変装し、魔城に潜入してから数週間。
お付きの者としての生活にも慣れ始めたそんな折。
「綺麗・・・」
思わず呟く。月は、真円を表し燦然と輝いていた。
手が届きそうな程に大きく見える月。美しいと素直に感じさせる。
ただ・・・ ただ、その月の放つ光は朱を帯びていた。
何処か不吉を感じさせる美しさを持った月だった。
魔城兵が部屋に訪ねて来た。
領主が、部屋へ来い、と呼んでいるとの事だ。
私は、窓から見えるその赤い月を後に領主の部屋へと向かったのだった・・。
「どういたしました、領主様」
解っている。領主が領主では無い―― 魔物に憑かれているという事。
そしてその魔物が領主に憑いて何をしようとしているのかという事。
ある者からの任務を請けて調べてきたことだ。
魔物の思惑を阻止し、城内・城下の人達を助けるのが最終的な目標。
ただ、図りかねている。
魔物は何故今になって私を呼んだのか?
呼ぶ機会等はもっと前にもあったはずだった。
領主の口が開かれた。
「今宵はお前がわしの相手だ」
「・・相手・・とは?」
反射的に言葉が出る。
まさか素性がばれてしまったのだろうか。
「そうか。お前は今夜が初めてか。他の者から聞かなかったか?」
・・ああ。そういう事か。
魔物といえ、そして憑いていても肉欲は抑えられないか。
まだ悟られていない様で少し安堵する。
『曖昧な表情』を作れば・・・
「何、心配することは無い。わしに身を任せて居れば良いのだ」
・・勿論、流暢に魔物の要求に乗るつもりは無い。
私は今3本程、催眠作用を持った毒を塗った針を携帯している。
憑いているのなら領主の体と魔物の神経は同調しているはずだ。
全て同時に刺せば即眠らせることができるだろう。
後は錯覚させるために布団にでも潜っていれば良いだろう。
「さぁ、こっちへ・・」
「は、はい・・」
領主が背を向ける。
懐から針を取り出す。
領主の首筋を狙い・・・・
投げる!
「・・・・」
信じられない。
背を向けた状態、10歩も無い距離で針を避けた。
これはかなり・・ まずい。
「そうか・・ 優しくしてやろうと思っていたが・・」
声が震えている。怒りでも嘆きでもない・・ 笑っている?
「もう少し自分の身を案じるべきだったなぁ、お竜!」
!? ばれていた!?
「その様子だと『儀式』の事も知っているだろう・・」
確かに知っていた。
魔物は、その為に領主に憑いてアテカ姫を脅迫したはずだ。
「邪神を復活させるためにアテカを使い、儀式をする。
ククク・・ 我が名はキュラス!破滅へと導く者!!」
読み通りだった。魔物・・ キュラスが領主に憑いた訳。
それにどうせ人間に憑くのなら高位の者についた方が順調に事は進むだろう。
「さて・・ どうするのだ?お竜よ。」
口調も、キュラスのそれから領主のものへと戻っていた。
この状況で私が取れる行動は『戦闘』と『降参』の2つ。
私が取るのは・・ これしかない。
私は、もう一つ懐に忍ばせておいた小太刀を手にした。
当然、殺すつもりはない。
領主ではなくキュラスにダメージを与えなくてはならない。
だがキュラスを領主から引き剥がすことはできない。
つまり・・ 峰打ちで攻撃する必要がある。
「ふん・・ わしと戦う気か・・」
領主が刀を抜く。そしてそのまま私に斬りかかる。
それを受け止め、流した。
跳躍し、領主の背後を取る。
お付の者の服は動き辛かったが、一連の動作は成功させることができた。
・・その瞬間。
領主はこっちを向くと同時に横に薙いできた。
間一髪受け止めるのには成功した・・ が。
領主の一撃は思った以上に強力だった。
「くっ・・・」
手が痺れてまともに小太刀を握れない。
領主はそのまま小太刀を弾いて私の喉に刀を突き付けた。
「その程度か、せっかちな女め」
もう終わりなのか・・ 結局誰も救えずに終わるのか・・
そんな事を考えていると理解しがたい言葉が聞こえてきた。
「今ならまだ意思を聞こう。取引というのはどうだ?」
・・領主はいつでも私の首をはねる事ができる状態にある。
とりあえず取引に応じるしかない。
「・・どんな内容?」
内容によっては死んででも拒否する。
「アテカや領主、町の者達にわしは手を出さん。その代わりにお前はわしの肉壷となれ」
・・よほど肉欲が強いらしい。
だが・・ 今の私にはそれ以外方法は・・
私一人のために皆が助かるのなら・・ やはり今はそれしか無い。
「分かった・・ 条件を呑むわ」
武器は手元に無い、目潰しは今使うのは効果的ではない。
これで・・ これで良いのだと自分に言い聞かせる。
領主は陰悪な笑みを浮かべた。
「ふん、それでいい。さぁ付いて来い」
抵抗しようにも術が無い。
大人しく付いて行く。
そしてとうとう・・ 領主の寝室に付いた。
まだ誰とも交わした事の無いこの体。
こんな形で失うことになるなんて・・
「では、思う存分させて頂こう・・」
人間とはいえ、それに憑いてる魔物に犯されるなんて・・
領主に四つん這いの状態になるよう促される。
抵抗してもどうにもならないので仕方なく言われる通りにする。
直後、私の体に魔力と思われる物が流れ、首から下を動かせなくなってしまった。
・・金縛りの杖でも用意してあったのだろうか。
「ククク・・」
私の服の背側の部分から手が侵入してくる。
私の乳房を掴むとそのまま揉んできた。
気持ち良くも何とも無い。むしろ痛い位だ。
嘲りの眼で領主を睨む。
「ふん・・ その態度、いつまで持つかな?」
すると領主は乳首を弄ってきた。
「くっ・・」
喘ぎではないものの・・ 反応するとは不覚。
摩る、擦る、捏ねる、揉む・・ 複数の動きが加わってきた。
だんだん・・ 認めたくは無いが不快感が快感に変換され始める。
領主は私の服を強引に剥ぎ取り、上半身を露にさせた。
今度は私の左の乳首を口に含んできた。
「あっ!!」
またも声を上げてしまう。重なる屈辱に涙する。
舐めや甘噛み・・ 手では先程の動きを右の乳首に加えてくる。
「あ・・ ああぁ・・ あ・・」
私の声は、完全に喘ぎのそれへと変わってしまった。
不意に領主が乳首への刺激を止める。
・・だが、これで終わるはずが無い。そう第六感が告げていた。
領主は私の下半身を覆い隠している残された服を剥ぎ取った。
完全に全裸になった。
「クク・・ ここからが本番だぞ?まずは・・ 舐めろ」
私の目の前に大きくなった領主のそれが見えた。
50代後半のはずの領主のものは、信じられないほどいきり立っていた。
これも魔物に取り付かれた所為だろうか。
領主のものを口に含むと、独特の臭いが鼻を抜けた。
思わずむせる。すると領主は起ったそれを私の喉へと衝いてきた。
「さぁ、早く舐めろ」
領主の顔に残忍な笑いが浮かぶ。
尿道口から雁首、裏筋へと舐め上げていく。
舐めるからしゃぶるへと変えていく。
次第に尿道口から液体のようなものが流れてきた。
またむせそうになるが、堪えてしゃぶり続ける。
涙が止まらなかった。
唇での摩擦も加え始めると、領主の様子が少し変わった。
全身が少し震えている。
そんなに気持ちが良いのだろうか。
それを確認した直後・・・・・
私の口に勢い良くさっきとは違う液体のようなものが噴出してきた。
「んっ・・ こほっ・・ こほっこほっ!!」
激しくむせる。吐き出したそれは白濁した色だった。
「はぁ・・ なかなかに良かったぞ・・」
言うか言わないか、また領主は移動し、最初の位置へと戻ったようだ。
「クックックッ・・ 濡れているぞ?」
・・確かに、私から何か湧いてきている感触はあった。
「実に・・ 実に淫乱だなぁ?」
そういうと領主は私に液体を見せた。
領主が指をくっつけ、離すとそこに糸が引いた。
顔を背ける。
認めたくなかった。
嫌悪さえ抱いているのに。体は快楽と認めている。
また、涙が溢れてきた。
「ひっ・・!?」
突如。
私の穴に領主の指が触れたようだ。
大陰唇を押し広げ、小陰唇をなぞるように愛撫してくる。
「あ・・ ん・・ ん・・ぁ・・」
「まだ柔らかくしている段階だぞ?」
そう言うと領主は含み笑いをした。
本当の快楽に、触れ始めている気がした。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
領主が陰核に触れた。
「何だ?ククッ・・ 感度が良いな?」
執拗に陰核を弄ってくる領主。
「あ・・ あ・・ あぁ・・ ああ・・ あ!」
今度は指を穴へと挿してくる。
言い様のない快感。
抜きかけ、挿し、抜きかけ、挿し・・
繰り返される抜き差しに酔う。
気が付くと唇の端から涎が垂れていた。
そして、私の体は相当熱を帯びていた。
夜の砂漠は寒い。なのに今は暑くさえ感じる。
後ろは良く見えないので分からない・・
けど、恐らく今度は顔を埋めている。
領主の舌を感じる。
穴の中を生き物の様に蠢く。
「あっ!」
その動きは
「ああっ!」
私に快楽を感じさせるには
「ああああ!」
十分なものだった・・
私の液を啜る領主。
淫猥な音が響く。相当私の息は荒い。
肩で息をしている。
それは領主も同じらしく、かなり興奮しているようだ。
何か大陰唇の少し下の方に硬い物が触れた・・ と感じた刹那。
遠慮も無くその何かが入ってきた。
「――――!!!」
言葉にすらならない声を上げた私。
何かが切れたような鈍い音がした気がする。
「ふむ・・ すんなりと入ったな」
陰茎のようだ。太く・・硬い。
最初に少し感じた痛みももはや感じない。
「ん・・ ああああ!!」
領主が動く。陰茎と陰部が擦れる。
摩擦によりもたらされる快感。
掻き乱されていく。
「ククククククク・・ やはり淫乱か」
認めたくなかった・・が、認めてしまいそうだ。
望まなかった行為にも関わらず、私はこんなにも感じてしまっている。
いつの間にか、楽しんでしまっている。
屈辱の涙は、快楽の涙へと変わってしまっている・・。
飛び散る液体。
汗、涎、涙、血、先走り、愛液・・
全てが体の下で水溜りを作っている。
暑い。熱い。あつい。アツイ!
体の中が熱い。
ぐちゃぐちゃにされて喜んでいる。
やはり淫乱なのだ・・ ついには認めてしまう。
「んんんぁぁあぁああ!!」
私はついに絶頂を迎えた。
起きると、朝。
脇腹のあたり・・ 床に触れている部分にひやりとした感触。
昨日の夜のものだろう・・。
そして。
自分の体を確認すると・・・
精液。
精液、精液、精液。
精液まみれだ。
股の間からは血の混ざったもの。
全身には言い様の無い固まったもの。
・・淫乱の烙印を押されたような気がした。
嫌だった。
今自己嫌悪に陥ってる私のどこかに、また望んでいる私がいる・・
シレンがイルパに着く前からザガンを倒すまで。
こんな行為が繰り返されたという・・・。
終。