くちゅくちゅと淫猥な水音が鳴っていた。
広い部屋の中を大量の一ツ目モンスターがところ狭しとうごめいている。
食神のほこらに出現するモンスターハウスの内のひとつ、一ツ目ハウスだ。
吸引幼虫、ゲイズ、アイアンヘッド。
どのモンスターも例外なくその一ツ目に異常な興奮を宿らせていた。
彼らの視線が向かう先は、モンスターの群れの真ん中でよがり狂う若齢の女、ノロージョだ。
「はっ… く、や、ああああ…!」
ノロージョの美麗な唇から甘美な吐息が零れた。
ノロージョは地面に両膝をつき、今にもくずおれそうになっている。
だというのに、その四肢に絡み付くゲイズたちの触手が倒れることを許さない。
その全身はゲイズの触手に付着した透明な粘液でぐちょぐちょに汚され、濡れそぼった薄衣を透かして肌の色まで見える。
くすんだような色の肌は、性的な興奮のせいでかあっと紅潮していた。
普段は美しく流れるのであろう黄土色の長髪も、どろどろの粘液にまみれてしまって見る影もない。
その光景には、まるでまだ青い果実をむりやり熟れさせようとしたあげく
腐らせてしまったかのような、淫靡さがあった。
十字架に磔にされたように左右に吊り上げられた両腕。
細長くくびれた腰つきはほんの少し幼げで、同時に恐ろしく煽情的だ。
力なく膝をつきながらもかろうじて閉じている内股。
その隙間をこじ開けようとして触手がぬるぬるとうごめく。
体型に比べて不相応なほど大きい乳房には触手が巻きつき、形を歪ませ、衣服の上から敏感な突起を刺激している。
触手の責めは胸だけに留まらない。
首筋、背中、尻、太股、足の裏まで、あらゆる部分を責め上げてゆく。
ノロージョの肌を触手が這い回るたび、粘液がこすれあっていやらしい音を立てた。
「く…あぅ、ひあ…!」
そうして性的な責め苦に喘ぐ肉体はまちがいなく女性のものだった。
が、ノロージョの中の――シレンの意識はまだ反抗の声を上げていた。
(この、離せ、畜生…!)
茫漠とした思考の片隅で無意味に毒づく。
こんな風に女の快楽を味わわされるのはこらえがたい屈辱だった。
誇りがあった。絶対にこの仕打ちに屈するわけにはいかなかった。
しかし、ついさっき吸引幼虫に『ちから』を吸われつくしたこのノロージョの体では
ゲイズの触手をふりほどくこともできない。
「っく、ふう… ふ…」
抵抗できないというのなら、たとえどんな責め苦を受けても毅然としていてやる。
せめてもの抵抗に、と強く唇を閉じた。同時に這い回る触手の感触を意識から絞め出そうとする。
「うっく… んっ… くぅ、んっ…」
ともすると漏れてくる喘ぎ声を押し殺した。
必死で快楽に抗おうとする少女の様子は、はたから見れば美しく、儚げですらあった。
「ひぅっ! …っん…う…っ! うあ・ん・ん…!」
だが、かき集めたなけなしの矜持も、乳房の突起を軽くこねられただけで蕩けそうになってしまう。
悲しい焦りに満ちた表情が女の悦びに塗り潰されていく。
「あ、う、っく、ん、んんん…っ!」
ノロージョは未成熟さの残る身体を弓なりに反らして痙攣した。
これでもう何度目かもわからない絶頂に達したところだった。
ふと別の触手がノロージョの黄土色の髪にからみついてきた。
そのまま触手は髪を愛撫し始めた。
「う、や…」
ぐしゃぐしゃとかき混ぜるように、あるいは撫で付けるように。
べっとり粘液まみれだった髪の毛がさらに汚されていった。
持ち上げられた髪の一房から粘液が水滴になってしたたる。
直接的な快楽は一切ない。にもかかわらず、女の象徴である長髪を
愛でられているという事実がたとえようもなく胸にこたえた。
汚らわしく濡れた髪の毛が端麗な顔立ちに貼りつく。
「っや…だ…」
髪を払おうとして、ノロージョは弱々しげに首を振った。
その姿は幼児がいやいやするふうでもあった。
「う… むぐぅ!?」
快楽に弛んだ口に触手の一本が潜り込んだ。
「ん゛む… んぐ… うあ…」
細めの触手だったが、突然突っ込まれたおかげで息が詰まった。
ノロージョの切れ長の瞳がうるんだ。粘液の苦い味が舌に広がる。
「んん、や、ふぐ…っ!」
触手は思うままに口内を犯していく。舌に絡みつき、喉の奥まで侵入する。
触手と唾液と舌とがぢゅぶぢゅぶ水音を立てた。
「…っあ!」
舌に刺すような痛みが走った。
勢いよく動いた触手の先が舌を傷つけたのだ。
「ひっ、あ…ふ…!?」
突然、舌にえも言われぬ感覚が弾けた。
口内の唾液と粘液が混ざったモノが舌の傷口を刺激していた。
「あ、ひっ… くあ…」
この感覚はまさに電流のそれだった。
傷口がぴりぴりとしみる。
鋭い痛覚があった。だがそれ以上にむずがゆい快感が舌を疼かせていた。
「あ… や、あ… あ――」
背筋を這い上ってくる淡い快感に、がくがくとノロージョの腰が震える。
胸を絞めつけられるような、悲愁の念すら抱かされる感覚にわけもなく涙が出そうになってしまう。
「ん… くう… んむ… く、ふぅ…」
矜持も忘れ、とにかく切なさを貪りたくて、舌を触手になすりつけた。
その舌遣いはどこかディープキスをするのに似ていた。
ノロージョは一心不乱に口の中で触手を転がした。
粘液と唾液が傷口にこすれ、そのたび全身に電流が走る。
それにつれて肉欲も高まっていき、ノロージョはくるおしげに脚を擦り合わせた。
秘部からつたう愛液の感触さえ愛おしく思われる。
この様子を普段のシレンが見たなら絶えかねて目を覆っただろう。
それくらい今のノロージョは淫蕩な娼婦の顔をしていた。
ずく、と触手の先端が舌の傷口に直接割り入った。
「あっ あ・あ・あ――」
視界が白く染まった。
悦楽に支配される思考。まるで口腔を男性器に侵略されるような錯覚。
死にたくなるような切なさが止めようもなく爆ぜ、猛烈な焦燥感がわき上がってくる。
「死ん、死んひゃ、うぅ…っ!」
忘我の境地でノロージョの四肢が激しくうち震えた。
同時に口内の触手が生ぬるい体液を放出した。
「あ、ぐぶ、う…!?」
突然のことにノロージョは目を見開いた。
尋常ではない量だ。ノロージョの口腔がえたいの知れない体液で満たされる。
「んっ、く、んぅ…」
呼吸も許されぬまま、ノロージョはこくりこくりと体液を飲みほした。
「っは… ふあ…」
体液を燕下し、かくんと虚脱した体をゲイズの触手が支えた。
ノロージョの口から触手が抜き取られる。
つうっと舌の先に糸が引いた。
「あ…」
疼く寂しさが舌に残った。
愛しいものから引き離されたような気持ちだった。
体中がじんじんとしびれを帯びていた。
そこへ足音が近づいてきた。
唐突な足音にノロージョは――シレンの意識は我に返った。
数秒も立たないうちに、モンスターハウスの入り口に人影が現れた。
(ナオキ…!?)
入り口に立ったのはシレンのよく知る料理人、ナオキだった。
飄々とした風貌。頭の帽子が特徴的だ。
シレンがこの食神のほこらに潜ったのもそもそも彼を救出するためだった。
モンスターたちがナオキに気付いた様子はない。そもそも眼中に無いのだろう。
これでここから解放されるかもしれない。
そう思うとじわりと安堵が広がるのを感じた。
(助け…)
シレンはナオキに助けを乞おうとした。
だが、そう口にする直前でシレンは硬直した。
ナオキは侮蔑しきった視線でシレンを見下していた。
「…モンスター同士の種付けか」
ナオキの口から飛び出した言葉は嘲りそのものだった。
シレンの――ノロージョの秀麗な顔がさっと青ざめた。
「あ、あ…!?」
意味をなさない言葉が声帯をついて出る。美しいソプラノの音程で。
内股を愛液とも粘液ともつかぬ液体が内股を伝い落ちていくのが他人事のように感じられる。
濡れてぴっちり肌についた衣服が信じられないほど冷たい。
あれほど火照っていた身体が、瞬く間に冷えきっていく。
安堵感を奪われた心が、底冷えのする絶望にひたされていく。
すっかり忘れ去っていたのだ。
今の自分が、怪物どもに犯された汚らわしいメスのモンスターだということを。
助けを求められない。求められるはずがない。
助けを求めれば、いま襲われている少女がナオキの既知の風来人なのだと知れてしまう。
事実を理解したナオキはどんな顔をして自分を見るのか。こう考えただけで気が狂いそうになる。
それは耐えがたい恥辱だ。散々女として犯された事実を知られることは
それこそただモンスターに犯されるより何倍も許しがたいことだった。
あるいは現れたのがナオキでなく赤の他人だったなら助けを求めたかもしれない。
けれど彼がなまじ知り合いであったせいで、助けを乞うことをシレンの衿持が許さなかったのだ。
だが、助けてもらえなければどうなるのか。
そう、このモンスターたちにナオキの眼前で犯される。
いや、もう既に…
…今の自分は辱しめられた牝だった。
その事実を反芻すると、がくがくノロージョの脚が震えだした。
すぐにでも泣き出しかねない悲哀があった。
見られている。
ナオキは目の前の少女が風来人だとは理解していない。
それでもこのおぞましい光景を見られている。事実を知られる次に恥辱的なことだというのに。
脚の震えは止まらない。
それを発情ゆえの行動と捉えたのか、ノロージョを支えていたゲイズらの触手が再び動き始めた。
「ああ… や… やぁ… っく…」
ある触手はなめらかな曲線を描く背中をなぞりあげ、別の触手は執拗に乳房を弄んだ。
軽くなぜられるだけで、少女の身体は律儀に反応して跳ね上がる。
「はは、モンスターは異種同士の交配も可能なのか。こいつぁ笑える」
ナオキは三流の見世物でも見るような様子でノロージョを眺めた。
「い、や…!」
羞恥にノロージョの顔が真っ赤に染まった。
粘液が服と乳房の間に満たされて、ぴりぴりと肌が疼いていた。
そこで吸引虫――レベル3の吸引成虫が近づいてくるのをノロージョは見た。
「っ…!」
途端にまざまざと先程の記憶が甦った。
ふたつの乳房に媚薬のごとき液体を注ぎ込まれたのだ。
(まさか、また…)
最悪の予想が脳裏をよぎった。
それを裏付けるように、ゲイズたちの触手がノロージョの身体を後ろに押し倒した。
今まで何とか両膝で立っていたノロージョはぺたんと地面に尻をつけてしまった。
「ひ…!」
生理的な嫌悪感が止めようもなく這い登ってくる。
あられもない姿勢で震えるノロージョの股に吸引成虫がイソギンチャク状の足でとりついた。
「あ、ひぁ…!?」
軟体生物の無数の足が秘部にへばりつく感触にぞくんと鳥肌が立つ。
吸引成虫は2本の触手を踊らせ、触手の1本をクリトリスに突き刺した。
「あぐ、あああ――!」
ノロージョはのけぞった。女性の最も敏感な蕾を貫かれたのだ。
「あ、あ… や、あああ…」
突き刺されたクリトリスから、水面に波紋が広がるかのように悪魔的な快感が溢れ出す。
次に吸引成虫はもう1本の触手を秘部の穴へと無造作に突き入れた。
「ひぐっ…! ああ…あ」
秘部の触手が奥に奥に潜り込み、液体を注ぎ込んでいるのがわかった。
吸引成虫に、あのおぞましい体液を送り込まれていた。
秘部とクリトリス、その二箇所に。
そして乳房に注入された時より、その体液の量は段違いに多い。
…そんなことまで分かってしまう。
「あ… やっ、だめ、ぇ…!」
何が待ち受けているのか分かっているのに、その結末を変えられない。
これほど残酷なことはなかった。
乳房だけでもあれだけ悶え狂ってしまったのだ。
これだけの量を秘部に直接注入されたら、それこそ気がふれてしまうだろう。
ノロージョは現実を拒否するように細かくかぶりを振った。
救いの手を求めて思わずノロージョは――シレンはナオキを見る。
ナオキはシレンを――ノロージョを見下げていた。
残酷なくらいにいつもの飄げた目つきで。
(イヤだ… 助けて、誰か…)
少女の虚しい願いを圧し潰すかのごとく、快楽の爆発が開始した。
「あ… が、はあ、うく、あ゙あ゙あああぁっ――!」
快感を濃縮した疼きの泡が次々に破裂した。
束になった快楽が脳を蕩かす。
純白の電流が背筋から爪先まであらゆる神経を侵しつくす。
「あ・あ・あ! くあ、あうううっ…!」
ガラス細工のように繊細な肢体がびくんびくんと狂躁する。
尻もちをついた姿勢から、背後の地面に頭がつきそうなくらい背中をしならせる。
さらに二匹の吸引成虫が飛びついて来たのにさえ、悶えるノロージョは気付かない。
うぞうぞと吸引成虫たちが這いずり、乳房に取りついた。二つの乳にそれぞれ一匹ずつ。
見事な半紡錘形の乳房が粘液の染みた衣服を押し上げている。
その紅潮した二つの果実を衣服ごと、イソギンチャク状である吸引成虫の足が呑み込んでいく。
布ごしに浮き出た小さな突起だけを残すようにして。
やがて敏感な突起の回りを取り囲む形で、すっかり乳房が吸引成虫の足に包み込まれてしまった。
「あ、ひゃ、くはぁ…!」
見苦しく喘ぐノロージョを尻目に、吸引成虫たちは各々二本の触手をざわめかせた。
二本一組の触手が乳房の突起に近づいていく。
この時、吸引成虫たちがメスを支配する喜びを堪能していたかどうかはわからない。
ほんの刹那、触手の動きが止まったかと思うと… 一気に突き刺した。
「かは、うあ、あ――!」
新たな刺激に、ノロージョの肉体が淫らに踊る。
触手の二本ともが衣服を貫き、突起の乳腺にその二本分の太さをまとめてねじ込んだのだ。
吸引虫の触手は細いとはいえ、二本を合わせると手の小指ほどの太さになる。
一つの乳房に二本の触手、全部で四本の触手が胸を犯していた。
血は出ず、乳房に侵入される痛みだけがある。そして痛みさえもが底無しの快楽にすり変わってしまう。
まるで乳房を女性器に見立てているように、乳房に入り込んだ触手がぐねぐねと運動した。
「ひあ、あ、あっあっあ…!」
どくどくと体液を注入されているのが感覚でわかる。
この体液の量も以前の比ではない。
「あ、くぁ…!? んく、ふあ、あああ、ああああ…!」
すぐさま灼けつく感覚が乳房を襲った。もはや快楽などという生ぬるい代物ではない。
ただ女を狂わせるだけの拷問じみた責め苦の洪水がノロージョの心身を蹂輪する。
一方でクリトリスと秘部の触手も動いていた。
「あっ、っく、きひぃ――!」
クリトリスに刺さった触手がほんのすこし捻られるだけで、体液に侵された蕾は女体を未知の快感に狂乱させる。
吸引成虫の触手は秘部を犯すには細すぎたが、逆にその細さゆえに秘部の奥深くまで割り入り、膣内にじかに体液を流し込む。
吸引成虫たちには容赦がなかった。
このままノロージョを壊してしまうつもりなのかもしれなかった。
「ひう、うっあ、あ…」
ノロージョは口元からだらしなく唾液を垂らしている。
「ぐ、ふぅ!?」
唯一空いていたその口にゲイズの触手が突っ込まれた。
先刻できた舌の傷が快楽を生み出すのだと知っているかのように。
「く、あぅ、んん、あふ…!」
息を潜めていた舌の疼きが戻ってくる。
すがるように、ただこの疼きに救いを求めるように、ノロージョはゲイズの触手を甘んじて受け入れた。
「んっく、んあ、んむ… んっ…!」
ちゅくちゅくと舌が淫らな音を響かせる。
柑橘類か何かに似た酸味が舌にしみる。
鮮烈な、それでいて物悲しい痛みと快感。
こんなに気持ちいいのに、無性に泣きたくなってしまう。
切なくて哀しくて、じわりと瞳ににじんだ涙が上睫毛に跳ねる。
(助けて、誰か、助けて…)
つとノロージョの視界の片隅にナオキが映った。
(見ないで… やだ…!)
羞恥と切なさがないまぜになってノロージョの胸を絞めつける。
「ん、あ… くはああぁっ!?」
突如、暴力的な快感が乳房ではぜた。
吸引成虫の触手が乳房の内側をかき回して凌辱したのだ。
ただ悶えさせるだけの、醜悪な悦楽。
あっという間に地獄の快楽に呑まれそうになる。
「ん、や… っく、やあ…!」
どこかやさしげな舌の疼きにノロージョは必死でしがみつく。
ゲイズの触手もまるでノロージョを慈しむように舌を愛でる。
それでますますノロージョはこの疼きの虜になってゆく。
今度は別のゲイズの触手が黄土色の髪をなでてきた。
さっきはあれだけ嫌悪していた髪を弄ばれる行為が、今はあまりにも恋しい。
子供を慰めるように、ゲイズの触手がノロージョの豊かな髪をかき撫ぜる。
「んふ、ふぐう、くふ、ひ――!」
ゲイズの愛撫と吸引成虫の責め。
二つの相反する快楽に揉まれて、ノロージョの全身が燃えるように発熱している。
高まる感覚。快楽と快楽の狭間で脳が白く白く蕩けていってしまう。
「ふぅ、う、くぁう、ああ…!」
逃げようもなくもたらされる快楽が、ノロージョに嬌声を奏でさせる。
「ふえっく、くう、んぐ、うあ、ああっあああっ――!」
どうしようもなく限界に達したノロージョはついに絶頂を迎えた。
がくんがくんとたおやかなノロージョの手足がのたうつ。
「あうう、う…うぁ」
粘液と汗まみれで赤く染まった肉体が官能的だった。
股間に貼り付いていた吸引成虫が秘部とクリトリスから触手を引き抜く。
二つの乳房の突起に刺さった吸引成虫たちの触手も引き抜かれる。
じゅぽっといやな音とともに触手が抜けた。
あるいはやり過ぎるとノロージョの心臓が止まってしまうと考えたのかもしれない。
ゲイズも触手を離していく。
舌に絡みつけた触手だけでなく、四肢を拘束していた触手を解いていた。
ささえを失ったノロージョの身体が横ざまに倒れて横たわった。
「くっふ… んあ… あうっ…ふ…」
ようやく快楽の第一波が過ぎ去った。
しかし、けして体液の催淫効果が消えたわけではない。
一度達したくらいでは性欲がおさまらない。
地面から起き上がる力もなく、ノロージョは熱い身体を身悶えさせた。
とろんとしたノロージョの目に胸元の谷間が映った。
豊満な膨らみが胸と地面の間で押し潰されていやらしく歪んでいる。
粘液が紅潮した皮膚をつたっていた。
「あ…」
本能の促すまま、乳房に右手をかけた。
「ひゃぁうっ…!?」
軽く指先で触れただけで、甘美な悦びの火が吹いた。
「ひ、ああ、あ」
憑かれたようにノロージョは乳房を揉みしだいた。
硬く火照った乳房がどろどろに濡れている。
乳房と着衣とが水っぽくこすれる感触がぞくぞくと興奮をかき立てた。
乳房を覆う衣服に五本の指が卑猥にくい込む。
つぷ、と強く指先を膨らみにつき立てると、焦がれた快感とともに乳房に爪跡が残るのが分かった。
そうしてもう片方の左手が内胯に自然と伸びる。
「はっ… く、くう、あ…っ!」
指先でクリトリスを執拗に刺激した。吸引成虫の体液とノロージョの愛液が混ざり、秘部から溢れて飛び散る。
未成熟な少女が自慰にうち震える様はとてもあさましかった。
「ぁ… っく…! んんん…!」
ノロージョは声もなく何度目かの絶頂に達した。
「ふう、はあ… は…」
ようやく辺りを見回す余裕ができると、ノロージョはまずナオキの姿をとらえた。
ナオキはモンスターハウスの入り口に居た。
最初からその場を動いた様子はない。
ずっとノロージョの痴態を見物していたのだ。
「はん、汚らわしいな。モンスターごときにも性欲はあるらしい」
ナオキの表情は排泄物でも見るようだった。
「っちが… あ…」
ノロージョの顔から血の気が引いた。
もう何の言い訳もきかなかった。
強制的に犯されるのならまだしも、たった今自らの手で女性の絶頂を迎えたのだ。
ナオキの冷え冷えとした視線に、誇りも矜持も滅茶苦茶に踏みにじられていった。
「あ… あ…」
寒くもないのに、かちかち歯が鳴った。
無意識にナオキへと手を伸ばそうとする。
みじめに辱しめられた心のための弁解を求めて。
ぐい、と伸ばした腕が横に引かれた。
「あ…!?」
ノロージョの細い手首を野太い腕が握っていた。その腕の主は、
(アイアンヘッド…!?)
ノロージョの目が恐怖に見開かれた。
アイアンヘッドの筋肉質の体。その下半身に異形の陰茎が直立していた。
「ひっ…!」
ノロージョは思わず肩をちぢこめた。
女の立場から見ると男性器がここまで醜いものだとは知らなかった。
しかもアイアンヘッドの男性器は人間のそれより一回りも二回りも太い。
アイアンヘッドはノロージョの髪をわし掴むと、その頭を地面に叩きつけた。
「あぅっ――!」
か弱い五体が地面を跳ねた。
「っあ!? う…っく!」
地べたに擦りつけられた乳房の突起がじんと痺れた。
こんな時でさえ過敏に反応してしまうこの肉体にぞくりと恐怖した。
そのまま手足をつかまれ、ノロージョは無理やり四つん這いの姿勢を取らされる。
「あ… や…!」
その醜悪なモノでアイアンヘッドが自分を凌辱しようとしているのだと理解した時
ノロージョは今度こそ自分が無力な牝なのだと痛感した。
無限に堕ちていく気持ち。
下腹部につうんとした感覚が走り抜けた。
がたがたと馬鹿みたいに両肩が震える。
「ひく、ひっく、うく… ひっ…」
知らず嗚咽が漏れていた。可憐なソプラノの泣き声だった。
その頬を、汚れた粘液が涙のようにつたった。
こんな辱しめを受けるのなら死んだ方がましだった。
触手に襲われるのならまだいい。
けれど、たった今このオスのモンスターに女として辱しめられてしまうのだ。
しかもその醜態をナオキに見られて。
ノロージョはナオキを上目遣いに見た。
どこか媚びるような仕草だった。
だがナオキは相変わらず無感動な目でノロージョを見下ろしていた。
当然のことだった。人に害なすモンスターなんかに同情する者などいるはずがないのだから。
「…えく、ふぇっく、ひく…!」
あらゆる望みを絶たれて、ノロージョはしゃくりあげた。
(違うのに、違うのに…!)
激しくかぶりを振ったが、何の解決にもならなかった。
粘液のしたたる黄土色の髪が淫らに揺れるだけだった。
ナオキはノロージョの正体を知らない。
だから助けてくれない。正体さえ伝えればナオキはきっと助けてくれるだろう。
なのに、伝えることができない。
いや、伝えられない。
救いの手が目の前にあるのに救われないと知っているから、こんなにも胸が苦しい。
アイアンヘッドが乱暴に動き、ノロージョの尻に固く猛った性器を押しつけてきた。
「ひい…!」
ノロージョは青ざめた。
やめて、と哀願する暇も与えず、アイアンヘッドの巨大な肉棒がノロージョの秘部を割り裂いた。
「がっ…! ぁ――はっ―!」
きつい秘部を限界まで押し広げられているというのに痛みはない。
代わりに、とぷん、と快楽の波紋がお腹に、胸に、手足に、頭に伝波していく。
「あ、ああああ…!」
ノロージョの口から流れだしたのは嬉悦か、それとも絶望か。
アイアンヘッドは膣口に陰茎を挿入したまま激しく前後運動を開始した。
「あ、ひぅ、くひい、ひゃあ…!」
淫靡な鳴き声が響く。ずちゅずちゅと粘液の弾ける音がそれに重なる。
腰と腰が打ちつけられるたびにノロージョの背中が跳ね上がり
胸の下じきになった乳房が一瞬の自由を得てぶるんと揺れた。
それはまさしく娼婦の姿だった。
「ほっとけば一生やってるんだろうな、こいつらは」
ナオキはそう吐き捨てた。
そしてくるりと背を向けた。これ以上見る価値もないと考えたのだろう。
「あ、あ…!?」
ナオキが去っていく。
もう恥も外聞もなかった。
この仕打ちから解放されるのならどんな目で見られても構わなかった。
遠ざかってダンジョンの闇に消えていくナオキの背に向けて叫んだ。
「ナオ…キ、助け…むぐぅっ!」
かすれた懇願の声がかき消された。ゲイズの触手に口を塞がれたのだ。
ナオキは不思議そうな顔をして振り返った。
「ふぐっ… えぐ、むぐぅ…!」
しかし、口内に触手を含んでうめくノロージョは何も喋れない。
ナオキもすぐ興味をなくしたらしく、踵を返してダンジョンの奥へ消えた。
するとゲイズの触手も口腔から抜き取られた。
「うっ、けほ… うぇ…」
ノロージョは咳き込んだ。何が起きたのかすら分からなかった。
ぼんやり霞む目でナオキがいなくなったモンスターハウスの入り口を見た。
もう誰もいない。
「あ…」
その時、ぷつりと理性の糸が切れた。最後の最後で大事な何かを保っていた心が。
壊れた精神の隙間から、抑えていた全身の疼きが洪水のように溢れ出す。
「あっ… あっ… あああああ…」
つかのま無感情だったノロージョの顔がくしゃくしゃに歪んだ。
じわりと視界がぼやけた。目元から次から次へと涙の粒が零れ落ちていく。
じゅく、と秘部から驚くほど多くの愛液が染み出してきた。
「ああああ… ああ… あ…」
消え入るような悲嘆の声、そしてごまかしようもなく艶の混じった声だった。
悲哀と快楽に悶えるノロージョをアイアンヘッドが容赦なく責め立てた。
「ああ、ふあ、はっく、くああ…あ…」
肉棒を突き入れられるごとにノロージョが声高に喘いだ。
淫らに。淫らに。淫らに。
「あ…あは… はは…」
それでいてどこか他人事だった。可笑しくさえなってくる。
今さら与えられるどんな快楽も、心にぽっかり空いた虚無に呑まれてしまう。
誇りも何も失って、ノロージョは人形のように犯されていた。
「ふ、んむ…うっ…」
と、ゲイズの触手が再びノロージョの口に侵入してきた。
助けを求めたのに口を塞いで邪魔をした、忌むべき触手だった。
途端、無惨に砕けた心から猛烈な憎悪が噴出した。
どこにそんな怒りが残っていたかというほどの苛烈さだった。
この触手を噛み切ってやろうと歯に思いきり力を込めた。
「っ…ぐう…! く、ふう…っ!」
だが、ゴムのように弾力ある触手はぐにゃりと歪むだけだった。
ゲイズ自身にもいささかの苦痛も受けた様子がない。
吸引幼虫に『ちから』を吸われてしまったせいだ。
「も、う、いや…だあっ…」
ノロージョは泣きながら己の無力さを呪った。
一方、ゲイズの触手はやわらかくノロージョの舌を絡めとった。
ノロージョの暴挙をすべて許すように。
「っく…!?」
予想外の反撃に、ノロージョは目を白黒させた。
触手は口内を這い回り、舌の傷口を刺激した。
「くひゃ…! ふっ、く…!?」
明らかに意図的だった。
ここが性感を与えるのだと理解しているらしく、クリトリスをいたぶるように傷口をつっつく。
「んん! んくぅ――!」
あの切なさが舌先にわだかまっていく。見開いた瞳から一筋の涙が流れた。
「んん゙… だめ、うく…!」
触手の粘液が傷口にすり込まれる。
甘い酸味に舌がぴりぴり痺れる。
どこか懐かしい郷愁に満ちた快感。
母の胎内を連想させる生ぬるい痛み。
「あ… んっん… あふぅ… っは…」
いつの間にかノロージョはこの触手を受け入れ始めていた。
別の触手がノロージョの背中に潜り込み、つうっと背筋をなぞった。
「っはあああ…!」
無情感にひたされた切なさが背中を這い上ってくる。
おまえには帰る場所がある。この切なさはそう呼びかけてきた。
「あ、んく… ふあ…」
ノロージョは愛しげに触手をしゃぶった。
触手も、ノロージョをいたわるように愛撫を続ける。
触手の愛撫が生み出すのは快楽ではなく切なさだった。
もうノロージョにはこの感覚しかなかった。あらゆる矜持を奪われた者にとっては。
ずぶ、と突き上げてくる衝撃に、ノロージョは心地よい陶酔から引き離された。
アイアンヘッドの陰茎がノロージョの秘部を犯していた。
もともと挿入の痛みがなかった上に触手の愛撫に放心していたせいで
アイアンヘッドに犯されていることを失念していた。
「あ… いや、いやだぁ…」
ノロージョはかぶりを振る。
モンスターのオスに凌辱されている現実を恐れて。
その恐怖を取り除いてやるとでもいうように、ゲイズの一ツ目が輝いた。
「あ… あ…ああ」
ゲイズの催眠術をかけられたノロージョの目はとろんとして知性の光を失った。
再び陶酔に引き込まれたのだ。
いくらアイアンヘッドが彼女を犯しても、すでにノロージョはそれを意に解さない。もとより痛覚はないからだ。
「んあ… くう…んむ」
ただわき上がる切なさをむさぼった。
おまえには帰る場所がある、と何度も何度も切なさに呼びかけられる。
「あ… んんっん… は…」
妖しく、妖絶にノロージョの肢体がくねる。少女とは思えないほど官能的だ。
「ああ…」
ノロージョの黄土色の髪の毛にも触手が絡む。
ほつれた髪をとかしてやるように、なめらかに撫で上げる。
「ふう…く」
ノロージョは触手を愛するように口の中で転がす。
舌の傷に触手が触れるごとにあさましい快感が全身を支配する。
(もう、どうでもいい)
ノロージョはかすかに思った。
陶酔の中で、アイアンヘッドが膣内に精液を放ったのが何となく感じ取れた。
でも、そんなことはどうでもよかった。
灼けるような切なさの中で全てが暗転していった。
@ @ @
それからどれほどの時間が経過したのだろう。
「んふ… ああ… っく…!」
ノロージョが切ない吐息をはく。
衣服はすでに裂かれて破り捨てられ、ノロージョは完全な裸身だった。
幼げな少女の身体が鮮やかに紅潮し、信じられないくらい肉感的だ。
その肉体は余すところなくモンスターたちに辱しめられていた。
全身がぐっしょりとゲイズの触手の粘液に浸けられている。
アイアンヘッドに腰をつかまれ、背後から肛門の孔を犯される。
内胯には吸引成虫が貼りつき、秘部にねじ込んだ触手から耐え間なく催淫作用のある体液を送り込む。
乳房にゲイズの触手が巻きつき、ぐねぐねといやらしく形状を歪ませる。
口腔にはゲイズの触手が入り込み、口内を愛撫する。
ゲイズの催眠術をかけられているらしく、その相貌は虚ろだ。
「ん… あは、くふ…」
ノロージョは一心不乱に口内の触手を愛でる。舌と触手と粘液とがくちゅくちゅ水音を立てた。
「んん… ぐむうぅ!?」
口内の触手が、射精さながらに体液をぶちまけた。
「んっ、うっく、んっく、ふ…う」
ノロージョは、こくこくと従順に体液を飲み下した。
この体液を拒否して吐き出し続けていれば、あるいはノロージョは餓死できたかもしれない。
だがノロージョにはそんな思考能力は残されていなかった。
「くぁ… あん、う…あ」
ただノロージョは切なさに身をゆだねた。
身体の底からわきあがる切なさ。
虚しい心の穴を埋めたのが、最も背徳的な汚辱とは知らぬままに。
おまえには帰る場所がある。
おまえの帰る場所はここだ。
そう、切なさが囁いた。
(もう、どうでもいい…)
ノロージョはおぞましい切なさの中にゆっくり溺れていった。