ユーリは熱が下がらず夢と現を行き来している
「ううん…カイル皇子…」
「ユーリ、私はここだ」
あれから数日経つが、こんな状態が続いている。
寄せられた眉、苦しげな呼吸、途切れがちに呼ぶ声―大の男でも泣き喚くだろう傷、私が付けた…
「きっと残るのだろうな」
真新しい包帯にそっと触れれば、わずかに身じろいだ体をみて思う。
他の誰でもない、ユーリを傷つけそして癒やしてやれるのは私だけに許された事。
私を呼び、探るように手を伸ばすその姿に愛しさが募る。
伸ばしたその手に己の手を絡め、うつ伏せで露わになった耳朶から項に唇を寄せる。
「…あ…」
「…ユーリ」
ここに確かに在る温もりを、失うことにならなかったことに安堵する。
「…お…じ…」
微睡み始めた顔を愛しく想う。夢の中だけでなく、眠りから覚めても私の名を呼んでくれ。
―――私がお前を求めるように―――