「…ん?なんや、変やなぁ?」  
こうもぴったりと身体を密着させていては、気付かれるのは時間の問題だった。  
妙に嬉しそうなヒメコの吐息が耳をくすぐる。  
太股の付け根だけを器用に動かし、熱を帯び始めたそこを撫で回していた。  
 
「うるせぇな…。仕方ねーだろ…!」  
 
三途の川を渡りかけた先程までならともかくとして、  
自覚してしまった今となっては、ヒメコの存在そのものが劣情の対象となってしまう。  
温もりが、柔らかさが、吐息が、全てが。  
まるで蝕むかのように、ボッスンの身体を侵食し始めていた。  
 
 
−ちゅ。  
 
 
「…ッ!」  
 
ヒメコは再び躊躇うことなく、ボッスンの首筋に口付けを落とす。  
耳たぶや首筋に舌を這わせ、口付けを落としながら、  
僅かに上体を起こし、巧みにボッスンのシャツに手を掛け、ボタンを外していた。  
 
−ぷち、ぷちっ…。  
 
全てのボタンを外し終えると、シャツをはだけさせる。  
上体を完全に起こし、一旦身を引くと再び馬乗りの体勢になった。  
 
先程までの行為で、自己主張を始めたハーフパンツに目をやり、小さく笑う。  
それを無視して、ボッスンのTシャツの下に手を潜らせた。  
 
「ぅ…」  
 
突然の、冷たい手の感触に小さく呻き声を漏らす。  
先程までとは違い、呼吸が浅く、脈も早い。  
自分の上に跨がるヒメコを、恨めしげに見上げる。  
その目が、ヒメコを「情欲の対象」として捉えていることを物語っていた。  
 
 
「…なんや。もっとして欲しかったんか?」  
「…別に、んな訳じゃ、ねーよ…」  
 
「…嘘つけや」  
 
Tシャツの中に入れていた手を抜き取り、ハーフパンツに触れる。  
布越しでもそれは熱を帯び、硬さを増していた。  
存在を確認するように軽く触れ、指を這わせるようにして撫で上げる。  
 
「…!」  
 
ヒメコの手が先端に触れたところで、ボッスンは身体を震わせた。  
ヒメコが煽るように先端を撫で回すと、ボッスンは再び呻き声を上げた。  
 
「…おい、ヒメコ」  
「ん?何や?」  
 
息苦しそうなボッスンとは正反対に、馬乗りのまま笑顔で返すヒメコ。  
しかし手を休めることはなく、先端を撫で続けている。  
 
「いい加減、止めて…くんねぇか…?」  
「何でや。別に何ともないねんやろ?」  
「何ともあるから…、言ってんだよ…!!」  
 
ハーフパンツの上から刺激され続けた自身は、ヒメコの手の中で脈打っていた。  
既に暴発寸前のそれを何とか抑えようと、ボッスンは苦し紛れにヒメコを牽制しようとする。  
 
 
「分かったわ」  
 
「そんなら、早よ済ましたろか」  
 
 
しかし、ヒメコはそれを無視してハーフパンツの金具に手をかけ、ジッパーを下ろし始めた。  
 
限界の近くなった怒張が勢い良く飛び出すと、直接ヒメコの手が触れる。  
先走りで濡れた亀頭に指が触れると、ぬめった感触がボッスンにも伝わった。  
 
「…口先でどうこう言うても、もうこんなんなっとるやんか」  
 
先走りを、潤滑油代わりに指で塗りたくる。  
ヒメコの指が上下に扱き上げるように動くたびに、ぬちゃぬちゃという粘着質な音が響く。  
指だけでボッスンは既に限界に達してしまいそうだった。  
しかしそれよりも先に、いつの間にか後方に下がっていたヒメコが、亀頭に舌を這わせ始めていた。  
 
 
「っ…、く、ぅあ…っ!!」  
 
突然与えられた新たな刺激に、思わず声を上げる。  
今まで感じたことのないその刺激に、ボッスンは強い快感を覚えた。  
ヒメコの指で高めさせられたこともあるのだろうが、自慰を上回る快感であることに変わりはない。  
 
(…やべぇ。色んな意味でキツいぞこれ!!)  
 
亀頭に舌を這わせていたかと思いきや、ゆっくりと口に含む。  
雁首を唇で挟み、亀頭を舌で舐めながら徐々に頭を沈めて行く。  
怒張に絡み付くような粘膜の感触は、経験のないボッスンに嫌が応でも「挿入」を連想させる。  
思わず浮き上がりそうになる腰を何とか押さえ込むが、  
怒張だけは抑えられず、ヒメコの口腔内で暴れたそうに脈打っていた。  
 
 
−じゅぷ、じゅぷ…っ  
 
 
怒張を半ばあたりまでくわえ込んだヒメコの口が、ゆっくりと上下を始める。  
目を閉じ、怒張を頬張るヒメコ。  
普段見ることのない淫靡な表情と、制服から覗く胸元。  
時折怒張に舌を絡め、這わせ、吸い上げる。  
意外にも巧みなヒメコの責めに、ボッスンは自分の腰が浮き上がるのを抑えられなくなっていた。  
 
(駄目だ…、もう…!!)  
 
言葉より、意識よりも先に。  
迸る白濁を、ヒメコの口腔に吐き出していた。  
 
−びゅく、どくん…っ  
 
「…っ、…んぅ…」  
 
吐き出された白濁を受け、ヒメコは一瞬だけ顔をしかめた。  
しかし動じた様子はなく、僅かに声を漏らしながら精液を少しずつ飲み下していく。  
 
こくり、と音がして吐き出されたばかりの精液を全て飲み干す。  
唇を離し、亀頭の残滓を舐め取ると、満足気な表情を浮かべた。  
覆い被さっていた身体を起こし、手の甲で唇を拭う。  
 
「溜まってたんか?えらい濃かったで」  
 
あまりに直接的な表現に、ボッスンは顔を赤くする。  
 
「…っ、どんだけデリカシー無いんだよ!お前それでも女か!?」  
「………ボッスンにだけは言われたないわ。その言葉」  
「本当に、どうしたってんだよヒメコ!こんなことして何が楽しいんだ!?」  
 
未だ馬乗りになられたままで、身動きの取れない身体。  
それでも無理矢理、上体を起こして抗議する。  
 
「せやなぁ…、イジられてる時のしんどそうな顔見るんは楽しかったで?」  
 
「…後は、イク時な。なかなかええ表情しとったで」  
 
思ったよりは早かったけどな、と付け加えてヒメコはボッスンを見下ろしていた。  
 
薄く笑みを浮かべ、冷たくも淫靡な光を眼に宿しているヒメコ。  
鬼姫の頃とも違うその冷たい眼光に、ボッスンは寒気すら覚えていた。  
 
「…なら」  
 
返答は、集中しなくとも予想がついた。  
声が掠れて、思うように出てこない。  
それでも、何とか声を絞り出して続けた。  
 
 
「もう、気が済んだだろ…?」  
 
その言葉に別段驚いた様子も見せず、ヒメコは笑みを浮かべたまま、舌で唇をなぞった。  
その仕草が、表情が。  
淫蕩なその様が、ボッスンの心を掻き乱す。  
 
 
「何言うとんの?まだまだ、これからやないか」  
 
 
ククッ、と嘲笑うような声を上げると、ヒメコはおもむろに自分のリボンタイに手を掛ける。  
はらりとほどけたそれを、無造作に畳の上に放ると。  
そのまま自分の制服の上着に手を掛け始めた。  
 
前をはだけさせると、黒いレースの下着に包まれた胸元が露わになる。  
制服越しよりも豊かに見えるそれは、深い谷間をボッスンに見せつけていた。  
 
「アタシも、楽しませてもらうで?」  
 
そう言って、笑みを浮かべたまま小首を傾げる。  
その姿、たったそれだけの仕草で。  
ボッスンは、再び自身に血液が集まり始めていることに気付かずにはいられなかった。  
 

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