* * *
プリムラが気持ち良い電気あんまで昇天している頃――。
「麻弓さん……お願いですから、もう許してください……」
追い詰められた全裸のネリネがしくしくと泣いている。麻弓はまだ虹色のビキニを
装着したままだ。この不公平感が更に恥かしさを増幅させている。
「許してって……ネリネちゃん、何か悪い事したっけ?」
とぼけるように言う麻弓。表面上は平静でいるが、目はその内心の欲望を表すかのように
爛々と輝いている。だが、それを隠す気も無いようだ。
「ひどい……。どうして私ばっかりいじめるんですか!?」
普段とは違う麻弓のあまりのネチネチとした執拗さに、ネリネはついに切れたか、
キッと睨みつけた。だが、魔界のプリンセスとは思えぬぐらい怖くなく、愛らしい。
ネリネは優しくて、稟の事ならともかく自分の事では本気では怒れないのだ。
そのネリネの一挙動ごとに麻弓の胸はキュン!とときめいてしまう。邪悪なときめきであるが。
「どうしてって……。だって、リンちゃんのせいだもん」
麻弓はネリネが睨みつけるとワザと目をあわさず、髪をかき上げる仕草をする。
「な……!? わ、私が何をしたって言うんですか!」
ネリネは麻弓の的外れとも思える言い分に唖然とする。
「何をしたって……。あのね、リンちゃん。それだけ可愛い声で鳴いて、可愛い仕草で
悶えて誘惑しておいて……それでなんともなく終わるなんて事、ありえると思う?」
「ゆ……誘惑!? 私そんな……!」
「あ〜、あ〜、もう! 言い訳ばっかりしないでくれる!?」
目を白黒して反論しようとするネリネに、逆に麻弓がキレた。
「いい、リンちゃん? 私はね、これでも相当我慢してるんだよ? 本当だったら
みんなをここへ呼んで、全員でリンちゃんを虐める事だって考えたんだから。ここにいる
全員から絶え間なく電気あんまをされる体験、してみる?」
「……そ、そんな……」
「それをしないのは何故だかわかる? 私、リンちゃんの事が大好きなの。いつまでも
いいお友達で仲良くしたいって思ってるんだよ?」
「う……」
そう思ってるのなら虐めないで欲しい、とネリネは口に出したかった。
「だから虐めるのは私一人で、せめて私が誠意を尽くしてリンちゃんを可愛がれば、
リンちゃんだって納得してくれるでしょ? ちょっと虐めただけでその何倍もの
魅力を振りまかれて私は大変なんだけど、リンちゃんのために我慢しようって
頑張ってるんだから……私の気持ち、分かってくれるよね♪」
「……そんな」
ネリネからすれば屁理屈も甚だしい麻弓の言葉だが、半ば自己陶酔気味に語る麻弓は
それが方便でも言い訳でもなく、心から信じている様子だった。その表情を見て
ネリネは思わず後退りする。
「だから、私はちっとも悪くないの。全部、リンちゃんのせいなんだからね」
自分の雄弁な語りを聞きながらも、いまだに頑なな表情のネリネを見て、どうしてこの子は
こんな事も分からないのだろう? と言わんばかりに、麻弓は大きく溜め息をつく。
「そんな……でも……」
助けを求めようとネリネは周囲を見回したが、みんな視線が合うと首を振ったり、自分から
目を逸らせたりした。この件について彼女達は圧倒的に麻弓を支持していた。麻弓の言う事の
方が正しい。自分達だってそんな状況になったら――それが自然に出るものであろうと、
ネリネが『魅了』で相手を誘惑したのだから、そういう目に遭っても仕方が無いのでは?
と全員が等しくそう思っていた。
「……と言う事、なのですよ♪」
得意気ににんまりとネリネに笑いかける麻弓。その表情がいつもの麻弓そのものである事に、
ネリネは逆に不安を覚えた。
* * *
麻弓はネリネをゆっくりと押し倒すと、そのまま両足を取ろうとネリネの足元に移動した。
「ま、麻弓さん……お願い……。一つだけお願いを聞いて下さい……」
ネリネが哀願する。電気あんまをしようと気を入れたタイミングだったので麻弓は気が
削がれる所だったが、ネリネが切実そうに見つめているので話を聞いてやることにした。
「お願いってなぁに?」
「あの……」
ネリネは真っ赤になった。
「麻弓ちゃんも……裸になって欲しい……です」
消え入りそうな声だったが、麻弓の耳にはしっかりと入っていた。
「……わ、私も!?」
驚く麻弓。ネリネはコクリと頷く。
「う〜〜〜ん……」
思わず電気あんまの手を止めて真剣な表情になる麻弓。真剣な表情と言うより、少々
困惑した表情か。既に半分以上の子が全裸もしくは半裸状態のプールだ。今更脱ぐのが
嫌なわけではないが……。
「私の裸なんて……つまらないよ?」
ボソッとつぶやく麻弓にネリネが驚いたような表情を見せた。
「どうして?」
「どうしてって……その……」
麻弓は自分の胸とネリネの胸を見比べた。ネリネのほうが麻弓より小柄なのにこの
大きさ……。自分のコンプレックスに更に拍車をかけられる気分になる。
しかし、ネリネは……。
「麻弓さんの裸……とても綺麗だと思いますよ」
ネリネは全裸電気あんまされる体勢でいながら、ニッコリと微笑んだ。
その目は優しさを湛え、いやみや皮肉など微塵にも無い事が麻弓にも分かる。ネリネは
本心から言ってくれているのだ……だけど――。
「私……。やっぱり自信ないよ……」
麻弓は小さく呟く。
「麻弓さんはステキですよ」
それに対し、ネリネの言葉はハッキリしていた。気弱げなネリネにしては珍しく自信
たっぷりの表情だ。
「肌も滑らかだし、何より活発そうで……。躍動感のある魅力は私には絶対出せません」
麻弓の足をサラリと撫でるネリネ。ビクッ!と麻弓の体が反応する。
「麻弓さんにされてもいいから……私もしたいです。麻弓さんの裸のソコに……」
ネリネが頬を赤くしながら麻弓のビキニの下に覆われている部分を見つめた。裸で
電気あんまのかけあいっこをしようと言っているようだ。
「う……」
ネリネに恥かしい所を見つめられて麻弓も全身が赤くなったが、
「わ、私……手加減しないよ? リンちゃんがそれでもいいならその条件、飲んだ!」
わざと強気に振舞う。
「いいですよ、それで」
ネリネはにこやかに笑った。麻弓の恥かしがる表情が気に入ったらしい。
「麻弓さんだって……魅力で人の事を言ってる場合じゃない事を、教えてあげます」
ネリネの強気な言葉は少しだが魔界のプリンセスらしい驕慢さがにじみ出ていた。
* * *
「こ……これでいいの?」
麻弓が虹色ビキニを外し、恥かしそうに胸を押さえる。股間の縁取りよりも胸を見られる
ほうが恥かしいようだ。
「麻弓さん、隠さないで下さい」
「い、いや……」
「どうしてですか?」
「だって……リンちゃんとまともに比べられるじゃない……」
麻弓は不平そうに言う。神様はなんと不公平なのだろうか? 先天的に大差がついている
ネリネの胸を見ながら天を仰ぐ。
「こういうのって、大きさだけじゃないと思うんですけど……」
「……ある人が言ったって説得力ゼロだと思う」
「では、体で証明してみます?」
「え? それはどういう……きゃああ!?」
なんと、ネリネがいきなり麻弓を押し倒してきた。胸を手で覆っている分、麻弓のほうが
動きは鈍く、あっという間に押し倒されてしまった。
「フフフ……さっきから麻弓さん、可愛らしいから、電気あんましたくなりました♪」
ネリネが魔界のプリンセスを匂わせる小悪魔的な表情で麻弓を見ながら、彼女の両足首を
つかんだ。
「ふ、ふ〜〜ん……随分強気だけど、電気あんま返しが待ってるのを忘れた?」
麻弓が傲然と言い放つ。しかし、若干先程より恥かしげな表情だ。裸の状態で電気あんま
されるなど初めてなのだから仕方が無いが。
「でも……」
ネリネがクスリと笑った。
「そうやって胸を押さえていたら、返せなくないですか?」
スルリ……とネリネの右足が麻弓の太股の間に忍び込んできた。
「クッ……!」
とうとう、麻弓は言い返すことも出来なくなる。ネリネの足は麻弓の股間にあてがわれた。
「こうやるんでしたっけ……?」
ネリネは麻弓の性器にあてがった踵をゆっくりと捻る。
「あっ……!!」
ビクン!と麻弓の体が反応した。最初にやられた時は懸命にごまかしたが、今のシチュエーション
では全く抵抗できなかった。
「ふ……ううっ!」
麻弓が懸命に太股を捩じらせて抵抗する。しかし、ネリネの足はしっかりと股間を捉えて
いて、太股の動きでは到底追い払えない。
「麻弓さんのここの毛の感触……柔らかくて気持ちいいですよ」
「な……! ……はぅん♪」
ネリネの挑発的とも言える言葉に、さっきまで優位だった麻弓が反発しようとするが、
ゆっくりと擦るように足の裏で草叢をなで上げるネリネの愛撫に小さく悶える声しか
出せない。
「これが本当の電気あんまの効力なのですね? さっきまでの麻弓さんにされていたのを
参考に見様見真似ですけど、初めに私がしたのより、良いですよね?」
「う……あっ……!」
麻弓は髪を乱しながら悶えるだけだ。初めの時の様に答えないのでなく、答えられないのだ。
元々優しいネリネの電気あんまは力加減は絶妙だった。しかし、今されているのは
ポイントをしっかり押さえて、テクニックも上々のものだった。
自分がされている時に女の子の弱点とそこを責める方法を覚えたのだろう。柔らかい恥毛を
なで上げた後は、割れ目に沿うように指でつついたり、クリトリスを挟んだりして、
性器に振動を与える合間に色々な技をも仕掛けてきた。
(は……反撃しなきゃ……)
麻弓は悶えながら朦朧とする意識でネリネの電気あんまを返そうと、その右足を取る。
……が、それは簡単に弾かれてしまった。
「う……! なぜ……?」
「麻弓さん、片手を胸に当てたままじゃ捕り手に力が入らないのは仕方が無いと思います」
ネリネがクスクスと笑う。麻弓もそれに気づいた。どうやら無意識のうちに胸を庇って
いたようだ。片手だけの動きでは力が入らないのは当たり前である。
「電気あんま返しがなければ怖いものはありません。麻弓さん、形勢逆転ですよ?」
ネリネの得意気な表情に麻弓は歯噛みしたが、どうしても胸から手を外す勇気は出ない。
そして……。
「ああああああああ〜〜……。うぐっ……ん!」
ネリネの送り込む振動が段々強くなってきた。麻弓の全身は紅潮し、ピンク色に染まった。
荒い吐息が艶めかしく、近くで見ていたカレハやプリムラも思わず溜め息をつく。
(こ、このままじゃ……負けちゃう……)
ほんの少し、隙を見せただけ、と言ってよい。だが絶妙のタイミングでネリネは電気あんまを
仕掛けてきた。胸のコンプレックスは半ば自虐的に解消したつもりだったが、肝心な時に
それがあだになるほど気にしていたのか?
「今、麻弓さんが不利なのは麻弓さんのせいですよ」
ネリネが悪戯っぽく言う。
「あぅん……。……ど、どういう……こと……?」
「麻弓さんが自分の体の美しさを理解してないからこうなるんです。今の状況になったのは
私の駆け引きが上手く行ったのじゃなくて、麻弓さんが自爆しただけですよ? 隠さなくて
もいい胸を庇っているのですから」
クスクスとネリネが笑った。この口調は……さっきどこかで……。
(私が言った言葉と同じ……?)
ネリネが虐められるのはネリネが魅惑的だから――。麻弓はそう言ったのだった。
その言葉はみんなも同意していた。
では今のネリネの言葉は――?
麻弓にはそれを確かめる勇気は無かったが、
「皆さん、私の言葉に同意してくださってるようですよ」
ネリネがわざわざそれを確認してコメントしながら、グリグリと強く踏みにじる様に電気あんまを
強める。麻弓の体が反応したが、痛さによるものでは無さそうだ。
十分にマッサージされたそこはネリネの足もぐっしょりと濡らしている。
それを悟られたであろう羞恥に麻弓の頬は真っ赤に染まる。
「リンちゃん……本当にそう思う?」
「何がですか?」
「リンちゃんが言った、その……。私が……綺麗だって……。も、勿論! リンちゃんは優しい
から世辞を言ってくれたと思うんだけど……」
「お世辞なんか言いませんよ、麻弓さん。私の命を賭けたっていいです」
「い、命って……。あ……う……」
ネリネの珍しい断定口調に言葉を失いかけたが、
「だ……だったら……。見せても……恥かしくない……よね?」
真っ赤になって視線を逸らせながら言う麻弓にネリネは即座に頷いた。
「わ、わかった……。外してみる。……わ、笑わないよね?」
「もし麻弓さんの綺麗な胸を見て笑う人がいたら、私はその人が誰であれ一瞬で蒸発させて
あげます」
「そ、そこまでしなくてもいいけど……。え、ええ〜〜い!!」
麻弓は意を決して胸を隠していた両手を広げた。周囲からおおっと歓声が上がる。
「ちょ! な、なんでみんな見てるの!?」
「だって、麻弓ちゃん、なかなか見せてくれないから気になって……」
「なんだか、ドキドキしましたわ♪」
亜沙とカレハがニコニコと微笑みながら言う。
「麻弓ちゃん……綺麗……。ね、カエちゃんもそう思うよね?」
「ええ、勿論」
元気なシアと少し暗い表情の楓も賞賛する。確かに麻弓の胸は隆起こそそれほどないが、乳首は
ピンクで、肌も沁み一つ無く綺麗だった。
「これならあの緑葉クンだって大喜びだと思いますよ」
「だ、だから、あれはどうでもいいの!! ……うう、恥かしいよぉ」
麻弓が恥かしさで顔を覆うと――。
「その恥かしい事を私は麻弓さんにずっとされてきたんですからね。少しは反省してください」
ネリネが拗ねたように言うとグリッと強めの電気あんまを加えた。
「あ、いたたた……! り、リンちゃん! ちょっとだけ痛い……」
「今までの罰です。少しいじめちゃいます」
「あ、だめ……! 踵でグリグリはだめ……ああああっ!!」
ネリネは踵グリグリあんまを麻弓の股間にお見舞いする。ネリネらしくないいじめ方だが、
今までされてきたことがどんなに恥かしくて辛いことなのかを麻弓に思い知らせるために、
心を鬼にしていじめタイプの電気あんまを続けた。
「いいなぁ〜、リンちゃん」
シアが指を咥えてネリネと麻弓のやり取りを見ている。
「どうしたの、シアちゃん」
亜沙が聞くと、シアは羨ましそうな表情で振り返った。
「だって……。この水上プロレスパーティは麻弓ちゃんと私で計画したんですよ」
「え、そうなの?」
「はい。で、そもそものきっかけが、前に麻弓ちゃんに電気あんまされた仕返しを麻弓ちゃんに
したいからって私が言ったことなのに、リンちゃんがしてるなんて……」
「フフフ……そんなの、ずるい?」
「はい。ずるいっす!」
「でも、今はあの二人、いい組み合わせになってるし、またチャンスがあったらね。それより
シアちゃんにはボクのお手伝いをしてもらわなきゃ」
「亜沙さんのって……カエちゃんに『フルコース』?」
「そ♪ 今、楓は気落ちしてるみたいだから、たっぷりとサービスしてあげなきゃね♪」
「…………」
亜沙の言い草にも無表情の楓。今は俎板の上の鯉の心境なのだろうか?
(そんなのだったらいいんだけど……これはこの後に引きずりそうね……)
シアと一緒に笑っている亜沙の目が一瞬鋭く楓を見た。
「り、リンちゃん……! そ、その電気あんま強すぎるよ……あぅん!!」
こちらでは相変わらず麻弓が悶えていた。悪戯よりはちょっときつめの電気あんま。お仕置きほど
強くは無いが、その中間ぐらいのネリネなりのお仕置きバージョンなのだろう。踵グリグリでの
急所責めは力はそれほど入ってなくともかなり子宮に響いてくる。
「いいえ、麻弓さん。この機会を逃したら麻弓さんが自分も『狩られる側』だと言う自覚を持って
いただけませんから。だから容赦しません!」
「か、狩られる側って……なによぉ〜〜!! くぅう〜〜!!」
漸く胸から手を離したので抵抗がある程度出来るようになったが、絶対ピンチの状況は変わらない。
このままでは麻弓はネリネに負けてしまう。
(そ、そうだ! さっきと違って今は……。よぉし!!)
ネリネの電気あんまに苦痛と快楽の狭間を漂わされながらも、麻弓は今の自分の状況を考える。
さっきと違うのは、自分の両手が自由な事。それならば、『あれ』が使える。
「い……いい気になってるんじゃないの、お姫様!!」
「えっ!? きゃっ……!!」
ネリネの電気あんましていた足が掴まれ、そのまま麻弓の方に引き寄せられた。そして麻弓は
左足も掴もうとする。
「こ、これは……だ、ダメです!!」
足をバタつかせて必死で抵抗するネリネ。そう、これは『電気あんま返し』のパターンだ。
このままではネリネは麻弓に電気あんまを極められ、そうなれば今までの恨みもあって二度と
解放してくれないだろう。
「こらっ! 暴れるんじゃない! たっぷり仕返しさせてもらうんだから!!」
「イヤです! イヤ!! ……だって麻弓さん絶対離してくれないでしょ?」
「当たり前でしょ! フルコースの刑よ。綺麗な女の子に生まれた事を後悔させてあげるから!」
「よ、よくわからないけど……そんなのヤです!!」
体を捩ってじたばたと抵抗する、が、麻弓は段々と深く足を交差させていった。
女の子が二人、裸同士で足を絡ませあう姿は四十八手の松葉崩しにも似て官能的だ。
「無駄よ、リンちゃんの運動神経で逃げられるわけ無いでしょ!?」
暴れる足に手を焼きながらも徐々に麻弓が優勢になる。ネリネの右足を掴んで引き寄せ、自分の
左足はネリネの太股の間に割り入れた。後は左足を掴めば電気あんまは貰ったようなものだ。
「む、無駄でも抵抗します……えい! ええいっ!!」
「こ、こら! そんなに思い切り踵で蹴りこんでくるな! いたっ! 太股に当たったって!」
「し、しりません! えいっ……え〜〜〜い!!」
「わっ! む、無茶しちゃダメ!! そんなに思い切り蹴ったら……なぐわっ☆!?」
「え……? な、なんか固いものを蹴っ飛ばしたような……あっ……!!」
ネリネが気がついたときには、彼女の踵は深々と麻弓の股間の急所にめり込んでいた。
ぐわ〜ん☆……!! と、悲痛な命中音と同時に周囲の時が一瞬止まった。
暫くの間、麻弓は硬直したように動かなかったが、ネリネの足を退けると股間を押さえ、
声にならない呻き声をあげて立ち上がり、防護柵まで歩いて片手を突いて痛みに耐えていた。
股間を押さえるもう片方の手は振るえ、嫌な汗がぽたりぽたりと額から落ちて地面に水溜りを
作る。良く見ると全身からびっしょりと汗をかいていた。その格好で恥骨が痺れる痛みと
性器から子宮が収縮するようなショック状の苦しみの二重奏に懸命に耐えていた。
じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん………………。
まるで悠久の時間が流れるかのような静寂が麻弓の周囲を包んだ。
「ま、麻弓さん……。だ、大丈夫……」
「ま……まだ触らないで……痺れているの……」
「は、はい……」
わざとではないが自分が蹴ってしまった事に責任を感じ、ネリネが心配そうに麻弓の傍に
寄って行ったが、麻弓はそれどころではなく、とりあえずこの痛みに耐えるので精一杯だった。
女の子の急所を打った時の対処法など無い。ただひたすら、痛みと痺れと苦しみが去って
くれるのを待つしかなかった。楓のときの様に悲鳴を上げて転がってのたうったりしても
結局はそれで痛みを紛らす事にしかならない。頭が真っ白になる痛さは同じなのだ。
しかも、麻弓の場合、無防備の状態で蹴られてしまった。楓の時はビキニ一枚があったのだが。
「あらあら……やっちゃったね、リンちゃん。ま、電気あんま対決の時には良くあること
だけどね♪」
亜沙の位置からは内股にキュッと窄みながらも、丸いぷりぷりとした麻弓のお尻が小さく
震えているのが見える。
股間を押さえて懸命に耐えているのが一目瞭然で、少しサディスティックな所のある亜沙は
思わずゾクゾクしてしまうのを隠せない。
「ボク達は3人ともあれを経験したもんね〜。あれって本当に堪らないのよね。麻弓ちゃんの
気持ち、すごく良く分かるな〜♪」
なんだか楽しそうにその様子を語る亜沙。シアは心配そうに麻弓を見ながら亜沙の様子を見て
半ば呆れ、その亜沙に急所攻撃をした当人の楓は彼女の様子を見ていたが、また目を伏せて
物思いに浸る。
「……つ〜〜〜〜☆」
涙目で耐えていたが、麻弓はある程度落ち着くと軽く飛んだり、両拳で叩いたりした。
「大丈夫ですか……麻弓さん」
痛みの第一波が去ったと見てネリネが麻弓の背中を擦る。それで効果があるかどうかは分から
ないが何もしないよりはマシかも知れない。
「ああやっても……痛みは消えません。気持ちは分かりますけど……」
急所を打った時、麻弓がしたように太股を叩いて対処をした楓が呟く。
「そうね〜。でも、じっと我慢してるのって凄く辛いし、しょうがないかも♪」
クスクスと亜沙が笑う。意地悪なのではなく、気持ちが分かるからこそ笑うしかないんだ、と
楓は理解していた。股間を打った女の子の気持ちは同じ体験をした女の子にしか分からない。
だが、意にそぐわぬ急所蹴りを喰らわせてしまった当の加害者のネリネは、亜沙の様に暢気では
いられなかった。
「ど……どうしよう……」
涙ぐみながらでオロオロと麻弓の周囲をそわそわと行ったり来たりしている。自分に何か出来る
ことは無いだろうか……。そうだ、自分のヒーリングを使えば……。
「ま、麻弓さん……わ、私が手当てします」
ネリネが右手に魔力を溜める。
「え……? あ、その……いいよ、痛みはだいぶ治まったから……」
「でも……急所を打ちましたから……。簡易の治癒魔法でも少しは楽になりますよ?」
ネリネは半ば強引に麻弓の股間に手を当てようとする。
「あ、だ、だから……いいってば! アハハ……」
照れたように麻弓は後退りする。実際に恥かしいのだ。治療とは言え、恥ずかしい所をじっくり
見られて手当てされるのは。だが……。
「う……いたた……」
2,3歩歩いただけで麻弓は股間を押さえてしゃがみ込む。やっぱりズキズキと痛みは残っている。
股間を打って痛い事を悟られるのは女の子としては恥かしいが、やせ我慢をし切れる痛さではない。
「ほ、ほら! 全然大丈夫じゃないですよ? 恥かしがってちゃだめです……」
「あっ……」
ネリネは麻弓を寝かせると瞳を閉じて呪文を唱えた。そして恥かしがる麻弓の手を優しく退け、
股間の患部に自分の魔力を集中した。
「あ……ん……っ」
麻弓はその暖かな光が股間に当てられた時、小さく呻き声を上げる。無論痛かったからではない。
その逆に、痛みがスッと引き、気持ちが良かったからだ。
「ふわっ……ん……! ああっ……」
簡易の治癒呪文とは言えかなり楽になった。少なくとも股間のズキズキが収まっただけでも
とてもありがたかった。
しかし、ネリネはじっと麻弓の股間を見つめている。そして何かを決心したかのように深呼吸をした。
「まだ……です……」
麻弓の足の間で四つん這いになり、顔を麻弓の秘裂に近づけていく。
「リンちゃん?」
麻弓はネリネの様子が少し変わったのを見て起き上がろうとするが、その前にネリネは麻弓の股間に
顔をうずめた。そして舌先を尖らせ、秘裂に沿って舐め上げる。
「ひゃうん!? ……り、リンちゃん?」
「動かないで下さい、麻弓さん……」
ネリネは尚も舌先で掬うように麻弓の股間を舐め上げた。菊門のあたりから、会陰部、ヴァギナ、
尿道からクリトリスに至るまでを丹念に丁寧に……少しざらっとした感触の舌が麻弓の敏感な
部分に触れ、思わず背筋に電気が走ったような刺激が突き抜ける。
「はぅうん! り……リンちゃん……。だめ……。あぅん!」
「気持ちいいですか、麻弓さん?」
ピチャ……ピチャ……、と犬がミルクを舐めるような淫靡な音が辺りに響き渡り、麻弓は羞恥の
あまり全身が真っ赤になりながらも、そのゾクゾクと震えるような快感に身悶えしてしまう。
ネリネは更に舌先をナイフの様に尖らせると麻弓のクリトリスにあてがい、細かな振動をドリルの様に
して与えた。ぶるぶるぶる……ぶるぶるぶる……ある程度まとまった振動を断続的に与え、リズムが
単調にならないように工夫した責め方だ。
「はぁわあああ!!」
ビクビクビクッ!!と麻弓の体が震え、背筋を大きく仰け反らせる。
(こ……これは……。気持ち良すぎる〜〜!!)
ネリネはこんなテクニックをどこで磨いてきたのだろう? ここまでの様子からは性技に長けている
とも思えなかったが……。
「り、リンちゃん……どこでこんな事を覚え……たの?」
「……? いえ? 習ったわけではありません」
「そう……なの? だ、だって……気持ちよすぎるよ……これ……はぅん!」
「麻弓さんがそう感じてくれたら……嬉しいです」
ネリネは喋りながらも舌先でクリトリスをつついたり、割れ目にキスしたりしている。
股間強打で充血して敏感になっている性器に、この魔性の奉仕を受ける麻弓はたまったものでなかった。
秘裂からはどくどくと蜜が溢れ、その度にネリネがまるで花に集る蜂の様に「ちゅ〜〜」と音を
立てて吸い上げる。その行為のたびに麻弓は悲鳴に近い喘ぎ声を上げさせられた。
その淫靡な様子は他のメンバー達の目も釘付けにした。
既にお互いの体を愛撫しあっていたプリムラとカレハは、麻弓のよがり声を聞いて更に燃え上がり、
お互いの唇を求め、胸をまさぐりあう。シアや楓も息を呑み、麻弓から目が離せないでいた。
舌先で性器を刺激するだけでここまで麻弓をメロメロにしてしまうネリネのテクニック。
もしこれがネリネ自身の工夫や相手に奉仕する気持ちだけでやっているとしたら、とてつもない
才能だと言わざるを得ない。
(けど……魔族のプリンセスだったら、そのぐらいの資質はあってもおかしくないかもね)
ネリネと麻弓の様子を見ながら亜沙はそう思った。彼女自身も人知れず自分の股間を慰めんと
ばかりに両手を太股の間に挟み、頬を紅潮させている。
「も、もう大丈夫……だよ、リンちゃん」
このままでは逝かされて失神してしまうと思った麻弓は多少強引にネリネの頭を自分の股間から
退かせた。ネリネは素直に従ったが、口を拭った彼女の頬も興奮で紅潮していた。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……。あ、ありがとう、リンちゃん。痛さは……収まったよ」
散々オーラル攻撃に悶えさせられ、息を弾ませながらもにっこりと微笑む麻弓だったが、ネリネは
顔に手をあて嗚咽を漏らしていた。
「ど、どうしたの、リンちゃん?」
驚いて麻弓が半身を起こす。
「だって私……麻弓さんの大事な所を思いっきり蹴っ飛ばしてしまって……」
ネリネはぺたんと座り込んで泣き出す。
「あ、そ、それならいいよ! り、リンちゃんはわざとじゃないんでしょ?」
逆にオロオロしてしまう麻弓。
「でも……思いっきり蹴飛ばした事には変わりありません……大事な所なのに……」
ネリネはシクシクと泣いたままだ。こういう泣かれ方が一番困る。どう宥めても悪い方にしか
考えてくれない。ネリネ自身は自分を責めないと自分を許せないので余計にそうなってしまう。
(困ったなぁ……)
麻弓が手を拱いていると、
「麻弓さん……。私に仕返しをしてください……」
「え?」
ネリネの声を聞き振り返ると、彼女は仰向けに寝た状態で麻弓に向けて軽く足を開いていた。
「り、リンちゃん……その格好は……? それに、仕返しって……」
「で、ですから……」
ネリネも躊躇していたが、すぐに決心したように思い切って言った。
「私の両足を掴んで思いっきり踵蹴りを食らわせてください……女の子の……急所に……」
ネリネはギュッと固く目を閉じていた。上半身も身を固くしている。急所蹴りの衝撃に耐える
ためだろう。それでいながら、足は内股気味だがちゃんと開いていた。蹴るのに邪魔にならない
ように……だろうか。健気にも急所を蹴られる恐怖を懸命に堪えているのだろう。
「ちょっ! そんなの……いいよ。いいよと言うか、ダメだよ! リンちゃんはわざとじゃないし、
あれはちょっとした、よく起こる事故なんだから」
「でも、それでは私の気がすみません……。麻弓さん、私をいじめたいって言ったじゃないですか?
そのつもりでやってもらえれば……」
「なっ……!? そ……そんなのは違うよ!!」
麻弓が声を上げたのでその場にいる全員がこちらを見た。麻弓も自分自身の声に驚き、思わず
首を竦めて深呼吸する。そして落ち着いた表情でネリネを見つめた。
「あのね、リンちゃん。私、確かにリンちゃんをいじめたいって言ったし、意地悪な事をしたりも
したよ。だけど、それはこういう事をするためじゃないの。仕返しとか憎しみでリンちゃんを
虐めたいんじゃない。私は……リンちゃんが可愛くて大好きだから虐めたいの。……一緒にしないで
欲しい……」
「…………!」
端で聞いていた楓は、ズキン! と自分の胸が痛むような気がした。
自分はシアを虐める時、どんな気持ちだっただろうか? 心の中に潜む妬みと憎しみを隠すことなく、
それをぶつける様なやり方ではなかったか。
楓が俯く様子を亜沙は見つめていたが特に何も言わなかった。
「でも……。でも……」
ネリネは更に啜り泣く。麻弓の気持ちは分かったが、それでも自分の気持ちは収まらない。
自分はどうしても麻弓に罰を受けたかった。と言うよりそうされるべきだと思いこんでいた。
「う〜〜ん……」
麻弓は暫く考えていたが、
「じゃあ、こうしようか。これから10分の間、リンちゃんは私の好きにされる。抵抗不可。
拒否も認めない。私がやりたい事をされるがままになってるの。……それでどう?」
にっこりと微笑んで言う。
ネリネはきょとんとしていたが、コクコクと頷いた。彼女にとってその条件は願っても無い事
であった。もっと酷い条件でも全然問題なかった。
「じゃあ、エッチな反撃、開始しますか♪」
麻弓は色違いの瞳の目でにこやかにウィンクした。その表情には急所蹴りを喰らった恨みなどは
微塵も感じられなかった。