「蒼子」  
 名前を呼んでバスローブを羽織っただけの彬はベッドの前に立った。  
 彼女はベッドに行儀よく腰掛けている。目のやり場に困っているのだろう。  
 彬の存在に気付いているのに顔は膝の上に揃えておいた手を見つめたまま。  
 そんな彼女の恥じらいを好ましく思い、微笑んでそっと彼女の背中へ腕を回し肩を抱く。  
 その瞬間彼女はうつむいたまま僅かに体を震わせた。こわばる肩。  
 
 ホテルの一室。小煩い叔父や弟たちに黙って、行き先を誰にも告げずに車を飛ばした。  
 助手席には蒼子。  
 数時間後、避暑地のホテルにチェックインした二人がいた。  
 ディナーを終え、部屋に戻った二人。  
 シャワーを浴びにいくという彬が、  
「一緒に入るか?」  
 と笑いながら誘ったが、蒼子は顔を真っ赤にして  
「いいっ!あとで入るからっ」  
 と、顔を真っ赤にして全身で拒んだ。  
 それから数十分。何をするでもなく、彬がシャワーを浴びている間、蒼子はベッドに腰掛けて  
もじもじと俯いていただけだった。  
 これから何が行われるのか悟って、動けなかった。  
 
「怖がることはないよ」  
「あっ…」  
 優しい声は耳元で。彼の息遣いが耳をくすぐる。  
 肩を抱いた手はそのまま栗色の髪の毛を掬い取り、指先でしばらく弄んだ後、うなじへと伸びる。  
「……っ」  
 指がうなじを這う。指が服の中に潜り込み、肌をなぞる。ぞくりとした感触が背中から上ってくる。  
 
 堪らず彼女は伏せていた顔を上げる。  
 目の前に愛する人の顔があった。  
「鬼無里から逃げ出したときの再現のようだな」  
 彬が言う。  
 西園寺本家から抜け出して、そのままホテルに行ったときは高雄が現れた。  
 しかしもうあの時のようにはならない。邪魔はもう入らない。蒼子は既に人間だ。  
 そして西園寺の長の女になった。やっと辿り着いた。ここまで。  
 鬼門は封印されて、蒼子ももう既に鬼ではない。彼女はもう人の生気を喰らう必要は無い。  
 だから、これからはもうただ愛し、快感を求めるためだけの行為。  
 蒼子の口を塞ぐ。  
「んっ……」  
 唇を割り、彬の舌が蒼子に侵入する。一瞬驚いたものの、拒絶することなくそのまま受け容れる。  
 彼女の口腔内を暖かな舌が軟体生物のように蠢く。  
 未だに慣れないもののそれは不愉快には感じられなかった。  
 歯列をなぞり、口腔内を犯し、彼女の舌に絡む。  
 なすがままだった彼女も彼に誘われるように、舌を絡み返しはじめた。  
「んん……」  
 言葉にならない溜め息ともつかない喘ぎが唇から漏れる。  
 恐る恐る彬の口へ。されたことと同じことを彼にやり返す。  
 混じりあう唾液。送り込まれ、送り返す。  
 微かに湿った水の音が部屋に響く。  
 その音が必要以上に大きく彼女の耳に聞こえる。  
 ずくん、と下腹が重くなった。いや、重いのではなく熱い。  
 キスの間も彬の左手はうなじを這い、背中を辿り、そして耳をくすぐる。  
 右手は彼女のブラウスのボタンを一つ一つ器用に外していく。  
 外し終わるとそっと彼女を背後のベッドに押し倒した。  
「っあ、あきっ……ああっ」  
 倒された拍子に自由になった口で蒼子は彼の名を呼ぶ、いや呼ぼうとした。  
 その暇も与えず、彬は手を蒼子のわき腹に沿わせる。  
 空調は室内を適温に保っているはずなのに、そこはうっすらと汗ばんで、まるで吸い付くような感触を  
彼の手に与えた。  
 
 くすぐったさで蒼子は背中を仰け反らせる。  
 大きな手はわき腹から、乳房へ。  
 ブラジャーの上から覆うように触れる。  
 柔らかな、それでいて彼の手をやんわりと押し返すような弾力。  
 その感触を楽しむように下着の上からやさしく揉み始めた。  
 そうする一方でもう片方の手も、蒼子の頬を撫で首筋胸元を通ってゆっくりと胸にたどり着く。  
「はっ……ん」  
 きし、と僅かにスプリングの軋む音がして、再び彬の顔が迫る。  
 今度は唇ではなく、蒼子の耳へ。  
 耳元に感じる息遣い。そして、耳朶を包む湿った感触。  
 甘噛みされるくすぐったさと、ぴちゃ、という淫らな音が直接頭を刺激する。  
「あき、ら」  
 耳を犯され、乳房を揉まれている。  
 胸を隠す事も出来ず、手の遣りどころに困り、蒼子の手はただただシーツを掴み、或いは込みあが  
る何かをこらえるように口に含んで思わず噛みしめる。  
 息遣いは既に荒く、熱い。  
 乳首がじんじんとする。いつの間にか勃っていた。  
 揉まれるたびに、ブラジャーと擦れて痛い。きっと彬も気付いている。  
 耳から音が遠ざかる。  
「あ…」  
 耳を犯していた舌は首筋へ。そして鎖骨を通り胸元へ。  
 同時に乳房を弄んでいた手は中央のホックへとかけられた。プチンプチン、と外される音がやけに聞こえる。  
 自由になった乳房は、外気に触れて心細げに震える。  
 しかしその中心の実は存在を主張するかのように立ち上がっていた。  
「は、彬……」  
 再び彬の手が乳房に触れる。今度は直接。  
 掌で乳首を押し込むように揉まれる。   
 指と指の間で挟み込まれる。指先で弾かれる。弄ばれる。  
 そして彼の唇は胸元から、乳房へ。唾液の跡を残して移動していく。  
 心臓が高鳴る。緊張と、そして期待。彬にまで聞こえそうな鼓動。  
 もう少しで乳房の頂点へ、というところで、ふ、と唇の感触が途切れた。  
 
「綺麗だ、蒼子……」  
 唇を離した彬は彼女の顔と双丘とをいとおしげに眺める。  
 蒼子はかあっと顔に血を上らせる。  
「いやっ見ない……っひゃう!!!」  
 彼の顔を背けさせようと頭を押しのけようとしたが、次の瞬間、蒼子の右胸は頂点を中心に彼の口の中に含まれていた。  
 口の中で蹂躙される乳首。  
 形を確かめるようにくるくると円を描いてなぞられる。  
 次の瞬間にはべったりと舌の全てでくるむようにねぶられる。  
 その舌ではじかれる。味わわれて吸われる。  
「あっ、あぁっ…ふあっ」  
 執拗に与えられる愛撫。それは左胸にも及ぶ。ひっきりなしに漏れる喘ぎ。  
「ひあっあっ…ふ……ぁあっ」  
 甘噛みされる。感触を楽しむように何度も。  
 その一方、彼の右手は乳房を離れる。そして、ひた、と再びわき腹に置かれる。  
 再びくすぐったさにわき腹がひくん、と震える。  
 右手は愛撫を加えながら今度は下へ下がり、足の付け根に到着する。  
 蒼子の下半身はまだスカートによって守られていた。  
 だがその中身は内股になり時折足を擦り合わせるように動いている。  
 彬は腰のリボンを解き、スカートに手を掛けた。  
 蒼子も脱がせやすいように意識するでもなく腰をもちあげる。なんなくスカートは足から抜けた。  
 むわっ、と中にこもっていた女の匂いが部屋に広がった気がした。  
 彬の手は今度は蒼子の足先に触れる。足の指を愛撫すると、ひくひくと引きつるように反応する。  
 そして足首へ、足首からふくらはぎへ。  
 触れるか触れないかの微妙なタッチで、ふくらはぎから膝へ、膝から腿へと。  
 太股に近づくにつれ足は過敏なほどに反応する。  
 軽く閉じられていた足は、彬の手によって微かに開き始める。  
 そしてとうとう内股へ到った。  
 パンティごしに熱気が感じられるような気がした。  
「ひあっ……!」  
 すっと彬の指がパンティの上から割れ目を走った。  
 あまりの刺激に蒼子の腰が跳ねる。  
 乳房への愛撫を止め、彬は蒼子の反応に微笑む。  
 
 今度はゆるゆるとパンティごしに割れ目を辿る。  
「あぁ…ぁき……」  
 割れ目に指を押し込めば奥から滲み出る熱い蜜が感じられた。  
 それはみるみる溢れ出てパンティに染みを作る。  
 蜜の零れる感触に蒼子はもじもじと内股を擦り合わせる。  
 彬の指は割れ目の上に移動する。  
「ひゃっ…」  
 そこには敏感な突起があった。  
 突起を指で押し込まれ、パンティの布が更に刺激を与え、再びじわりと蜜が溢れる。  
 布の上から形を確かめるように執拗に指で攻める。  
 布越しでもぷっくりとふくらんだその突起の存在ははっきりとわかった。  
 ころころと転がすように、また押し込むように、摘むように。  
「あくっ…はっ……あう……っく」  
 その度に蒼子は反応し、喘ぐ。  
 切ない。  
 下腹部がきゅうぅっと締め付けられるような感覚に襲われる。  
 親指でクリトリスを刺激され残りの指で女陰をなぞられる。  
 ずきん、ずきん、と心臓が脈打つたびに下腹部に全ての熱が集まっていっているように熱い。  
 既に充血してぽったりとしたそれは、すっかり愛液を吸って湿ってしまったパンティから透け、布越しに存在感を示していた。  
 それは彬の手によって思うがままの形に捏ねられる。  
 形を変えられるたび、くちゅ、くちゃと粘り気のある音が漏れて蒼子の耳を犯す。  
「ぁいやっ…やめてっ…彬っ」  
 蒼子は恥ずかしい音にいたたまれず、手で顔を覆い、顔を背けながら懇願する。  
「君がそう言うなら」  
 あっさりと彬はそこから手を離した。が、  
「だが、これからだ、蒼子」  
 そう耳元で囁いて。  
 パンティの外側から嬲っていた彼の手は、今度はパンティの中に差し込まれた。  
 淡い下草を撫で上げ、そうして直接肉芽に触れる。今までの愛撫によって充血して膨らんでいるそこは彬の指に  
心地良い反発を返した。  
 
「……っ」  
 快感は痺れとなって伝わり、蒼子は声も無く、顔を仰け反らせる。  
 無防備になったその隙に、パンティはくるくると丸め取られ、あっと言う間に足首から抜かれた。  
 もう何も彼女を覆い隠すものは無くなってしまった。  
 下草はしっとりと湿り気を帯びて、女陰はぽったりと充血し、中の花びらを少し覗かせている。  
 蒼子が荒く息をするたびに、まるで別の生き物のようにひくひくと動いている。  
 蜜にまみれたそこは動くたびにきらきらと光を反射させていた。  
「っ!!」  
 彬の指によって女陰がひらかれる。くちゃり、と音を立て花びらが外気に触れる。  
 奥に留まっていた愛液がとろりと伝い落ちる。  
「っっ……」  
 蜜の流れ伝う感触にまたかぁっと血を上らせる蒼子。  
「恥ずかしがらなくていい。嬉しいよ、蒼子。ここをこんなに濡らしてしまって」  
 彬の言葉にますます顔を上気させる。  
「っはあぁっ……あっ、あぅふっ……!」  
 つぷ、と微かに音を立てて彬の指が蒼子の中に侵入する。  
 侵入を待ちかねていたそこは彼の指を吸い込むように招き入れる。  
 始めは浅く入り口を確かめるように。  
 そして段々と奥へ。襞を一つ一つなぞるように、時折指を曲げながら。  
 すらりと伸びた彼の指は奥まで届きそうだった。  
 自分の中でもぞもぞと動く感触に蒼子は堪えられない。  
 腰を浮かせ、逃げようとして、…逆に擦りつけていた。  
 快感を求めて。  
 もっと、もっとと。理性とは裏腹に。  
 彼の中指が蒼子の中に侵入する間も、クリトリスは休まず親指によって快感を与えられている。  
 こりこりと爪を立てたかと思うと、次には皮を剥く。押す。弾く。  
「あんっ、んぁっ、んうっ、ひぁあ! っく、んふぁっ!」  
 リズミカルに刺激を与えると、蒼子は面白いくらい、同じリズムで鳴いた。  
 そして、その度に蒼子の体は彬の指を熱い襞で包み込んで溢れる蜜をまぶす。  
 そろり、と中指に続いて人差し指も侵入する。  
 中指だけでも狭かったそこは二本目の指によって更に窮屈になった。  
 今度は二本の指で蒼子の中を出し入れし始めた。指を揃え襞をなぞって、天井を掻く。  
 
 ちゅ、ぐちゅ、くちゅ、じゅ、と淫らな音が聞こえる。音の大きさはさっきの比ではなかった。  
 音に誘われるように蒼子の腰も浮き、ゆるゆると淫らに揺れはじめる。  
「はああっ!ぅああっあきっらっ…もう……わたしっ……」  
 蒼子の声が切羽詰ってくる。膣がきゅうぅっと収縮する。  
「彬っ……!……ぁ……?」  
 絶頂がすぐそこに見えたとき、彬の手は蒼子から離れた。  
 指も引き抜かれ、蒼子と指の間につーっと蜜の糸を引く。てらてらと光るそれはこれ以上なく淫靡なものに見えた。  
「彬……あ……」  
 絶頂寸前で突然行為が中断されて、疑問に思うと同時に多少不満げに荒い息の下で彼を見る。  
 彬はバスローブの紐を解いていた。  
「おれも一緒に、お前と感じたいんだ、蒼子」  
 言って彬は身に纏っていたバスローブを脱いだ。中心には既に自分を主張していきりたったものがあった。  
「あ、彬っ!!」  
 脈打っている剛直を目の前に、蒼子はまた真っ赤になって、彬から顔をそむけようとした。  
 しかし、顔を背けても、視界の隅に映る彬のものから目をはなすことが出来ない。一糸纏わぬ姿になって、彬は蒼子に覆い被さる。  
 くちゅ。  
「あぁっ……」  
 先端が蒼子にあてがわれる。それ以上奥には入れず、そのままただ入り口でゆるゆると円を描く。  
 時折くちゅ、と先端が蒼子の中に潜り込む。それだけでも、その熱さと存在感は、指とは比ぶべくも無かった。  
 だが、先端だけ潜り込んでは、すぐに引き出され、また入り口だけを愛撫する。  
 割れ目をなぞり、クリトリスをつつく。  
「ふあっ、あっ、ひあっあふ」  
 焦らされる。蒼子の下腹部はじんじんと痺れ、もっと大きな快感を、と求めてくる。蒼子の腰が前に突き出され、彬を求める。  
 彬は入り口を自身でねぶりながら、手は蒼子の胸を弄ぶ。快感は全身を覆っている。  
 だけど、物足りない。躰をうねらせ全身で蒼子は訴える。肝心なところが満たされていない。  
「あき、ら」  
 名を呼んで手が差し伸べられる。それは彬の腕を掴む。肩を伝い、そして胸を這わせ、懇願する。  
 彬の肌が熱い。だけどもっと。もっと熱いものが欲しい。私の中に欲しい。  
「もう、わたし……ぁ」  
 もうこれ以上我慢できない。  
 
「蒼子」  
 彼も彼女の名を呼ぶ。それが引き金になったのか、それとも我慢の限界だったのか。  
「…彬…あ……あきら、のが、欲し、い…」  
 と、たどたどしく最後は消え入りそうな声で、それでもはっきりと蒼子は口にした。  
 真っ赤になって顔を背けている彼女を、彬はあらためていとおしそうに見つめる。  
「蒼子。こっちを向いて」  
 顔を近づける。再び触れ合う唇。彬の髪が蒼子の額に触れた。シャワーを浴びたばかりの彼の髪はまだ湿っていて、  
シャンプーの香りが蒼子の鼻腔をくすぐった。  
 今度は蒼子も積極的に舌を差し出す。絡ませ合い、唾液のやりとりをする。それを飲み干す。  
「ん……っふ」  
 開放され、恍惚とした表情で彬を見る。その目は熱病に浮かされたように潤んでいた。  
 彬は蒼子の足を抱えあげた。  
「いくよ…」  
 短い宣言の後、彬は腰を前に突き出す。  
「ぁあああっ!」  
 ずっ、と待ち焦がれていたものが蒼子の中に侵入を開始する。  
 指とは比べ物にならない、熱く太く彼女の中で存在を主張するそれに、身も世も無く嬌声をあげる。  
 これ以上ないほどに濡れてぬかるんでいたそこは大して抵抗も無く奥まで到達した。  
「くっ……」  
 彬の背中を快感が駆け上がる。剛直を熱い襞が包み込んで締める。  
 一瞬で達しそうになるのをすんでのところで踏みとどまった。 少し息を整えてから、抽送を開始する。  
 ゆっくりと引き抜く。亀頭が入り口まで差し掛かったら再び奥へ突き入れる。  
 肉襞を擦り上げるように、今度は突き上げるように。  
 彬を逃すまいと、蒼子の中は収縮してきゅっと彬を締めつける。  
「んぁあ……ぁあぅ……ふあ…あ」  
 蒼子の口から甘い声が漏れる。  
 彼女の目は焦点を結んでいない。とろんとして潤んだ瞳はただぼんやりと彬を映しているだけだった。  
 熱い吐息を漏らし、胸を上下させる。突き上げられるたびに、乳房はふるふると揺れた。  
 腹の中が熱い。どろどろに熔けてしまいそうな、もう既にそうなっているのではないかという錯覚。  
 それでも彬の存在だけは確かに感じられ、彼女の意識とは別に彼女の襞は彼を包み込み奥へいざなう。  
 出し入れのたびに結合部からじゅぶじゅぶと泡立って白くなった蜜が溢れる。  
 
「蒼子……っ!」  
 彬は欲望を突き入れる。  
 そのピッチはだんだん上がってくる。  
 突き上げられるたびに蒼子はずるずると上へずり上がる。  
 より深く彬を飲み込むために蒼子は無我夢中で彼の首にしがみ付く。  
「ふあっあはあっんあああ…あっあっあっあっ…!」  
 下から突き上げられるたびに蒼子の口から空気が押し出され声が漏れる。  
「あっあっあきらっ!もっう、ぁああっふぁああっあああ」  
 蒼子の声は再び切羽詰ってくる。下腹からこみ上げてくるものがいよいよ堪えがたくなってきた。  
「蒼子…っ、おれももう……!」  
 本能のままにただ蒼子に欲望を打ちつける。  
 ベッドの軋む音、荒い息と嬌声と行為の音だけが彼らの世界。  
 ずん、と剛直がより深く蒼子の奥を突いた時彼女の意識は真っ白にはじけた。  
「んああああああああああぁあぁぁあ!!」  
 蒼子の口から獣じみた声が発せられる。  
 同時に膣が収縮し彬をこれまで以上に締め付けた。  
「……く…蒼子っ蒼子っ……」  
 彬もそれ以上我慢せず、自らの欲するままに、彼女の名を呼びながら自らを解放した。  
「はぁあ…あぁ……ふぁ」  
 灼熱の液体が蒼子の子宮に勢いよく叩きつけられる。  
 腹の中が彬のもので満たされていく。  
 ビクンビクンと蒼子の中で彬が脈打つたびに、中に注がれていく。  
 蒼子の胎内も彬のものを残らず搾り取ろうとばかりに収縮を繰り返す。  
 蒼子は脱力して倒れ込むようにベッドに体をあずけ、荒い呼吸を繰り返す。心地よい脱力感が彼女を襲う。  
 彬は、まだひくつくそこから自分をずるりと抜いた。それはまだ存在を主張していた。  
「ふあっ……」  
 抜かれる瞬間、また喘ぎが漏れた。  
 達したばかりで蒼子の体にはまだ力は入らないが、全身の神経は過敏になっていた。  
 微かに身じろぎすると、秘所からどろりと自分と彬のものが混じったものが零れる。その感触にぶるりと震える。  
「蒼子、愛してる」  
 そう言って、彬は彼女の汗ばんだ額にはりついた髪の毛を除いてやる。そのまま額に口づけた。  
 
「せっかくシャワーを浴びたのに汗まみれになっちまったな」  
 自分の髪の毛を掻き揚げながらくすりと彬が笑う。  
「シャワー、浴びないとだめだな、蒼子もおれも」  
 悪戯っぽい響き。  
「あき……あっ」  
 その意図に気付いて何事かを言う間も無く、次の瞬間には蒼子は抱き抱えられていた。  
 蒼子の耳元で彬は囁く。  
「まだ、いいよな、蒼子」  
「…あ、彬っっ!」  
 真っ赤になって俯く蒼子。  
「蒼子」  
 もう一度名を呼ばれて、蒼子は真っ赤になったまま頷いた。  
 彬はそんな蒼子に微笑んで、彼女を抱き抱えたままバスルームに入った。  
 明日までは西園寺に見つからないだろう。  
 それまでどういう風に蒼子とすごそうかと想像をめぐらせながら。  
 とりあえずは今これからバスルームでさっきの続きを始めよう。  
 

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