「ゔぅ゙…」  
 
「だからもう泣くなって…」  
 
「だっで〜…」  
 
 
一度小さく溜め息をつくと、ボッスンはヒメコをそっと抱きしめた。  
 
ヒメコの背後では振蔵の試合が始まったらしく、応援の声があがった。  
 
「大丈夫だって。俺はあいつとヒメコの差なんて分かんなかったし、振蔵が仇……多分とってくれっからさ」  
 
「…多分てなんや多分て…。…大体ボッスン恥ずかしくないんか」  
 
「あ〜…」  
 
 
肯定するでもなく、否定するでもなく、判別しにくい声をボッスンは発する。  
 
「…でもお前あんま泣いてる顔、見られたくねえだろ?」  
 
「…鼻水むっちゃ付けたるわ…」  
 
「きたなっ!!」  
 
「ボッスンが悪いんや…」  
 
そう告げると、声を押し殺して再び泣き始めた。  
 

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