手渡された脚本と、作品の題材となった過去の映画のDVD。  
「はぁ…」  
重苦しい溜息が漏れる。  
 参考資料としてありとあらゆるAV。  
「こういうのって…誰に聞いたら…」  
うろたえて考えるが、監督からの一言を思い出した。  
“困ったときは蓮を使ってもいいから”  
 だが、こんな事を聞くのもと、右往左往する思考。  
手に握っていた携帯が鳴る。  
「わ…え・・?」  
慌て通話ボタンを押す。  
「も…もしもし?」  
ドキドキする鼓動。  
「こんばんは。監督から最上さんが悩んでいるって聞いて、思わず掛けちゃったよ。」  
やんわりと、電話先からも柔らかい空気が伝わる。  
「で、もしよければ台詞の読み合わせとかで、今から都合つくかな?」  
「迷惑でなければお願いします。」  
ぺこぺこと電話なのに頭を下げて、真摯に対応する京子。  
 “良かった〜”と安堵感が込み上げ、後ろから近付くモノに気付かない―  
 
 
いつものように、リビングでコーヒーを飲みながら悩みを聞き出そうとする。  
「ナニを…悩んでいたの?」  
ビクッと肩が震え、伺う眼差し―  
「もっ…モー子さんに聞いても答えてくれなくて。でも、誰に聞いていいのか判らなく  
て…」  
 仄かに赤面して上目遣いで見る京子。  
その眼差しに勝てるハズも無く。  
「こっ…この…足でするっていうのは…どういう??」  
ト書を指で辿り、反応を待つ。  
「す・・素股とは違うんですよね??あと膝の裏とかでもないみたいで…」  
京子の口からあり得ない単語が次々と出てくる。  
 蓮の理性のダムが警報をならし始める。  
「も…最上さん、どこでそういう事を?」  
落ち着け、落ち着くんだ。  
 奴とそういう仲ではないと、きっちり聞いている。  
女の子でも耳年増とか―  
京子の口から出る親友の名前は唯、一人。  
 吹き荒れる思考の蓮。  
「一応、参考にAVとかネットで調べてみたんですけど…」  
その言葉を聞いて、嬉しいような…寂しいような言い知れない感情が燻る。  
「足っていうから…やっぱり指を使うってことだよね。」  
ゴソゴソと鞄の中から、パステルカラーの性器を模したものを取り出す京子。  
「―ッ!?」  
俺は監督からナニを試されているんだ?  
 そんな言葉がぐるぐると回る。  
いや、きっと彼女への理性を試されている―  
 
「ココを、指でどうするんでしょう…」  
色々と考えている京子。  
 しかし、突っ込む所はそこではない。  
「も…最上さん、ソレは誰から…?」  
「えっと…監督から、イメージトレーニングとか実技方面に活用するように…って…」  
おずおずと、足で撫でさすろうとすると、足の重みでコロンとそれが床に転がる。  
「わわ…っ…置いて使うと駄目みたいですね…」  
純粋に困っている姿がまた、初心で確信犯な気分を抱かせる。  
口に出したい言葉を押し殺し、にっこりと微笑む努力をする。  
「じゃ…持っててあげるから。」  
コンと、根元を押さえ持ち、白い足がするりと絡む。  
「っ…と…」  
ゆっくりと指で挟みこもうとすると、冷たさに気付く。  
 そのまま動かそうとすると巧く滑らせる事が出来ない。  
「わ・・っ…」  
色々と行動する度に、表情がくるくると変り、足を動かすたびに覗く太もも―  
ごくりと、生唾を飲みたくなる衝動。  
「うまく滑らせれないなぁ…」  
まじまじと観察をして、どうしようと純粋にアレコレ考えている京子。  
 誘惑しているつもりもないのに、誘惑されていると思いたくなる蓮。  
「最上さん…コレがどういうものかは・・?」  
きょとんとした表情で、  
「男の人の“模型”だって聞きましたけど?」  
さらりと答えられ、その言葉が胸に刺さる。  
そして、我慢していた言葉が口に出てきそうになる。  
「監督は見えないところもリアルに撮るって言って無かった?」  
「え?」  
即席で告いだ言葉。  
少し考え、ぐっと力を込める。  
「それって…敦賀さんと…本当にそういう事・・を?」  
「そう。」  
もう少しで陥落すると睨んでいる。  
 うろたえる表情。  
「いずれこういう事も知らないといけないんだし…多分、監督の実技方面っていうのはそう  
いう事だと思うんだけど…」  
下心を隠して、にっこりと微笑めたかどうか、定かではない―  
 
「お・・お願いしてもいいんですか?」  
伺うような不安な表情を浮かべる京子。  
 危機感の無さが勝利の鍵とは言うまでも無く。  
 
仄暗いベッドルーム。  
 ぎしりと二人分の体重で軋む。  
「あぁ…そうだ。」  
サイドボードに用意した蝋燭に火を灯す。  
 ゆらゆらと陰ろう明かり。  
幽玄でいて艶めいた肌の色。  
「ほ…本当にいいんですか?」  
おずおずと尋ねる京子に対して、こっちがその言葉を言うはずなのにと苦笑する蓮。  
「じゃ…」  
一度背中を向け、小さく深呼吸。  
 早くなる動悸を落ち着かせ、役へと入る。  
その仕草を感じ取り、自分もスタンバイする。  
   
ギシッとベッドが軋み、するりと首筋に滑らされる腕。  
 ゆっくりとボタンを外していく指先。  
「抱きしめても…?」  
小さく囁くと、ぴくりと反応する。  
「野暮ですぇ?」  
するりと絡めようとした腕を外され、着ていたシャツをはだけられる。  
 艶めかしい視線と、揺らめいた蝋燭の明かりが余計に淫靡さを醸し出す。  
カチャリと、ベルトのバックルを外し、ジッパーを下ろす。  
そろそろと土踏まずで下着の上から撫でさする。  
 その時に感じた感触で、びくりと反応する。  
「−ッ」  
熱くて固い物に気付く。  
役の仮面が剥がれ落ちそうになりながら、ゆっくりと下着から形を現したものを曝す。  
「・・っ・…」  
手で触れ、そのまま自分の足の指で恐る恐る根元を挟む。  
「どう…したの?」  
判ってて尋ねる蓮。  
「はっ…恥ずかし…っ…」  
よく見ると顔が赤面している。  
 少し目に涙が浮かび、うるうるとした視線で見つめてくる。  
ビクッと血液が集中する。  
「や…っ・・」  
足から伝わる固さと熱に戸惑う京子。  
「ほら…少し動かしてご覧。」  
耳元で囁いて駄目押しをする。  
 低く、甘い声。  
陥落させる為だけの―  
 
恐る恐る動かしてみる。  
 固く熱いのに、血管の筋張ったものの感触が指に当たる。  
ただ擦っているだけで、自分の中にも疼きを覚えた京子。  
「“模型”との違いが判った?」  
クスクスと笑いながら、白い太ももを撫でる。  
「ぁっ…や…っ…」  
温かい手が触れて和えかな声が漏れる。  
 擦り上げていて、僅かに水音が響く。  
クチックチッと先走りが指にからみ動く度に鳴る。  
「…っ…」  
恥ずかしさで背けた眼差しを蓮に向ける。  
 僅かに息が乱れ、苦悶しているような表情。  
その表情を見て、さらに疼きが熱くなる。  
 ふと、枕もと付近に“模型”と呼ばれた物。  
試しにスイッチを入れてみる。  
 低音を嘶かせて振動する事を確認し、小さく笑む。  
自分の性器を京子に嬲られ、無用心になったスカートの中へ―  
 
ショーツの上から来る振動に、ビクリと身を震わせる。  
「な…っ…つ…敦賀さ…っ…」  
ナニがなんだか判らない京子。  
 つぅと、ショーツの間に先端を滑らせ、ラインをなぞる。  
「ひゃっ…あ…っ・…」  
ビリビリと、脊髄を駆ける電流。  
「足がお留守になっているよ?」  
スカートを押し上げ、ナニをされているのかを見せる。  
 ショーツの中に入り込んだパステルカラーの模型。  
「こっ…これ…や…っ…」  
「嫌?…本当に?」  
つぅと、ショーツを上から指でなぞる。  
「んんっ…」  
指が布越しで触れる熱でも声が漏れる。  
「湿っているのに?」  
グイと、スイッチを目一杯上げ、ぷつりと尖った場所に押し付ける。  
「−ッ!!ぁ…やぁぁっ…はぁっ…」  
逃げようとする腰を抱え、追い詰める。  
「んっ…あっ…やあああああっ!」  
足が震え、声が突き上げてくる。  
増大する波に何かが突き破る刹那。  
「あ…はぁああっ」  
緊張したように強張った肢体。  
透明な飛沫がピシャっとシーツに染みを作る。  
「あ…あ・・っ…」  
くたりと脱力し、蓮を見上げる。  
「これは、こういう事をする模型なんだよ。」  
クスリと笑い、脱力している京子の服を寛げていく。  
 模型を持ち上げ、ブラの上から乳首に淡い刺激を送る。  
「つ…つるが…さっ…」  
うなじに口付け、耳朶を甘噛みする。  
「いや…?」  
まっすぐに見つめられ、嫌といえない状態に追いやる。  
「い…意地悪・…っ…」  
合図のように口付ける。  
 お互いの口腔内を嬲り合う激しさ―  
 
飲み下せない唾液が唇の端に零れる。  
 プツリと、胸の緊張が外され、模型の緩慢な刺激を受ける。  
「感じてる?」  
聞かれる言葉に赤面して顔を背ける。  
 その態度が楽しくて、ついついスイッチのボタンを強にして反応を見る。  
「きゃ…んっ…」  
ちゅっと、空いている片方の乳首に吸い付き、舌先で嬲る。  
 ふるふると揺れる乳房の反応。  
「もっと…大きくしてあげるからね。」  
にっこりと京子に微笑む蓮。  
「はっ…破廉恥ですぅぅっ…」  
泣きそうになりながら答える京子をもっと虐めたくなる。  
「嫌ならやめるよ?」  
数分の間があり、小さい呟きが耳にはいる。  
「…で…」  
「聞こえないよ?」  
目じりから一滴の涙。  
「やめちゃ…嫌…っ」  
言い終わるか終らないかで、深く口付ける。  
 唇をずらしながら呼吸をし、深く絡みあう。  
「っ…はっ…っ…」  
乱れた呼吸を整えようと、口元を手で覆う。  
充分に濡れそぼった蕾。  
 くちゅりと、指を挿し入れる。  
「んっ…」  
異物の侵入に身体が少し強張るが、探る様に内部を侵略していく。  
「痛い?」  
差し入れた指をきゅうきゅうと小気味いいくらいに締め詰める内壁。  
 ゆるく首を振り、否定する。  
グイと、足をM字に開かせ、そのまま自分の楔を打ちつける。  
「―――ッ!!」  
痛みを叫ぶ声は唇を重ねられて空を切る。  
ゆっくりと動き、内壁の感触を味わう。  
「大丈夫?」  
涙目で睨み、  
「大丈夫じゃない…って…言えば…やめれるん・・です・・か?」  
涙を拭い、  
「やめないよ。ずっと欲しかったんだから。」  
グッと深く突き入れ、小さな悲鳴が喉から漏れる。  
 チュッズチュッと水音が響き、二人の息遣いとリンクする。  
 
「っ・・はっ…んっ…」  
キュキュッと、肉壁が締り、楔を熱くさせる。  
「はっ…い…良い?」  
疼く腰の痛みと、突き抜ける曖昧な快感で、ワケも判らずに頷く。  
 腰を掴まれ、これ以上にないくらい肉壁を抉り、コツコツと子宮口に響く先端の固さ。  
「あ・・っ…はっ…ぁぁっ・・」  
「−ッ!!」  
ドクンと、肉壁内に満たされる熱い飛沫。  
「ぁっー!!」  
熱さで限界まで押し上げられ、ぐったりとする。  
 小刻みに呼吸する音が響き、ゆらゆらと動く火影。  
グイと、四つん這いにさせ、そのまま何も言わずに後ろから貫く。  
「――ッ!!や…まっ…」  
拒否の言葉を聞こえない振りで、自分の欲望を満たすままに腰を振る。  
 サイドボードにあった蝋燭。  
「…我慢…できるかな?」  
スイと、蝋燭が違う高さに行き、明かりの角度が変る。  
ズンと深く突き入れられたときに、背中にポタリと熱いものが落ちてくる。  
「――っ!熱っ・・」  
抜き差しを繰り返しながら、最奥を突くときにポタリとまた一滴。  
 熱さと、気持ちよさが入り混じり奥底でジワジワとしたものが燻る。  
「ココ…凄く締まって気持ち良いよ。」  
耳元で囁き、更に溶けた蝋を背中に垂らす。  
「あっ…ア…ンッ…」  
ポツポツとシーツに淫らな水溜りが出来、じゅぷじゅぷと濃密な水音が響く。  
一定間隔で突き、蝋を垂らすと、熱さとは違う嬌声が漏れ聞こえる。  
「気持ち…良い?」  
グンと子宮口を突き、パタパタと滴らせる蝋。  
「はっ…ンッ…も…もっとぉ・…っ…」  
「いやらしい子だね、京子は。」  
手にもっていた蝋燭を吹き消し、更に深く抉る。  
 突き上げる衝動と和えかな悲鳴。  
ぎゅぅぎゅぅと擬音が聞こえてきそうな締め付け。  
「も…い…イっちゃ・・――ッ!」  
ビクビクと痙攣を起こし、くたりとベッドに沈む。  
キツイ締め上げに誘発されて射精する。  
うっすらと汗で張り付いた乱れ髪を整え、意識を手放した京子を見つめる。  
「これから…もっと楽しもうか。」  
 
クスクスと笑いながら、育成計画が幕を開けた―  
 

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