダダダ……ダ……ダダダ……ン! ダダダ……ダ……ダダ……ダダダダダダダダ…………!!
「アアアッ……アアッ!!! だ、ダメ……不規則な……振動が……アアア……ゥン!!」
やや右側から来るシアの振動とやや左側から来る麻弓の振動が不規則で、意表を突かれるのだ。
これはかなりキツイ状況だった。電気アンマは来る事が分かっていればある程度は踏ん張れるが
(それでも快楽と苦痛の急所を責められるのだからほんの多少程度だが)、この電気アンマには
それが全く許されない。しかも威力は通常の倍である。
通常の電気アンマなら見出せる『耐えるポイント』が全く見出せないのだ。これは耐える側の
立場であればかなり辛い状況であった。二人掛りの電気アンマは相手の苦痛と快楽をコントロール
する精密さに掛けるが、破壊力そのものは抜群であった。流石の亜沙も今の状態での反撃は難しい。
そして更に――。
「私がこうすれば、もっと面白いかも♪」
麻弓がアキレス腱を極めたままうつ伏せになる。そして持ち方を変えて絞り上げると――。
「きゃああああ……!!」
更なる激痛が亜沙を襲う。麻弓の体勢は裏アキレス腱固めだった。そして電気アンマはと言うと、
「シアちゃん、私の足と縦に半分ずれるようにして交差させて…………そう、上手いよ」
うつ伏せの麻弓の踵がクリトリスと性器を責める位置に置かれ、仰向けのシアの踵が菊門と
会陰部を責める位置に置かれる。二人の足は丁度勾玉の紋様の如く、ぴったりと密着した。
「この状態で責められたら……亜沙先輩、泣いちゃうかも♪」
確かにクリット・割れ目・会陰・アヌス――股間にある女の子の急所を全て押さえた構え方で
あった。しかも二人とも効き足の右足である。威力も十分だ。
「亜沙先輩、降参します?」
麻弓がちょっと意地悪な質問をする。
(降参でいいなら、とっくに降参してるよ――)
亜沙は麻弓を少し強い目で睨んだ。睨まれた麻弓は悪戯っぽく舌を出す。
そう、これは亜沙を屈服させるための電気アンマではないのだ。亜沙が降参しようと反抗しようと
関係ない、亜沙を生贄にして楽しむための電気アンマなのだから。
「ね、ね……。早くやろうよ。どんな電気アンマになるのかな?」
シアがワクワクした表情で麻弓に先を促す。楓と接触するたびに沈みがちになるシアが楽しそうに
してるので麻弓は少しホッとした。
「うん、始めようか――亜沙先輩、覚悟はいいですか?」
「ボクの覚悟なんて関係なくやるんでしょ? さっさと始めれば……うっ!? きゃあああっ!!」
亜沙の返事を待たず、交差式ダブル電気アンマが開始された。
ブルブル……グリグリグリ…………ギュン!! グリグリグリ……!!!
グリグリグリ……ブルブルブル……ブルブルブル……ギュン!! グリグリ……!!
「はうっ……!! あああ〜〜!! ……くっ……ぐっ!! くぉおお……!!!」
二人の息はわざと合わせず、不規則な振動と回転と圧迫で亜沙を責め立てる。
女の子の急所を次々に責められる亜沙は何通りもの違う衝撃が体を貫き、その度に狂おしく
身悶えた。女の子の悲鳴と言うより雌獣の断末魔の様な叫び声をあげる。
「まずは、クリット電撃責め〜〜〜!!」
「これが……アヌス責めっす!!」
「割れ目を突いちゃいますよ、先輩!?」
「ここなんかどうですか……!? えぃ! ……えぃっ!!」
麻弓とシアは4つの急所をそれも不規則な順番で責め立てる。クリットを圧迫されると電気が
流れるような痺れが股間から脳天を突きぬけ、アヌスを責められると背筋がゾクゾクする。
割れ目をなぞられては蜜を溢れさせ、会陰部を踵でグリグリされるとおしっこがしたくなる。
このバリエーション豊かな責めに亜沙はただ絶叫して悶えるしかなかった。
彼女の様なテクニシャンでもこれに抗がう手段はないのだ。
「女の子の急所を責められるのに技術とか経験とかは関係ないですからね」
冷静に――いや冷酷に楓が言い放つ。隣にいるカレハはその表情を見ると俯いた。
カレハは段々亜沙が痛ましくなってきた。あの強い亜沙の事、女の子相手ならば例え1対5で
あろうと十分対抗できる、と何故か思ってたのだ。でも実際は――。
「電気アンマは攻撃力や責める技術はいくらでも高められますけど、防御力や守る術は殆ど
変わりませんから……たとえどんな女の子でも――」
亜沙は未経験者に比べれば圧倒的な経験と技術があっても、自分自身の股間についている急所
そのものを鍛える事は出来ない。ここを責められるのは初心者の女の子であっても効果があり、
亜沙であってもその責め苦から逃れる事は出来ないのだ。
「フフフ……このまま責められてイってしまう瞬間に天国に送ってあげましょうか――。
リムちゃん、手伝ってください」
「はい、楓お姉ちゃん――」
予め打ち合わせしていたのだろう。楓は亜沙の開かれた股間の方に、プリムラは上半身の方に
移動した。亜沙はまだ電気アンマで急所を責め続けられている。
「か、楓さん――あんまり酷い事はしないであげてくださいね?」
カレハが心配そうに声を掛けるのを悠然と楓は無視した。決して、聞こえていないのではなかった。
その証拠に、カレハの声が発せられた時、楓は薄く笑っていた。その表情はカレハにも見え、
彼女は思わず身を竦ませた。
* * *
「ま、麻弓ちゃん……お願い……少し緩めて……せめて……もう逝かせて……」
亜沙は下半身全体を襲う苦痛と快感に全身びっしょりと汗をかき、ぐったりと抵抗できない
状態になってしまった。しかし――。
「うっ………あっ!! ……ああっ!!」
声は段々弱りつつも、麻弓やシアの急所責め電気アンマが繰り返されるたびに体が反射的に
のたうち、苦悶の呻き声をあげてしまう。
「亜沙先輩……その顔、ステキです……」
麻弓は電気アンマしている自分がもどかしくて仕方が無かった。亜沙の電気アンマに耐えている
表情を見るたび、その頬にキスして、耳元に息を吹きかけてもっと悶えさせたくなるのだ。
だけど、ここからは届かない。
(電気アンマに欠点があるとしたら――これね……)
電気アンマは股間責め(愛撫)にはもっとも向いた技ではあるが、技を掛けながら愛し合う事が
難しい――それが残念で仕方なかった。
「亜沙先輩――うりうりうり〜〜〜〜♪」
一方のシアは電気アンマが沢山出来て楽しくて仕方が無い様子だ。さっき麻弓とポジションを
変わってもらい、今はシアがクリットとクレバスを責めている。
「ウフフ……お尻もいいけど、電気アンマはやっぱりここを責めるのが楽しいッス♪」
シアは無邪気に踵をクレバスに食い込ませるようにして振動を送る。麻弓に比べて比較的単調な
リズムだが、威力は強く、持続性があるので責められる亜沙は長い時間苦悶に喘ぐ事になる。
「うぁ……あっ! あっ……!!」
ハァハァと息を荒げて身悶えする亜沙。開脚式の電気アンマなのでキュッと内股になって振動を
押さえたりする事が出来ない。相手が送ってくる振動がモロに体を貫く形になる。
(うう……もう、だめかも……)
このまま後は麻弓とシアがフィニッシュを仕掛けるのを待つだけ――。
そう思って観念し、目を閉じようとした亜沙だが、霞む目の前に楓が立つ姿が見えた。
内心、嫌な予感がして上半身のみ起こす。何故かシアもギクリとした様子で楓を見上げた。
「カエちゃん……。あっ!?」
楓は物も言わず、シアが電気アンマしている足を亜沙の股間から払いのけるように外すと、
自分の足を亜沙の股間に踏み込むように乗せた。
「うっ……!! か、楓――?」
亜沙が楓を見ると、彼女は薄く笑っていた。そしてグリグリと踏みにじる。
「うぁ……! あっ……!!」
亜沙の口から苦悶の呻きが漏れた。さっきまでの麻弓やシアの電気アンマとは違う。明らかに
股間に苦痛を与えるために踏みにじっているのだ。
「か、カエちゃん?」
シアが止めようとしたが、楓に一睨み去れると動けなくなった。今の楓とシアは蛇と蛙の様な
ものだった。シアは楓の視線を常に気にして、楓に睨まれると体が竦んでしまう。
(どうして、そんな不健全な関係を作ってしまうのかな……)
亜沙は急所を踏みにじられる苦痛に呻きながらも楓とシアの関係を気にせずにいられなかった。
「稟君に……手出ししないって……約束できます?」
「えっ!?」
唐突な楓の申し出に亜沙は戸惑った。だが、それは喧嘩の時に話をつけた事では……?
「稟君に朝の挨拶をしたり、お弁当を作ってあげたり、胸を押し付けたり――これ見よがしに
自慢気に私に見せつけないって誓うなら、蹴らないであげます」
「な、何を言ってるの!? それはさっき……あうっ!?」
口答えをしようとすると楓がグリッと急所を踏みにじる。その苦痛に亜沙は楓の足を両手で
掴んで止めようとするが、楓のほうは何度もグリグリしてくる。力の入らない体勢では
その動きを緩める事ぐらいしか出来なかった。
「うう……くっ……うう……」
「痛いですか? あれだけ電気アンマされたんだから大丈夫ですよね? 今だってクチュクチュ
……って」
楓は自分の踵が濡れているのを笑うが、例え濡れていようとも敏感なクレバスを踏みにじられて
痛くないはずがない。楓の残忍とも言える行為に、そばで見ている麻弓やシアは顔色を失う。
「楓、やめようよ――亜沙先輩をいじめるのは楽しいけど、今の楓のやり方はちょっと――」
「今の私のやり方は――陰湿ですか?」
止めようとする麻弓に楓はニヤリと笑いかけた。その嫌な微笑みに麻弓はゾクリとする。
「私が陰湿なのは麻弓ちゃんも知ってるでしょ? 私にはシアちゃんの様に明るく振舞ったり、
麻弓ちゃんの様にみんなを楽しくさせたりなんて出来ないんです」
「楓! ……その話はさっき言ったじゃない。自分を嫌いになっちゃダメだって、亜沙先輩が――」
「私は亜沙先輩の様に立派な人間ではないんです。誰にでも優しくて頼りがいがあって――
そんな人と人格で勝負になるわけありません……。だから――」
「だから――倒すしか……ない?」
突然、息も絶え絶えの亜沙に言われ、ビクッと震える楓。だが次の瞬間には見下すように
亜沙を見る。
「ええ、そうです。倒すと言うか、力で屈服させると言うか――。亜沙先輩、今この状態で何度も
力一杯蹴られたら、大変じゃないですか? その前に降参してさっきの誓いをします?」
「降参しないし、誓わない――それ以前に黙って蹴られてるつもりもないけど?」
亜沙が一瞬の隙を突いて体を反転させようとする。しかし――。
「無駄な事を――」
「――!? な……なに、これ!?」
楓が呟いた時、亜沙の全身は何かに縛められたかのように動かなくなった。まるで人工芝に
張り付けられたようにバン!と大の字状態で動けなくなる。何か透明の手かせ足かせを嵌め
られた様に――しかし、そんなものはない。
「魔法ね――リムちゃん?」
亜沙は辛うじて動く首を回してプリムラの姿を探した。プリムラは張り付けられた亜沙の
頭上近辺に立っていた。魔力を放出しているらしく瞳が煌いている。
「リムちゃん! 止めなさい!」
カレハが呼びかけるが、プリムラはかぶりを振った。
「……どうして楓の味方をするの?」
張り付けられている当の亜沙がプリムラに聞く。プリムラは表情を変えずにその亜沙を見つめて
いたが、やがてポツリと呟いた。
「私だけでも味方してあげないと……楓お姉ちゃんが一人ぼっちになっちゃうから――」
「リムちゃん?」
意表を突かれた様な楓の声が聞こえる。だが、亜沙はそれを聞き、にっこりと微笑んだ。
「優しいんだね、リムちゃんは――それでいいよ」
そう言うと亜沙は瞳を閉じる。体も脱力し、身動きもしなくなった。
「な……。何を言ってるんですか、先輩? この状態で無防備に急所を蹴られるんですよ?
こ、怖くないんですか!?」
絶対有利なはずの楓の声が上ずっている。亜沙は何も答えない。瞳を閉じたままだ。
この無防備な状態で、まるで何かに集中しているかのような――。
「――!! この……!!」
自分の脅しを無視され、楓はそれを挑発と受け取った。大の字になった亜沙の足の間に立ち、
蹴り足を思いっきり引く。そして、思いっきり蹴りこんだ。
「亜沙ちゃん!」
無防備な急所への容赦ない蹴りが放たれたのを見てカレハが悲鳴を上げたその時――。
シュワァァァァァ――!!
「きゃあ!?」
亜沙の体から緑色の光が発せられる。同時に何かが弾ける音がした。光の眩しさに楓は蹴り込む
事が出来ず、その光から目を逸らした。
「魔法が――?」
プリムラが目を見開く先にはゆっくりと立ち上がる亜沙の姿が見えた。
しかし――これが亜沙?
「な……!?」
「こ、これは――!?」
「亜沙ちゃん――?」
周囲にいた麻弓・シア・カレハもただ呆然と見守るばかりだ。
立ち上がった亜沙は「ふぅ……」と一息つくと、目元に掛かる髪をかきあげた。
しかしその髪は……いつものトレードマークでもあるショートカットではなかった。
亜沙はこの短い時間で腰まであるロングヘアーに変わり、その髪自体も緑色に発光している。
「亜沙……魔族の力を解放したね――」
プリムラがじっと亜沙を見つめる。どうやら亜沙は本来持っていた魔力を解放したらしい。
そしてそれはプリムラの持つ力と同種の波動を有していた。
やはり、プリムラと同じ人工生命体である亜麻の血を引くからだろうか。
「楓――」
魔力のオーラが周囲から立ち上る亜沙の迫力に楓は一歩後退りする。
「そんなやり方じゃ何も解決しないって……言ったよね? 分かろうとしないのなら……体に
叩き込んであげる!」
亜沙は腰まである長い髪をかきあげ、昂然と楓を見据えた。