頭の中が熱い。熱病のような衝動だけが法行を突き動かしている。  
 晒された浄里の身体は想像以上の破壊力を以て、法行の理性を完膚無きまでに破壊した。  
 その桜色の、やや大きめの乳輪はいま法行の口の中で好きに弄ばれている。揉みしだかれている張りのある乳房の先端を舌の上で転がすと、頭上で浄里が「んん…!」とくぐもった呻きを漏らした。  
 浄里は口を固く閉ざし、荒い息をつきながらも声を漏らすまいと必死に抵抗しているようだ。  
「……我慢しないで、声出してもいいんだぞ?」  
 唾液まみれになった乳首から口を離し、法行は顔を上げる。そこには、薄暗闇の中でもはっきりと分かるほど紅潮した浄里の顔があった。法行の言葉の意味を理解したらしく、浄里はきつい目つきで法行を睨み付ける。  
「こ、これはあくまでも貴方の性欲処理です。私が劣情に流されるわけにはいきません。だ、第一私が、そんなふしだらな女だと……」  
 自らの佇まいを崩すまいと必死に言い訳する様子は、いかにも彼女らしい。だが。  
「……可愛いよ、浄里」  
 耳元で名前をそっと囁くと、浄里がびくッ! と身を固くした。法行を見つめる瞳が、みるみるうちに熱く潤んでいく。先ほどまで乳首を弄んでいた指先で、優しく白磁のような頬を撫でると、浄里は「あぁ……」と感極まったような熱いため息を漏らした。  
「今だけは、俺は俺の気持ちに素直になる。だから……」  
 浄里の頬にそっと両手をかけて、顔を近づけていく。法行がしようとしていることに気付いた浄里は、力なく首を左右に振ろうとする。潤んだ瞳は物語っていた。だめです。それはだめ。そんなことをしたら、これはただの性欲処理ではなく……。  
 二人の唇が、重なる。時が止まったかのように感じられたわずかな時間の後、顔を離した法行は、浄里の閉じた瞳から涙が一筋流れ落ちるのを見た。指でその滴をそっとすくいあげる。  
「……好きだ」  
   
その言葉が浄里の感情の堤防に穴を穿ったようだった。ぽろぽろと切れ長の瞳から涙がこぼれ落ち、  
美しい顔が泣いている子供のような表情になる。そして次の瞬間、浄里の細い両腕ががっしと法行の後頭部を掴み、強引に浄里の唇が法行のそれに押し付けられてきた。  
 勢い余って後ろに倒れ込む法行。浄里はしばらく法行の唇を貪るようについばみ、やがて荒い息をつきながら顔を離した。  
「わ……私……も……」  
 涙をたたえたままの瞳をぐいっとこすって、浄里は感極まったような鳴き声で言う。  
「好きです! ……愛しています! 後白河法行……!」  
 法行の肩を押さえつけたまま、再度浄里の唇が迫った。今度は浄里の舌が強引に法行の口内に入り込み、互いの舌を絡め合う。  
 浄里の唾液は甘く、そして熱かった。顔を離した二人の唇の間に唾液の糸が垂れる。  
「初めて会ったときから、片時も貴方の存在を忘れることなどなかった……! 付き合う気がないなど嘘です。大嘘です!  
 あなたが欲しくて仕方がなかった! 普段からあなたの周囲にいられる女子が羨ましくて仕方なかった!」  
 堰を切ったように、固く押し込められた素直な気持ちを吐露する浄里と、法行はそっと抱き起こした。  
 半ば脱ぎかけになっていたブラウスとブラジャーを脱がせ、スカートのホックに手をかける。  
「わ、私は自らの気持ちが逸る余り、学院のためと言い訳して、貴方に迷惑をかけ続けました……ずるい、ずるい女です……」  
 泣きじゃくりながら告白を続ける浄里の足の長い足を持ち上げて、するするとスカートを脱がせてしまう。  
 ブラジャーと同じデザインの黒いレースの下着のほかは、学校指定のソックスだけを身につけている無防備な姿の浄里が法行の眼前にあった。  
 その均整のとれた完璧な裸身を前にして、浄里の告白をよそに再び法行の心中に獣欲がこみ上げる。  
「そ……そんな、そんなずるい女を……貴方は……」  
 黒い下着にかけようとしていた手をぴたりと止めて、法行は浄里の瞳を真剣な表情で見つめ返した。  
「ああ、好きだぜ」  
 しまった。焦って適当に答えすぎたか? 法行はそう危惧したが、浄里の瞳に再び涙がにじんでいるのを見て安心する。  
 揺れる乳房を尻目にして逸る気持ちを抑えつつ、法行が素早く部屋着を脱ぎ捨てると、その逞しい胸に浄里が飛び込んできた。  
 背中に腕を回され、ぎゅうと柔らかい胸を押し付けられる。  
 まるで母親に抱かれて安心しきった子供のように、目を伏せてご満悦の表情を浮かべている浄里を見下ろしていると、  
 ふと浄里が法行の胸から頭を離して、何かに気付いた様子でちらりと下に目線を走らせた。そしてそこにある、固く屹立した  
法行のモノに目を留めたらしく、今さらながらに硬直する。  
 怖がらせちまったかな、と法行は不安になった。法行は鍛え抜かれた身体同様、そちらもかなり逞しい立派なモノの持ち主だ。  
 見るのもするのも初めてであろう浄里には恐怖を植え付けてしまってもおかしくない。  
 しかししばらく呆然としていた浄里は、意外にも妖艶な微笑みをたたえて法行を見上げた。  
「こ、怖くなどありません。私を見て、こうなってくれたのでしょう?」  
 その言葉と、上目遣いのいたずらっぽい瞳に、思わず法行のモノがびくりと震える。  
「元はといえば、貴方のこれを沈めるために、私は身を差し出したのです。ですから……」  
 法行は背筋に稲妻のような痺れが走るのを感じた。事もあろうに、浄里が法行のモノにそっと手をかけたのだ。  
 すべすべした浄里の手が爆発寸前にまで固く滾ったモノを撫で回すたび、ゾクゾクした快感が法行を襲う。  
 声を出さずに居られたのは、ひとえに日頃の鍛錬のたまものだ。  
「ですから……抱いてください」  
 法行のモノから離れた手が下着にかかる。するりとそれを脱ぎ捨てる浄里。  
 白く長い足の付け根に見える若干濃い目の陰毛が、普段清廉な彼女からは想像もできないほど淫靡な雰囲気を醸し出していた。思わずごくりと法行は唾を飲み込む。  
「……抱いてください。思う存分……貴方の気の済むまで」  
 言われるが早いか、法行はまるで獣のように浄里の股の間へと割って入り、充分に滾り濡れそぼった浄里の秘所へ自らのモノを押し当て、一息で挿入を果たしていた。  
 
「お………うッ……!?」  
 熱く固い何かが自らの胎内を貫くのを感じ、浄里は目を白黒させながら呻いた。  
 破瓜の激痛は覚悟していたが、不思議とそれほど痛みを感じない。  
 何故だろうと思う間もなく、浄里の腰にのし掛かった逞しい身体が、叩き付けるように浄里を貪り始めた。  
 法行の熱いモノがリズミカルに浄里の体内を蹂躙し、息をつく暇もない。  
「あ……あぁっ……!? あああ……っ!!」  
 自然と声が喉の奥から絞り出された。強引に股を割られて少し体勢が苦しい。  
 何とか逃れようと身をよじるものの、法行の腕がそれを押しとどめ、抑えつけられてしまう。  
 まるで抵抗できない。まるで強引に犯されているかのようだ。  
 これが男、これが男性との交わりというものかと、浄里は驚きとともに事実を受け止めた。  
 そうだ、私は女というものになったのだ。愛しい、愛おしい男の手によって。  
 そう思うと、急に胸の奥がきゅーっと切なく締め付けられるのを感じた。  
 続けてやって来たのは、快感だった。得も言われぬ奇妙な歓喜が体内に満ちる。  
 法行は獣のような焦点の定まらぬ瞳で、切なげに紅潮した顔を歪める浄里を見下ろしている。  
 繰り返される注挿に身体を震わせながら、浄里は悲鳴のような喘ぎを上げていた。  
「…い……いいっ……あっ……ッ! も……っと……!」  
 無我夢中で抑えつけられていた両腕を引きはがすと、法行の背を抱きしめる。重く逞しい身体が浄里の上にのし掛かってきた。  
「もっと……も……っと! 犯してください……! ああぁっ……!」  
 法行によって割られている両足を高くあげ、男の腰へとしがみつくように絡めた。  
(ああ……私は、なんとはしたない女だろう……)  
 自らを客観的に眺めて、それでも浄里は押し寄せる快感に身をよじらせた。  
 愛する男に抱かれるということが、これほどまでに喜ばしくそして心地のよいものだと知らなかった。  
 唐突に法行が浄里の唇を吸いに来た。先程までの蕩けるようなキスとは違い、本気で噛みつくかのような口吻。  
 だがそんな荒々しさの中に浄里は言い様のない興奮を感じている自分に気づいた。法行の唇は続けて頬と首筋へと移ってそこをなめ回す。  
「やぁ……んッ……!」  
 自分でも信じられないような甘い喘ぎが喉をついて出てしまう。仕方がない。痺れるような快感を堪えきれない。  
 理性などとうの昔にどこかへ飛んでいってしまった。その時、ひときわ奥に法行のモノが侵入してくる。  
「……はぁぅ……っ! やっ……深……い……!」  
 繰り返し、自らのモノを浄里の狭く滾った秘所に突き立てる法行。  
 固く雄々しい樫の棒か何かで責め立てられているかのようだ。しかしそれは熱い。とても熱い。  
(このままでは、身体が溶けてしまう……!)  
 本気でそんなことを思うほど、浄里は快感のうねりの中におぼれていた。自分が溶けてしまわずにいるのが不思議なくらいだった。  
 やがて、じゅう……じゅぷっ……じゅぷっ……と淫靡な音がすることに浄里は気付き、その音の主が自分の秘所であることを理解すると、  
再びかっと脳内が熱いもので満たされていくのを感じた。息を吸えば、法行と自分の汗、そしてそれ以外の何かが入り交じった、何とも淫靡な匂いがする。  
 熱い。固い。いやらしい匂い。もう、何も考えられない。  
「もう……もうっ……ッ!」  
 身体の奥底から、とてつもない衝動が込み上げつつあった。その波に呑まれまいとして浄里は必死に身体をよじる。  
 苦悶の表情を浮かべる浄里を法行は熱に浮かされたように見下ろしている。  
 イヤイヤをするように涙目で首を左右に振るが、浄里を蹂躙する法行の動きは一向におさまらない。  
「だめです……だめっ……! こ、こんなの……! こんなのぉ……っ!」  
 未知の感覚に浄里は快感とともに恐怖した。何かが来る。とてつもなく大きな波が。  
「やめ……止めてっ……だめっ、だめっ! あ、あ、あ……」  
 びくんっ! と浄里の背が大きな弧を描いた。身体ごと意識がどこかへと飛んでいきそうになり、必死で法行の背にしがみつく。  
「あ、あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」  
 悲鳴のような叫びとともに、浄里は絶頂を迎えた。快感の爆発が、数瞬の間浄里の意識を飛ばす。  
 
 気がつくと、浄里は法行の背に腕を回してしがみついたまま、その肩に噛みついていた。  
「……がっ……はーっ……はーっ……!」  
 過呼吸寸前まで乱れた呼吸を、懸命に押しとどめて整える。さすがの法行も、浄里のただならぬ様子に動きを止めていた。  
「……イッちゃったか?」  
「……っ……!」  
 冷静に問われて、浄里はそっぽを向いて紅潮した顔をさらに赤く染める。しかしやがて、自分が法行の肩に歯形を遺してしまっていることに気付き、申し訳なさそうに目を伏せて、その噛み痕に口づけた。  
「……ご、ごめんなさい……」  
「何を謝ってるんだ? 気持ちよかったんだろ?」  
「そ……それはっ……! いえ、否定のしようがありません……。しかし、私だけが気持ちよくなってしまっては……」  
「……安心しろ」  
 法行が少し身体を動かし、絶頂を迎えたばかりで敏感になっている浄里の身体が再びびくんと反応した。まだ挿入されたままだったのだ。浄里の身体は、法行のほんのわずかな動きにも反応してしまい、ビクンビクンと跳ねる。  
「……俺ももう、限界……。……出すぞ……っ!」  
「……えっ?」  
 疑問に思うよりも早く、法行が一際大きくグラインドしたかと思うと、浄里の一番奥にモノを付き入れた。  
 そして、びくびくびくっ! と胎内で何かが爆発したように放たれた。  
「………! ………っああああ!!」  
 法行の射精を身体の奥に受けて、浄里は再び絶頂を迎えていた。出ている。愛する男が精を放っている。私の身体の中で……!  
 射精は信じられないくらい長い間続いた。胎内が熱い液体で満たされるのを感じ、浄里は快感とともに深い安堵を覚える。  
(良かった……私は愛しい男に対して、ちゃんと女としての務めを果たすことができたのだ……)  
 長い射精を終え、脱力した法行の頭をかき抱き、よしよしと撫でる。  
 後白河法行の性欲を処理するという目的は、思わぬ方向に転がって嬉しい結果を得ることになってしまったが、すべては結果オーライという気もする。  
 愛しい男は、今は放心したかのように浄里の豊かな胸に手をかけ、弧を描くように揉みしだいている。甘い快感とともに、浄里はくすりと笑った。  
「……さあ、少し休みましょうか、ごしらか……わ……?」  
 そう声をかけた浄里は、胎内に違和感を感じた。射精を終えたはずの法行のモノが、再び固くなっていくのを感じたからだ。  
 浄里の肩の上に手をついて身を起こした法行の顔を呆然と見上げると、彼はにこりと無邪気に笑って見せた。  
「まさか、一回で済むなんて思ってないよな?」  
「……のり……ゆき……?」  
「思う存分、って言ったからには……約束、果たしてもらうぜ」  
 そして再び浄里の奥に法行自身が突き立てられる。先程の絶頂の余韻を未だに残した浄里は、狂おしい快感に再び身を焦がすことになった。  
 それでも浄里は、強靱な意志力によって、法行が4回目の絶頂を迎えるまでは、意識を保っていることができた。  
 その間、浄里が絶頂を迎えた回数は、10回から先は覚えていない。  
 
 すでに時間は夜半を過ぎている。自らの欲望をすべてはき出した法行は、ふうっと息をついてベッドから身を起こした。  
 傍らには、力なく横たわる五部浄里の肢体がある。時折びくっ、びくっと痙攣したように身を震わせているが、すでに意識はない。  
 浄里の股の間からは、法行が吐き出し続けた精液がどろりとこぼれ落ちて、小さな水たまりのようになってしまっている。  
 好きにしてと言われたものの、さすがに悪いことしたかなと法行は頬をかいた。浄里が意識を失ってからも犯し続けたのは、さすがにやりすぎたかも知れない。結局8回もしてしまった。  
 だが、それだけ浄里の身体が魅力的だったのだから仕方ない。秘所は熱く狭く、うねるように法行を締め付けて放さなかったし、すべすべとして吸い付くような白い肌も、大きいのに形の良い乳房も、すべてが法行の情欲をかき立て続けた。  
 それにも増して法行を興奮させたのは、浄里の反応だった。水晶の鈴のような凛としたイメージの強い生徒会長が、法行の胸の中で身悶えしながら、もっと、もっとと淫靡に甘えてくる様子は、思い出すだに……。  
(……いかん、また勃ってきた)  
 いくら何でも、これ以上浄里を犯すのは気が引ける。  
(……セックスフレンドになれ、って言ってたな)  
 情欲に促されるままに好きだなどと言ってしまったが、浄里が望んでいるのは法行の性欲処理を行う立場なのだという。どちらにせよ在学中は誰かと付き合うわけになどいかないのだが、性欲を処理するだけなら特別な関係とは言えないとか、そういうことなのだろうか。  
(お嬢様学校ってのは、よく分からんな)  
 実際には法行の考えていることにも相当なズレがあるのだが、やや天然ボケの気質を兼ね備えている法行はそんなことにも気づかない。  
(ともあれ……学校でまたしたくなったら、会長に言えばいい。少し気がラクになったな。ありがとう、会長)  
 意識を失ったままベッドに突っ伏す浄里の、絹のような黒髪を指で梳くと、それにすら反応して、浄里はびくびくと身体を震わせた。  
 
★  
 
 翌日以降、法行のオナニーの回数があからさまに減ったことを、法行の部屋のゴミ箱および洗濯物のパンツの残り香から突き止めた花音に大層怪しまれるようになるのだが、それはまた別のお話。  
 

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