砂漠に囲まれた街 イルパ  
砂漠という過酷な環境にありながらも活気づいていた  
「で、もうシレンには告ったの?」  
イルパ唯一の料理屋、トンファンの厨房でアテカ姫は盛大に水を吹く  
「い、い、いいいいきなり何を言うんですかサッちゃん!!!!」  
サッちゃんと呼ばれた少女、サチはにやにやと意地悪そうな笑みを浮かべる  
「そっかぁ  
まだ告白してないんだぁ、いっがーい」  
賑やかな店内でわざと客に聞こえるように言う  
「そ…そんな別にこ…告白なんて……」  
必死に否定しているようだが顔を真っ赤に染めていては意味がない  
「好きなんでしょ?」  
「違います!!  
ただちょっと……かっこいいなぁ……とか……その……」  
「好きなんでしょ?」  
「だから違いますっ!!!!」  
そんなやりとりを温かく見守るイルパの領主  
「なんとかならないものかのう…  
なんとかこのジジイでも力になれないものか」  
「領主様、それが親心というものです  
温かく見守ってあげましょうや」  
「あげましょしょうや」  
「あげましょしょしょしょうや」  
いつのまにか後ろに立つイチペパ、ニペパ、サンペパ  
そんなこんなでイルパの1日は過ぎていく  
 
 
「おーい、シレンさんがかまどから出て来たぞい」  
よろず屋の店員が店の後片付けをしていたサチに声をかける  
「あ、はーい」  
サチは返事をするとすっかりトンファンに馴染んでいるアテカに声をかける  
「ほら、いってやんな」  
「え?」  
「アタシこれがあるから行けないのよ  
ごめんね」  
サチは目の前に積み上げられた食器と格闘しながらそう言う  
「すみません  
それでは行ってきます」  
アテカはそう言うとトンファンを出てよろず屋に向かう  
「いつになったら気付くのかねぇ、あのニブチン」  
サチは呆れたようにつぶやいた  
 

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