【登場人物】
楓 :気立ての良い、優しい笑顔が似合う完璧美少女。黒いトコ一切無しw。
稟 :楓のダンナさん。つい最近そうなった。
樹 :稟の悪友。
麻弓 :楓の友人。樹とは腐れ縁……だったが。
プリムラ:芙蓉家の居候。魔界から来た人工生命体。稟と楓を兄姉と慕う。
撫子 :教師。一応、出番無し(たぶん)。
赤 :隣人のクラスメート。出番無し。
青 :隣人のクラスメート。出番無し。
緑 :楓と稟の先輩。今回は出番無し。
天然姉妹:緑の同級生とその妹。出番無し。
1.
「こぉら〜〜!! 待てぇ!!」
昼休みに廊下中に響き渡る麻弓の怒声に、昼食を終えたばかりの生徒達は思わず声のする
方角を見た。仲良く揃って屋上で弁当を使い、今しがた席に着いたばかりの稟と楓も
何事かと振り返る。
「ちょ……! 落ち着けって、麻弓!」
メガネをかけた男子生徒が教室に駆け込んでくる。樹だった。必死の形相で逃げている。
「黙れ、スカタン! この……逃げるな!!」
その樹を制服のミニスカートが翻るのも構わずに猛追するのは麻弓だった。捕まえかけたが
ひょいとかわされて逃げられ、更に猛然といきり立つ。手には箒、腕には週番の腕章。
どうやら週番の清掃担当だったらしい。そう言えば今回は樹と麻弓の担当だった、と稟は
思い出す。
「アンタのせいで私の立場は無かったんだからね! 週番の仕事サボるなとあれほど……!」
「い、いや……! だからこれには訳が……」
「言い訳無用! 今日は絶対、とっちめてやる!!」
怒りに身を任せ追いかける麻弓だが、戸惑うクラスメートを掻き分けてバランスをとりながら
駆け抜ける樹に対し、麻弓は止まったりぶつかったりで中々スピードに乗れない。
混乱の中の俊敏さは樹が勝ってたと見え、教室内を追いかけっこしている間にその差は開いた。
その計算もあって教室に乱入してきたのだろう。出口付近では樹と麻弓の差はかなり開いていた。
「この! ちょこまかと……!!」
「へへ〜ん! 追いつけるものなら追いついてみろって!」
流石に、スクープを逃さない瞬発力を誇る麻弓の足でも追いつかない、と思われたが……。
「こうなったら最後の手段……せ〜〜〜の〜〜!!」
このままでは振り切られると悟った麻弓は、走るのをやめて手にした箒を構えた。そして、
樹に狙いを定めると「はっ!」と気合と共に手槍の様に投げつける。
「おっしゃ、振り切った! へへ〜ん! 人ごみの中での俺様の逃げ足に叶うものはそうは
いない………」
ガッ……!。
「どぉわあああ!?」
後一歩で出口、と言うところで樹はもんどりうって転倒した。麻弓の投げ放った手槍代わりの
箒は見事に樹の膝の辺りに絡まったのだ。
「やりぃ!」
麻弓は快哉を叫ぶと転倒した拍子に鼻を打って痛がる樹の前に仁王立ちになる。
「フッフッフ……悪の限りを尽くす卑劣漢、緑葉樹! 今日こそ年貢の納め時のようね」
時代劇の様な台詞を言いながら悠然と樹を見下ろす麻弓。樹はズレた眼鏡のブリッジを
持ち上げて顔をしかめる。
「ちゃんとした申し開きがあるなら、一応聞いてあげる。生半可な理由じゃ許さないけどね。
それとも諦めて何か言い残しておく? お祈りがしたいのなら、3秒だけ待ってあげても
いいよ?」
釈明か、遺言か、祈りか――選べ、と。今度は洋画の見過ぎかもしれない。
「麻弓……」
「なぁに? 素直に謝るなら腕の一二本で勘弁してあげるけど?」
「その縞パンは少々子供っぽ過ぎるといつも…………オゴッ!!」
麻弓の容赦ないストンピングが樹の顔面に炸裂した。
「死ね……! この場で肉片となり果てて死ね! この! この!」
「むごっ! ぐあっ……!! うごあぁ……!!!」
ゲシゲシ!と肉を打つ音が教室の片隅から聞こえてくる。白昼の惨劇にクラスメイト達は
息をのんで見守るしかなかった。もっとも樹の自業自得に同情の余地はあまり無い様だが。
麻弓と樹の友人である稟と楓も例外ではなかった。下手に手を出してとばっちりを食うのも
割に合わないし、麻弓のは理由無き暴力ではない。100%樹が悪いのだから仕方が無い。
「折檻……と言うか躾の部類なんだろうな」
「麻弓ちゃんと樹君……最近二人が話してるのをよく見かけます」
「楓にはあれが会話に見えるのか?」
「ある種のコミュニケーションかも、ですね? フフフ……」
稟にはその光景が楓が微笑ましげに見るに値するとは思えないのだが、楓はそう感じている
らしい。
確かに以前から腐れ縁だった彼らは、数日前のある出来事を契機に、更にコミュニケーションを
深めているのは傍目からも感じられた。
その数日前の出来事とは――。
それを思いながら稟は楓の横顔を見つめる。楓は麻弓と樹のやり取りに見入っていた。
ドゴ! バギ! ゲキョ! ……PRIDEやK−1の会場もかくやとばかりの打撃音が
響き渡る中、楓は自分を見つめる視線に気づいたのか、稟の方を振り返った。
サラリと流れるしなやかな髪は陽の光に透き通り、愛する人と目が合うと零れんばかりの
笑顔が自然に向けられていた。
数日前――。頑なに自らを閉ざし、愛する人の気持ちを拒み続けていた楓の凍てついた心は、
稟の暖かな優しさについに融かされる事となった。二人は愛し合い、求め合い……次の日には
誰の目にも一目で分かる恋人同士になったのだ。
2.
「フー! フー! フー!!」
まるで雌獣の様な息遣い――凄まじい暴虐の嵐に身を任せ、力の限り樹を蹴り続けた麻弓だが、
漸く疲れが見え始め、ストンピングを止めて、荒い息をつきながら血と肉の塊と成り果てた
樹を睨みつけていた。
「どう!? これに懲りたら、少しは心を入れ替えて真面目になるって誓う?」
昂然と麻弓が言い放つが、改心も何もそれは樹が生きていたらの話では……? と周囲の
級友達はヒソヒソと囁きあう。現に樹はピクリとも動かないが――。
「ま、あの程度で死ぬタマじゃない……と思う」
「……ですね」
彼をよく知る稟と楓はその悲惨な光景にも平然としている。実際、程なく樹の手が動き、
傍らに飛ばされていた眼鏡を拾うと血塗れの顔に掛けなおした。
「ク……。クククク……」
「蘇ったわね、アンデッド」
無論、樹を知ること人後に落ちない麻弓の事。この程度で樹が絶命するとは毛ほども思って
いない。警戒心を解かずに身構えている。
その前に樹はゾンビの様に立ち上がった……かと思うと直ぐに崩れ落ちた。やはりダメージは
深刻だったらしい。稟と楓も思わず顔を見合わせる。
「何よ……流石に今回のは効いちゃった? まあ、アンタが反省するならこのくらいで許して
あげてもいいけど」
崩れ落ちた樹を見て、ちょっとホッとしたように麻弓は戦闘態勢を解いて息をつく。
流石にあれだけの猛攻を加えるのは蹴る側もスタミナを消耗したらしい。これ以上樹が蘇ると
体力的にキツイ状況になるので、ホッとしたのだろう。
しかし――その油断が命取りだった。
「麻弓……『肉を斬らせて骨を断つ』と言う言葉を知ってるか?」
崩れたままの樹が呟く。
「知ってるけど……今のアンタはもう立つ力も無いじゃない?」
麻弓が箒でツンツンと肉塊を突く。
「くっ……! やめんか! ……フッ。麻弓……今の一方的な猛攻撃は俺様が敢えて受け
続けていたためにそう見えたまでの事。実際には、お前はいい気になって攻勢に出たと
思いこまされて俺の手中に踊らされていただけなのだ。かの西遊記の孫悟空の様に!」
「その割にはダメージが大きすぎない? もしかして緑葉君、マゾだったっけ?」
「ちがーーう!! まあ被虐性向は高尚な趣味でもあり、その気も無いでもないが、
誰がお前の様な貧乳女の蹴りで興奮すると………おごおぉ!!!」
どっがーん!! と麻弓の鉄拳が炸裂し、樹は壁に叩きつけられた。今までの中でダントツに
強烈な威力だ。
「自殺行為だ……」
「…………」
呆れる稟と、これは流石にコメントも出来ずに汗をかいて固まった微笑みの楓はバスト83。
「く……もとへ……」
まだ動けるのか。
「と、とにかくお前の見せかけの猛攻撃は、お前のスタミナも大きく消耗したのだ。つまり……」
「な、なによ……ちょ、ちょっと……! きゃん!?」
ジリジリと地面を這うようににじり寄る樹は、麻弓の足元に倒れこむと、その右足首を
しっかり掴んだ。
「こ、こら! 離せ! この気色悪いゾンビ!!」
麻弓は左足の蹴りで樹を引き剥がそうとするが、先程と違い簡単に離れない。
「クックック……明らかに蹴りの威力が落ちているぞ」
「くっ……!!」
麻弓の表情に焦りの色が見える。確かに樹の言うとおり、疲労で足が重く、蹴りに力が
入らなかった。そして3度目に蹴り出した時、その左足もキャッチされてしまう。
「あっ……! きゃうん!?」
両足を掴まれてバランスを崩し、麻弓は尻餅をついてしまった。スカートがめくれ、グリーンと
白のストライプのショーツが見えてしまう。
「み、見るな馬鹿!!」
カァ……と羞恥心で頬を染める麻弓だが、両足を掴まれた状態なのでスカートを押さえるのが
精一杯だ。反撃などおぼつかない。
「いい格好だな、麻弓」
「離しなさいよ、ヘンタイ!」
下から完全に覗き込まれる体勢ではあったが、麻弓は強気な態度を崩さない。ここで恥かしがって
いてはますますこのヘンタイを付け上がらせるだけになってしまうからだ。
「そんな態度でいていいのか? これから俺様の必殺技に泣かされるというのに……命乞いなら
聞いてやるぞ? 俺様は貧乳の暴力女と違って慈悲深いからな」
ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべる樹に対して、禁句を言われながらも反撃できない麻弓。
どうやら先程の必殺パンチで全てのスタミナを使い果たしたらしい。流石にこれまでもが
樹の計算だったとは考えにくいが。
「誰がアンタみたいな変態ゾンビに命乞いなんかしますか! 必殺技? フン……面白い
じゃない。う、受けてあげてもいいよ?」
麻弓は少し強張った笑顔を向ける。明らかに強がりであるが、樹はそれに構わず、右足の靴を
脱いで麻弓の両足を広げて脇に抱え込んだ状態でその間に座り込んだ。
「な、何するつもり……なの?」
麻弓が不安そうに慄く。ミニスカートで無防備な状態の足の間に男子に座られているのだ。
その状況が心配にならない女子がいるはずも無い。クラスメート達も樹の思惑が何となく
察せられ、教室内がざわめく。
「う……樹のやつ、まさか……」
「……? なんですか?」
「いや……なんでもない。ハハハ……」
稟の焦った笑いに小首を傾げる楓。どうやら彼女にはあまり事情は飲み込めてないようだ。
稟にも樹の魂胆は見えたが、それを楓に説明するのは少々憚られる。
「だ、黙ってないで何か言いなさいよ、このヘンタイ緑葉!」
相手が樹の場合、言葉で責められるより、逆に粛々と準備を進められるほうが不安になる。
麻弓はこれから自分の身に起こる事が見えず、樹から逃げようとする。しかし、がっちりと
下半身は樹に固定されて動けなかった。
「フッフッフ……これで準備OK。麻弓、この体勢から掛ける技って何だと思う?」
「わ、技……? ぷ、プロレスで言えばアキレス腱固め、とか?」
「そうだな。そういう手もあるか」
樹が脇に抱えた足首を捻り上げる。ぎりっ……と麻弓の足首の角度が変わった。
「イタタ……! 痛い! やめて!!」
足から来る激痛に思わず麻弓は痛さで仰け反った。レスラーの様にバンバンと床を両手で打つ。
パンツは丸見えになるが、それどころではなかった。
「くっ……! こんな陰険な仕返しをせずに一思いにやりなさいよ!」
顔をしかめた麻弓が口惜しそうに樹を睨みつける。その言葉を聞いた樹の眼鏡が磨りガラス
の様に曇った。唇の端がニヤリと吊りあがる。
「陰険……? 甘いな、麻弓。本番はまだまだこれからだ」
「な、なにを……ひゃ!? へ、ヘンなトコに足を入れるな……あ、アンタまさか!」
樹の足が麻弓の足を割って入ってくる。流石に麻弓にも樹の意図が分かったようだ。慌てて
太股をキュッと閉じ、樹の足を挟みこんで懸命に防御する。
だが――。
麻弓の懸命の防御も空しく、樹の足は太股の内側を擦りながら、股間にまで到達した。
「ひゃ……! あぅん……。ど、どうして……」
敏感な内股を擦られるたびに麻弓の体がビクビクッ!と反応する。股間に触れられた時は
思わず仰け反ってしまった。きゅん……と反射的に足を閉じるがそれは逆に樹の踵を自分の
股間に食い込ませる結果になるだけだった。ストライプ柄のショーツが捩れ、踵が割れ目に
食い込む様子は官能的な光景だ。ゴクリ……とギャラリー達の唾を飲み込む音が聞こえる。
「あれって……そのう……。『電気アンマ』……ですか?」
「え? あ、うん……」
楓がその言葉を知っていて、その愛らしい口で呟くの聞き、思わず稟の方が口ごもってしまう。
楓は二人の様子に完全に見入ってた。とても興味深げにじっと見つめている。
「フッフッフ……力配分を考えずに無駄にスタミナを消耗するからだ。ま、こうなる事は
計算済みだったがな……イテテテ……」
とても計算されたダメージとは思えないが、樹の思惑通り?電気アンマの体勢は完璧に
極まっていた。流石に麻弓も強気な表情ではいられない。
「ね、ねぇ……緑葉君、もうやめようよ……」
自分の女の子の秘密の部分にあてがわれた樹の足を除けようとするが、ビクとも動かない。
反対に自分が動くたびに股間が刺激され、うめき声を上げてしまう。
「やめる……? 命乞いか。これから俺様の言う事に逆らわず、従順な下僕になる事を
誓うならそうしてやってもいいぞ?」
「だ、誰が! 冗談じゃないですよ、アンタみたいな変態ゾンビに……」
「交渉決裂だな。処刑開始ッ!」
「ちょ、ちょっと待って…………あぁあああああッ……!!!」
麻弓の股間にあてがわれた樹の右足がグリグリと動きだす。その途端、麻弓は大きく仰け
反り、悲鳴を上げてしまった。ピンと張りつめた長い脚がプルプル震え、小さな胸を反らせて
込み上げてくる何かに懸命に耐える美少女(一応)の姿はクラスメート達の視線を釘付けに
する。
「はぅん……! やめて! みんなが見てる……恥かしいったら……ああんッ!」
「さっきまで散々暴れまわってて今更なんだ! 今までの暴力の恨み、思い知れ〜〜!」
「あ、アンタが悪いんじゃない……! ひゃうう……!! そ、そんなに強くしたら……
だめぇ……!!」
無防備な女の子の急所を電気アンマで責められ、麻弓は髪を振り乱して悶える。責められて
いる部分から絶え間なく電流にも似た刺激的な感覚が全身を貫き、体が勝手にビクビクッ!
と反応を繰り返す。その状態に耐え切れなくなり、麻弓は目を閉じ自分の指を噛み締めた。
(う……こ、これは……)
仕掛けた樹からはローアングルの麻弓が股間に踵を食い込まされ、内股になって震えている
姿が見えて、思わず息を呑む。樹が足を少し動かすたび、麻弓は可愛らしい悲鳴を上げ、
ブルブルと振動を送り込むたびに体をキュッと縮こめたり、荒い吐息をつきながらじっと
耐えたりしている。
股間を責められて耐える女の姿は樹にとっても目の毒だった。麻弓が頬を紅潮させ、目を
閉じて喘ぎ声を漏らす姿は、普段からじゃれあっている無邪気な笑顔や怒り顔を知っている
だけに、そのギャップを感じて余計に胸が高鳴るのを覚える。
その『破壊力』は計算外だったと言って良い……が、皆の手前、今更止める訳にもいかな
かった。
「ふ、ふふん……効いているみたいだな。どうだ? ギブアップするなら……や、やめて
やっても……いいぞ?」
周囲にも声が上ずっているのが分かる口調で樹は麻弓に降伏を迫る。しかし……。
「ハァ……ハァ……はぅん♪ ……緑葉……クン♪」
麻弓は目を閉じたままぐったりと寝そべり、電気アンマの刺激に耐えているのみだ。樹の
声もどうやら耳に入らないらしい。
「う……」
これには流石の樹も対処に困った。このまま電気アンマを続けた方がいいのか、それとも
……。やめるにやめられなくなった電気アンマの刺激に、麻弓の息遣いはどんどん荒く、
大きくなっていく。額にはうっすらと汗が滲み、白い太股が赤みを帯びてきて、体が火照って
いる様子が窺えた。
小さいながらもちゃんと女の子らしい丘陵が一応ある胸は気のせいかさっきより膨らんだ
気がする。そして電気アンマで刺激されている股間は――。
(や、やばい……かも……)
樹は電気アンマを外そうにも外せない事情があった。さっきからグリグリと刺激されていた
麻弓の股間は……ぐっしょりと湿り気を帯びていたのだ。
(この濡れ方は、その……)
少なくとも小水ではない事は樹にも分かる。だったらもっとサラサラした感触だろう。
今の麻弓の股間はもっとネットリとした濡れ方だった。このまま足を退ければ糸を引いて
しまいそうな――靴下越しにでもその状況は分かる。だから簡単には退けられない。
電気アンマに濡れてしまったのがクラスメートに分かったら流石に麻弓でも……。
どうしようか、と樹が稟に目で合図を送って助けを求めようとした時――。
りーん♪ ごーん♪
「チャイムですね」
ハッと我に返った楓が午後の授業が始まる事を皆に告げる。級友達はそれを合図にそれぞれの
席に戻り始めた。
(ちゃ、チャンス……!)
ギャラリーが目を逸らした隙に樹は電気アンマしている足を股間から退け、手早く捲くれた
スカートをなおして麻弓を助け起こした。麻弓は虚ろな目で樹のされるがままになっている。
「は……ハン! 時間切れだ。ざ、残念だが仕方が無い。今回はこれで許してやる」
麻弓を立たせた樹が眼鏡のブリッジに手をあて、傲然と言い放つ。しかし、完全にどもり口調だ。
麻弓はじっと樹の顔を見つめていたが、少しうつむいて樹ににじり寄る。
「な、なんだ!? もう昼休みは終わりだぞ! さ、さっさと席に着けよ」
怒った麻弓の反撃を食らうと畏れたのか、樹が後退りするが……。
「ふぅ……ん……♪」
ドサッ……っと、麻弓は樹の胸の中に倒れこんだ。そのまま動こうとしない。熱い息遣いが
間近で感じられて樹の胸はドキドキと高鳴っていく。
「お、おい……」
そのまま突き放すわけにもいかず、樹は麻弓を抱きかかえる。クラスメートの視線が痛い。
麻弓は目を閉じて樹の胸をギュッと抱きしめた。
(よ、弱ったな……)
樹がポリポリと頬を掻いていると、
「麻弓ちゃん、席に戻りましょ? ね?」
気を効かした楓が麻弓を樹から引き離し、席に誘導した。麻弓は楓のされるがままについていく。
「ふぅ……」
露骨にホッとした様子で樹が席に着くと同時に撫子が教室に入ってきた。際どいタイミング
だったが、楓のお陰で助かり、樹ばかりでなく周囲もホッとする。
「よぉ〜し、授業始めるぞ〜! 今日の板書き担当のつっちー、前へ」
撫子の授業が始まるとクラスは何事も無かったように平常を取り戻した。若干一名を除いて。
3.
あれから麻弓の様子は明らかにおかしかった。授業中、指名されてもぽけっとしたままで、
呆れた撫子が諦めると樹の方を見つめた。その視線は樹にもしっかりと感じられ、なんとなく
妙に淀んだ雰囲気が二人の間に漂っていた。
そして、放課後――。
「麻弓ちゃん、帰ろうか?」
楓が麻弓に声を掛ける。麻弓は楓を見ると首を振り、鞄を持って席を立つ。
「私……先に帰る。ゴメンね」
「あ、うん……。いいよ。気にしないで」
「それじゃ……」
おぼつかない足取りで教室から出て行く麻弓。その姿を見送ると稟は樹に声を掛ける。
「どうするんだ? あのまま帰しても大丈夫なのか?」
「え? お、俺か!?」
「他に誰がいる。麻弓の様子が変なのはお前のせいだろ?」
「そ、そう言われても…………おわっ!?」
樹が出口の方を見て素っ頓狂な声を上げた。稟と楓もそちらの方を見てみると――。
「…………」
今教室を出たばかりの麻弓が廊下から稟達の方を見ていた。いや、稟達ではないか。
彼女の目元は熱く潤み、そのオッドアイの瞳は深い煌きを湛えながら、熱っぽく
ただ一人、樹だけを真っ直ぐに見つめていた。
「あうう……」
戸惑う樹だが、稟はそ知らぬ顔だし、楓は「行ってらっしゃい」とばかりに小さく
手を振っている。仕方なく樹も鞄を取り、挨拶もそこそこに麻弓に駆け寄って行った。
二人は廊下で何かやり取りをしている。稟達がしばらく見つめていると、やがて麻弓が
小さく「馬鹿……」と呟いて樹の胸に額を当てた。恥かしそうに頬を染めながら。
周囲の好奇の目に晒されながら、樹はいつもと違いアタフタしている。
「へぇ……」
稟が楓を見ると彼女も微笑んでいた。樹達はそれこそ恋人の様にピットリとひっつき
ながら下校していった。
* * *
その夜――。
今日も楓の心のこもった食事を満喫し、豊かな気持ちでリビングで寛いでいると、楓が
ハーブティーのセットを持って入っていた。
「お待たせしました。リムちゃんを寝かしつけてたので少し遅くなってしまって」
「え? もう……?」
「はい。少し早かったでしょうか?」
時計を見ると針は9時を指している。子供ならそう早い時間でもないが、プリムラの
年齢だと少し早めだろうか。まあ、そもそも寝かしつけが必要な段階で子供なのだが。
シン……と静まり返ったリビングでコポコポと楓がお茶を淹れる音だけが聞こえる。
風呂上りの洗いざらしの髪と白いうなじを見ているとたまらなくそそられる気分になる。
(やっぱり、違うんだよなぁ……)
稟を受け入れてくれる前の楓とその後の楓。同じ事をしてくれているようでも何か気分が
違ってくる。ハーブティーを飲んで、寛いで、それから――。
今までだったらそこで「おやすみ」の挨拶をして、お互いの部屋に戻るだけだった。
しかし、今は違う。二人には一緒に向かう『寝室』があった。二人が初めて結ばれた
次の日、楓が用意したのだ。
「やっぱり……一緒にいられる場所って、欲しいですから」
恥かしそうな表情で案内する楓を稟は優しく抱きしめ、熱いキスをして、そして……。
「今日の麻弓ちゃん……変でしたね」
稟が先日の思い出に耽っていると楓が話しかけてきた。
「あ、ああ……そうだな」
昼間の事を言ってるのだろう。昼休みのちょっとした騒ぎの後、麻弓は明らかに様子が
変だった。樹を熱く見つめ、二人して下校して、それから……。
「あれから麻弓ちゃん、樹君と……しちゃったんでしょうか?」
楓が大胆な事を言いだしたので稟は思わず口をつけたハーブティを吹き出しそうになった。
「しちゃったって……なにを?」
「その……昼休みの続きを……」
「ああ……」
流石に二人っきりの時に『電気アンマ』と言う言葉は使いにくい……と思っていると、
「電気アンマって……気持ちいいんでしょうね。女の子には……」
楓が思い出すような目をして言う。稟は答えに詰まった。勿論、女の子の感覚が分からない
からだけではない。
「麻弓ちゃん、大人しくなっちゃいましたもんね。樹君が戸惑っちゃうぐらい……」
ハーブティーを啜りながら独り言の様に呟く楓。稟に問いかけるでもなく、それに対する
感想を述べるでもなく……。
「やっぱり……効いちゃったんでしょうね。樹君もちゃんと靴を脱いで優しくしてたし」
稟が答えないのでリビングには楓の声だけが響いている。
(何か話題を変えたほうがいいかな……?)
そう思って稟はテレビのスイッチを入れる。大差がついてるのにダラダラとやってる
野球中継が映った。チャンネルを次々と変えていく。素人いじりのつまらないバラエティ、
当たらなければ開き直って恫喝するだけの占い師、思想が凝り固まった放送局のニュース
番組、制作費だけが売りの3年前の洋画――どれもこれも楓との会話を弾ませるものでは
ない。楓はじっと稟がする事を見つめているだけだ。
「…………」
仕方ないのでテレビを消し、楓の方を振り向いた。
「電気アンマ……してみる?」
「はいっ!」
楓は満面の笑顔で稟を見た。
4.
「プリムラを早く寝かせつけたのもこの為じゃないだろうな?」
一人ぽつねんとリビングに残された稟が呟く。
先に楓が寝室に入り、着替えをしてから稟が入る、と言うのが二人の習慣だった。
「着替えてるところを見られるのは、やっぱり恥かしいですから」
悪戯っぽく笑いながら楓はそう言う。かと言って、着替えたコスチュームが色気の無い
パジャマとかではない。最近は大人っぽいランジェリーにも凝っているようだ。
稟にしてみれば結局は見せてもらうのだから、着替えで見ようとベッドの上で見ようと
同じ事だと思うのだが、楓にとっては違うらしい。
『楓にとって』と言うより『女の子にとって』、の方が正しいか。
リビングの子機がツーコール鳴る。「稟君、準備できましたよ♪」の合図だ。
稟は手早くパジャマに着替えると寝室をノックして返事を待ってからドアを開けた。
(うわぁ……)
いつもの事だが――今日の楓の寝間着も中々煽情的な物だった。いつもの様に惚けて
突っ立ってしまう稟を見て、楓は恥かしそうに微笑む。
「そんなに見つめられると、恥かしいです……稟君♪」
そうは言われても……と、照れながらも楓から目を離す事が出来ない。綺麗に梳かされた
髪と白い肌……それに身につけているのはミントグリーンのシースルーのネグリジェだけ
だった。透けて見える肌には紐で結ぶタイプのショーツがつけられているだけで、
トップには何も身に着けず、可愛らしい蕾もネグリジェに透けて見えている。
「こ、この格好で……するの?」
「はい♪」
楓は楽しそうに微笑む。ワクワクした表情で稟がベッドに来るのを待っていた。
(こんな格好で電気アンマなんかしたら……どうなるんだ?)
想像するだけでゾクゾクしてしまう程大変に恥かしい展開になりそうだが、楓の楽しそうな
笑顔を見ていると自分だけ迷っているのが馬鹿らしくなってしまう。
稟も流石に心を決めて楓と向き合う位置に座り込んだ。
「こんな感じ、でしょうか……?」
楓は少し足を広げて稟のほうに向けて伸ばした。その状態でネグリジェの前をはだけさせると
ショーツの色が白であるのが分かった。
「目に眩しい」
思わず稟が呟くと、注目している場所がどこかわかって、楓が恥かしそうに微笑む。
「私のここ……狙われちゃうんですね」
楓が太股をモジモジさせた。
「なんだか、変な気分です。怖いのにワクワクするような……稟君と初めてした時みたいに」
楓は新鮮な刺激にドキドキしているようだ。稟もそんな楓を見て胸が高鳴り、興奮を
押さえきれない。
「俺も裸になったほうがいいかな」
稟もパジャマを脱ぎ、黒のブリーフ一枚の姿になった。意外と肉付きの良い体を見て
楓が頬を上気させながらホッと溜め息をつく。
「どうしたの?」
「あ……はい、稟君の裸を見てドキドキしちゃいました♪」
「普通は逆だろ?」
「いいえ、女の子も男の子の裸を見てドキドキするんですよ」
ずるそうな視線で稟を見つめる楓。
「だから、運動は欠かさずに、ね」
そう言って悪戯っぽく笑う。
(電気アンマも運動なのか?)
稟は首を傾げながら楓の足首を掴む。楓の体が一瞬ピクッと反応するが、その後はじっと
動かないで待っている。
(どちらかと言えばされる側の運動になるんじゃないかな……)
昼間の麻弓の反応を見て稟はそう思った。
「楓は……電気アンマされた事とか、あるの?」
「え? な、ないですよ……多分」
「多分?」
「その……ち、小さい頃に女の子同士でした事はあります。まだ電気アンマって意識して
なかったですけど……」
「その時はどう感じた?」
「えっ……? えっ!? そ、それは……多分、くすぐったかった、と思います……」
「あんまり覚えてないんだね?」
「はい……」
それはそうだろう。楓の経験したのは子供の時の名も無き悪戯……まだ性の知識が無い
子供達がここへの刺激にどういう意味があるのかなど理解できるはずも無い。
「じゃあ、これが事実上初体験なんだ」
「は、はい……あのう……」
「なに?」
「稟君は……した事あるんですか? 他の女の子に……」
「ないよ」
思わず稟は笑ってしまう。
「男同士の悪戯だったらあるけど、それとは全然関係ないからね。男にするのは別物だし。
だから……」
「はい?」
「そんなに上手く出来ないかもしれないけど……」
「だ、大丈夫です。私もそうですから……」
「上手く電気アンマされる方法ってあるの?」
「あ……どうなんでしょう?」
二人して困惑の表情を浮かべ、お互いに顔を見合すとつい噴出してしまった。稟も楓も
緊張で固くなった体が解れる。
稟はいきなり足を股間には持っていかず、楓の内股を足の裏で撫で上げた。
「あっ……」
敏感な内股を触られ、楓が喘ぎ声を上げる。
「ここって楓の弱点だったよな?」
「そ、そうでしょうか……?」
「フフ……隠したってもう分かってるよ」
ここ数日、何度も愛し合った中で楓が感じる所はある程度知っている。
(電気アンマにも前戯ってあるよなぁ……?)
稟は執拗に足の裏で撫でたり、本当に電気アンマするようにブルブルと震わせたりした。
「ひゃあ……うッ!」
楓が思わず前のめりになる。
「ず……ずるいです、稟君……」
「そう? 何にも悪い事してないけど?」
「私の弱点を狙ってるじゃないですか……何度も」
「それは愛撫の基本だろ?」
クスクスと笑うと更に稟はしつこく内股を足の裏で撫で回す。普段の稟には似ない執拗さに
楓の体は電流が走ったように反応する。
「あぅん……稟君、意地悪です……」
愛くるしい喘ぎ声で楓が抗議する。しかし、それは稟の嗜虐心を刺激するだけでしかなかった。
「楓、この状態で電気アンマされたら、どうする?」
「え……?」
稟に丁寧に優しくじっくりと内股を愛撫された楓の体は既に全身が火照っていた。今そこに
新たな刺激を与えられたら、どうなるだろう?
「クスクス……なんか新たな境地が発見できるかもな?」
稟の意地悪な表情に、楓は少し反抗心が芽生える。
「へ、平気です。まだ太股を触られただけですから」
「そう? 強がってない? 例えば……」
稟は少し体を深く楓の方に寄せると股間ではなく、下腹部の方を足先でグリグリした。
女の子の柔らかいお腹の肉の感触が足先に伝わって気持ちがいい。
「……きゃあん!!」
意表を突かれた楓は悲鳴を上げてしまった。
「これで平気なの、楓? こんなので悲鳴を上げていたらアソコに電気アンマされた
日にゃ……」
「やん……、ああん! 稟君の意地悪……!」
ぷにぷにとお腹をつつかれ、楓は腰をくねらせて悶えた。稟の目がキラリと光る。
「意地悪なのはこれからさ」
「え?」
稟は更に深く体を入れると今度はしっかりと股間に足先を入れた。ショーツのすれる感触が
伝わったかと思うと、思ったより深くめり込み、柔らかい恥肉が驚いたようにキュン!と
引き締まった。稟は楓の締まったそこをこじ開けるようにくにくにと指を蠢かせる。
「ひゃうんッ!? ……だ、だめ! いきなりなんてズルイ……」
「そうか? 楓のここはもう準備オッケーみたいだぞ?」
「え? や、やだ!!」
稟は一旦足を抜いて楓の鼻先に自分の爪先を近づけた。そこはねっとりと濡れており、
稟が足の指を広げるとその粘液は糸を引き、蛍光灯の光にキラキラと反射した。
「は……恥かしい……」
真っ赤になって顔を背ける楓。しかし、稟はしつこく追いかけ、その頬に楓の蜜をなすり
つけた。
「い、いや! り……稟君……」
「舐めろよ」
「え?」
「楓の体から出たもので汚れたんだ……責任持って綺麗にするんだ」
「稟君……は、はい……」
自分の言葉どおり、意地悪になった稟に命令され、楓は自分の蜜がついた足先を咥えた。
くちゅ……ぺちゃ……くちゅ……。
淫猥な音を立て、楓が稟に奉仕する。
(私……稟君に命令されて……感じちゃってる……)
楓は一心に稟の足指をしゃぶりながら内から込み上げてくる黒い期待を感じ取っていた。
(こんなに恥かしくて屈辱的な事を強要されているのに……私……)
楓は奉仕しながら稟の表情を盗み見た。稟は指先を舐められても感じる様子でもなく、楓の
屈辱的な姿を見つめている。
(今日の稟君は……暴君なんだ)
なんとなく、楓はそう思った。いつもの楓を暖かく愛してくれる優しい稟ではない。
電気アンマやその他の屈辱的な責めで生贄の楓を苛む暴君――。
(でも、そうなるように仕向けたのは私だから……)
楓は稟の足を存分に舐めると慈しむようにその足を撫でて自分の足の間に置いた。
これから自分の女の子の急所を可愛がってくれるもの――そう考えると堪らなく愛しかった。
「お願いです……稟君。私に……電気アンマしてください……」
楓はリビングでは自分から言えなかったおねだりをした。
その言葉を聞き、稟は楓の両足首を掴みなおし、股間に足を割りいれた。
「あっ……」
稟の足の裏が自分の秘所に触れた時、楓は目を閉じて呻いた。
5.
クチュ……クチュ……クチュクチュ…………。
「はぅん……! 稟……くん……」
淫靡な音を立てながら、楓は稟の股間責めに耐えている。
昼間に見た樹から麻弓への電気アンマ責めとは少し違ってた。女の子の足を持って固定する
のは同じだが、樹が脇に抱えて強烈な振動を急所に与えるのに対し、稟が今やっているのは
足首を手に持って振動ではなく指使いで責め立てる電気アンマだ。樹のやったものと比べると
派手さと威力に劣るが、女芯の形に副った細やかな責めが何通りにも出来る利点がある。
(これは……女の子の大事な所をエッチに苛める電気アンマなのかも……)
楓は何となくそう考える。弱点としての急所を責める電気アンマと、女の子自身を性的に
責め立てる電気アンマ――区別はつきにくいが、微妙な違いがあるようだ。
稟の責め方は段々と陰湿になってくる。既にショーツはぐっしょりと濡れそぼってダメに
なってしまい、稟は器用に足の指で横紐を解き、パラリと楓の大事な所を開帳させた。
「やだ……だめ……」
楓は恥かしさに懸命に足を閉じようとしていたが、簡単には閉じさせてもらえない。
稟は巧みに両足を使って楓の両足を内側から広げてしっかりと電気アンマできるスペースを
確保した。そして、足を閉じようとした罰のつもりか、その直後には指でクリットを挟んで
捻った。
「きゃうん……!!」
女の子の急所中の急所を責め立てられた楓は前屈みになって腰を引いた。しかし、稟の足指は
執拗に楓の股間を追いかけ、突っつくようにしてクリットを責め苛む。
「やだ……! だめ……稟君!」
ショーツを脱がされた状態で腰を引くとシーツに割れ目や菊門が擦れて、その刺激に思わず
呻いてしまう。全てが計算された手口ではないだろうが、女の子の急所への二重三重の責めに
楓は激しく身悶えした。
「ハァ……ハァ……。り、稟君……辛いです……」
「辛い? 気持ちいいの間違いじゃないのか? こんなにシーツを濡らして……」
「あ……」
稟に指摘され楓の頬がカァ……と熱く火照る。
「二人が愛を誓った神聖な場所をこんなに濡らすなんて……楓はエッチな女の子なんだな」
稟はいつもと変わらない笑顔で言う。そしてそれはいつもと変わらない分、楓を羞恥地獄に
陥れた。
「い……言わないで下さい……」
楓は堪らなくなってシクシクと泣き始めた。稟君はいつもと変わらない、なのに自分は……。
「電気アンマされてそんなに気持ち良かった?」
稟が優しく問いかける。涙を拭いながらコクリと楓は頷いた。
もう認めてしまおう――私は電気アンマされて感じちゃう淫乱で変態の女の子なんだ、と。
「もっと激しい電気アンマをされてみたい?」
同じくコクリと頷いた。もっと激しく、嵐の様な電気アンマを受けてみたい――この淫乱な
炎を静めてくれる、暴風雨の様な電気アンマを――。
「ネグリジェを取って……裸になって」
稟は執拗に追いかけていた足先を引っ込めて優しく命令する。それは確かに命令だった。
逆らう事を許さない、主と従だけに交わされる約束事――。
「はい……」
楓はネグリジェの前紐を解くと、するりと肩から落とし、全裸になった。蛍光灯の光に
映える楓の白い肌は、恥かしさと責めに耐えた熱で桃色に上気して、例えようもなく煽情的で
美しかった。
「電気アンマは後でたっぷりとしてやる。その前に、俺のモノをしゃぶるんだ」
稟の命令口調に楓の体が一瞬緊張したが、
「はい……私のご主人様……」
稟に命令された楓は黒いビキニパンツに手を掛け、愛しい人の大事なものを表に晒した。
縛めから解放されたその怒張は楓の頬を打たんばかりに跳ね上がった。
「稟君……」
楓は愛しそうにその怒張に頬擦りすると、その先端に軽くキスをしてゆっくりと口に含んだ。
* * *
チュバ……チュル……チュ……。
静まり返った寝室で、楓が一心不乱に稟に奉仕する音だけが聞こえる。
(こ、これは……凄すぎる……)
稟は耐えるのに必死だった。行きがかり上命令したものの、こんな事をしてもらうのは
初めてなのだ。楓のおぼつかないテクニック(本物のテクニックがどんなものかは稟は
知らないが)が逆にその懸命さを感じさせて、稟は何度も暴発しそうになる。
(さ、流石に口の中に出しちゃ……まずい……)
いくら暴君でもそれは気を使う。だが、懸命に耐えようとしていた時に楓の舌先が亀頭の
筋に触れて思わず楓の頭を強く掴んでしまった。
「きゃん!?」
楓が思わず悲鳴を上げて稟の怒張から口を離した。楓のフェラチオから解放されて思わず
ほっと一息つく。
「どうしたんですか……?」
楓が可愛らしく小首を傾げて稟を見つめる。
「いや、その……」
稟が思わず言い澱むと、楓は何かを察したように軽く微笑み、吐息を漏らした。
「出しても……大丈夫ですよ」
「え?」
「稟君は私のご主人様なんですから……ちゃんと受け入れられます」
にっこりと微笑む楓だが、流石にそれを素直に頷くわけにはいかない。
「し、しかしなぁ……」
困った表情の稟を見て楓が悪戯っぽく瞳を煌かせた。何か思いついたらしい。
「いいですよ、じゃあ続けますね♪」
「え? いや、そのちょっと待った……」
「私の時は待ってくれなかったじゃないですか……意地悪なご主人様にお仕置きです♪」
楓は問答無用で稟の股間に顔をうずめると、舌先をナイフの様に尖らせて怒張の先端を
舐め上げた。ビクビクビクン……!!とそれ自体が生き物かの様に稟のペニスは楓の
鼻先で暴れまわる。
「おぅう……! ちょ、ちょっと待て楓!」
「待ちません♪」
楓は舌を出して悪戯っぽく稟を見上げる。
「気持ち良ければ遠慮なく私の口に出して下さい。それが出来ないのなら……」
クスクス……と猫の様に笑う。小悪魔の様な悪戯をする楓を稟は初めて見た。
「我慢してくださいね、ご主人様♪」
そう言うと再び楓は稟の怒張の先端を舐め続ける。先程までの様に全体を舐めるのでは
なく、先だけを集中的に責めている。先程稟が楓のクリットだけを狙って執拗に責め立てた
仕返しだろうか?
「か、楓……! もう……ダメだ……」
「フフフ……だから我慢しないで下さい♪」
「あ、後で酷いぞ! 泣いても絶対に許さない、この世で最悪の電気アンマをしてやる
からな……! あぅ……あっ!」
「はい。……楽しみにしてますね、ご主人様♪」
つかの間の攻守逆転――楓は存分にそれを楽しんだ後、激しく暴発する稟の迸る白濁を
顔一杯に受け入れた。
(ステキ……♪)
顔を精液塗れにしながら、楓は熱病に侵されたような潤んだ瞳でうっとりと、これから
自分がされる責め苦の数々を思い浮かべていた。