目の前には今、一番会いたくない奴。  
 
 
「この前の威勢はどうしたんだよ?」  
含みのある笑みを浮かべながら距離を詰めて来る。  
 
「う、うるさいわねっ!!いちいちアンタの相手をするのが馬鹿馬鹿しいだけよ!!」  
「ふぅん?」  
じりじりと距離を詰めてくる宿敵・不破尚に対処しようにも背後の壁まであと数歩といったところか。  
(どうすればいいのよーーー!!!)  
我ながら情けないと思いつつキョーコは壁までの距離を更に詰めた。  
「…今日はあの変なの出さねーの?」  
 
キョーコの肌に尚の吐息が触れた。  
 
事の始まりは数日前。  
「え、私が、ですか…?」  
新しい仕事が来たと呼び出しを受けて事務所に勇んで行くと、  
にこにこと笑みを浮かべた鰆が待っていた。  
「そう。不破尚からの直々の指名みたいだよ?前回のプロモの評判がかなり良かったからね」  
尚からの指名。  
尚が何の打算も無しに自分を指名することなどありえない。  
嫌な予感がしてキョーコは恐る恐る告げた。  
「お断りすることは…」  
「なに言ってるんだ?不破側からの直々の指名だぞ?それに  
 クィーンレコードはウチの大事な取引先でもあるわけだから…」  
そう言われてはキョーコに返す言葉は無い。  
そもそも自分はまだ駆け出しの新人なのだ。仕事をいちいち選べる立場でも無い。  
 
「………分かりました」  
 
この前だってトラブルはあったけどなんとか上手く出来た。  
今回だって、きっと何事もなく出来るわ。  
そう言い聞かせてキョーコは拳を強く握りしめた。  
瞼の裏に焼きつく憎い男の顔を思い浮かべながら。  
 
 
「どうして…また『私』を呼んだのよ?」  
「さぁ?面白かったからじゃねぇ?」  
プロモーションビデオの撮影自体は何事も無く終わった、筈だ。  
問題なのはプロデューサーの麻生に覇気がない、と幾度も注意されながらもなんとか撮り終え、  
帰途に就こうとしたキョーコを尚が自分の楽屋に無理矢理引っ張り込んだことだ。  
 
 
そうして冒頭の状況に陥る。  
「ちょ、ちょっと?冗談止めてよっ」  
「お前この状況でよく冗談とか言えるな」  
「…っやめ…っ」  
楽屋の床に縫いとめられてもがくキョーコの身体を満足気に見下ろして尚が嗤う。  
「んうっ」  
剥き出しになった首筋を吸われキョーコの身体が仰け反る。  
「いつもやってた事だろ?どうして今更嫌がるんだ?」  
「…っ!!!!そんなの……っ」  
アンタが家政婦呼ばわりして私を捨てたからでしょ!?分かってる癖にっ!!  
精一杯の抵抗とともに尚を睨み付ける。  
「いいぜキョーコ…その顔すげぇクる」  
「…ん…っ」  
噛み締めた唇を甘く舐められ、顔を背けた拍子に頬を滑った唇がキョーコの耳朶を食む。  
「やめ…っ!!!」  
蹴り上げた脚を難なく避けて尚は更に体重を掛けてくる。身動きが出来ない。  
「…もっと抵抗してもいいんだぜ?出来るなら、だけど」  
聞いたことも無いような低音と舌を耳の中に送られてキョーコの身体がひく、と小さく震えた。  
ああお前耳弱かったよな、と確信犯的な笑いを含みながら言われてキョーコの体温が上がる。  
その台詞にあのマンションで尚に抱かれていたときの自分の痴態を否が応でも思い出してしまう。  
尚の愛撫にとろとろに溶かされ、泣きながら尚の猛りを強請り、喘ぎながら夢中で腰を振った。  
最中に囁かれる愛しているという言葉が、今となっては唯のリップサーヴィスでしかなかった尚の言葉に、  
どうしようもなく歓喜し、登り詰めてしまっていたあの頃の愚かな自分を。  
 
あの頃自分を狂わせた指が服の合わせ目からするりと入り込んでくる。  
ひやりと感じる指に自分と尚の体温差を知る。  
憎んでる筈の男にこんな仕打ちを受けているのに、熱を上げる自分の身体が厭わしい。  
悔しさに涙が滲んでくる。  
力の抜けかけた身体に鞭を打ち、逃れようとしてもがいても圧倒的な力の差に加え、この不利な体勢だ。  
「やめ…っ、しょ、いい加減にしなさいよっ……」  
必死の抵抗も今の尚をただ煽るだけのようだった。  
間を置いたとはいえ慣らされた身体はキョーコの気持ちを裏切って尚に反応していく。  
尚はするすると手際よくキョーコの服を剥ぎ、あらわになった白い肌を吸ってやる。  
「あ、んっ」  
思わず声を漏らしたキョーコの身体はしっとりと汗ばみ、彼女の興奮を伝えてくる。  
背けた頬は薄桃色に染まっていた。  
どうしようもない衝動を感じて尚は慌しくキョーコのブラジャーを押し上げ、形のいい小さな丘の頂に唇をよせた。  
「だめぇっ、そこ、やだぁぁ…ひぁっ」  
片方の頂を熱い口内で転がされ、おざなりにされていたもう片方の乳房を荒々しく揉みしだかれ、  
キョーコの抵抗に甘い媚が混じりはじめる。  
「ああんっ!!」  
軽く歯を立てられ、キョーコは悲鳴を上げた。  
どろり、と身体の中心から熱いものが漏れ出る感覚に身体を打ち震わせ、必死で尚の身体を押しのけようとする。  
「もう、や…っ、やめて…っ」  
尚は肩を押す震える指に自分の指を絡ませて再びキョーコを冷えた床に押し付けた。  
「…やめない」  
 
「ん、ひ、やだ…っ、ああっ」  
キョーコのすすり泣くような声と粘着質な水音が防音設備の整った楽屋に響く。  
「キョーコ。すげぇ濡れてるぜ?ほら、ゆるぬるしちまってちゃんとここ弄ってやれねぇよ?」  
「ふあっ、もぉ、やぁぁっ」  
ひくひくと身体を痙攣させながらキョーコは幾度も首を振る。  
尚の指がこりこりと自分の肉芽を弄るたびに身体の芯を悦楽が走り抜ける。  
「や、じゃねーだろ?ココ、俺が開発してやったんだから」  
「あんんうっ」  
頂の口に爪を立てられ、キョーコの腰が過剰とも言える動きで跳ねる。  
尚の言葉通り、大分昔にキョーコの肉芽の包皮は尚の指と舌によって剥かれてしまっている。  
故にキョーコのそれは敏感で何よりも尚の慰撫に反応する。  
そこを三本の指で嬲られ、爪を立てられれば正気を保つことは難しい。  
体中の神経をじかに触られているような、それとも体中を小さな蟲に侵食されていくような感覚をキョーコは必死で耐えようとするが、  
膨らんだそれを押し上げられる度に尚の指を熱い滴りが濡らしてしまうのを止められない。  
身体の中で眠っていた淫欲が呼び覚まされ、ろくな抵抗も出来ないまま追い立てられてゆく。  
 
愛液を滴らせる肉壁がひくひくと戦慄いて尚の指を呼ぶ。  
「ひぅ…っ」  
入り込んできた長い指を熱く溶けた肉が絡め取る。  
「とろとろだな…?でも俺の指が欲しいって締め付けてくるぜ?」  
「ちが…ちがうのぉ…」  
「どこが違うんだよ?ほら音聞いてみろよ?」  
「はぁ…ん…もう…っ…ひんっ」  
くちくちと音を立てて尚はキョーコの体内をかき混ぜ、翻弄する。  
わざと浅いところばかりを掻き回すとキョーコの腰が強請るようにうねり、  
尚の指の間接が敏感な入り口に引っ掛かる度にキョーコの身体はびくびくと痙攣し、堪えるように立てた爪先が空しく床を掻く。  
快楽に濁り始めたキョーコの瞳を覗き込み尚は満足気に微笑み、指を引き抜く。  
引き止めるように収斂した肉に褒美を与えるように、  
キョーコの膝裏を抱え上げ、蕩けた孔に怒張した陰茎を突き立てる。  
「あ、あああんっ!!!」  
狭い肉を押し上げられ、果汁が飛び散る。  
キョーコの瞳が見開かれ、跳ね上がった脚が空しく宙に踊った。  
「いや…っ…やぁぁぁっ、ぬいて、ぬいてよぉ…」  
あれだけ蕩けさせてやったのに、この期に及んで堕ちないキョーコに苛立ちを感じて、尚は更に深く楔を打ち込む。  
「ひぅ…っ」  
キョーコは震えながら身体を強張らせ、頑なに尚を拒もうとする。  
それなのに尚を含んだ媚肉は歓喜に震え、もっとと言う様に締め付けてくる。  
尚は小さく舌打ちをするとキョーコの中を探るように腰を回す。  
「あーっ!!」  
見開かれたキョーコの瞳を淫楽に反応した涙が伝ってゆく。  
硬いリノリウムの床が繋がった部分から零れた体液で滑る。  
―――こんなに欲しがってるんじゃねぇか。  
尚を押しのける事に失敗し、諦めたように投げ出されたままの両の腕が忌々しい。  
前のように自分を求めて縋らせてやりたい。  
むくむくと暗い独占欲が膨れ上がる。  
ふと安い駆け引きを思いついて尚はキョーコを満たしていた灼熱を奪った。  
 
「ふ、あああああんっ」  
空隙を埋めていたものを一気に引き抜かれキョーコはあまりにも簡単に墜ちた。  
与えられていたものを奪われてキョーコの内壁が悲鳴を上げる。  
「や…ぁ、あああっ…やだぁ…抜かないでよぉっ」  
泣き喘ぎながらキョーコは自分の腰を突き上げる。  
それを避けて尚はもう一度指でキョーコを翻弄する。  
満たされないままに肉棒を奪われたキョーコの肉襞が貪欲に尚の指を喰む。  
「や、ど…してぇ、ふぁっ…」  
ぎりぎりのところで保っていたプライドが霧散し、キョーコは啼きながら尚の指を貪る。  
 
「強請れよ?」  
勝利の喜悦を滲ませた声で尚がキョーコの耳朶を舐め上げ、指を引き抜く。  
蛍光灯の光に反射してぬらぬらと卑猥に煌くそれでキョーコの剥き出しの胸を再度慰撫する。  
 
「ンン…」  
ひく、と浅ましくねだる身体を戦慄かせ、  
虚ろな瞳をしたキョーコが赤い舌で唇を何度も濡らす。  
「どーして欲しいんだよキョーコ?言ってみ?」  
―――教えてやっただろ?  
前みたいに、俺の言うままに浅ましく強請れよ。  
尚に促され、僅かに躊躇った後、  
キョーコは熟した秘孔に自らの指を差し入れて左右に広げた。中の肉襞がひくひくと収斂する  
たびにとろりと愛液が指を伝う。  
乱れた息の下、囁くような声で尚に対する服従の言葉を吐く。  
 
「…ここ、に…っ」  
きつく閉じたキョーコの瞳から涙が零れた。  
「しょ…の…ふぁ…おっき…の、いれてぇ…っ」  
キョーコの痴態に尚は今までに無く欲情した。  
 
「あ!ああんっ、ひぅぅっ!!」  
腰だけを高く掲げ、キョーコは尚の猛りを受け入れ続けていた。  
「ふぁああっ、また…またくるよぉっ…」  
繋がった部分から飲み込みきれない体液が溢れ出し、白い気泡をつくる。  
桜色に染まった腿はまるで粗相をしてしまったかのように濡れそぼり、妖しく光を反射している。  
もう何度か内部に出されて、その度にキョーコは極めてしまっている。  
「ここだろっ?ここがいいんだよなぁ?キョーコっ」  
激しい律動を続けながら尚はキョーコを攻める。  
「ほら前はここ俺のちんぽで突かれるたびにヒィヒィよがってたよなぁ?」  
「ひあああんっ!!んんっ、そこ…っ、そこだめなのぉ…っ」  
熟れた粘膜を擦り合わせる度に、知り尽くした身体は面白いほどに目論んだ反応を返してくる。  
「何がだめなんだよ?こんなにぐちゃぐちゃなのにまだ俺のこと引き込んでるじゃねーか?」  
「だってぇ…ああん、あついの、きもちいいのぉ…」  
もっとと言う様にキョーコは両の足で尚の腰を挟む。ぴんと張り詰めた爪先が尚の背中を引っ掻いて滑った。  
「んーーっ、へん…なっちゃ…よぉ」  
呂律の巧く回らなくなった舌で紡ぐ嬌声が尚の嗜虐心を煽り立てる。  
 
「やー…もっとぉ」  
一旦引き抜かれ恨みがましく尚を見上げたキョーコを横抱きにし、  
開かさせた足の間に入り込む。きつい態勢に耐えるように  
キョーコは指を噛み、くぐもった喘ぎを漏らす。  
「ふうぅっ、ん」  
「キョーコ」  
噛み跡が赤い跡を残した指を引き抜き、尚が荒々しく口付ける。  
「ん、んぅ…」  
荒い呼吸の下でお互いの唾液を混ぜあい、 激しく陰茎を抜き差しされる。  
卑猥な水音と肉の激しくぶつかる音が生々しい性の臭いの充満する部屋を更に卑猥なものに彩っていく。  
「ん…ひ…っ、ああああっ」  
敏感な肉を張り出した亀頭でぐりぐりと擦られ、快楽に沈んだキョーコは髪を振り乱しながら尚を引き寄せる。  
「ああんっ、しょ…ちゃ…いっちゃう…っ、また…いっちゃうぅ…っ」  
「っ!!いいぜキョーコ…っいっちまえよ!!」  
「ふあ…っ」  
叩きつける様に突かれて、  
何回目か分からない絶頂がキョーコを蹂躙する。  
「キョーコ…っ、俺も…っ」  
きつい締め付けに反応して、尚の欲望が膨れ上がり、キョーコの内部に飛沫を開放する。  
「ん…しょー…ちゃん…っあつ…くて、きもち、いいよぉ…っ」  
かっての呼び名で読んでしまっているのに気付かない程にキョーコは悦楽の底に居た。  
 
 
ぷしゅ、っと缶ビールのプルリングを引き抜く音で意識を取り戻した。  
 
一応後始末はしてくれたらしい。  
ソファーに横たえられた身体は清められていたし、その上には無造作に見覚えのあるジャンパーが掛けられていた。  
 
まだまともな思考が戻って来ない。いや、考えることを脳が拒否してるのだろう。  
尚になぶられた余韻がまだ消えない。  
身体の芯がじくじくと疼いて、断続的に細波のような震えが襲ってくる。  
 
………まだほしい。  
ぼうっとビールを嚥下する尚の咽喉を見つめる。  
 
この世で一番憎んでる筈の男に犯されて、嫌悪するどころか今までに無く感じて。  
注ぎ込まれた迸りが堪らなく気持ちよくて自分から強請ってしまった。  
 
(最、悪…よ……こんなの…)  
挙句まだ満たされない疼きに悩まされてるなんて。  
自己嫌悪を通り越して死にたくなってくる。  
 
「キョーコ?気付いたか」  
尚と目が合い、キョーコは反射的に身を竦ませた。  
「怯えんなよ」  
ごくごくとビールの残りを飲み干して尚は口元を拭い、問う。  
「何故俺がお前を呼んだか分かったか?」  
「……」  
キョーコは俯いて唇を噛んだ。  
沈黙を答えと取ってふん、と尚は小馬鹿にしたように嗤い、キョーコの前髪を掴んだ。  
強い光を宿す瞳がキョーコを捉える。  
 
「なぁキョーコ…あのマンションに戻れ」  
耳元に囁かれる声は蜜のように甘い。  
長い指が湿った髪を透き、頭皮を愛撫する。  
まだ熱の冷めない身体が尚を求めて疼く。  
「キョーコ」  
促されるように名前を呼ばれる。  
有無を言わせまいとするその声音にキョーコが逆らえたことは一度も無い。  
 
もう、にげられない。  
或いはそれは絶望か。それとも。  
 
キョーコの頬に一筋の涙が伝った。  
「…戻る…あのマンションに、戻るから…」  
 
―――もう一度、して。  
 
「…いい子だ」  
褒美のように口付けが降りてくる。  
「ん…」  
まるで愛し合う恋人同士のように唇が甘く重なった。  
キョーコの咥内を貪る合間に尚が囁く。  
「…今度は金位出してやるよ。  
 てめぇはあの部屋に居て時々帰ってくる俺を待っていればいい。  
 …そうすればお前の望む通りに可愛がってやるぜ?」  
 思考することを放棄したキョーコの耳に尚の誘いはとても甘美なものの様に聞こえた。  
キョーコはゆっくりと瞳を閉じ、尚との口付けに没頭する。  
 
「お前は俺のものだ」  
 
恍惚りと両手を背に回してきたキョーコの望みを叶えてやるために、  
尚はもう一度その柔らかな身体をソファーに沈めた。  
 
終わり。  
 

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