「あ・・・は・・ア・・ん」
満月の夜、水凪薫のマンションに、甲高い喘ぎ声が響いた。
声の主は小早川流水。
薫は流水の形のいい胸の先端を、大きな舌で包み込むように愛撫した。
意外にも優しいその動きに、流水も快感を抑えられずにいた。
「なかなか・・・上手いんじゃない」
薫は目線だけを流水の方に移した。
快感に酔う流水の顔には、先ほどまでのとげとげしさは無かった。
薫の手が下に降りる。
茂みを抜けたどり着いたそこは、すでに湿っていた。
焦らすかのような動きで、指が割れ目を這う。
流水の中に、感じたことのない強い快感が押し寄せる。
薫の動きはとてもゆっくりとしていた。
それは大切なものを優しく包むように、
愛しむように。
そんな動きだった。
流水のなかに、快感とは少し違う感情が芽生えはじめた。
セックスなんて、ただ快楽を求めるだけのものだと思っていた。
けれど今は違う。
この舌が欲しい。
この指が欲しい。
快感が欲しいんじゃない。
(この人が欲しい)
「入れて・・・」
流水が呟いた。
薫が流水の足を開き、その中心に自分のものを沈める。
しかし、薫はしばらくそのまま動かなかった。
焦らされたのかと思った流水が口を開く。
「・・・何してんのよ」
「焦るなよ。感じねえか」
「ただ入れてるだけで、感じるわけないでしょ」
「俺は感じるぜ」
薫が顔を上げ、流水を見つめる。
その優しい表情に、流水も目を離すことができなかった。
しばらく見つめあった後、
薫が今までとは違う激しい動きで流水の中を貫く。
突然の激しい快感に、流水は一気に昇りつめ、絶頂を迎えた。
しばらくして、薫がゆっくりと話し始めた。
「入れた後、しばらく相手の目を見るのが好きなんだ。
そいつがここにいるって、感じるんだ」
流水は黙って聞いていた。
「さっきも感じたぜ。
お前が、流水が、ここにいるって・・・」
しばらくして、薫の寝息が聞こえてきた。
流水は起き上がり、窓辺に立った。
あの瞬間、薫が欲しいと思った。
それは薫の言う、「感じる」という事だったのかもしれない。
流水は振り返り、眠っている薫の顔を見る。
窓の外で、流水を呼ぶように、満月が輝く。
流水は満月を見つめた。
一瞬の迷い。
「もう、戻れない」
流水は目を閉じ、言い聞かせるように呟いた。
やっぱり、あの人を愛しているから・・・・・・。