*           *           *  
 
 
「ウフフフ……」  
「何を笑ってるのさ?」  
「だって――」  
俺の隣に寝そべりながら紫苑は上機嫌だった。  
「すっごく、気持ち良かったんだもん♪」  
「電気あんまが?」  
「うん♪」  
満面の笑みを浮かべて紫苑は俺の頬にキスをした。今更ながらの親愛の情を表す行為だが、  
電気あんまという『親愛以上(かもしれない)の行為』をした後だけに、なんとなく照れてしまう。  
 
「電気あんまって姉弟でやっても全然OKだよね?」  
紫苑が俺に聞いてくる。  
しかし、どうだろう。普段の生活の中で悪戯心が芽生えてついやってしまった程度のものと、  
これだけエッチな服を着せてノーパンで逝ってしまうまでするのとでは、同じ電気あんまでも  
意味合いが全然違う気もする。  
「でも、やってる事はセックスと変わらないのかもね♪」  
クスッと笑って舌を出す紫苑。考えがシンクロしたのか、それとも俺の心の中が読めるのか。  
 
「ねぇ、晴樹――」  
「うん?」  
「セックスって――どんな感じなのかな?」  
「…………」  
俺は黙ったまま天井を見る。知らないからではない。答えに困るのだ。  
「晴樹は経験あるんでしょ? 私、ないんだもん。それに――」  
紫苑はじっと俺の方を見つめた。気のせいかさっきより真顔で。  
「普通の男の人とするのと、晴樹とするのとじゃ……全然違うよね――」  
俺はその問い掛けにも答えない。それは答えなくてもいい問い掛けだった。紫苑の言ってる事は  
比較する事柄でなく、後者の方はありえない話だからだ。  
 
(そう――絶対に――)  
あってはならない話だ。  
俺が紫苑にやっていいのは下半身裸にして電気あんまで逝かせる所まで――。  
勿論、フェラチオをさせるのはいい。縄で縛めて拘束し、鞭で叩いたり三角木馬に乗せて  
苦しめるのもいい。なんならお尻の穴に挿入するのならかまわない。紫苑が泣き叫ぼうが  
俺を嫌いになろうが、そこまでならインモラル――背徳の範疇に留まるだろう。  
 
だが、セックスはタブー――禁忌だ。  
神をも恐れぬ、人として非ざる行為をしてしまえば――俺たちは人でない。ケダモノだ。  
(俺は――畜生道に陥る覚悟があるのか?)  
俺は紫苑を見つめ返した。俺と同じ色の瞳、同じ質の髪、同じ顔立ち――だけど、今の紫苑と  
俺を見間違う奴はいないだろう。紫苑の瞳は女の子らしく潤んでキラキラと煌き、頬も色っぽく  
染まっている。それに――体からはいい匂いがする。  
 
(女の色香って、こういうのを言うんだろうな――)  
思わず俺は紫苑を抱きしめた。紫苑の体は一瞬ピクッと反応したが、すぐに安心したように  
俺に身を任せる。  
「ねぇ、晴樹――」  
「なんだ?」  
さっきから問い掛けばかりだな、と俺は内心で苦笑する。  
「これから私、もっと酷い事とかされるんだよね?」  
「…………」  
そして返事に困る問い掛けばかりだ。  
 
「仕方ないよね……。私、晴樹にセックスをしてあげられないんだもん――晴樹の欲望が  
違うところに行っちゃうのは当たり前だよね」  
紫苑は更に俺の傍による。二人はピットリとひっつき、逆にお互いの顔が見えない。  
「だから……私、酷い事をされたりいじめられたりするのはいいの――。だけど、どうしても  
辛くなって泣いちゃったりしたら――」  
紫苑はギュッと俺を抱きしめる。抱きしめると言うよりは何かを恐れてしがみ付く感じか。  
俺は紫苑を安心させるように髪を撫でてやる。可能な限り、優しく――。  
「私がもし泣いちゃったら……せめて、さっきみたいな優しい電気あんまをして――。  
そうしてくれれば、私……晴樹を満足させてあげられるようにがんばれると思うの」  
横顔同士、密着させている俺の頬に紫苑の涙が伝わってきた。しくしくと泣いているのでは  
ない。ただ一粒、大きめの涙が流れ、俺の頬を濡らした。  
俺は、何とも返事をしなかった。してやるとも、してやらないとも――。  
 
「本当なら――電気あんまじゃなく、違う事をして欲しいのかもしれない……」  
紫苑は俺の返事を待たずに再び喋り始める。俺はそれを止めようかどうか迷った。  
紫苑が――血を分けた姉の紫苑が何を言いそうになっているのか、俺にはわかる気がするからだ。  
「私、晴樹と一緒なら怖くないよ。人がなんて言おうと、この家を出る事になっても後悔しない  
――私……私本当は晴樹と――」  
 
その時――。  
 
「あ〜〜〜〜〜!! な、何をしているのですか〜〜!!」  
素っ頓狂な悲鳴に似た女の子の怒り声が聞こえた。  
勿論、声の主は茉莉花だ。俺は慌てて紫苑の体を離し、身を起こす。  
「あっ……」  
紫苑の声が聞こえたが、茉莉花がいるのでそちらを見ないようにした。とは言っても、俺は  
フリチンだし、紫苑も殆ど全裸に近い半裸(マンコは勿論見えている)で二人してベッドに  
いるので茉莉花がネンネであっても何をやってたかぐらいはすぐに分かってしまう。  
何故か、茉莉花はメイド服だった。オーソドックスな紺色のエプロンドレスだが、茉莉花の  
母親が主家に嫁入りした後も本人の希望でメイド服で家事をしたりするので(父親は苦笑しながら  
反対しているが)茉莉花も母に倣って家事をする時はメイド服に着替えている。  
 
「もぉ〜! なんて事を……シーツも敷いてない布団の上でそんな事をしたら――あ〜あ……」  
思わず額に手をあて、天を仰いで嘆く茉莉花。"Oh! My God!"とでも言いたげな仕草だ。  
「なんだ、さっきのドレスはもう脱いだのか?」  
俺は外国人の様に大げさな仕草で嘆いている茉莉花をからかうように言った。  
「お洗濯とお風呂の用意を言いつけられたから着替えたのです――それより、これは何ですか!  
シーツも敷かずに見境なくオイタをするなんて……あ〜もう、どいてくださ〜い!」  
茉莉花は物凄い力でベッドから布団を引っ張り出した。俺と紫苑はソファに放り出される。  
あっけに取られる俺たちをよそに、茉莉花はテキパキと濡れ布巾で俺たちの行為の後をふき取り、  
大きな布団を折りたたんでいく。  
 
「全くどうしましょ……洗うわけにはいかないし、乾く前に濡れ布巾で拭くしか……でも、  
それだけじゃ非衛生だし……」  
ブツブツと呟きながら自分の体より遥かに大きな荷物を抱えて部屋を出る茉莉花。  
彼女のメイド服は特製のミニスカート仕様で、布団をたたむ時に屈んだり、持ち歩く時に  
お尻を振ってスカートが揺れるたびにフリルのキャミソールの裾とピンクのショーツがチラチラ  
見える。  
 
その様子を見て俺と紫苑は顔を見合わせた。そして二人してにんまりと笑いあう。  
それはタチの悪い笑顔だった。肉食獣が旨そうな美餌を見つけた時の様な――。  
 
 
          *           *           *  
 
 
「ふぅ〜、危ない危ない」  
私は部屋を出ると、この重い布団を抱えながらホッと一息ついた。  
(それを言ってはダメですよ、紫苑お姉ちゃん――)  
私はお姉ちゃんとは違ってお兄ちゃんと血は繋がってないから、お姉ちゃんの気持ちが痛いほど  
分かると言ったら嘘になるかもしれない。  
でも、それでも女の子としてはその気持ちは凄く分かる。だからお姉ちゃんを止めるのを少し  
躊躇った。  
 
(お姉ちゃん――辛いだろうな……)  
表の気持ちだけなら、私で良ければ精一杯の事をしてあげたかった。だけど――。  
(私にも裏の気持ちがあるから――)  
お姉ちゃんに対する私の隠された気持ち。お姉ちゃんはもうすぐ知ることになるだろう――。  
 
でも、その前に――。  
 
「これ……どうしよう?」  
現実に帰った私はお姉ちゃんの汗と蜜がたっぷりと沁み込んだ布団を布団部屋まで運び入れて  
途方に暮れていた。  
 
 
【其の伍】  
 
 
「ふ〜……。あれで何とかなったでしょう。こっちもこれでOKだし」  
二人っきりにすると見境なく始めちゃうお兄さまとお姉さまの粗相の後片付けを終えると、  
私はお風呂の脱衣所に軽くモップを掛け、それを片付けに廊下に出て。扉を閉めようとした。  
すると――。  
 
「ハ〜イ、メイドさん。ご精が出るのね♪」  
何となく、人を見下した調子を含んだ声色――。嫌な予感がする。  
私が前を見ると、廊下の両側にお兄ちゃんとお姉ちゃんが立っていた。お兄ちゃんは流石に  
さっきの様にフリチンではない。部屋着のズボンを穿いていた。  
 
だけど、お姉ちゃんは――さっきの格好のままだった。  
身に着けているのは着崩れたブラウスとミニスカート。どちらもベッドでの激しい運動で  
皺くちゃになり、伸縮性のない素材は本来の寸法より短くなっている。  
スカートは本来のサイズでもギリギリの長さだった。胸も全部を覆い隠す作りではない。  
今のお姉ちゃんの格好はそれこそ路上の娼婦より卑猥だった。何しろ肝心なところが見えている  
状態で腕を組んで壁にもたれかかっているのだ。それに――。  
(お姉ちゃん――濡れてるよぉ)  
お姉ちゃんの太股はびっしょりと濡れていた。それを隠そうともしない。火照った体もまだ  
冷め切っていないようで全体が桜色に色づいたままで、瞳は色っぽく煌いていた。  
 
「私の格好がどうかしたかしら、可愛いメイドさん♪」  
お姉ちゃんがこういう物言いをする時は何か悪巧みを思いついた時だ。  
我あらず、私はモップを握る手に力を込めた。身の危険?を感じたからだ。  
「フフフ……どうしたの、警戒したりして? お姉ちゃんが何か悪い事をするとでも思ってる  
のかな?」  
モップを持ち直した私を見てゆっくりとお姉ちゃんが近づいてきた。獲物を前にした肉食獣が  
舌なめずりするような表情で――私はお姉ちゃんの目から視線を外さなかった。外したら最後、  
私はお姉ちゃんに捕まってこの世のありとあらゆる陵辱を受ける事になるだろう――何故か  
そんな気がした。  
 
「ねぇ、晴樹――。このメイド、ご主人様に対して随分無礼な口の利き方をしたよね? 『見境  
いなくどこでもエッチな事をする』だっけ? 妹にしてあげたら随分と調子づいちゃって――  
教育が必要なんじゃないかしら?」  
う……なんでいきなりブルジョワ主義者に。ちょ、ちょっとお姉様……普段そんな事言わない  
じゃないですかぁ……。  
「え……? う……うん……」  
お兄ちゃんのほうはごにょごにょ口を濁してるだけだ。お姉ちゃんの後ろで私をすまなさそうな  
顔で見ている……まったく、気が小さいというか、意気地が無いというか――。  
 
「さぁ、いつまでそんなものをご主人様に向けているのかしら? 今、抵抗をやめて素直に  
許しを請えばお仕置きするだけで済ませてあげるよ。だけど、まだ逆らうつもりなら――  
相当の覚悟をする事ね」  
お姉ちゃんは私を見下した目で髪をかきあげる。うう、じゃあ、私はお仕置きから逃れられない  
のですね……。  
だったら、自分の活路は自ら切り開くしかないのです――。  
 
私はモップの布を足で叩き落した。柄だけにして構えなおし、お姉ちゃんの胸元に突きつける。  
「これ以上近寄ったら……これで攻撃しますよ?」  
眦(まなじり)を決して、お姉ちゃんに宣言する。自分ではこわい顔をしているつもりだけど、  
なんかお兄ちゃんは微笑ましげな顔をしてるし、お姉ちゃんに至っては今にも噴出しそうな顔に  
なったような……?  
 
「可愛い〜! 茉莉花、それで怒ってるつもり? もう……そんな顔されたら抱きしめたく  
なっちゃうよ♪」  
お姉ちゃんは警告を無視して近づいてきた。完全に私をなめきっている。いいのです。どーせ  
いつもの事ですから。  
だけど……今日は少し痛い目に遭ってもらいます――。  
 
「えいっ!!」  
私はモップの柄を勢い良くお姉ちゃんの胸元に突きつけた。この位置なら交わす事が出来ない。  
お姉ちゃんも瞬時にそれを悟ったのか、慌てて手を交差させてガードする。モップの攻撃は  
防がれたと端からは見えただろう。  
 
(もらった……ですッ!)  
だけど、それこそが私の狙いだった。私は手にしたモップの柄をくるりと回し、下段に構えた。  
そして、その状態から思いっきりかちあげる。狙いは勿論、お姉ちゃんの無防備な股間だ。  
生の状態の急所を一撃されれば流石のお姉ちゃんも倒れるだろう。身の危険を感じてた私は  
容赦なく、お姉ちゃんのソコを狙った。  
モップの柄はお姉ちゃんの太股の間を通り抜け、柄が性器から肛門に渡る急所に向かって振り  
上げられる。そして――。  
 
バシィイイイイ……ン……!!  
 
肉を打つ音が聞こえた――が。意外と乾いた音だった。お姉ちゃんのオマタはあれだけ濡れて  
いたのに。お姉ちゃんを見ると――。  
 
「クックック……」  
急所を打たれたはずのお姉ちゃんはちっとも痛がってなかった。  
確かに手応えはあった。モップの柄も太股の間を抜いている。だけど、それは股間には届いて  
いなかった。急所を強打する直前、お姉ちゃんが姿勢を低くして、片手でモップの柄を受け  
止めたのだ。見事な防御だった。  
「あなたの狙いなんて見え見えよ、茉莉花。私がここを狙わせるようにわざと無防備に誘い  
込んだのに気がつかなかったの?」  
お姉ちゃんはニヤリと笑っている。凄みのある笑顔に私は背筋がゾクッとした。  
 
「でも、誘い込んだとは言っても、本当に狙ってくるなんてね。女の子同士、ここを打った  
痛さは分かってくれるはずなのに――」  
お姉ちゃんが私の顔を見て微笑む。  
私は顔面が蒼白になった。卑怯なのは承知で相手の急所を狙いにいったのにそれに失敗した。  
今のお姉ちゃんは表面上は笑顔でも、内心のの怒りはどれほどになっているだろう?  
 
「う……うごかない……?」  
私はモップの柄を引こうとしたが、それはビクとも動かなかった。お姉ちゃんがしっかりと  
握りこんでいるからだ。  
「う……うう……」  
私は悠然と微笑むお姉ちゃんを怖れながら何度も引き抜こうとする。だけど全く動かない。  
お姉ちゃんと私とでは力そのものは圧倒的な差があった。  
「力比べじゃ勝負にならない事、わかってるでしょ? ……ヤッ!」  
「あっ……!!」  
お姉ちゃんが気合を入れてモップの柄を引くと、私はたたらを踏み、モップの柄を離してしまった。  
お姉ちゃんはやすやすと私から武器を取り上げ、それをまじまじと見つめていた。  
 
「こんなもので裸の女の子の大事な所を狙うなんて――万が一、突き刺さったらどうするの?  
茉莉花は私の処女を奪うつもりだったのかしら?」  
お姉ちゃんが怒った表情で私を睨む。  
「そ、そんな……!!」  
無論、そんなつもりはない。私は突いたのではなく、下からかちあげるように打ち込んだのだ。  
もし命中していればお姉ちゃんは柄を跨ぐ状態にはなっただろうけど、アソコに突き刺さる  
事など無いはずだ。  
だけど、急所を狙ったのは事実なのでこのお姉ちゃんの言いがかりに反論するのは難しかった。  
 
「茉莉花、あなたのやった行為がどんなに酷い事か、自分で体験してみる?」  
「えっ!?」  
お姉ちゃんは私から奪い取ったモップの柄で私のアソコを突いてきた。その攻撃はメイド服の  
スカートの上からコツン、と恥骨に当たった。  
「痛ッ!?」  
私は突かれた恥骨を擦り、そのままそこを守るようにして後退りした。  
「フフフ……正面からじゃ突き刺さらないよね」  
お姉ちゃんは私と同じスピードで迫ってくる。私はお姉ちゃんから視線を逸らさないようにして  
後退りしていたが、すぐに何かにぶつかった。  
 
「お……お兄ちゃん?」  
私がぶつかったのはいつの間にか背後に回りこんでいたお兄ちゃんだった。お兄ちゃんは何も  
言わずにちょっと困った顔をしている。  
「ナイスアシストね、晴樹。そのまま捕まえててね」  
お姉ちゃんがお兄ちゃんに命令する。私はお兄ちゃんを見つめたが、お兄ちゃんは目を逸らした。  
そして私の股間を守っている手を簡単に外し、磔の様に両方の手首を掴んで持ち上げた。  
私はお姉ちゃんが武器を持って構えている前に無防備になったのだ。  
 
「その状態でスカートも捲くれる?」  
私の目の前で片膝立ちになったお姉ちゃんがお兄ちゃんに聞く。お兄ちゃんは何も言わず、片手で  
私の両手を突かんで吊るして、もう片方の手でスカートを捲り上げた。お姉ちゃんの位置からは  
ピンクのショーツが丸見えになっているだろう。お兄ちゃんの力は強くて片手でも私の両手を  
十分に抑えきる事が出来る。  
「お兄ちゃん……」  
どうしてお姉ちゃんの命令を聞くの? と聞きたかったけど、お兄ちゃんが私の目を見ようと  
しないのを見ると、どうやら二人の間では、この場はお姉ちゃんが支配する事で合意したらしい。  
二人でいちゃついている間か、その直後か。私がいない間に私をいじめる計画が出来たのだろう。  
 
「ねぇ、茉莉花――。モップに処女を捧げるのって、メイドさん冥利に尽きるよね?」  
 
え……?  
お姉ちゃんは今、なんて言ったのか。私は信じられない事を聞いたようにお姉ちゃんを見る。  
お姉ちゃんはにんまりと笑い、私のピンクのショーツの二枚布になっている部分をなぞった。  
「あ……ん……」  
私はその筋に電気が走ったように腰を引く。だけど、すぐ後ろにいるお兄ちゃんが私のお尻を  
膝で押した。お姉ちゃんの位置からは私の大事な所が突き出されたようになる。  
 
「フッフッフッフ……」  
お姉ちゃんが意地の悪そうな笑い声を漏らしながら、モップの柄で私の女の子の所を小突きだした。  
コツン☆! コツン☆! ズン☆!  
「う……! あうっ!! ああっ!!」  
恥骨と言わず、クリットと言わず、会陰部と言わず――。力こそ思いっきりではないが、  
ピンポイントをコツコツ突かれて私は悲鳴を上げる。痛くて内股になるとお兄ちゃんが股の間に  
自分の太股を割り入れ、お姉ちゃんが小突けるスペースを空けた。私は逃げられないのだ。  
 
「フフフ……これがさっき茉莉花が私にしようとしたことなんでしょ? 違う?」  
お姉ちゃんが私に聞いてくる。勿論、違うに決まっていた。私がしようとしたのは自分の危機を  
脱出するためになりふり構わず選んだ手段であって、お姉ちゃんの陰湿で執拗なイジメとは違う。  
股間攻撃しようとしたのは同じだけど……。  
 
「それでは、茉莉花ちゃんの貫通式と行きましょうか。晴樹、しっかり抑えていてね」  
「や、やめて……!!」  
私は思わず悲鳴を上げた。いくらなんでもそれはあんまりだ。縛めから逃れようと体をくねらす。  
ふと、その縛めている人物がお兄ちゃんである事を思い出した。  
「お兄ちゃん……助けて……」  
私は涙ぐんだ目でお兄ちゃんを見上げた。いくらお姉ちゃんの命令とは言え、妹が可愛いなら  
これ以上の事は止めてくれる筈――そう信じて。  
「…………」  
お兄ちゃんは暫く私の目を見つめていたが、いたたまれなくなった様に視線を外した。  
「あっ……」  
私は見捨てられたのだ。お兄ちゃんはお姉ちゃんのやりすぎを止めずにお姉ちゃんの指示に  
従う事を選んだ。  
 
「それでいいのよ、晴樹」  
お姉ちゃんは満足そうだった。私は悔しかった。私の大好きなお兄ちゃんを言いなりにして、  
こんな酷い事の手伝いをさせるなんて――だけど、そのお姉ちゃんに反抗する以前に今の状況は  
大変な恐ろしさだった。  
「やめて……。お姉ちゃん。そんな酷い事をするのは……。私、謝るから……」  
私はボロボロと泣き出した。謝って許すなり思い直すなりしてくれるのなら、全身全霊を込めて  
お姉ちゃんに謝ろうと思った。だけど――。  
 
「やっと反省したみたいね。でも、ちょっと遅かったかな♪」  
お姉ちゃんはモップを両手で構えて、その柄の先を私の割れ目にあてがった。ピンクのショーツ  
ごと、割れ目にモップの柄が食い込む。  
「運がよければショーツが守ってくれるかもよ? 私の時は生マンコだったんだから」  
「そ、そんなの無理だよう……お願い、やめてお姉ちゃん!!」  
たった一枚のショーツがモップ攻撃を防げるわけがない。私は恐怖に身を竦ませた。  
 
「無理かな? ま、私には関係ない事だけど……。それじゃいくよ――」  
お姉ちゃんがモップを引いて構えた。この距離だ狙いをつけて外れる事はないだろう。  
私の恐慌は最高潮に達した。  
「お姉ちゃん! やめて! 何でもするから!! ……お願い!!」  
「問答無用…………せーのッ!!」  
「……ひっ!!」  
お姉ちゃんがモップを突き出したのと同時に、私は一瞬、魂が飛んだような気がした。  
そして――。  
 
「あっ……」  
物凄い勢いでお姉ちゃんが突き出したモップの柄は私の股間を直撃する寸前で止められていた。  
本当にギリギリである。先っちょはショーツ越しに割れ目に食い込んでいるのだから。  
 
その時――。  
 
しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――。  
 
「あああ……」  
下半身の生暖かい感触に、私は泣いてしまった。  
モップが貫通する恐怖のあまり、私は漏らしてしまったのだ。  
私のしでかした粗相は、私の股、脚、そしてお兄ちゃんの脚までもを濡らして廊下に水溜りを  
作った。その一部は密着しているモップの柄を伝わってお姉ちゃんの手や下半身をも濡らす。  
お姉ちゃんはそれを避けようともしなかった。濡れるがままに身を任せ、満足そうに私を  
見つめていた。  
 
「ふぇ……えっ……えっ……」  
私はあまりの恥かしさと情けなさに嗚咽を漏らした。こんな理不尽な目に遭ったのは生まれて  
初めてであった。誰かに抱かれたのにさえもすぐには気がつかなかった。それがお姉ちゃんで  
ある事に気がついたのはかなり時間が経ってからだった。  
 
「馬鹿ね……」  
お姉ちゃんは優しい声で言った。  
「可愛い妹にそんな事をするはずがないでしょ……茉莉花が生意気だったからちょっと懲らし  
めただけよ」  
今、その台詞を冷静に聞けばとても肯ずる事は出来なかっただろう。お姉ちゃんのやった事は  
懲罰の範疇を越えていた。だけど、その時の私はお姉ちゃんに抱きしめられながらコクコクと  
頷いた。私も悪かったの――とすら思っていた。  
 
「なんでも言う事を聞くって言ったよね?」  
お姉ちゃんは私が危機を逃れたい一心で言った言葉を言質として受け止めたようだ。  
私も同意するように頷いた。  
「じゃあ、これから一緒にお風呂に入りましょう。三人とも酷い格好になったしね――。  
茉莉花にはそこで色々と言う事を聞いてもらうからね♪」  
 
お姉ちゃんは私の粗相塗れになるのも構わずすりすりと頬を寄せてきた。  
私は呆然とお姉ちゃんのされるがままになっていた。これからどうなるかを考えるより、  
今この場を逃がれたい気持ちで一杯だった。  
 

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