なぎひことあむちゃん / 番外編の時の話
新年の初詣。
縁結び神社へのお参りに、なでしこの双子のお兄さん「なぎひこ」と一緒に来たんだけど、初対面のはずなのに何だかすっごく話しやすくて気付いたら恋愛相談しちゃってた。
やっぱり、双子なだけ有って外見も雰囲気もなでしこによく似てたからかな?
複数の男の子にドキドキする―。なあんて、今の自分の気持ちを説明しながら、あたしってばどれだけ気が多いんだ!ってセルフ突っ込みを入れてしまうんだけど
でも、なぎひこはそんなあたしに呆れる事無く、アドバイスをしてくれて縁結びの御守りもくれた。
優しい所もやっぱりなでしこによく似てるし、ちょっとカッコイイかも。
…って、また意識してちゃダメダメじゃん!
「ねえ、あむちゃん。"友達"の好きと"特別"な好きの簡単な見分け方が有るんだけど、知りたい?」
「えっ」
不意に声を掛けられたと思ったら、視界いっぱいになぎひこの整った顔が近付いてきてて、柔らかな感触があたしの唇に触った。
ちゅっと軽く音を立てて、触れてはまた離れてとほんのり暖かく感じるソレは何度か繰り返される。
ああ、唇って柔らかい感触がするんだなあなんて、ぼんやり思ったあたしが放心状態から我に帰ったのは、最後にぺろっと口唇を舐めて、なぎひこが身体を離した後だった。
…って。
え、えぇええぇぇっ!?
目の前にはイタズラっぽくニコニコ笑うなぎひこの顔。
今のって、もしかしなくても【キス】、されちゃってた…んだよね!?
「ちょっ…なぎひこっ」
「嫌だった?」
「いやっていうか…」
「どんなに仲良しでも友達とはキスしないでしょ。だから、気になる男の子とキスしても平気かなって考えたら良い基準になると思うんだけど、どうかな」
そっと両手を恋人繋ぎで絡め取られて顔を覗き込まれるけれど、あたしはそれ所じゃない。
今更ながらに唇の感触を意識して、込み上げてくる恥ずかしさで全身が熱くなってきた。たぶん頬も真赤になってる。
速攻でこの場所から逃げ出したいくらいの気持ちなのになぎひこに繋がれた手が離れない。
「あたし、今の、ファーストキス…だったのに…」
「そうなの?勿体ない、もっと味わっておくんだった」
「なっ!?」
「ねえ、僕にキスされて嫌だった?」
悪びれた様子も無く、ちゃんと答えて?と、また唇が触ってしまいそうな近くまで顔を寄せられて、あたしは本当に困ってしまった。
だって…イヤだと思わなかったから。
今日、初めて会ったばかりでこんなの絶対おかしい。でも、なぎひこにキスされた事は嫌じゃない。
だからってなぎひこの事を、特別な気持ちで好きかどうかなんてわからない。嫌いじゃないのは確かなんだけど…。
とりあえず、首を横に振って、いやじゃなかった事だけは伝えるけれど、なぎひこの顔をまともに見られない以上に、有る一点に気が付いて、あたしは益々顔をあげられなくなってしまった。
「なぎひこ…何か…見られてる気がする」
人生の一大事件(キス)ですっかり思考が飛んでたけど、あたし達がいるのはまだ神社の境内の中で、お参りをしにきた参拝客はあたし達以外にもたくさんいるのだ。
そんな中でずっとなぎひこに両手を繋がれて、おでこをくっつけるような距離で話しているのだから、周囲の人に注目されてもしょうがないのかも。
一度視線を意識したら何かもう…恥ずかしさで、死にそう。
「周りが気になる?でも、誰もキスしてた所は見えてないし、今だって僕らを見てる人はそんなにいないよ」
「そんなにって、やっぱ少しは見られてるんじゃん!」
「恥ずかしがるあむちゃんもとっても可愛い」
「聞いてよ人の話っ!マジもうヤダ!!帰る!」
「ごめん、あむちゃん、おこらないで。もう少しだけ僕に付き合って」
混乱と恥ずかしさで頭がぐちゃぐちゃになってしまったあたしは、なぎひこに手を引かれて、宥められながら社の裏に連れてこられた。
たくさんの人がいた表と違って、社の裏は誰もいないし、表のザワザワとした様子が遠く聞こえてくるくらいしか音も無くて、落ち着いた静かな場所だった。
周りを林に囲まれたそこで社の縁側に二人で並んで座ると、なぎひこが口を開いた。
「ごめんね。でも、あむちゃんにこうして会えるのは今日だけだから、まだ一緒にいたいんだ」
「…別に、それは、かまわないけど…」
「ありがとう!ねえ、此処なら誰も見てないから、もっとあむちゃんとくっついても良いよね?」
「うん。…は、えっ?」
しおらしく謝ってきたのも一瞬で、なぎひこの唇が今度はおでこに降りてくる。
びっくりして閉じた瞼にも、ほっぺたにも鼻の頭にも、顔中にキスを落とされて、更に口にも…今度はくっつけるだけじゃなくて開いた口のすき間から、なぎひこの舌が入ってきた。
ちょっとチョット!?もう、どうなっちゃってるのーっ?
ドラマで恋人同士がするような深いキス…を、今、なぎひこにされちゃってる。
くちゅって濡れた音がして、口の中をなぎひこに舐められて舌もくっついちゃってて、いつまでも離れてくれないから息が出来なくて苦しい。
ゾクゾクと背中にしびれるみたいな慣れない感覚が走って、もう限界っ!てなった時にようやく塞がれてた口唇が開放された。
酸欠でぼ〜っとなったあたしは、なぎひこと自分の唇を繋ぐ銀色の筋も、いつの間にか視界が変わって、なぎひこの向こうに軒の天井が見えるのにも突っ込みをいれられない。
そうして押し倒されて抵抗出来ないまま耳まで甘噛みされて、ピクってなって気を取られている間に着物をはだけられてしまっていた。
「やっだめ、あたし…きもの自分できれない…っ」
「大丈夫、僕が後でちゃんと着せてあげるから…だからもっとあむちゃんに触らせて…」
「ふぇ…あっ」
首筋を舐められて、ピクってなった所に更にチクリとした感覚がくる。
なぎひこに肌を吸われてるんだと気付いたのは、顔をあげたなぎひこの唇が赤く濡れていたから。
きれいな黒髪がカーテンみたいにあたしの視界を遮って、此処が外だとか、少し離れた所にたくさんの人がいるコトとか、周りも何も見えなくなってしまう。
「なぎひこ…だめだよぉ」
「あむちゃん、とってもきれい…」
止める声なんて聞こえてないのか、なぎひこはあたしの胸にまでキスを落としてくる。
時々熱くて濡れた舌が舐めてきて、あたしはくすぐったいだけじゃない身体の奥がしびれてジンワリと熱が灯るような初めての感覚を感じてた。
甘えた変な声が漏れちゃって、すごく恥ずかしいのに、あまりにも今の状況が日常離れし過ぎてるせいかもしれないけど…本気で抵抗が出来ない。
「あむちゃん可愛い…キスで気持ち良くなっちゃったの?」
「や、…わかんない…」
「…でもほら、此処すごく濡れちゃってる…気持ち良いんだよね」
なぎひこに此処と指されたのは女の子の大事な所で…たぶん下着の上からでも熱くなっちゃったのが分かるくらい濡れたシミが出来てる。
そんな所を見られてたなんて思わなかった。
なぎひこのきれいな指が下着の上から、あたしのあそこをゆっくりと何度も撫でてきて、恥ずかしいのに、気持ち…良くなっちゃってきてて益々変な声が出ちゃう。
「やだ…こんなやらし…の、だめだよぅ…」
「えっちなあむちゃん可愛い…もっと気持ち良くしてあげる…」
「やあぁっ」
急に手で撫でられる感覚が途切れたと思ったら、今度は熱くて柔らかい何かが下着の上から、あたしのソコに触ってきた。
強過ぎる感覚にこわくなって見ると、なぎひこの頭があたしのまたの所にきてて、新しい刺激がなぎひこの舌から送られてくるのだと気付いた。
布越しなのにワレメや少し上にある女の子の身体の中で一番敏感な突起まで丹念に探られて、あたしはもう気がおかしくなっちゃいそうだった。
こんな所を舐められて、恥ずかしいのに…それがすごく気持ち良くて、触れられる度に身体がビクビクっと痙攣したみたいに震えてしまう。
繰り返される刺激に得体のしれない熱い未知の感覚が身体の奥からせり上がって来る。
「ああっ、だめっなぎひこ、何かクルっ、あっあたし…っへんになっちゃっ、うよぉ」
「イっちゃいそうなの?良いよ、あむちゃん。もっと気持ち良くなって…」
「ふゃっあっ、やあああぁっ!」
限界まで熱くなってた時に敏感な突起に軽く歯を立てられて、その刺激であたしの意識は真っ白になってしまった。
「あむちゃん、だいすき…」
荒くなった呼吸を整えようとする間、ちゅっちゅっと軽く音を立てて、なぎひこがまた顔中に優しいキスを降らせてくる。
すごく恥ずかしかったし、まだ全然慣れないし、なぎひことは今日初めて会ったばっかりなのに、こんな事になっちゃって…。
【特別な好き】の違いのコトとか結局わからないままだったけれど、なぎひこにこうしてキスされるのは好きだなあって、ぼんやり思ってしまったあたしは大概流されやすい女なのかもしれない。(反省)
『あ、あむちゃ〜ん』
あの後、すぐに着物を着せ直して貰って、なぎひこと別れた後、すっかり存在を忘れてたラン、ミキ、スウの三人がふわふわと空から降りてきた。
「あんた達、今まで何処に行ってたの?」
『てまりと会ったから少しおしゃべりしてたのー』
『なでしこが園遊会とかの仕度で忙しいから構ってくれないんだって』
『スウ達は〜、あむちゃんにナイショで〜てまりからお茶菓子貰ったりしてないですよ〜』
こいつら、餌付けされてたのか…。どうりで姿見せないと思ったら。
でも、まあとにかくなぎひことのアレは見られなかったようだし、結果的に助かったかも。
いくら自分のしゅごキャラでも、あんな所絶対に見られたくないもん!
気が抜けて、はあーと深いため息を付くとスウが『あらあら〜?』と不思議そうな声をあげて、あたしの着物の帯を指差した。
『あむちゃんの〜帯のむすび方がぁ〜朝と違うくなってますよぉ〜』
なっ!!ちょっスウ!あんた普段にぶいクセに、どうしてこんな時ばっかり鋭いの!
スウの言葉に反応して、ランとミキまであたしの帯を指差してくる。
『あー、本当だ!せっかくボクが手伝ってあげたのにー』
『あむちゃ〜ん、お着物なのにまた暴れちゃったんですかぁ〜?朝走った時も〜着崩れしちゃうかも〜って、スウ達心配してたんですよぉ〜』
『でも今日はナギーが一緒で良かったね。ナギーにやって貰ったんでしょ?』
「ああ、うん、まあ…そうだね」
そもそも、着物が崩れたのはそのナギーが原因だったんだけどね…。
ああ!!今日は本当に心臓に悪いコトばっかり!!
気付かれなくて良かったと盛大に脱力したあたしはウチに帰った後にも、ママに帯の結び方を突っ込まれて更に死にそうな気持ちになったのでした。
おしまい。