「キョーコちゃん!」  
ラブミー部の本日の仕事も終わり  
私服に着替えて事務所を出ようとしたキョーコは  
聞き覚えのある声に呼び止められて振り返った。  
「社さん、こんにちは」  
スーツに眼鏡の男性がにこやかに手を振って近寄ってくる。  
社はキョーコのすぐ前までやってくると  
両手を合わせて彼女を拝むポーズをしながら  
「キョーコちゃん、暇なら今日蓮の食事作ってあげてくれないかなぁ」  
と切り出した。  
「いいですけど・・・・どうかしたんですか?」  
「最近、あいつスケジュール過密で、朝昼ろくに食べてないんだよ。  
 今日は早めに終わるから・・・・・・できればお願いっ」  
「そういうことなら任せてくださいっっ!!」  
ドンと胸を叩くその目には使命感の炎が燃えていて  
社が横を向いてニヤリと笑ったのに気づかなかった。  
 
夕方のピーク時を過ぎかけたスーパーマーケット  
その入り口で買い物カゴを取りかけたキョーコはふと  
雑誌が並べられている棚に気になるものを見つけて歩み寄った。  
本日発売なのか一番目立つところに置いてある薄い雑誌、  
その表紙に大きく「あなたが選ぶ好きな男・嫌いな男」と書かれている。  
「これってショーが気にしてたアレよねぇ・・・・・・」  
キョーコは雑誌を手に取るとパラパラとめくり始めた。  
 
夕飯のメニューはシーフードグラタンにシーザーサラダ  
スープと箸休めが何品かであった。  
仕事を終え帰ってきた蓮は  
(また社さんが余計なことを・・・・・・)と思いながらも  
グラタンをほくほくと平らげ、  
「ご馳走様、美味しかったよ」と手を合わせた。  
彼女の作る料理は美味であり、栄養も考えられている。  
有難くないはずがない、のだが、  
想いを自覚してからというもの、  
彼女のふとした表情にくらっとしがちな蓮にとっては  
マンションの自室に二人きりという状況はあまり精神衛生的によろしくなかった。  
 
(片付けが終わったらさっさと送ってしまおうそうしよう)  
お皿を洗うキョーコの横に立ち、濡れた食器を拭き始める。  
(皿の輝きに集中していれば平気なはずだ)  
とりつかれたように皿を磨く蓮を、引きつった笑顔でキョーコが見やった。  
「あの・・・・・・敦賀さん、何かお気に召さないことでもありました・・・?」  
「え、いや、そんなことないよ。ただこのお皿がちょっとね、小憎たらしいっていうか」  
「へ、へぇ・・・・・・」  
洗い場に複雑かつ重めの沈黙が流れる。  
 
(お皿がどうかしたのかしら・・・まったく訳分からない人ね!)  
悩みながらも最後の1枚の泡をお湯で流し、蓮に渡すと今度はシンクを洗い始める。  
(あ、そうだ!)  
そういえば蓮に話す話題があったではないか、  
キョーコはまだ執拗に皿を磨く蓮を笑顔で見上げた。  
「敦賀さん、今日私雑誌見ましたよ!  
 『抱かれたい男No.1』! 今年も受賞ですねー」  
 
精神統一していた蓮は、ギョッとして皿を落としそうになった。  
すんでのところで持ち直し、平静を装う。  
「ああ、そうなんだ」  
「ほんとすごいですよね。敵無しっていうか」  
「そんなことないよ。この世界、すごい人は多いからね」  
「でもアイツなんか7位で・・・・・・」  
「・・・・・アイツ?」  
 
ピシッと皿にヒビが入る。場に冷ややかな空気が流れた。  
キョーコは、し、しまったああああと真っ青になった。  
怖くて顔があげられない。  
(ううう、どうしてこう迂闊なことしちゃうんだろ)  
「アイツ」なんてどうでもいいのに、会話を繋げようとするあまり  
口に出してしまった。  
(敦賀さんてアイツのこと口に出されるのも嫌いみたいなのよね・・・・・・。  
 まぁアイツが喧嘩売ってるからなんだろうけど・・・・・・あーどうしよう)  
隣からは冷気が漂い、皿にピシピシとヒビが広がる音がする。  
キョーコは脂汗をかきながら、ひたすらシンクを磨くことに没頭する振りをした。  
 
「・・・・・・最上さんは」  
「はいぃぃぃぃぃっ!! なんでしょおお!!」  
感情を感じさせない声に突然呼ばれて  
キョーコは直立不動になり返事をした。  
が、見上げることはまだとても出来ない。  
「最上さんは、誰に投票するのかな?」  
「え???」  
「・・・『抱かれたい男』」  
耳のすぐ後ろで囁かれる。  
いつの間に皿を置いたのか、蓮は硬直するキョーコの後ろに立った。  
「え、えええええと、私ですか?」  
「そう」  
 
キョーコが逃げ出せないように、  
彼女の両側からしっかりシンクの縁を掴んで蓮は続けた。  
「誰になら抱かれたい?」  
「そ、そんな」  
「例えばアイツとか?」  
「それはありえませんっっっっ!!!!」  
冷や汗をかきながら耐えていたキョーコだったが、  
その問いには激昂して振り返った。  
「アイツなんて、死んでも御免ですっ!」  
 
見上げた蓮の表情は  
似非紳士でもマジ怒りでもなく、  
ただ真面目な顔だったので、キョーコは瞬間で我に返った。  
「敦賀さん?」  
「・・・・・・じゃあ俺なら?」  
 
「・・・・・・・・・・ハイ?」  
何を言われたか分からないといった顔のキョーコに  
蓮は顔を近づけた。  
「俺になら抱かれたい?」  
「・・・っっっ!!」  
あまりの問いにバッと再び背を向けたキョーコ。  
その真っ赤に染まった耳朶に口付けるように囁く。  
「教えて?」  
 
「な、なんでそんなこと・・・っ」  
「大事なことなんだ」  
くらくらと眩暈がして、キョーコは倒れてしまいそうだった。  
体の深奥が熱い。  
シンクにすがってようやく立っているが  
その華奢なウエストを抱きしめるように蓮の両手が幅を狭めてくる。  
「わ、私はっ、まだそんなこと、想像もできませんっ」  
「俺は嫌なんだ?」  
「そんなことっ!!」  
 
ランキングに並ぶ男性芸能人の名前。  
知らない名前もいくつかあったが、  
やはりその名前が、存在が惹きつけるのは一人しかいなくて  
「私も・・・・・・誰かを選ぶなら、敦賀さん、が、やっぱり」  
徐々に小さく、消え入りそうになる声を聞いて  
蓮は愛しさに目がくらみそうになった。  
「俺も最上さんを選ぶよ」  
「え!?」  
 
キョーコが驚いて振り返ると  
蓮の顔を確かめる前に、さっと唇を塞がれた。  
「ん・・・っ」  
温かく柔らかい感触に思わず目を閉じる。  
蓮の片手が離れようとした腰を抱いて強く引き寄せた。  
唇の上をゆっくりとなぞる舌が、思考を痺れさせ  
キョーコは震える両手で蓮の服を握り締めた。  
 
ようやく唇が解放されるとキョーコは喘ぐ様に息を吸い  
そして、信じられない気持ちで蓮を見上げた。  
彼女を見下ろす蓮の顔は何かを堪えているかのようだった。  
「敦賀さん、なんで・・・・・・」  
「・・・無垢な君を見ていると、教えたくてたまらなくなる」  
腰を抱いていない方の手が、キョーコの背中をゆっくりとなぞり、髪を梳いた。  
優しく、何度も、確かめるように。  
「『抱かれたい』なんて、たった一人に言われなきゃ意味がないんだ」  
キョーコの潤んだ黒い瞳に寂しそうに微笑する蓮が映る。  
「そう、君に言われなきゃ意味がない」  
 
キョーコは衝撃で何も言えなかった。  
かつて、似て非なる言葉を聞かされたことがあった。  
『お前の中で一番でも何の自慢にもならない』  
その言葉を聞いた時は  
自分はなんて、無駄なことをしてたんだろうと思って  
過去を否定して呪って  
愛情が何なのか分からなくなった。  
 
でも今、そんな「私」を見てくれる人がいる。  
その人の腕の中にいるのだ。  
自分でも気づかないまま涙が零れ落ちた。  
「敦賀さん、私・・・・・・」  
「うん」  
「ごめんなさい、混乱して、よく分からなくて・・・  
 ・・・あの、でも・・・すごく、嬉しいです。私なんかを・・・」  
「なんか、じゃないよ」  
蓮はもう1度、キョーコの小さな唇に口付けて微笑んだ。  
「誰よりも魅力的だ」  
 
甘い口付けを耳に、首筋に、鎖骨にと降り注がせながら  
蓮はキョーコの細い体をきつく抱きしめた。  
彼女の呼吸や鼓動、体温を帯びた柔らかな曲線が  
お互いの服の薄い布地ごしに伝わってきて陶然とする。  
「んっ、あ あ・・・っ、あの、敦賀さん・・・・・・っ」  
「俺を選んでくれるんだろう?」  
「そ、それは・・・・・・」  
赤面しているキョーコを笑顔で黙らせると  
連は彼女のブラウスのボタンをはずし始めた。  
 
さらけ出された滑らかな白い女の肌に、蓮はたまらず  
ついばむような口付けを降らせる。  
一方の手は臀部に添って円を描くようにその感触を楽しんだ。  
「んっ・・・ぁ・・・」  
声を出すことを恥じているのか、固くかんだ唇の間から  
堪えきれない吐息が洩れる。  
 
背中を探ってブラウスごしにブラのホックをはずすと  
形のよい白い膨らみが顕になった。  
「や・・・っ、みないでください・・・」  
「だめ。勿体無い」  
包み込むように乳房に手を添えると  
優しく揉みしだく。それに合わせてキョーコの吐息が跳ねる。  
「あっ・・・ぁんっ・・・ゃぁっ・・・」  
先端の突起を指で軽くつまむと  
彼女の細い体がビクンと震えた。  
そのまま何回か弄ると、今度はそっと口に含んで転がす。  
「ゃ・・・っ・・・ああぁっ・・・・・・っ敦賀さん・・・っ」  
キョーコは両手で自分の胸元にある蓮の頭にすがりついた。  
か細く扇情的な声がキッチンに洩れる。  
 
蓮は胸に顔をうずめたまま、スカートの下に手を入れた。  
「こっちは・・・・・・どうなってる?」  
「ぁ・・・ダメっ・・・」  
指が下着の上をなぞると、そこは既にじっとりと濡れていた。  
ゆっくりと、何度が指を往復させると固い突起に触れる。  
「んぁ・・・っ!」  
指の腹で丁寧に刺激すると、キョーコの足はガクガクと震え  
蓮に半ば寄りかかる形になった。  
「あっ・・・ぁ・・・ぁぁん・・・」  
細い両腕を首に絡みつけて必死に耐えている彼女を  
蓮は目を細めて見やった。  
 
「・・・っ・・・もう・・・ダメです・・・立ってられない・・・っ」  
「いいよ」  
蓮は彼女をひょいと抱き上げると下着を足から抜き取り  
シンク横の調理スペースに座らせると  
膝を両手で軽く割って、濡れた花弁に顔をうずめた。  
ピチャピチャと蜜を舐め取る音に、キョーコは羞恥で狂いそうになった。  
「ダメっ・・・や、ゃぁっ・・・イヤ・・・あっ」  
足を閉じようとするものの、蓮の顔を太股できつく挟むだけで  
舌の動きを留めることはできない。  
気の遠くなるような快感と淫靡な水音から逃れようと、  
目を閉じたまま首をいやいやと小さく振る。  
 
蓮はその仕草に気づいて体を起こした。  
「大丈夫? 嫌ならやめるよ」  
キョーコはびくっと体をふるわせ、かぶりを振った。  
「い、いえ・・・平気です・・・・・・・・・だから・・・・・・おねがい・・・」  
囁くような懇願と共に小さな体ですがりついた。  
 
蓮はうなずくとジッパーを下ろし、キョーコのそこに押し当てた。  
体重をかけつつ、ゆっくりと押し入る。  
「あ・・・・・・っ!」  
キョーコの内部はわずかに強張ってきつく、熱かった。  
キョーコは目を閉じ、蓮の肩を強く握って痛みを堪えている。  
「力を抜いて、息を吐いて」  
その言葉に従って息を長く吐くと  
白い両脚を蓮の体に巻きつけ、きゅっと締め上げた。  
 
合わせた体が最奥まで到達すると  
蓮はキョーコの様子を伺いながらゆっくりと動き始めた。  
「やぁ・・・んっ・・・んっ・・・ぁぁっ・・・」  
彼女の表情が徐々に苦痛を堪えるものから、  
快楽を感じる艶っぽい美しさを帯びるものに変わっていく。  
それを見るだけで蓮は自制を捨てて突き上げたくなる衝動と戦わねばならなかった。  
 
「敦賀さん・・・っ・・・・・・お願いっ・・・もう・・・・」  
「いいよ」  
白魚のように跳ねる細い体を抱いて  
蓮はゆっくりとしかし奥深くに腰を打ち付ける。  
それにあわせてキョーコは細い声をあげた。  
「んっ・・・んっ・・・あああっ・・・」  
体の奥底が揺さぶられる感覚。  
「あっ・・・ぁ・・・ぁ・・・ああああ・・・っ!」  
昇りつめた時、何かが割れたような音がして、キョーコは意識を手放した。  
 
 
「気づいた?」  
目が覚めるとそこは蓮のキングサイズのベッドの上で  
キョーコは蓮のシャツを着せられていた。  
蓮が心配そうに覗き込んでいる。  
「あ、私・・・・・・」  
我に返り、思い出すと赤面でお湯が沸きそうである。  
キョーコはシーツに顔を半ば隠して、蓮を見上げた。  
「ごめんね、無理させちゃって」  
「そ、そんなことないです!」  
すまなそうな蓮に慌てて両手を振ると、キョーコは微笑んだ。  
「私、ずっと欲しかったものをもらいましたから」  
 
※余談1  
「あああああっ、敦賀さん! お皿が割れてますよ!!!」  
「そのようだね。まぁヒビが入ってたし、古くなってたんだよ  
 俺が片付けるから触らないで」  
「(ヒビを入れたの間違いじゃ)・・・・・・これジノリじゃないですか」  
「まだあるから気にしない気にしない」  
 
※余談2  
「蓮〜♪ 昨日のキョーコちゃんの夕飯どうだった?」  
「美味しかったですよ。特にデザートが」  
「へぇぇぇ。いいなぁ。俺も作ってもらおうかな」  
「絶対ダメです」  
 

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