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「ようやく帰ってこれたよ・・・」
そう呟きながら、まだ数えるほどしか使っていない我が家に着いた。
女一人、いや今は一人と一匹か、どちらにせよ2人で住むにはこの部屋は広すぎた。
あの世界とまったく同じ名の都市、東京。
異なる所があるとすれば、ここでは連日のようにおこなわれていた戦闘も幻獣も。
そして・・・私達のような強化された人間もいない、いたって平和そのものだ。
夜の街には私と同じ歳、いやそれ以下であろう子供達がストリートギャングでも
気取っているのか、似たような服装・髪の色でつるみ粋がっている。
彼らにとっては硝煙や血の臭い、日々行われる戦死者のニュースなど、
別世界でのお遊びにしかすぎない。
どちらが狂っているのかと問われれば私の方なのかもしれないが、
それでもこの世界の人間は好きになれそうになれない。
そんな中で、唯一この世界で出会えたまともな人間。探偵の人とそこで働く少年、
そして、もういないあの子のような巫女装束を纏った少女。
そんな人達とも距離をとっている自分がいるのは、その為かもしれない。
しかし、今日は疲れた。
「あの人」の捜索の為にこの世界に来ただけなのに、
最近は妙な事件に巻き込まれ連日の戦闘である。
特に今日はあの世界でも出合わないような強敵だ、
肉体的に、いやむしろ精神的なダメージの方が大きいだろう。
今でも・・・
「ハーッ!!」
「フーン!!」
「兄弟パワー〜〜〜!!!!」
だめだ、思い出すだけでも頭が痛くなる。
それだけなら何とか耐えられたが、今日はそれに加えてお気に入りの
一張羅に穴まで開けてしまった。自分の不甲斐無さに今でも腹が立つ・・・
「ニャーン」
そんな、少し間の抜けた泣き声でふと我に返る。
「そうだよね、君のおかげでこの程度ですんだんだよね」
そう一人で納得すると、この同居人の頭を撫でる。
この子はこの世界に来た時に出会った、かけがえのない友人でありパートナーだ。
「しかし何なんだろうね君の力は?」
前方にシールドを張り敵の攻撃を無効化・反射する能力。
そして、こちらの世界では式神と呼ばれているモノ達、わかっていると言えばそれくらい。
そう教えてくれた探偵の少年ですら、よくわからないと言っていたのだから
私なんかにわかるわけがない。
現に今ここにいるのは一缶○百円の(私の1食よりも値段が高いってのはどういう事?)
高級猫缶を美味そうに食べてる子猫がいるだけ、それでいい。
「はー、お風呂にでも入ろっかな」
どうも、あまり深く考えるのは私の性にあわないようだ。
そう言うと、着替えとバスタオルを用意し浴室に向かう。
と、その前に
「覗くなよ〜」
こういう時のお約束でも言ってみたが、所詮は猫である。
目の前の猫缶(一缶○百円)をパクつくのに夢中で、振り向きすらしなかった。