「なによ、この状況」
とみ子は山本五郎左衛門を見上げた。見上げたくて見上げているわけではない。
「…言ったではないか、『ラブコメにも対応出来る男』だと」
押し倒されているのだ。
「ふざけんじゃねぇー!!!」
ぬぐぉぉぉおお!!こめかみに青筋を浮かべて、押さえ込まれた腕に力を込める。
が、しかし、さすが魔王と言うべきか、腕はやっぱり押さえ込まれたまま。
「何を嫌がる」
「当たり前だぁ!!」
せめてもの抵抗とばかりに、とみ子は鬼のような形相で叫ぶ。
「あんたが今からやろうとしているのはラブコメでも何でもない!
レディコミよ!こんなドロドロしたラブコメがあってたまるかぁ!!」
言い切ったところで、山本五郎左衛門は、「ふぅむ」と考え込んだ。
「結局は行き着く先は同じではないか」
「…なにがラブコメにも対応出来る男よ」
とみ子はがっくりと脱力し、溜息をついた。
(馬鹿馬鹿しい、早いところこの状況をどうにかして遊びにいこう。)
そう思って、男を再び見上げる。視線がかちあった。
「それでは、何から始めれば良い?」