決して、油断していたわけでは、なかった。  
 
イアン・ヨハンセンと、クリスチャン・ヨハンセンの、双子の兄弟。  
当面の、そしてきっと最大の敵であるこの二人。  
能力を自由に使える時でも、この二人には痛い目に合わされ、  
さんざんな思いをして逃げてきたのだ。  
捕まるわけにはいかない。  
新月期で能力が使えない今、もしあの二人に捕まったら、終わりだ―。  
 
新月期が近づくと、3人でいては目立つと思ったのか、流水はどこかに姿をくらました。  
多分、また力が使えるようになるまで、悔しいがじっとどこかで息をひそめているのかもしれない。  
流風と克之は、なるべく目立たない、こじんまりしたホテルに宿にかけこむと、  
とりあえずの宿を確保した。  
明日には、また別のところに移動したほうがいいかもしれない。  
まるで犯罪者の気分だった。  
だが、新月期が終わるまであと2,3日、なんとしても逃げきらなければならない。  
力が使えない二人では、あのヨハンセン兄弟の前に、あまりにも無防備だったから。  
 
旧式のエレベーターがガタピシと揺れながら動く、この古びたホテルでは、  
当然ルームサービスなど望めるはずもなく、  
窓に影が映ることを危惧して、カーテンもぴっちりと締め切った部屋で、  
俺が声をかけるまで、ノックされても返事をするなと言い残すと、  
克之は近くのコンビニに夕食を仕入れに出かけていった。  
ばふっ。  
ひとり部屋に残った流風は、ベッドに倒れこむと、大きくため息をついた。  
横になって目を閉じる。額の上に手を置いて、流風はあらゆることに思いをめぐらす。  
(これから、どうなるんだろう)  
不安なことはいっぱいあった。  
ヨハンセン兄弟のこと、流水のこと、自分自身のこと、克之のこと−。  
つんと目頭が熱くなり、ひとすじの涙が流れて、白いシーツに吸い込まれていった。  
(克之、早く帰ってきて)  
ひとりでいると、色んな考えが頭に浮かんできて、気が滅入ってしまいそうだー。  
 
コンコン。  
ふいに、ドアがノックされた。  
(克之?)  
ぐいと涙をぬぐって、ぱちりとひらいた、流風の目に。  
天井すれすれに、重力を無視したように静かに浮かぶ、二人の長身の男の姿が映った。  
二つの、全く同じ顔が、4つの青い瞳で流風を見下ろしている。  
片方の男の額には、斜めに走った傷があった。  
(・・・・・・・・!!)  
あまりの驚きで、声も出ない。  
なぜここが、とか、いつの間にここに、とか、  
疑問はどんどん湧いてくるが、パニックに陥りかけた頭では上手く整理できず、  
流風の頭は混乱した。  
(!逃げなきゃ!!)  
はっと我に返り、逃げ出そうとした流風の動きを予測したように、  
男の一人が急降下して彼女の腕をつかみ、再びベッドに押し倒すと、そのまま強く唇を重ねた。  
「んーんんんーっ」 激しくもがく流風。と、その男の指が流風の細い首をとらえ、ぐいぐいと締め上げはじめる。  
(ぐぅっ、く…苦しい… 克之、助け…て…)  
クスクスと、二人の男の冷笑が重なって聞こえる。  
流風の意識が。  
消えた。  
 
意識を失ったのは一瞬であったらしい。  
だが、その一瞬の間に、流風は男たち―最も会いたくない相手であった、イアンとクリスチャンの二人によってまるで荷物のように担ぎ上げられ、ホテルから連れ去られていた。  
着いた場所は、最初に対峙したときの水族館ではなく、海沿いの小さな家。  
個人住宅とは、どこか違った作りの内装・・・多分、別荘なのだろう。  
ジーンの持ち物だったのか、または感染者が所有していたのを奪ったのかもしれない。  
二人は流風をつれ、地下にある小部屋へ連れ込んだ。  
 
窓一つない地下室は、誰かが個室として使っていたのだろう、  
床には絨毯がしかれ、大きめのパイプベッドや小さなサイドテーブルなどが置いてある。  
イアンは部屋のほぼ中央にあるベッドにどさりと流風を降ろした。  
 
「きゃ・・・」  
ベッドに投げ出された流風は、なんとか身を立て直すと、体をよじりながら逃れようとした。  
が、すぐにクリスによって退路を阻まれてしまう。  
「あっ・・・・」  
「これは、ルカだな」クリスが笑う。  
「ああ、ルカの方だ。じゃ、相手はオレだな」とイアン。  
怯える流風を見下ろす、冷たい目。  
二人のせせら笑いが部屋に響く。  
「じゃあ、せいぜい楽しむんだな」  
「なんだクリス、行っちまうのか」  
「ああ、オレはもう少しルミとトーマを探してみる。  
 ルミはともかく、トーマは多分、ルカと一緒にホテルにいただろうから、すぐ見つかるだろう」  
そんな会話を交わし、クリスは部屋を出た。  
残ったのは、流風と、額に傷を持つ、イアンとのふたり―  
 
「じゃあ、こないだの続きといくか」  
イアンの身体が流風の身体にのしかかり、覆い被さってくる。  
「いやあぁぁぁー!克之ぃ!」  
流風は動きを封じられながらも、なんとか逃げ出そうと渾身の力で身をくねらせる。  
「んんー、んんんー」  
唇が奪われる。流風は腕を振り回して抵抗しようとするが、やすやすとイアンに両手を掴まれてしまう。  
しかし、流風はあきらめずにイアンの手から逃れようと腕に力を込め、  
足を跳ね上げて、イアンの体を押しのけようともがいた。  
しかし、イアンは流風の抵抗などものともせずに、流風の口腔に舌をねじ込み、さらに深く犯していく。  
「ううっ!」  
イアンは唇を放すと、流風を組み敷いたまま流風のシャツに手をかけ、一気に引き裂いた。  
ブチブチブチッ!  
派手な音を立ててボタンがはじけ飛んだ。ついでブラジャーも剥ぎ取られる。  
ぷるんと零れ出た形のよい乳房を、イアンの手が荒々しくもみしだく。  
「キャアアアアッ」  
痛みと羞恥で流風が泣き叫んだ。だが、それでもあきらめることなくイアンの体の下で必死に身をよじり、  
足をばたつかせて抵抗する。  
こんなのはいや。  
克之じゃなきゃいや!  
愛しい者以外の手が、自分に触れる事を決して許したくないと、  
流風は押さえつけられる苦しさをこらえながら、なおも激しく暴れ続けた。  
あまりの抵抗にイアンの手が緩んだ。すかさず腕を振りほどいて、  
イアンに向かって手を振り上げる。  
バシッ。  
ねらいはあやまたず、流風の手はイアンの頬を捉えた。ピッ、とイアンの頬に引っかいたような傷が走る。  
「この女!!」  
バシィッ!  
怒りに燃えたイアンは、流風の左頬に強烈な平手打ちを加えた。  
「きゃあっ」  
頭の芯まで響く強烈な一打に、流風の意識が一瞬とんだ。  
 
「てこずらせやがって!ちくしょう・・・。なんだってこんなに抵抗するんだ!」  
イアンにとって、これは思わぬ誤算だった。  
無理やりの暴行だ。多少の抵抗はあるものだとはもちろん考えていたが、ここまで暴れまわるとは考えていなかった。  
流水と違い、おとなしそうな流風のこと、男の力で組み敷いて、裸に剥いてしまえばあきらめると思っていたのだ。  
平手打ちで流風がくたりとなった隙に、イアンは流風のスカートのホックをはずすと、ショーツごと一気に引き降ろし、ついに一糸纏わぬ全裸にしてしまった。  
蛍光灯の明かりの下に、流風の白い体がさらされた。  
しなやかな曲線を描く体。なめらかな、きめ細かい肌。  
恐怖心からか小刻みに震えている、まだ十代の、成熟しきっていない若々しい肢体。  
何よりも、従兄弟のジーンがあそこまで執着した双子のうちの一人。  
ゆっくりじっくり、時間をかけて味わってみたかったが・・・。  
「こんな事なら、クリスを行かせるんじゃなかったな。まあいい、作戦変更と行くか」  
時間をかけるより、さっさと落としてしまったほうがいい。  
イアンは腕を切り離してどこかへ飛ばすと、麻紐を探し出してきた。  
流風の手首を麻紐で縛り、ベッドに固定する。  
そして両膝に手をかけ、足をぐいっと大きく開く。  
 
「いやーっ!」  
あられもない開脚姿にされ、気が付いた流風が恥辱に泣き叫んだ。  
なんとか足を閉じようと力を込めるが、イアンの手に押えられた膝も、そして縛られた手首も、びくともしない。  
「まさか・・・」  
流風の秘部を覗き込んだイアンが、驚きの声をあげた。  
茂みに隠された、うすい色の秘裂は、今まで何者の侵入も許した事がないかのように  
しっかりと閉じ合わされていたのだ。  
わずかに湿り気を帯びた秘裂の奥に指を強引にこじ入れてみる。  
「痛っ!いやああっ!」  
イアンの疑惑が確信にかわった。  
「ルカ、お前、まだバージンだったんだな」  
てっきり当麻と済ませているものだと思い込んでいたイアンは、たまらない愉悦感に笑い転げた。  
「クックックッ・・・ククク・・ははははははっ、  
 なーるほどねぇ。それでこの暴れよう…か。」  
せせら笑いながら、指をさらに奥まで突き入れ、激しく動かす。  
「ううっ、痛い!いやああ!」  
足の間に感じる異物感と、中をかき回される痛み。  
愛撫というにはあまりにも乱暴な動きに、  
流風自身が己の身を守ろうとしてか、感じてもいないのに愛液が染み出してきた。  
「残念だったな、初めてがトーマじゃなくて」  
イアンは愉快そうに笑いながら立ち上がって服を脱ぎ、既にはちきれんばかりに怒張した下半身を顕わにした。  
そのまま再び流風の両腿を大きく割り広げると、かすかに濡れた秘裂の中心に、自身を押し当てる。  
「ひぃっ…」流風の顔が、恐怖におびえて歪んだ。  
「お、お願いだから、それだけはやめて、やめて、やめてェ・・・・」  
流風は涙を流しながら必死に懇願した。恐怖で体中が震える。  
 
「・・・もうちょっと感じさせてやろうと思ったんだが・・・・  
 暴れたお前が悪いんだ、ルカ」  
イアンは非情にもそう言い放つと、なんとか逃れようと下半身を動かし最後の抵抗をみせる流風の腰を掴み、これまで男を受け入れた事がない聖域に、自身の灼熱した塊を突き入れた。  
「いやあああああああああーっ!克之ぃー!克之ぃーっっっ!」  
流風の悲痛な声が部屋に響く。  
「力を抜きな。そうしたほうが楽だ」  
「あ、あ・・・うあああぁぁ!」  
めりめりと狭い秘裂の中を、異物が奥へ奥へと侵入してくる。  
襲いかかる強烈な異物感と圧迫感、身を二つに裂かれるような激痛。  
声もでない。呼吸をするのもままならない。  
「お…、さすがに締め付けるな」  
イアンのペニスは凶器となって、まだ十分に潤っていないそこを無理やりに押し開き、  
流風の処女の証を突き破って、ついに奥に届いた。  
「ううっ、うぐぅぅっ」  
先端が最深部へ届いた事を感じ、イアンは手を伸ばして流風の顔をぐいとつかんだ。  
「ほら、こっちを向け・・・・。どうだ、初めての感想は」  
「く・・・」  
歯を食いしばって痛みとショックに耐えていた流風は、苦しそうにイアンを見た。  
 
(・・・・・!)イアンは息を呑んだ。  
赤くほてり、汗で濡れた肌、  
苦痛のためきゅっとひそめられた眉の下で、  
涙を浮かべた目が、それでも拒絶の色をたたえてイアンを見返している。  
その姿はたとえようもなく淫靡で、イアンは女を征服する快感に酔いしれながら、  
湧き上がる欲情をたたきつけるように、大きく腰を動かしはじめた。  
「うあっ、ひ、あぁ・・・!?・・い、た・・・痛い・・・やめ、やめてェェ!!」  
流風の泣き叫ぶ声も、イアンの嗜虐心をあおるものでしかない。  
ギシッ!ギシギシギシッ!  
イアンの容赦のない動きに、ベッドのスプリングが激しくきしんだ。  
腰を何度も打ちつけながら、流風の奥を抉り続ける。  
「あああっ!…ぐぅっ!も、もうやめっ…やめてぇぇっ!」  
動きにあわせて流風の乳房はぷるぷると揺れ動き、その顔は苦悶に歪み、目尻からは涙がとめどなくあふれている。  
イアンは膣内の粘膜を散々に蹂躙し、その感触を存分に味わった。  
限界が近い。  
さらに深く、一気に突き上げる。  
「・・・・やめ・・・てぇ・・・」  
荒い息の下で、掠れた悲鳴があがる。  
その声を合図にしたかのように、流風の最奥でイアンの雄がぐぅっと膨れ上がり、はじけた。  
ドクッ、ドクン・・ドク、ドクドクッ・・・ドクン――  
自分の体の奥で何かが脈うち、熱い液体が胎内を満たしていく、生々しい感触。  
それは流風の心と体を打ちのめし、深い絶望の底に突き落とす。  
(あたし… あたし…)  
汚されてしまった。  
体の外も、内も。  
どこまでも暗い闇の中を落ちていくような感覚に支配され、  
(克之・・・)  
闇の中に、愛する男の笑顔が浮かび、  
かすんで消えていった。  
 
 
ずるり。  
存分に射精を楽しんだあと、イアンは自身を引き抜いた。  
白濁した体液と、破瓜の証の鮮血が、シーツに点々と染みをつくる。  
薄ら笑いを浮かべながら、イアンはベッドから立ち上がって、  
気を失ったのか放心しているのか、ぐったりと動かない流風の裸体を眺める。  
「こいつは・・・」  
最初は、従兄弟のジーンを殺した女として、  
残酷なやりかたで痛めつけ、傷つけて、  
そのあとすぐに殺してしまうつもりだった。  
死体は、片割れが見つかるま保存しておけばいいと思っていたのだが・・・。  
「まだ新月期が終わるまで間があるしな」  
一度きりで殺してはもったいない。  
まだまだ、楽しめそうだー。  
にやりと笑み崩れると、イアンは流風の戒めをとき、自分の服を拾い上げ、  
全裸で横たわる流風を残したまま、部屋を出て行った。  
 
 
散々に泣き、泣き疲れて眠りに落ち、そのたびに悪夢を見て目が覚め、またすすり泣く。  
何度目かの苦しい目覚めを迎え、流風はベッドの上に起き上がった。  
裸のままで放置され、体がすっかり冷え切っている。  
泣き続けたために、顔と目が、はれぼったい。  
体のあちこちが痛む。縛られていた両手首は、激しい抵抗のために麻紐でこすれて皮がむけ、血がにじんでいた。  
でも、何よりも傷つき、どくどくと血を流しつづけているのは、流風の心だった。  
(もう、克之には会えない)  
今、克之に抱きしめられたら、どれほど安堵するだろう。傍にいてくれるだけで、どれほど癒されるだろう。  
だが、自分が陵辱された事を、克之にだけは知られたくない。今の自分を、見られたくない。  
(克之・・・・・!)  
自分の腕で自分の体を抱くようにして、ベッドの上でうずくまる。  
 
ガチャリ。  
突然ドアが開いて、双子の1人が姿を見せた。額に傷がない。クリスチャンだ。  
「ひぃっ…」  
流風は縮み上がった。  
(この人も、あたしを・・・)  
クリスは煙草を吸いながら部屋に入り、怯える流風に近づくと、震える肩にぱさりと  
バスローブをかけた。  
「立てるか?・・・来いよ、シャワー浴びたいだろ」  
思いかけない優しい言葉に、流風が驚いてクリスを見上げる。  
泣きすぎて腫れている流風の顔を面白そうに眺めながら、クリスは流風の手をとってドアのほうに促した。  
(・・・・・?)  
クリスの真意がわからずに、当惑する。  
しかし、熱いシャワーというのは、今の流風にとってこの上なく魅力的な申し出だった。  
体中に残る、あのおぞましい行為の残滓を、記憶を、一刻も早く洗い流したい。  
少しためらったのち、流風は心を決めて体中の痛みをこらえて立ち上がり、クリスのあとに従った。  
歩くたびに、かすかに朱が混じった白濁した液が足を伝って、ぽたぽたと廊下を濡らした。  
 
シャワーを浴び、クリスに連れられてまた地下の小部屋に戻される。  
驚いたことに、陵辱のあともそのままに、乱れ、汚れていたベッドのシーツは新しいものに取り替えられ、  
びりびりに破かれて散乱していた服は片付けられていた。  
ベッドのそばのテーブルには、サンドイッチと、紙パックのジュースまで置かれている。  
(???)  
これはどういうことなのだろう。  
すぐに殺されるかもしれないと思っていたのに。  
流水が見つかるまで、流風を閉じ込めておくつもりなのか。  
あの二人の考えがわからない。  
流風はベッドに腰をおろした。バスローブの前をかきあわせる。  
(どうにかして逃げなくちゃ)  
熱いシャワーのおかげで、少し頭がしゃんとした。  
克之のもとに帰るわけにはいかないが、ここに自分が捕まっていては、ふたりの迷惑になるかもしれない。  
テーブルの上のジュースを手にとる。食欲はまるでなかったが、喉だけは無性に乾いていた。  
大手メーカーの、グレープフルーツジュース。ストローを刺し、少しずつ吸い込む。  
むかついた胸には、その酸味が嬉しかった。  
半分ほど飲み、手の中でパックをもてあそびながら、逃げ出す計画を立てる。  
 
流風の能力が戻れば、二人も警戒するだろう。  
だが、いまなら。  
(弱ったふりをしてれば、油断してくれるかも)  
逃げられるかもしれない。  
入口のドアには、鍵がないようだった。だから――。  
ぐらり。  
流風が見つめていたドアが、斜めにかしいだ。  
(え・・・?)  
めまいがして上体がふらついた。ベッドに手をついて体を支えようとするが支えきれず、  
ずるんとベッドから滑り落ちてしまう。  
(なにこれ・・・ 力が・・・入らない)  
じゅうたんの上にへたり込んだ流風の目の前に、ふいに二本の手が出現した。  
あっという間に、流風の着ているバスローブの紐をとき、はぎ取ってしまう。  
「きゃあ!」  
クスクスと笑い声が聞こえ、二本の手の持ち主が、流風の目の前に立っていた。  
 
「市販のジュースなら、口にすると思っていたが、正解だったな」  
クリスは手をつなげ、全裸の流風を抱えあげると、ベッドにそっと横たえた。  
「別に毒ではないよ。ただちょっと力が入らなくなるだけだ。それもそう長い時間じゃない」  
流風を扱う手も、その口調もひどく優しげだ。  
「昔、イアンと遊びで作っていた催淫剤―つまり媚薬でね。  
 試作品が残っていたのを、ちょっと思い出したんだ」  
ほんの数時間前、自分を陵辱した男と同じ顔、同じ声。  
だが、クリスの青い瞳には、イアンとはまた違った、暗い欲望が秘められていた。  
「いやっ!いやあああっ!」  
優しげな口調や仕草が、かえって恐怖心をあおる。  
だが、手足に力が全く入らず、逃げ出すことも、抵抗する事もできない。  
つぅ、と、クリスの指が流風の肌の上を這い回り始めた。  
細くてしなやかな指は、流風の肌のなめらかさを楽しむように、ゆっくりと動く。  
クリスが自分を見つめているのが怖くて、流風はぎゅうっと目をつぶった。  
だが、視覚がなくなったことで、さらにクリスの指の動きを敏感に感じ取るようになってしまった。  
(あ・・・・)  
クリスが言った薬が効いてきたのか - 感覚が、鋭さを増してきた。  
指で触れられたところが、そして体の奥が、じわじわと熱くなってくる。  
「ふ、はあぁ・・・」  
流風の息が、少しずつ乱れ始める。  
 
クリスの手が、流風の乳房を包み込み、かたくとがりはじめた乳首をかるくつまんだ。  
「んん!」  
クリスがジュースに混ぜて飲ませた媚薬は、あきらかに効果を示しはじめていた。  
頭のどこかで、危険信号が鳴り響いている。  
流されてはいけない。  
薬のせいで体が動かなくても、どんなことをしてでも抵抗するべきだ。  
愛撫を受け入れてはいけない―  
だが、ゆっくりと効きはじめる媚薬とあわせるような、ゆっくりとしたクリスの愛撫は、  
流風の心と体をとかしていく。  
(これは何…?私のからだは……どうなってる…の…?)  
胸がざわめく。自分の体が、自分の体ではなくなってしまったかのような、妙な感覚。  
「いや・・・。お願い、やめてください・・・」  
かすかに甘さが混じった声で流風が懇願した。  
クリスは薄く笑うと、流風の乳首を口に含み、かたくなりはじめたそれを吸い上げはじめた。  
「あふっ・・うぅ・・・」  
乳首に受けた刺激で、体がかっと熱くなる。  
その熱は下半身に達し、そこからまた淫らな熱が沸き起こってくる。  
「くぅ・・・んん…ん」  
口を閉じていても、抑えきれない吐息が漏れてしまう。  
クリスの舌は乳首から鎖骨、首筋に移動し、背中をゆっくりとすべりおりてきた。  
 
「あ…あ…」  
流風の体が、ぴくぴくと痙攣する。  
肌の上を這い回る舌の熱さを感じるたびに、下半身が甘くうずき、痺れてしまう。  
(こんなのはいや…どうしてなの…)  
流風は、自らの体の反応に、心の中で悲鳴をあげた。  
疼きはだんだん大きくなり、意志とは正反対に身体が淫らに反応してしまうのだ。  
舌はどんどん下にさがり、流風の白い尻を嘗め回し、太腿におりてくる。  
内股や膝を丹念に愛撫し、ついにその中心に顔をうずめた。  
「ひゃああぁっ!!」  
ビクンビクン、と流風の体がはねた。  
(いや・・・そんな・・・とこ・・・)  
つい先程、イアンによって抉られた秘裂を、  
熱く、柔らかいものがあくまでも優しくなぞっている。  
性器をなめられているという嫌悪感、それがもたらす興奮、そしてその異常なまでの、快感―  
苦しい。息ができない。  
 
「はぁっ・・はっ・・んうっ・・」  
クリスの言ったとおり、手足の力は徐々に戻ってきていたが、  
流風の大きくおし広げられている自分の足を、なぜか閉じることはできなかった。  
クリスの舌はねっとりと秘裂の入り口をなぞり、肉の真珠をつつく。  
「あぅ……!」  
あとからあとから熱く熔けだして溢れてくる蜜をなめとり、  
花弁を指で左右に開いて、さらに奥へと舌をもぐりこませ、出し入れする。  
さらに大きく舐めまわし、最も敏感な突起に舌を絡ませ、吸い上げる。  
「ああぁぁっ!」  
あ…も…もうダメ…どうにかなりそう……  
媚薬に酔った体の奥底が、じっとしていられないくらい熱くなっている。  
心臓がそこに移動したかのように、秘部がどくどくと脈打ち、  
それは大きなうねりとなって、流風の全身を襲った。  
「あ・・あ・・・ああぁぁっ!」  
切ない声を漏らして、流風の全身をガクガクと震えた。  
「どうやら、イッたようだな」  
顔を上げ、流風がもだえる様を見下ろしていたクリスが、愉快そうに言った。  
(いく・・・?これが・・・?)  
生まれて初めて味わう絶頂感に茫然となり、ついで自己嫌悪が襲ってきた。  
(こんな・・・人に)  
薬のせいとはいえ、こんな男の手で感じてしまった自分が許せない。  
だが、幾度となくかわした克之とのキスや、先程の破瓜の瞬間にも、わずかに花開いたにすぎなかった  
流風の”女”の部分は、媚薬によって強引に目覚めさせられ、揺さぶられていた。  
もう、流風の意思が及ぶところではない。  
 
「かなり効いてきたようだな。ほら、まだまだこれからだよ」  
「クリス!ここにいたのか。何を・・・やってるんだ?」  
同じ声が、違う言葉を発して、重なった。  
いつの間にか、イアンが部屋に入って来ていたのだ。  
クリスのクスクスという笑い声。  
「以前作った催淫剤の事覚えてないか?それをちょっと、流風にね。  
 ほら、イアンにも効果を見せてやれよ」  
そういうとクリスは流風を抱き起こし、背後から抱きかかえて足を広げて見せた。  
ちょうど子供に小用を足させるような格好である。  
「いやーっ!」  
あられもない格好にされ、流風が泣き叫んだ。  
恥辱に泣く流風の秘部は、赤く充血し、とろとろと多量の蜜を溢れさせていた。  
絶頂の余韻もそのままにぱっくりと口をあけ、淫らにヒクヒクと息づいている。  
その淫らな光景に、イアンの喉がごくりと鳴った。  
「へぇぇ、すごいな。効果は上々、ってわけか」  
イアンが手を伸ばし、流風の膣口をくりくりとなぞると、そのまま指を突き入れてきた。  
「ああん!」  
くちゅ、くちゅくちゅっ・・・ちゅっ・・・  
イアンの指の動きのままに、自らの性器がたてる淫猥な音を聞き、流風はますます羞恥心に燃えた。  
「・・・! ああぁ!」  
クリスの舌が再び流風の乳首に吸い付いた。  
「あっ、ああっ!…だめっ、そんなに動かさない…で…」  
やめてと願う声も、どこか媚びるような響きを含んでしまう。  
愛液に濡れそぼった肉の壁をこする指と、尖りきった乳首をころがす舌の感触。  
二人の男に敏感な部分を同時に責められ、流風は再びさっきの波がやってくるのを感じた。  
 
「―――っふ、くぅ… やああああ…ん・・・」  
「いい格好じゃないか!ルカ!トーマが今のお前を見たらどう思うかな!」  
どちらの男の声だったのか、あざ笑う言葉をどこか遠くで聞きながら、  
身も心も蕩かすような甘美な刺激が体を駆け抜けるのを待った。  
と、二人の愛撫が申し合わせたように同時に中断した。  
「あ・・・」  
そして、またゆっくりと、繊細な愛撫をはじめる。  
「くぅ・・・んん…」  
イアンとクリスの息は、こんな時にもピッタリ合っていた。  
的確に流風の性感帯を責め、しかし流風が絶頂に達する前に  
意地悪く敏感な部分から指や舌をそらしてしまうのだ。  
そのたびに流風は大きな波の期待に打ち震え、  
中途半端に放置されてしまった快楽の解放を求めて、淫らに腰をくねらせ、  
もどかしげに花芯をきゅううとわななかせる。  
「あっ、あっ、んうっ…はあっ…や…あっ」  
流風はさらなる刺激を欲しがるように、甘い吐息を漏らし続け、  
秘部から湧き出た透明な液は、イアンの手と、白いシーツをぐっしょりと濡らした。  
もどかしさに、気が狂いそうだ―  
 
涙で濡れた流風の瞳に、もう拒絶の色はない。  
それどころか、はっきりとした欲望と、欲情の色が浮かんでいることに気づき、  
イアンがたまらない愉悦に笑い転げる。  
「どうしたルカ・・・どうして欲しいんだ?  
 さっき俺に初めてを捧げたとは思えないな。  
 ここをこんなに濡らして・・・随分イヤらしい女だったんだな、お前は」  
―捧げたわけじゃない、無理やりに奪われたんだ―そして薬のせいで、こんな――  
流風の脳裏に反論の言葉が浮かんだが、  
口から漏れるのは、掠れた喘ぎ声だけだった。  
「残念だったな、初めてがトーマじゃなくて」  
クリスが流風の耳元で、イアンと全く同じ台詞をささやいた。  
「二番目ももらっちまえよ、イアン」  
「ああ」  
イアンは指を抜くと、流風の体を回転させ、尻を高くあげた四つん這いの格好をさせた。  
硬く盛り上がったペニスを膣に押し付け、先端で入り口を探る。  
秘部に押し付けられた熱くて大きいモノを誘い込むように、流風は思わず腰を前後に揺らした。  
「尻が上がってるぜ、ルカ。まるでおねだりする猫だな」  
尻をぎゅうっとつかまれる。ゆっくりと侵入を開始する熱い塊。  
「はあっ・・・」  
十分にほぐされ、濡れたそこは、数時間前に自分の処女を傷つけたそれを、なんなく通した。  
かすかに感じる痛みも異物感も、新たな快感でしかない。  
「はぁ…っ あ‥‥くっ!は…っ…」  
先端が子宮口に届いた。  
イアンの腰が、ゆっくりと抽送をはじめる。  
流風の身体が自分の体重を支えきれずに小刻みに震えた。  
 
苦痛ではなく、快感のためにゆがんだ流風の顔を、クリスが薄笑いを浮かべて観察している。  
その視線すらも、切ないような快楽にかわる。  
奥まで埋め込まれたペニスを入口まで引き抜き、また一気に奥まで侵入し、  
だんだんに動きを早くして、前後に揺すりたてる。  
「ま、待っ、あぁんっ!はあああぁっ!」  
登りつめる一歩手前でもてあそばれていた流風の身体は、雌の本能のままにイアンのペニスを受け入れ、  
絡みつき、絞り上げる。  
じゅぼじゅぼという、性器がこすれあう卑猥な音が部屋に響く。  
流風の身体の奥底からなにかが背中を駆け上り、また一気に駆け下った。  
「あああぁぁぁーーっ!」  
流風は白い喉をそらして、二度目の絶頂を迎えていた。  
もう、自己嫌悪はやってこなかった。  
強烈に感じていた嫌悪感も、消えた。  
ただ流風の中にあるのは、圧倒的な快楽だけ―  
 
くたりと崩れ落ちそうになった流風の身体を両手で支え、  
イアンはそれでも容赦することなく攻め立てる。  
(もう…もう…やめて…)  
体中が燃えるように熱い、疼く……誰か助けて……克…  
「いやあ、あっ、あっ、んあっ、あぁぁぁーーっ」  
根元まで突き上げてくるイアンの動きに全身を揺さぶられながら、流風は苦しげに喘いだ。  
頭のなかが真っ白になり、意識を手放しかける。  
涙と汗でぐしゃぐしゃになった流風の顔を、誰かの手がつかんだ。髪を引っ張られて、顔がのけぞる。  
と、クリスの怒張が目の前に突きつけられていた。  
たった今自分の中にいるのと同じものが、ビクビクと脈打ちながら口に押し付けられている。  
「い、いやっ!ぐぅっ、んぐぐぐ・・・」  
慌てて口をつぐんだが、クリスは強引に口の中にペニスを入り込ませた。むせ返るような雄の匂いがひろがる。  
「ぐぅ・・・」  
涙をぽろぽろとこぼしながら、流風は嘔吐感をこらえた。  
クリスは流風の顔をつかんで、ぐいぐいと動かしながら流風の口の中を犯し尽くす。  
「んんん……ッ!」  
その合間も、秘部に力強く打ち込まれる動きは休むことなく、膣壁をえぐり、奥に荒々しく突き立て、  
流風のたおやかな身体をさいなみ、全身に熱い疼きを与えていた。  
上と下、両方の口に男の欲望の塊をくわえ込み、二人の男に同時に刺し貫かれて、  
秘肉と口内を無残に蹂躙されながら、  
それでも流風の身体は、強烈な快感に震えていた。  
 
「んーっ、ふーっ、んーっ、んふぅ〜っ!」  
唇の端からだらだらと涎をこぼしながら、流風はくぐもった喘ぎ声をもらす。  
流風の頭を押さえつけていたクリスの手が、流風の胸に伸び、  
揺れる胸の先端をつまんで、こすりあげた。  
同時にイアンの手が前に回り、熱く濡れた突起を探りあて、しごきあげる。  
「ひぃああああぁぁぁーッ!」  
流風の今にも狂いそうな悲鳴が部屋中に響き渡った。  
体の奥底から沸きあがり、爆発的に高まる快楽が全身を駆け巡る。  
ドピュッ!ドクドクドクッツ!  
流風の口の中に、収縮を繰り返す子宮の奥に、大量の熱い粘液が放たれた。  
その刺激は脳天まで突き抜け、頭の芯がビリビリと痺れた。  
さらなる高みに登りつめた流風は、そのまま意識を失った。  
 
一度果てても、男達の欲望はおさまるところを知らない。  
快楽の果てに、体を痙攣させながらぐったりと横たわる流風の体に、  
再び二人の手が襲いかかる。  
 
―新月期が終わるまで、あと、1日―  
 
END  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!