「どうだっ! この! 紫苑! お前はいつも……!」  
「フフフ……全然効かないったら♪ 晴樹、男と女じゃ違うんだよ?」  
「くっ……! そんな馬鹿な……」  
「クスッ。無駄よ。女の子には電気あんまは効かないの。オチンチン、ついてないでしょ?」  
 
悔しそうなお兄ちゃんの顔と、得意気なお姉ちゃんの顔――。  
ふかふかのリビングの絨毯の上で、お兄ちゃんがお姉ちゃんに電気あんまを掛けていた。  
お兄ちゃんはパンツルックのお姉ちゃんの両足を持って、自分の両脇に抱え込んみ、右足を  
お姉ちゃんの股間にあてがってブルブルと振動を送っていた。一分近くその体勢でいるけど、  
お姉ちゃんは不敵な笑顔のままで、お兄ちゃんは少し焦った表情をしている。  
 
(女の子には電気あんまは効かないの――)  
 
お姉ちゃんは笑顔でそう言っている。  
だけど――。  
 
 
          *           *           *  
 
 
ちょっと前まで、お兄ちゃんとお姉ちゃんの体勢は逆になっていた。お姉ちゃんがお兄ちゃんの  
両足を掴んでジーンズのアソコに電気あんましていたのだ。お姉ちゃんは遠慮なくやったらしくて  
お兄ちゃんはブルブルとアソコを震わされるたびに悲鳴を上げ続けていた。  
私は男の人のアソコってとっても敏感な急所だって聞いた事がある。お姉ちゃんも知っているはず  
なのに、お兄ちゃんが悲鳴を上げるのが楽しいらしく、何度もお兄ちゃんのオマタをグリグリ  
していた。お姉ちゃんは結構意地悪なのだ。  
この喧嘩の理由だって凄く些細な事だった。それをお姉ちゃんは執拗にお兄ちゃんを挑発して  
電気あんま対決に持ち込んだ。だけど、それは対決とは名ばかりの男の子いじめ。  
ひたすら急所狙いでお兄ちゃんを翻弄する。それがお姉ちゃんの常套手段だった。  
 
(あんまりそこばかり狙うと可哀想だよ……)  
私がそう思った時、ついにお兄ちゃんが怒ってお姉ちゃんの電気あんまを強引に振りほどいて、  
逆に押し倒した。  
「きゃん! こ、こら! 離せ〜! えっち! スケベ!!」  
お姉ちゃんが懸命に抵抗するけど顔は笑ってる。お兄ちゃんのほうは少し真剣な表情だった。  
「姉を押し倒すなんて、ヘンタイだよ〜。……えいっ! えいっ!!」  
「散々男の大事な所を弄んでおいて、何がヘンタイだ! いい加減にしろ、こいつ……いてっ!?  
いてて!! そんなトコ蹴るな!!」  
「だって、弟にレイプされそうなんだもん……えいっ! キン蹴り、キン蹴り♪」  
「だっ……!? いてっ!! や、止めろってば!!」  
お姉ちゃんはまたお兄ちゃんの大事な所を狙って蹴っている。倒された状態で下から上に向かって  
股間を狙うのでお兄ちゃんには防ぎようがない。思いっきりじゃないけど、蹴りが当たるたびに  
お兄ちゃんは腰を引いて痛そうに顔をしかめる。  
反対にお姉ちゃんは楽しそうだ。サディストの気があるに違いない。  
妹の私と違う切れ長の眼が女王様っぽい雰囲気を醸しだしている。  
 
「アハハ! やっぱり男の子をやっつけるのって、ソコが効果的だね♪ ウフフ……ね、痛い?  
そこ打つとどんな感じなの?」  
お姉ちゃんは興味津々の内心を隠そうともせず、お兄ちゃんの表情を意地悪く覗き込む。  
「ば……ばか。お前……イテテ」  
お兄ちゃんは膝立ちの状態でジーンズの股間を押さえて痛がっている。軽くとは言うものの、  
お姉ちゃんがしつこく蹴るからたまらずに悶えているらしい。  
(男の人って、軽く蹴られただけでも痛いんだ……)  
私は思わずお兄ちゃんのジーンズのそこを凝視してしまった。私やお姉ちゃんとは違う、  
ぷっくりと膨らんだ柔らかそうな所――。  
「フフン、女の子に生まれた特権は最大限に生かさないとね〜♪」  
お姉ちゃんはにんまりと見下すようにお兄ちゃんを見つめている。背中まで伸びた長くて  
綺麗な黒髪を悠然とかきあげて、余裕の表情で。少しほっぺの辺りが上気している様に  
見えるのは私の気のせいだろうか。  
 
でも……。  
 
(女の子だって……本当はソコを狙われると辛いよ……)  
私は誇らしげに仁王立ちしているお姉ちゃんのパンツルックの股間を見つめながら思う。  
私はそこを打った経験がある。  
水泳の授業中、プールサイドで足を滑らせて、水に落ちる時に角の所で強打してしまった。  
幸い、危険防止のためかプールサイドの角は丸くなっていたので大きな怪我はしなかったけど、  
しばらくの間、アソコがじんじん痺れて水から上がれなかった。  
勿論、痛くて押さえているのを見られるのが恥かしいのもあったんだけど。  
 
(お兄ちゃんがもし本気で怒ったら……あっ!)  
私がそう思っている時、お兄ちゃんが起き上がってお姉ちゃんにタックルした。  
不意を突かれたお姉ちゃんは尻餅をつく。  
「きゃっ!? あうっ!! ……いたたた。いきなり酷いじゃない!」  
下はふかふかの絨毯だけど、お尻から落ちたのでちょっと痛かったらしい。お姉ちゃんは  
拳を振り上げて抗議してるけど、お兄ちゃんはそれに構わず、お姉ちゃんの両足を抱え込んで  
素早く右足で太股の間を割って、股間に足の裏をあてがった。  
今度はお兄ちゃんがお姉ちゃんに電気あんまする体勢になった。  
 
「いつもいつも争い事になったら男の急所を狙いやがって……。今日はその仕返しをして  
やるぞ!」  
お兄ちゃんが怒った表情でお姉ちゃんを睨む。お姉ちゃんは事態の変化を確認するかの様に  
視線を周囲に走らせていたが、お兄ちゃんの怒り顔を見るとプッ……と噴出した。  
「何がおかしい? 今から電気あんまの刑をされるんだぞ、お前は」  
「電気あんまの『刑』? 女の子に電気あんまが効くのかなぁ……?」  
憤るお兄ちゃんに対してお姉ちゃんは嘯くように口笛を吹く。  
「やせ我慢もいい加減にしろ。女だってそこは急所だろう?」  
「さぁ、どうかな? 女にはキンタマもオチンチンもないんだよ? それでも効くと思う?」  
「くっ……! やってみなければわかるもんか!」  
「やってみれば? 私は平気だから全然構わないよ♪」  
 
余裕の表情のお姉ちゃんと、それを見て焦るお兄ちゃん――これが冒頭のやり取りだった。  
 
 
          *           *           *  
 
 
「くっ……! これでも平気なのか?」  
お兄ちゃんは踵でお姉ちゃんのオマタをグリグリした。だけど、お姉ちゃんは少し呻いた  
だけで、表情は変えない。  
「当然よ。……言ったでしょ。女の子のそこには弱点になるものは無いもん♪」  
お姉ちゃんの言葉にお兄ちゃんは更に股間にグリグリと振動を与える。お姉ちゃんは時折  
くすぐったいような表情を浮かべ、笑ったりするけど、電気あんまされていても表情は  
あまり変わっていないようだ。それを見たお兄ちゃんはますます焦る。  
 
「ね? 無駄だってわかったでしょ? ……早く外してよ。寝転がってると……お洋服が  
皺に……なっちゃう」  
「うっ……。しかし……」  
「アハハ! これ以上したって時間の無駄……………………」  
「どうした?」  
「な、なんでもないよ。……時間の無駄だし、お、男は女には電気あんまの仕返しは……  
出来ないんだから、あ、諦めなさいって……」  
「…………?」  
お姉ちゃんの話し方が急に途絶える事が多くなったのは気のせいだろうか。お兄ちゃんも  
不審そうに見ている。  
「ゲホッ! ゲホンッ!! ほ、埃が喉につかえたの! 絨毯なんかにいつまでも寝かせ  
られてるから……早く解放して立たせてよ!」  
随分とワザとらしい咳だった。確かに洋室だから床は本来寝転ぶべき場所ではないが、絨毯は  
毎日家政婦さんが掃除をしてくれている。ちょっと寝転んだぐらいで埃が立つはずがない。  
 
お兄ちゃんがお姉ちゃんの様子を怪しむように見た、その時――。  
 
「嘘だよ――」  
 
私の声がリビングに響き渡った。  
呟くような小さな声だったけど、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ハッ!と気がついたように  
私の方を振り返った。  
 
「お姉ちゃんの言ってる事、全部嘘だよ、お兄ちゃん――」  
「茉莉花……?」  
「お兄ちゃん、女の子は嘘が上手くつけるの。嘘つきだから表情をごまかすのは簡単に  
出来るの。だから……それで騙されちゃダメ」  
私は立ち上がってお姉ちゃんの顔を見た。お姉ちゃんは凍りついた表情で私を見ていた。  
「電気あんまはね、女の子にも凄く効くの。他のところと違って、ここを刺激されると  
何かが内側からこみ上げてくるような……おしっこしたくなる様な気持ちになるの。でも、  
それがすぐには消えなくて、凄く切なくて……どうして言いか分からないほど堪らない気持ちに  
なっちゃうの――」  
私はお兄ちゃんの顔を見ながら優しく勇気づけるように言った。お姉ちゃんはずるい――男の  
子の弱点を責めるくせに自分は女の子の弱点を隠そうとしてる――。  
その時の私はそう思った。大好きなお兄ちゃんをいじめるお姉ちゃんを許せなかった。  
 
「お姉ちゃんは電気あんまをされたくないから、懸命にやせ我慢して効かない振りをしている  
だけ――。少し場所を動かしてお姉ちゃんの寝ていた場所を見てみれば分かるよ。びっしょりと  
汗をかいてるから。今だって、ほら。おでこの所に――」  
私の指摘でお兄ちゃんがお姉ちゃんの表情を覗き込むと、お姉ちゃんの額から玉の様な汗が  
噴出しているのが見て取れた。  
「それに……パンツを脱がしてみて。そうすれば……」  
「だ、だめッ……!」  
お姉ちゃんがうろたえた声を上げた。さっきまでの余裕は一切ない、目を見開き、怯えて焦る  
表情――。  
「それだけはやめて――お願いだから……」  
お姉ちゃんの長い睫毛が気弱げに何度も瞬いた。  
 
 
          *           *           *  
 
 
「ふぅん……」  
不意にお兄ちゃんはお姉ちゃんを電気あんまから解放した。  
お姉ちゃんと同じ切れ長の目が自分と良く似た顔立ちのお姉ちゃんを見つめている。  
お姉ちゃんとお兄ちゃんは双子の姉弟だ。性別が違う双子は二卵性なので一卵性双生児の様に  
そっくりになる事はないらしいけど、お兄ちゃんとお姉ちゃんは良く似ていた。  
二人とも切れ長の目と鼻筋の通った大人びた綺麗な顔立ち。妹の私は大きな目で童顔だから、  
二人とは二つ違いなのに大人と子供ぐらい違うようにも見えると、友達にからかわれた事がある。  
 
「茉莉花(まりか)の言う事が本当かどうか、確かめてみるか……」  
お兄ちゃんはお姉ちゃんのパンツのファスナーに手を掛ける。  
「だ、だめ……! やめて!!」  
お姉ちゃんはお尻をついたまま後退りしようとしたが、お兄ちゃんにすぐに捕まった。体が竦んで  
素早く動けないようだった。  
お兄ちゃんは無言でパンツの留めボタンを外し、ファスナーを一気に引き降ろした。更に、  
お姉ちゃんの腰に手を掛けて一気にパンツを膝まで引き下ろした。  
「…………!!」  
ピンクのショーツと白い太股が丸見えになった時、お姉ちゃんは顔を背けてお兄ちゃんから  
視線を逸らせた。  
 
「へぇ……」  
お兄ちゃんは感心したような溜め息を漏らす。  
「こいつは……すげぇや」  
にんまりと微笑むとお姉ちゃんの顔を見た。お姉ちゃんは頑なにそちらの方を見まいとギュッと  
目を瞑っている。だけど、羞恥心で頬が真っ赤になっていた。  
 
それもそのはず、お姉ちゃんの電気あんまされていたそこはすごい事になっていた。  
ピンクのショーツはぐっしょりと濡れ、お兄ちゃんがパンツを引き下ろした時に粘性の液体が  
張り付いて半分以上脱げかけていた。若草の翳りも濡れそぼり、シャンデリアの光にキラキラと  
反射している。  
濡れているのは前だけでなく、お尻のほうまでぐっしょりだった。いや、お尻は下になって  
いたのでもっと酷い状況で、ショーツの一枚布部分は半透明に透けていて、背中の方まで粘性の  
液体でびっしょりになっていた。  
 
「ククク……。これじゃあ茉莉花が教えてくれなくてもすぐにばれてたな。隠しようがない  
じゃないか。よくこんなので『女の子には電気あんまなんて効かない』なんて嘘がつけた  
もんだ――男がされた時より何倍もひでぇ状況じゃないか?」  
晴樹お兄ちゃんが喉を鳴らして笑う。紫苑(しおん)お姉ちゃんは口惜しそうに唇を  
噛み締めたが、何も言い返せなかった。お兄ちゃんのいう事は全くの事実だからだ。  
 
「それにしても凄い匂いだな……これってやっぱり女の……」  
「やめて……!!」  
お兄ちゃんがまだ追い討ちをかけようとした時、たまらずお姉ちゃんが遮った。  
見ればお姉ちゃんは切れ長の目一杯に涙を溜めてお兄ちゃんをキッと睨みつけている。  
「それ以上辱めるのはやめて……。もういいでしょ? こんな屈辱、耐えられない……」  
(その気持ち、わかるよ。お姉ちゃん――)  
私も同じ女の子だから――。そう思った。見られただけでも死んでしまいたいぐらい  
恥かしいのに、もっと恥かしい匂いの事まで指摘されるなんて――。これならば電気アンマを  
掛け続けられていたほうがよっぽどマシだった。  
 
お兄ちゃんはやっぱり意地悪なんだろうか――? だけど、その次にお兄ちゃんが言ったのは  
意外な言葉だった。  
 
「辱めてなんかいないよ――」  
お兄ちゃんはお姉ちゃんの頬をそっと撫でる。その指にお姉ちゃんの涙が伝わった。  
「いい匂いだと、思ったのさ。甘くて濃密で――理性が蕩けそうになるぐらいの、ね」  
私は思わず「ずるいっ!」と叫びそうになった。お兄ちゃんがお姉ちゃんの頬を伝わる涙を  
舌で舐め上げたからだ。自分でお姉ちゃんを泣かせて、キスするなんて――ずるいよぉ!  
 
「さっきまでの強気が全部ポーカーフェイスだったとはね……。辛かったか?」  
お兄ちゃんがお姉ちゃんの耳元で甘く囁くように言う。お姉ちゃんは泣きながらコクリと  
頷いた。  
「でも、俺だって大変だったんだぞ……電気あんまで踏まれてチンコは痛かったし、  
キン蹴りまで食らって……。この仕返しされる覚悟は出来てるだろうな?」  
お姉ちゃんは上目遣いでお兄ちゃんを見ていたが、またコクリと頷いた。  
(なんか……私の思ってた展開と違うような……)  
どうみてもお兄ちゃんとお姉ちゃんはいい雰囲気だ。私の目論見ではお姉ちゃんにいじめ  
られているお兄ちゃんを助けて、そのお礼に私が可愛がってもらおうと思ってたのに――。  
お姉ちゃんが予想以上に電気あんまに感じていて、恥かしがる様子が凄く可愛らしかったので、  
お兄ちゃんの愛情の方向が一気にお姉ちゃんに傾いたようなのだ。  
私がどうしようか迷ってると――。  
 
「茉莉花」  
「は、はいっ!!」  
突然、お兄ちゃんがこちらに声をかけたので私は飛び上がってしまった。  
「何してるんだ? ……まあ、いいや。これから紫苑にたっぷりとお仕置きするから、お前も  
手伝ってくれ」  
「わ、私がですか……?」  
私は思わず目をパチクリした。お兄ちゃんがお姉ちゃんにお仕置きするのは流れ上当然としても  
私が手伝うというのはどういう事なんだろうか?  
 
「紫苑を風呂に入れてやってくれ。それと、取って置きのシルクの下着、あったよな?   
あれにお前たち二人とも着替えて俺の部屋に来い」  
「えっ……!? ええ〜〜っ!? な、なんで私まで!?」  
「なんでって……お前もされたいんだろ? 電気あんま」  
そのものズバリを指摘され、私は慌てふためいた。お兄ちゃんからは目を白黒させて  
うろたえている私が見えたに違いない。  
私はお姉ちゃんを見た。お姉ちゃんは悄然とうなだれてお兄ちゃんの言うがままになっている  
ようだった。  
 
「お仕置きの後は『調教』だ。電気あんまでの、な。一緒に風呂に入ってる間にお前も  
考えておけ――する方とされる方の『どっちになるか』をな。俺は先にシャワーを浴びて  
部屋で待ってる」  
 
そう言うとお兄ちゃんは私たちを残してバスルームに向かった。  
私はうなだれているお姉ちゃんを見ながら、ただただ呆然としていた。  
 

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