「ふぅ・・・」
ユーリは寝台の上で、ため息をついて寝返りをうった。
乗っていた船が沈み、海に投げ出されて漂っていたところを
エジプト兵に救助され、
ハットウサから遠く離れた、エジプトのラムセス将軍の家に連れてこられてから、
はや数ヶ月が過ぎようとしていた。
「カイル・・・」
ラムセス将軍からもたらされる、カイルの身辺の不穏な噂に心乱されて、
ユーリは自分にあてがわれた部屋で、幾度となく眠れない夜を過ごしていた。
夜が深まり、あたりがしんと静まり返っても、
カイルのことを思い続けるユーリには、なかなか睡魔はおとずれなかった。
「カイル・・・。必ずあなたのところに帰るから、待ってて・・・」
闇の中、ぽつんとユーリはつぶやいた。
「誰っ!?」
がばぁっと起き上がり、寝台から飛び降りる。
自分の考え事に気をとられて、入口から入ってくる音にきづかなかった・・・!
「さすがに反応が早いな。騒ぐな、オレだ。」
「ラムセス・・・」
人影が寝台のほうに近づいてくる。ほのかに部屋に差し込む月明かりで、
金とセピア色の瞳を持つ、この家の主人の顔が見えてきた。
「驚かさないでよラムセス、こんな夜更けになんの用なの」
「いやあ、我が愛しのイシュタルどのが、このところあまりよく眠れていないようなのでね、
オレが寝かしつけてやろうと思ってきたワケさ」
不敵な笑みを浮かべ、ユーリの肩に手をまわしながら、ラムセスはそう言った。
すぐさまユーリはまわされた手を振り払い、ラムセスの目をまっすぐに見つめながら言い放つ。
「それはどうも。でもあたしは「あなたの」イシュタルなんかじゃないよ。そういう言い方はやめて。
さあ、ご心配いただかなくてもちゃんと眠るから、あなたもさっさと自分の部屋に帰って寝たら!」
もうほぼ真夜中なので、さすがに低い声でラムセスにそう言うと、ユーリはラムセスの体を
入口のほうに押し戻そうとした。
ラムセスは低く笑うと、不意にユーリの体を抱きすくめ、軽々と抱きかかえた。
「なっ・・・!」
抗議しようと開いたユーリの唇を、ラムセスの唇が塞ぐ。
強引に忍び込んできた熱い舌に口の中を犯され、ユーリはくぐもった悲鳴をあげる。
ラムセスはふと唇を離すと、ユーリを寝台の上にどさりと押し倒した。
「ぷはっ!」
ようやく唇が開放され、ユーリは思わず息を吐く、が、すぐにまたラムセスの唇が覆いかぶさる。
「ん〜〜〜っ」
なんとか力を振り絞って、ラムセスの顔を自分の顔から離すと、ユーリは叫んだ。
「ラ、ラムセス、何をする気なの!やめて!!」
「ダメだね。もう体調も戻った頃だろう?
そろそろ、お前をオレのものにしておこうと思ってね。
・・・言っておくが、こないだのように仮病を使っても無駄だぞ。」
そういうとラムセスは、ユーリの両手首を片手でつかみ、
ゆっくりとユーリの体の上に覆いかぶさってきた。
「い、いやあ!カイル、助けてぇ、誰かきてぇ!」
「・・・いくら呼んでも助けはこないぞ。
このあたりは人払いをしておいた。お前の声は誰にも届かない。
もちろん、ハットウサのムルシリ二世にもな。
今度こそ、誰にも邪魔はさせない・・・!」
そういうとラムセスは、あいた片方の手でユーリの服を乱暴に脱がせ出した。
あっという間に服はすべてはぎとられ、ユーリの白い裸体があらわになった。
ユーリはなんとか逃れようともがくが、ラムセスの体はたくみな枷となり、
ユーリを捕まえて離さない。
「ユーリ・・・」
くちゅ・・・
耳朶を、首筋を、鎖骨を、ラムセスの唇と舌がねっとりと愛撫する。
それをうけて、ユーリの背中をぞわぞわと悪寒が走る。
だが――
(やっ・・・やだっ・・・、どうして・・・?)
好きでもない男に体をまさぐられるおぞましさと、それとは別の、甘く切ない感覚がユーリの体内を走った。
ラムセスの指と舌が肌の上をはいまわる感触は、次第に体の奥底まで届き、何とも言えない疼きに変わってきたのである。
(こんな・・・ああっ、こんな・・・ヤツに・・・)
ハットウサで、ほぼ毎夜のようにカイルに愛撫されていたユーリの体は、
意志とは正反対に、ラムセスの愛撫をもたやすく受け入れ、淫らに反応しはじめていた。
「あぁっ・・・・」
ユーリの息に、甘いものが混じりはじめる。
その変化に気づいたのか、
さきほどからユーリの胸を優しくもみしだいていたラムセスの指が、その先端をきゅぅとつまんだ。
「んあぁっ」
ユーリの体がピクンとはねた。
すでにかたくなっていた乳首を嬲られる快感は、体の奥底まで届き、甘い疼きとなって全身を支配する。
ラムセスは唇を舐めると、すでに痛いほどにかたくとがった乳首を口にふくみ、ちゅぅうっと吸い上げた。
「はああっ・うんっ」
指とは比べ物にならない快感に、ユーリは激しく体をふるわせた。
(いやだ・・・っ 感じたくないっ・・・・・・ 負けたくないぃっ)
そんなユーリの思いを知ってか知らずか、ラムセスはその柔らかな乳房を思うさまにもみしだき、舐めまわす。
「相変わらず、さわり心地のいい肌だぜ・・・」
つぶやくとラムセスは、ふと顔を動かして、上気したなめらかな肌の上に舌をはわせた。
存分にその感触を楽しみ、また乳首を口に含んでころころと舌で転がし、吸い上げる。
「あ、あ、あ、あァーッ!」
ユーリの腰がビクンとはねあがった。敏感になった肌への愛撫に、ユーリの体は自身の意思を無視して反応し、
淫らな喘ぎ声をあげさせる。
きつく閉じ合わせていたはずのユーリの膝が緩んだ。そこを逃さず
ラムセスの指が足の間に滑り込む。
「あっ・・・やめて・・・・・・おねがい・・・・・・やめて、やめてェ・・・・・・」
熱い吐息を漏らしながら哀願するユーリの言葉を無視して、ラムセスの指は
すでに充血し、とろとろと奥から密をこぼし始めていた柔らかな肉の襞をなぞった。
体を弓なりに反らし、荒い息をつくユーリの反応を楽しむように、
ラムセスは愛液で濡れた膣口のまわりに指を滑らせ、刺激する。
「あうッ!あ、ああぁー、助けて・・・、カイル・・・」
体の奥底から湧き上がる快感に怯え、ユーリは思わず愛しい人の名を叫んだ。
「奴はこない」
ユーリの声に顔をしかめたラムセスは、冷たい声でそう言い捨てると、
乱暴に陰部をまさぐり、一番敏感な突起を探し出した。
溢れ出す密を指ですくいとって、突起にこすりつけ、しごきあげる。
「ひああぁあああ・・・・・・!」
クリトリスを刺激される痛みと、それを上回る圧倒的な快感に、ユーリの官能の炎が激しく燃え上がった。
全身がかっと熱くなる。
秘部からはとめどなく透明な愛液が溢れでて、その奥がきゅうっと収縮した。
「んあ、ああア・・・ッ! ふああぁ・・・・・・あ・・ダメっ・・・・・・もうダメぇ!」
大きな波が押し寄せてくる予感に、ユーリは激しく身を震わせた。
と――
ピタリ、と、ラムセスの指の動きが止まる。
「!?」
今にも絶頂を迎えようとしていたユーリは、はあはあと熱い息をつきながら、
思わずラムセスの顔を見つめた。
ラムセスはユーリの手を離し、身を起こしてユーリを見下ろすと、不敵な笑みを浮かべる。
「どうした?さっきまで嫌がっていたわりには、えらく感じていたようだな」
「!!」
ラムセスの言葉に、あまりの快感にぼうっとなっていたユーリの頭に理性が戻る。
なんとか起き上がってここから逃れようとするが、体がしびれて思うように動かない。
ラムセスはそんなユーリの顔を両手で包み込むと、顔を近づけて、ささやくように言う。
「いいか・・・今お前の傍にいるのはこのオレだ。
オレが欲しいのなら、素直にそういうんだぞ」
上半身裸の、がっしりした体、蜂蜜色の肌。短い金髪。
金とセピアの、オッド・アイ。
「ラムセス・・・」
真摯な瞳で見つめられ、ユーリは思わずつぶやき、それを聞いてはっと我に返る。
「だ、誰が・・・!」
「・・・強情なことで。ま、そこがいーんだけどな」
ラムセスはユーリの顔から手を離し、また熱い秘部を攻めを開始する。
赤く充血しきった芽をぐりぐりといじりながら、ユーリの中に指をずぶずぶとしずめていく。
柔らかな壁をこすりあげながら、奥へ奥へと指を進ませ、ゆっくりと動かす。
身体の内部でうごめく指の感覚に、ユーリは新たなそこから熱い液をこぼしながら、
無意識に腰を揺らしはじめていた。
「くぅぅっ・・・あふっ・・・・・・ふあぁ・・・アぁ〜ッ!」
再び、絶頂の波が襲いかかってくる。
それを見てとり、またラムセスの指が動きを止める。
(あああ・・・・・・っ)
またも登りつめることが出来ずに、行き場を失った快感がユーリの身体をさいなんだ。
秘部の奥が、熱く疼いて、たまらない。
「さあ、どうして欲しい?」
もどかしげに腰をくねらせるユーリを見て、ラムセスが愉快そうに笑う。
ユーリは悔しさに唇をかみしめるが、快楽を求めて淫らにもだえる身体をもてあまし、もうどうすることもできない。
ラムセスははらりと腰に巻いていた布を取り、すでに熱くそそりたった剛直をあらわにすると、
ユーリの秘部の中央にあてがった。
だが、中に入れることはしない。熱く濡れた溝をぐりぐりと先端でなぞるだけだ。
(・・・あ・・、もっと奥に・・・奥に・・・ほしいのぉ・・・)
執拗に焦らされることに慣れていないユーリの心は、すでに限界だった。
ずちゅっ。
ユーリの体内に、ペニスの先端がもぐりこむ。
ゆっくりと浅いところで出し入れし、すぐ上の肉芽に濡れた先端をこすりつけた。
「んあぁぁぁーっ!」
ついに、ユーリは最後の理性を手放した。
自分を陵辱している男の名を、狂おしげに呼ぶ。
「んああ、ああ、ラムセス!ラムセスぅ!お願い、欲しいのっ!中に、いれてぇぇ・・・
あたし、あたしもう、おかしくなっちゃうぅぅぅぅぅっ」
「・・・よし、いい子だ。褒美をやるよ」
どんなことをしてでも、手に入れたいと望んだ女。
その愛しい女が、自分の腕の中で、自分の名を呼び求める声を聞き、
ラムセスは満足そうに笑うと、そのまま一気に腰を進ませた。
「!!!!!!」
膣壁をえぐるようにして、ペニスがユーリの密壷に吸い込まれていく。
先端が最深部まで届いたことを確認すると、腰を大きく動かして抽送を始める。
「さあ、いい声で鳴けよ」
腰を大きくまわしながら、浅く、深く、何度も突き上げる。
「あぁ・・・ひい・・・・・・ひゃあああぁっ!」
襲い来る快感に身悶えながら、ユーリはそれを逃すまいとラムセスの肩にしがみついた。
子宮が激しく収縮する。
「あああっ!もうダメっ、あ、ラムセスぅ!イッ・・・イッちゃうっ・・・イッちゃうううううっ!」
すさまじい快楽の波が、ユーリの体中を駆け抜ける。
頭の中でいくつもの閃光が火花を散らし、視界が真っ白に染まった。
「あああああああああッ!」
がくがくとその身を震わせながら、ユーリは激しい絶頂を迎えた。
全身から汗が吹き出る。
「うっ、うあっ、はぁ、んあぁ・・・ん、んあ・・・くはぁ・・」
「おい・・・・、まだまだだぜ」
歓喜の声をあげながら絶頂を味わうユーリをじっくりと観察しながら、
ラムセスはユーリの肩に手を置くと、さらに奥まで突き入れた。
「ふああああーーんっ!」
容赦なく突き入れられる剛直に蹂躙され、ユーリは再び限界に達する。
二人の結合部から、愛液が潮のように吹き上がった。
もう、何も考えられない。
信じられないほど、身体中が熱い。
もう、喘ぎ声さえも声にならない。
ユーリは自分の体の奥で熱いなにかがはじけ、胎内を満たしていくのを感じながら、
この夜何度目かの、そしてこれまで感じたことがないような、最大の絶頂に達していた。
・・・どれくらい時間がたっただろうか。
ユーリは、ふと目を覚ました。
夜明けが近いのだろう、部屋の中はほのかに明るくなっている。
ユーリは自分の体にまわされた誰かの腕に気づき、
芯にしびれが残る身体をそっと動かした。
「カイル・・・」
ユーリの小さな声に気づいたのだろう、まわされた腕の主が、
力を込めてユーリを抱き寄せた。
「ち・・・まーだ奴の名を呼ぶのかよ。
ま、いいさ、そのうちオレの名前しか呼べないようにしてやるさ」
目を閉じたままそれだけ言うと、またすぐにラムセスは眠りに落ちた。
「ラムセス・・・」
自分の置かれた状況を思い出し、ユーリは悲しく顔を曇らせたが、
ラムセスの身体から伝わる鼓動と温もりの心地よさに、ユーリもまた、眠りに落ちていった。
END