草木も眠る丑三つ時、明かりも無く暗黒が支配する世界の元に火花が散る。
キィンと鉄と鉄がぶつかり合う金属的な音が響けば、土の上に人が着地する足音がした。
このような夜更けに、そんな事をするのは人間以外なにものでない。着地すると同時、
二つの塊が跳ね返るようにさっと後ろに飛びのきあった。すると片方の塊が、腕を組むような仕草をみせる。
「ふふん、年増の割にやるねぇ」
「お竜殿……それ以上は拙者も我慢致しかねるぞ」
声からして、どちらも女のようだ。男と男の決闘であればよくある事であったが、
女人による夜分の決闘とはずいぶんと珍しい。
「侍みたいだねぇ……そんなんだから、あいつに相手されないのさアスカ」
「え、ええい黙れ黙れ! もはや我慢ならぬ、たたっ斬ってくれるぅ!」
「やれるもんならやってみなっ」
再びぶつかりあう。どうやら、会話からすると男をめぐっての争いらしい。しかし、
それにしても武力でのぶつかり合いは珍しい。普通なら、男と違って非暴力的ながら
陰湿めいた争いをするのが定石だが……しかし二人は風来人でもあった。
もはやここで風来人について説明することはあるまい。
お竜とアスカ、共に世界各地にてその名を轟かせる凄腕の風来人である。
そんな二人が取り合うほどの男といえば、一人しかいない。
「覚悟ぉーッ!」
感情的になるアスカは野太刀をぐわっと大きく構え、一気にお竜めがけて振り下ろす。
戦闘者としては相当の手だれであるがゆえ、迷いの一切ない殺気の篭った一撃。
「甘いね」
しかし怒りは動きを鈍くし、蝶の様に舞うお竜にはかすりもしない。ひらりと飛んだお竜は空きのできたアスカの懐に
一瞬で飛び込むと目にも留まらぬ速さで、みぞおちに強烈な肘鉄を加える。
「うぐっ……」
「まだまだッ、ドーーーーーーーン!!」
痛みに目の前がゆらいだアスカに、とどめとばかりにお竜の目潰し攻撃が炸裂する。
視界を奪われ、痛みにうめくアスカはあえなく仰向けに地面に倒れ伏した。
「うぅ、おのれぇぇぇ」
「ったく……女だったら、もうちょい可愛くしなよ」
「お、お主に、お主に言われたくないでござる」
倒れてもなお、モゴモゴともがくアスカに呆れ顔で呟いたお竜。まるで駄々っ子のようである。
しかし年上とはいえ、童顔でどことなく子供っぽいアスカはお竜には言葉とは裏腹に、妙に可愛らしく映った。
ふとお竜にいたずらっぽい笑みが浮かぶ。
「そんな状態でよく生意気な事をいうねぇ……そんな子にゃ、こうだっ」
「!? なっなにを!!」
着物を引っ張って無理やり胸元をはだけさせる。きつくさらしを巻いた胸が見えると、
お竜はしゅるしゅるとさらしを奪ってしまう。すると、意外なほどにおおぶりな乳房がぶるんと目の前に現れた。
お竜もスタイルには自信があったのだが、さすがにこの胸だけは負けたと思った。
なかば悔し紛れにその巨乳をつかむとねちねちとこねくりまわす。
「なんだい、いやらしい胸しちゃってまあ」
「こっこの痴れ者っ、その手をはなさぬかぁっ! あっああっ」
女同士ゆえに、どうすれば気持ちよいのかを熟知しているぶん、お竜の手さばきによる愛撫とも攻撃ともつかぬ
胸の揉みしだきは情事に慣れないアスカに黄色い声を上げさせるのに十分であった。
戦闘では手ごわい相手を、手玉に取れる征服感に機嫌をよくしたお竜は、さらに着物をずらして脱がさせていく。
あっという間に丸裸にされてしまうアスカ。しかし、まだ先ほどの肘鉄と目潰しの効果が残っていて自由にうごけない。
せいぜい身じろぎして抵抗するぐらいだが、それがかえってお竜の情欲に火をつけてしまう事に気づかない。
「ふふふ、いい歳しちゃって可愛いんだからまあ」
「ううぅ」
「ホントはこういう趣味は無いんだけどね」
お竜はそう言いながら、にゅっと顔を突き出すとアスカの唇に自身の唇を重ねた。
「んんんっ!?」
視界の奪われているアスカは突然の唇への違和感に、くぐもった悲鳴を上げる。すぐに無理やりキスされたと解ったが
自身のファースト・キスを、よりによって虫の好かない相手、しかも女に奪われてしまった事に少なからずショックを受ける。
しかしそんなアスカの気持ちを知ってか知らずか……いや、恐らく知っていてあえてそうしているのだろう。お竜は
初めての相手に苦痛といっていいほどに深く深く、アスカの唇を貪っていく。と同時に、その大きな胸を餅つきのように
こねてアスカをいじめる。
端整な顔とスタイルのお竜と、かたや、ややあどけなさの残りつつも成熟した肢体のアスカが重なってキスし合う姿は
例え様も無く淫靡な光景だった。男が見ようものなら即、射精ものの色気がそこには充満している。
「や、やめよ、お竜殿……」
キスだけで毒気を抜かれてしまったのか、今度は弱弱しく抵抗するアスカ。
「接吻だけでしおらしくなっちゃうなんて、まったく……ホントに可愛いねぇ」
しかし、もはやアスカを弄ぶ事に楽しみを覚えたお竜に通じるはずもなく、むしろ先ほどよりも情欲を燃やし
アスカに自身の体を重ねてゆく。見ればぴっちりとした、タイツの様な衣服の胸元は痛々しいほどに乳首が起立しており、
彼女のがどれほどに興奮しているかを証明している。
そして体を重ねつつも、お竜には邪魔っけなアスカの衣服を剥ぎ取っていく。一枚、また一枚と剥ぐごとにアスカの
年齢を思わせない若々しい肌が露になる。お中はその淫らな美しさに、にんまりとする。
「んんっ……ああ、私も服なんか着てられないわ」
そういうと、お竜も自身のタイツの様な服をぺろんと脱ぎさった。完璧といって良いような見事なスタイルを露にすると
艶かしい動きでアスカと肢体をやわやわと擦りあわせる。
その経験した事のない官能的な刺激に、アスカは肌がいちいち擦れるたびに悲鳴を上げる。
「ひあっ……うひっ、おっ、おりゅうっ、お竜殿ッ……!」
「なんだい……感じちゃってるの? ふふふふ、私たち女同士なんだよ、いいのかい?」
「よいっ、わけっ、がっ、あぁぁっ」
お竜はなにかアスカが言おうとするたびに、遮るように弱い所をを責める。
そして今度はずり下がると股間に顔をうずめて、秘密の割れ目に紅い舌をちろちろと蛇の様に這わせてゆく。
這わせたかと思えば、今度は舌を細めてずぶりと秘裂に裂け入れた。
せいぜい自分で優しく弄った程度だった所に、いきなり激しい舌責めを受けるアスカは、
電流を流されたかの様にびくびくとその肢体を仰け反らせて異常な感覚に酔いしれる。
「あっ、はっ、はっ、うぁっ、あひゃぁあっ」
すでに視界は戻っていたが、女を知り尽くしているお竜の技に成すがままのアスカ。
もはや反撃する気力など残っているはずもない。しかも優しく、時に強引に愛撫されるたびに
己の奥がじんと熱くなるのを感じてしまう。
これではいけないとわずかに残った冷静な部分が警告を出すが、焼ける様な快楽がそれすらも霞ませて、
そしてアスカの口からいずる声は、だんだんと悲鳴から嬌声へと変貌していく。
「ひっ、あぁっ、ひゃっ……あっ、あぁっ! あっあああんっ……」
じわじわとアスカを追い詰めるお竜。ぴちゃりと音をたてて舌を一時離すと妖しい笑みをたたえたまま、
「ふふふ……気持ちいいかい。じゃあ、次はこうしてあげる……」
そう言って、また舌を細めると今度はアスカの固くしこった豆を弾くように幾度も幾度も突付き回したり舐め回したりして
刺激し続けた挙句、ふっとお竜は頭を上げて体を上にずらすと自らの股間を激しく擦りあわせる。
すでに愛液によって濡れたそこは、肉同士が擦り合わさられる度にじゅっじゅっと、といやらしい音をたてる。
お竜は何度も何度もしつこく、緩急をつけて上下したり、腰を回しながら肉の快楽でアスカを責めたててゆく。
「どぉ……そろそろ、飛びそうなんじゃないかしら? アッ、あぁん……」
そうアスカに言葉でも責めるお竜自身、ライバルを墜とすという闇の楽しみが加味された
邪悪で淫らな行為がもたらしてくれる、頭がおかしくなりそうな快楽によだれを垂らす。
その間にもずんずんと肉の擦れあう間隔が短くなってゆき、そして伝ったよだれがアスカの肌にぬちょりと
広がる丁度その時、延々と快楽を与え続けられたアスカがとうとう気をやった。
「あへ、うひゃ、ぃぃぃぃぃ……っ!」
と同時に、お竜も飛ぶ。
「あっ……来ちゃう、きちゃ、いひぃぃぃっ……!」
痙攣して仰け反りあうと、すぐに脱力してお竜はアスカの胸の上へと倒れ伏した。二人とも顔を桃色に上気させて
はあはあと荒い息をあげながら余韻にひたる。
アスカは完全に気をやっており、その瞳はあらぬ方向をむいてすらいる。お竜も同じようにアスカの上で体を大きく
上下してさせていたが、彼女は眼球を切れ長の目の端によせるとどこかへ向かって口をひらいた。
「ふふ、ふふふ……ねえ。いるんでしょ、シ・レ・ン」
お竜が名を呼んだ。シレン。そう、彼女とアスカの争いの原因といえる男の名前。
しかし、それはお竜が狂ってしまったわけではなかった。ほどなくして、暗闇からふらつくようにして影が出てくる。
「お、お竜……」
声の主を認めると、お竜はゆっくりと上体を起こして腰をひねる。玉の様な汗がつうっと首筋を流れるが、
この暗闇ではシレンにはなにも見えまい。彼女の声がひびく。
「見てたんでしょ……私と、アスカの秘め事。いけないよねぇ……覗いたりしちゃあさ」
「い、いや違えよ……なんかお前ら様子がおかしかったし、気になって……」
シレンが慌てて言い訳をする。暗闇でその表情をうかがい知ることは出来なかったが、しどろもどろになっている顔が
容易に思い浮かぶ。そんなシレンを相手に、お竜はここぞとばかりに畳み掛けていく。
「最初から居るのは解ってんのよ、でも止めなかったって事は、シレン。あんたもそこでおっ勃ててたって事でしょぉ」
「う……」
図星をつかれてさらに動揺しながら冷や汗を流すシレンに、しかしお竜、今度は優しくも妖しく誘いかける。
その声はやや上ずっていたが、今のシレンはそれに気づいている余裕はあるはずもなかった。
「いいのよ……私もアスカも、あなたが欲しくてたまらないだけだもの。ねぇシレン、せっかくだから……」
「……」
「せっかくだから、今度は三人で楽しまない……」
そう言って緩やかな動作で立ち上がると、ゆらりとシレンにしなだれかかる。ごそごそと彼の衣服に手を突っ込んで
そのいきり立つモノに手を添えながら耳元で妖しくささやく。
「私とアスカ、二人で天国へ連れてってあげる」
「おりゅ、う……」
ほら、とシレンの男根をぺろりと露出させるお竜。ゆっくりとシレンを導くと、腰を落とさせていまだ倒れて伏したままの
アスカの顔の近くにそれを近づける。もちろんその間も竿と先端を刺激するのを忘れない。
「ほらアスカ……あんたの大好きなシレンよ、どうしたの、欲しくないの」
そういわれた途端、ぴくりと反応するアスカ。
「し……シレン殿ぉ、拙者は、拙者は……」
「……アスカ」
「慰めてはいただけまいか……このままでは、おかしくなってしまいそうでござる……」
口調はいつもの侍言葉ながら、熱のこもった色気のある声でシレンに懇願するアスカ。いつものきりっとした
女剣士の甘い誘惑にめまいを覚える陥落寸前のシレンだったが、いつの間に背後に回ったのか、今度は後ろからお竜が抱きついた。
「うふふ……シレン、今日は骨抜きになるまで気持ちよくしてあげる……」
その美女二人の誘惑についにシレンが負けた。力が抜けた様な仕草をみせると、ふいとお竜に振り向いて
口付けを交わす。舌まで絡めて情熱的な接吻をひとしきり楽しんだ後、今度はアスカに覆いかぶさっていく。
慣れない雄との抱擁にアスカが小さく悲鳴を上げるが、それもすぐに元の嬌声へと変わる。
その光景に、お竜は妖しくも満足げな笑みを見せていた。
(これでようやく、同じ開始地点に立てたってもんよ。アスカ、あんたとは正々堂々やりあってからあいつを勝ち取ってやるからね)
お竜の本音であった。
そして嬌声を上げるアスカを抱くシレンに再び密着するお竜。その形のいい胸を惜しげもなくその背中にこすりつけると、
自分も愛してくれるように彼に甘い声でおねだりする。前と後ろからの極上の快楽に、シレンもまた身を震わせる。
見ればいつの間にか暗闇だった空間を、月が鈍く照らしていた。夜は、長く続きそうである……。
終