「じゃ、じゃあオレ、帰るわ。」
そう言うなり佑助は、そそくさと部室を出て行ってしまった。
今日はたまたま新聞部の島田貴子から取材の申し入れがあったから部室には来たものの、最近ずっとこの調子だ。部室に顔を出さない。出したとしてもすぐに帰ってしまう。
特別な理由があるようには思えないし、どう考えてもおかしい。
──避けられとる──
一愛がそう感じるのは当然のことであった。
教室でも部室でも、一愛が声をかけると途端に佑助は挙動不審になる。そわそわと落ち着きが無くなり、なんとも微妙な顔をして一愛と距離を置こうとする。
──今まで隠し事なんか‥‥──
一愛は不安で押しつぶされそうになった。
いままで最も信頼していた人物にそのような態度をとられて平然としていられるほど大人ではない。まだ10代の少女なのだ。
「ボッスンなんかあったの?終始落ち着き無かったけど‥‥」
取材に来ていた島田は誰にともなく聞いた。
心配とかの類ではない。純粋な好奇心だ。新聞部員としては大切な資質だが、単なる野次馬根性とも言える。
『おそらく観たいテレビ番組でもあるのだろう。小公女セーラの再放送が4時からあるしな。』
話題を膨らますのがめんどくさいのか、笛吹は軽く流したが、島田はいいネタを掴んだと判断したようだ。
「あの反応はオンナね。きっとこれからデート。いや、17歳といえばやりたい盛り。きっとこれからケダモノのように‥‥」
『あのボッスンに限ってそれはないな。』
島田の妄想に付き合ってられない。そう言わんばかりに笛吹は切り捨てた。
「記者のカンに狂いは無いわ。ホットドックエキスプレスの【初めてのセックス講座】にもそう書いてあったし。」
「エロ本やないかっ!!」
「違うわ。男性ファッション誌よ。いずれにせよ男は出すものさえ出してしまえばスッキリするらしいから、明日のボッスンを見れば分かるわ。」
「そんなんファッション誌ちゃうわっ!」
取材後も部室に居座る島田を笛吹が適当に追い返し一段楽したころ、一愛は思わず不安を口にした。
「スイッチ‥‥ボッスンどうしたん‥‥?」
たまらず一愛は笛吹に問うたが
『普段どおりだがな。なにか気になることでも?』
と返されてしまった。
うまく言えない。ただ普段の佑助とは違う。それは笛吹も感じているはずだった。
一愛が言葉に出来ずに困っているのを見越した笛吹は
『気になるのであれば、明日にでも本人に聞いてみればいい。明日オレは部活には顔を出せないしな。小田倉君と映画を観に行く約束をしている。』
「はいはい。どうせアニメやろ。」
『なんにしてもボッスンには部室に顔を出すよう言っておく。あとはヒメコ、お前が話しをしてみるんだな。』
と話をまとめた。
翌日の放課後、一愛は部室で佑助を待っていた。
正確に言うと、扉の前でウダウダしている佑助が部室に入ってくるのを待っていた。
佑助のシルエットはわかり易い。ツノの生えた赤い帽子を常にかぶっているのだから、曇りガラスのはめ殺し窓からでも見間違えようが無い。
決心がつかないのか、なかなか入ってこない。
‥‥1分‥‥
‥‥2分‥‥
‥‥3分‥‥
「はよ入れやーっ!!」
辛抱たまらず一愛は扉を横殴りに開け放った。
勢いよく開けられた扉はレールを滑り、木製の引き戸受けにぶつかり大きな音を立てた。
驚いた佑助はショックで微妙な表情のまま固まっていたが、一愛は佑助の袖を掴み強引に部室に放り込んだ。
佑助を畳の間(なぜかある)に座らせ、一愛は向かい合うように椅子に腰掛けた。大きく深呼吸をし
「さて、洗いざらい話してもらおうか。なんでアタシを避けるんや?」
ストレートに質問する。
不安と苛立ちの入り混じった声だった。
「な、なんでもねえよ。」
「なんもないわけあらへんやろっ!」
有無を言わせぬ物言いだった。一愛の声には相応の覚悟が感じられていた。
しばしの沈黙があり
「なんでも‥ねえよ。」
空気を読まない佑助が同じ言葉を繰り返した。
「ふざけんなっ!!」
一愛は感情を爆発させた。
「アタシはアンタのせいで夜も眠れんのやぞ!何もないわけあるか!」
佑助の胸ぐらを掴み、そのまま畳に押し倒す。
「アタシはな!アタシ は‥‥」
激情に溢れていた心の叫びは臨界点を越え、怒声から泣き声に代わっていった。
「アタ シは‥‥ア タシ は‥‥」
一愛の目からは大粒の涙が溢れ出し、最後のほうは声になっていなかった。
「‥‥わりい。別にその、悪気があったんじゃねえんだ。」
ぽろぽろと涙を流している一愛に佑助は声をかけた。
「ただ、なんつーか、ちょっとやむにやまれぬ事情があってだな‥‥」
そういってモジモジと体をくねらせる。身体が密着しているのを気にしているようだった。
モジモジしている佑助を不思議に思ったが、太腿に熱くごりごりとした感触を覚えた一愛がふと下に目をやると、それは佑助の股間に当たっており、佑助のそこは大きく盛り上がっていた。
ぎぃやぁぁぁぁ──────────────────ーっ!!!
一愛は後ろに飛び退いた。
「なっ、なにおっきくしてんねん?!」
「だっ、だからしょーがねーだろっ!」
「なに?うわっ。アカンアカン。ほんまアカン。なんや。自分そんな目でみとったんか。キショッ!」
「う、うるせーな。だからオレは出来るだけ‥」
「やめてやめて。そんなんボッスンちゃう。そんなんアレや。裁判やっても無罪になってまう人や。」
「うっせー。バーカバーカバーカ‥‥」
佑助は半泣きのまま必死に言葉を探したが、それ以外の言葉は浮かばず仕舞いだった。
「バーカバーカバーカバーカバーカバーカ‥‥」
「‥‥言い過ぎたわ。ごめん。ほんまごめん‥‥」
「はぁ〜。そんなんでアタシのこと避けとったんか‥‥」
事情を聞けば呆れるしかない話だった。
事の発端は数日前。
その日、佑助と笛吹はテレビ番組の話をしていたのだが、そのテレビ番組に出てくるヒロイン(及川奈緒)が一愛に雰囲気が似ていると笛吹が言い始めた。
佑助は全然似ていないと否定したが、笛吹は似ていると言って引かず、そのヒロイン(及川奈緒)のグラビア(グラビア?)に一愛の顔写真をパソコンで合成し『比べてみろ。そっくりだろう。』と佑助に見せたのだが、これがよくなかった。
一愛のセクシーな合成グラビア(アイコラ)はピタリとハマり、佑助の脳裏に焼き付いてしまった。
以来、一愛を見ると合成グラビア(アイコラ)を思い出してしまい、恥ずかしさから一愛を避けるようになったというわけだ。
なんともくだらない、中学生どころか小学5〜6年生レベルの話である。
「すいませんでした。。ホンットキモくてすいませんでした‥‥」
佑助は恥ずかしさと情けなさから、かつてないほど落ち込んでいた。
「あ、あんなボッスン。」
「ほんとオレ、どうしちゃったんだろ‥‥寝ても覚めてもオッパイとかお尻とか‥‥」
一愛はこれ以上佑助が落ち込まないよう、努めて明るく声を掛けた。
「え、ええねんで。思春期の男の子やし、それがフツーや。」
「いや。いいから。自分でもキモチわりいって分かってるから。だからほっといてください。お願いします。」
「なに言うてん。ボッスンはボッスンやで。アタシがボッスンを嫌うわけあらへんやん。」
「マジで気ぃ使わなくていいから。自分でも死んだほうがいいって思ってるから。」
「‥‥‥‥‥‥‥」
配慮が足りなかった。軽率な言動だった。。
だからこそ佑助は、自分を避けていたというのに。
一愛は、激しい後悔と自責の念に駆られた。
「‥‥アタシが‥‥なんとかしたる。」
思わず出た言葉だったが、一愛は本気でそう思っていた。
とは言え、どうすればよいのか見当もつかない。
笛吹にでも相談したいところだが、あいにくと今日は不在だし、なによりこんなこと相談できない。
そう。誰にも相談できないことだ。
──どうすれば‥‥──
そのとき、ふと昨日のことを思い出した。
────男は出すものさえ出してしまえばスッキリするらしいから‥‥────
昨日、取材に来た島田貴子が言っていたことだった。
一愛は下を向いて少し迷っていたが、決心したかのように顔を上げると部室の入り口の扉を開け、ひと気の有無を確認したあと扉の内鍵を掛けた。
続いてはめ殺し窓にポスターを貼り付け、部室の蛍光灯を消す。
ベランダ側の窓のカーテンを引くと、部室はやや薄暗くなった。
「なんだよヒメコ‥‥いったい‥‥」
佑助は突然の一愛の行動が理解できなかった。
テキパキと部室から明かりを排除したあと、少し怒ったような困ったような顔でいた。
「ボッスン‥‥アタシが‥したるわ‥‥」
そういって横に腰掛けると、俯いたまま佑助の股間に手を伸ばし、ズボンの上から膨らみを撫で始めた。
「なっ?!」
突然のことに佑助は驚き、その手から逃れようと身体をくねらせたが、顔を上げた一愛と目が合った。
一愛と佑助は一瞬見つめ合い、顔を真っ赤にして目を逸らした。
しばしの沈黙があり
「え、ええから‥‥座っとき‥‥」
「‥‥‥ぉ、ぉう‥‥」
ただそれだけの会話だが、お互いになにかを理解したようだった。
しゅっしゅっ‥‥と、布を擦る音と、グラウンドで運動部が練習の掛け声が妙にミスマッチだった。
一愛はズボンのチャックを下ろし、右手を中に入れ弄ると、弾力ある肉棒に手を滑り込ませ、それを握った。
ズボンの上からは想像もつかないほど熱く滾ったそれに一愛は驚きを隠さなかった。
「ボッスン。コレ、おっきすぎちゃうん?」
少し声が上擦っていた。
「いや、ふ、ふつーじゃねぇの?」
「フ、フツーなんか、コレで‥‥」
ドキン。ドキンと脈打つそれをズボンから引き出すと、熱り立つ肉柱がぶるんと弾け出た。
一愛は出来るだけそれを見ないように、ゆっくりと扱き始めた。
「うっ。い‥いてぇよ、ヒメコ‥」
「そか。ごめんな。」
一愛は手から力を抜き、出来るだけ優しく上下させたが、それでもやや痛むのだろう。佑助は度々苦痛の表情を浮かべた。
「ごめんな。アタシ不器用やから‥‥」
雑誌には、口でペニスをくわえる、いわゆるフェラチオが一般的に掲載されており、そのやり方であれば痛みを与えることなく肉柱を愛撫出来るのであろうが、キスすらしたことの無い一愛にとってフェラチオは抵抗があった。
「‥‥なぁ、ボッスン。ちょっと目ぇ瞑っててくれへん?」
「え、ああ。いいぜ。」
佑助は素直に目を瞑ったが、この状況で目を瞑っていろというのは無理な注文だった。
あっさりと好奇心に負けた佑助が薄く目を開くと、一愛はおもむろに上着を脱いでいた。
脱いだ上着をソファーの背もたれに掛け、薄い水色のブラジャーを外すと形の良い乳房が露わになった。全体的には細身な躰だが、乳房には充分なボリュームがあった。世間的な巨乳と言うほどではない。Dカップ程度であろうか。
ツンと上を向いた張りのあるバストに対し、初々しい桜色をした乳暈が上品に感じられた。
盗み見る程度に留めるつもりだった佑助だが、普段接している女性の意外な美しさに、つい見とれてしまっていた。
「‥‥ボッスン、目ぇ開いとるやろ?」
視線に気付いた一愛は両腕で胸元を隠し、疑うように聞いた。
「え、な、な ななナニが?オレ、ヒメコのおっぱいなんて、み み見てねぇよ?」
「おっぱい言うとる時点でアウトや。」
そう言い一愛は、佑助の頬をつねった。微妙に手加減しているのだろうが、充分な痛さだった。
「ちゃんと目ぇ瞑っててや。」
佑助の前で片膝をついた一愛は、目の前に聳える肉柱に改めて驚いた。
ごつごつと歪なそれは、ちょうど一愛の手のひら一枚分の長さで、太さは親指と人差し指で円を作った径よりもやや太かった。
先端の赤黒い亀頭はパンパンに膨れてまるでゴムボールのようにつやつやとしており、それを支える肉の竿は、太い血管が幾重にも走り、日焼けしたように浅黒かった。
──もっとバナナみたいに真っ白で可愛いもんと思っとったけど‥‥──
子供のころに見た父親のそれは、ここまでグロテスクではなかったし、ここまで大きくは無かった。
生々しい肉柱に若干躊躇した一愛ではあったが、佑助のものだと思うと気持ち悪くは感じなかった。
一愛は乳房に両手を添えると、その乳房で佑助の肉柱を挟みこみ、擦り始めた。
「うおっ」
佑助は思わず声を上げた。弾けんばかりに膨張した己の肉杭が、突如マシュマロのような柔らかさと肌触りに包まれたことに驚いたのだ。
「ヒ、ヒメコ‥‥」
己が分身を乳房で懸命に愛撫する一愛を見て、佑助は堪えられないほどの興奮を覚えた。
「見たら、あかんて、言うたやん‥」
一愛は恥じらいと必死に戦いながら、佑助の怒張に柔らかな刺激を与え続ける。
「痛ない?」
「あぁ。」
「気持ちいい?」
「すっげー気持ちいい‥」
「‥良かった‥」
佑助の言葉に、一愛は安堵の表情を浮かべた。