今日は14時からテレビ夕日で歌番組の収録がある。  
 俺は本社に用事があるという祥子さんと別れて、控え室が並ぶエリアを歩いていた。  
 基本的に他の芸能人になんかに興味はねーが、扉の横に張り出された名前をついつい見ちまう。  
 って、別に誰かの名前を期待してるわけじゃねーからな。  
 こういう楽屋には格付けがあって、同じ芸能人でも人気と知名度によって天と地ほどに扱いが変わる。  
 CDセールスチャートの上位を独走する俺様には、防音・音響設備の整っただだっ広い部屋が用意されてるが、  
 そこそこのやつならそこそこの個室、鳴かず飛ばずの小者ならまとめて大部屋に放り込まれる。  
 誰がどのへんの地位にいるのかを知りたければ、ココに来るのが手っ取り早いってわけだ。  
 
 俺がさしたる目的もねーままぶらぶら歩いていると、廊下の向こうから3人組の女が現れた。  
 名前は知らねーが、どっかで見たような気がする。  
 そうだ、確かアイツと同じ長編ドラマで共演している女優か何かだったはず。  
 それに気づいた俺は、そいつらの会話に聞き耳を立て……じゃねーや、  
 勝手に耳に入ってくるピーチクパーチクうるせー会話を、たまたま偶然聞きたくもねーのに聞いちまった。  
 
   「…………結局ミサも明日から地方ロケに行くことになったんだ。で、いつ帰ってくるの?」  
   「あたしは10日。主演級の役者さんは最長で3週間も向こうにいるんだって」  
   「それって京子ちゃんもだよね? せっかく仲良くなったのに、そんなに長いこと会えなくなるんだ〜。  
    ミサばっかりズル〜イ。いいな〜、アタシも行きた〜い」  
   「へへーっ。ちゃっかり仲良くなってきちゃうもんね」  
   「そういや京子ちゃんと言えば、あの噂って本当なのかな。ほら、あの……」  
 
 は? キョーコが何だって?  
 気になったのに、俺に気付いた瞬間、そいつらの会話はピタリと止んだ。  
 顔を赤らめて小さく会釈すると、きゃーとかなんとか言いながら小走りでどっかに行っちまいやがった。  
 
 キョーコが何なんだよ。  
 まあ、どうせアイツのことだから、メルヘン思考と突飛な行動でまた騒ぎを起こしただけだろ。  
 くだらねー内容に決まってんだ。  
 俺は全然気にしてねーぞ。  
 
 気にしてねーからな。  
 
「と言いつつ来てんじゃねーよ、俺」  
 お笑い好きが高じて覚えた一人ツッコミも、今はひたすらむなしいだけ。  
 それでも言わずにはいられなかった。我ながら自分の行動がワケわかんねー……。  
 
 目の前には『京子 様』と書かれた紙が貼られている。  
 この扉の先にあるのはもちろんアイツの控え室。ランクで言うと上の下くらいか。  
 ちっ、キョーコのくせにいい部屋貰ってんじゃねーよ!  
 ……ま、アイツもそれだけがんばってるってことだよな。  
 さすがは俺の幼なじみ。  
 最近はそこそこ見られる顔になったし、明日から地方ロケってんなら、  
 業界の先輩としてちょっとだけ激励してやるのもいいかもしれねー。  
 ほんとにちょっとだけ、だけどな。  
 
 コンコン。  
 
 ノックしてしばらく待ってみたものの、返事はおろか物音一つしなかった。  
 そりゃそうだよな。脇役の女が休憩だからって、主役級のアイツまでそうとは限らねえ。  
 ……自分の楽屋に帰ろうかな。  
 いや、すぐにアイツも上がる可能性はゼロじゃねーはず。  
 幸い俺の撮りまで時間はあるし、しばらく待ってみてやってもいいか。  
 そう考えて、俺はアイツの控え室の扉を開けた。  
 
 にわかには信じられねー話だが、局の控え室は外から鍵がかけられねーようになっている。  
 もちろん内側から施錠することは可能だし、鍵穴もあるが、その鍵を渡されたことは一度もねえ。  
 時間で区切って不特定多数の人間にあてがわれる部屋は何百とある。  
 それらをいちいち管理するのが面倒だからだろうが、不用心にもほどがあると俺は思う。  
 でも、ま、貴重品は部屋に備え付けの金庫に入れときゃ楽屋荒らしの心配もいらねーし、  
 それでも不安ならクロークに預けときゃいい。  
 唯一心配なのは盗聴器や隠しカメラを誰でも仕掛けることができるっつーとこだけだが、  
 楽屋に入ってすぐにソレを探すクセがついちまった俺には関係ない。  
 いつもは不満で仕方がなかったことも今日ばかりは感謝しねーと。  
 アイツの控え室の前で、いつ戻ってくるのかわからねー主を待つのは俺のプライドが許さねーし、  
 通りすがりの人間に見られて変な誤解をされても困るしな。  
 つーことで、勝手に入らせてもらうぜ。  
 
 
 中は10畳ほど和室だった。入ってすぐの場所に段差があり、靴を脱いで上がるようになっている。  
 土間の端にはナンバーが自由に設定できるダイヤルロック式のロッカー型金庫、  
 座敷の奥には全面鏡張りの化粧台があって、ほかに調度品と言えばテレビと小さなテーブルだけ。  
 うん、まあ普通の楽屋だな。  
 
 俺は10分以上待たされるようなら諦めるつもりだった。  
 俺にだってアイツよりも広い楽屋が用意されてるし、茶菓子も出ねえ場所に長居してもしょうがねーもんな。  
 自分に言い聞かせながら待つこと18分。  
 急に廊下に人の気配が増えていって、誰かが扉の前で立ち止まった。  
 ドアノブがガチャガチャと鳴って……。  
 
「よお」  
「――――!?」  
 
 キョーコは俺の顔を見るなり固まった。  
 なんだよ、人がせっかく会いに来てやったのにその反応は。  
 俺は不破尚だぜ? 芸能界の大先輩で、しかもトップセールスを誇るミュージシャンの。  
 
「なにしに来たの?」  
 なんつー凶悪なツラをしやがるんだ。てめえそれでも芸能人かよ。  
 だが、俺も負けじとふてくされた顔で言い返す。  
「用事がないのに会いにきたら悪ィのかよ」  
「別に。だけど、私、あんたの相手してる暇ないから。用事がないなら帰ってくれる?」  
「でかい口をたたくようになったな、オマエ」  
 追い返されてたまるかとムキになって、俺は畳に上がろうとした。  
 それをキョーコは必死になって制止しようとする。  
「ちょっと! 帰れって言ってるでしょ」  
 おいおい何焦ってんだよ。見られちゃ困るものでもあんのか。  
「帰ってったら! 迷わ――」  
 キョーコの言葉は扉を叩く音に遮られた。  
「やばっ。来ちゃった! ちょっと、あんたココに入ってて。絶対物音を立てんじゃないわよ!」  
「ちょっ! 待てコラ何しやがっ――」  
 俺はクローゼットの代わりにも使用される大型のロッカー金庫に押し込まれた。  
 抵抗したのに体は動かねーし、声を出すこともできなかった。  
 何だよこれ……。『何か』に全身を押さえつけられてるかのようなこの圧迫感は!  
 
 ロッカーの戸が閉まり、カチャリと変な音がした。  
「――――っ」  
 あのアマ、鍵をかけやがった!  
 あいかわらず声が出ねーから、俺は仕方なく外がのぞける切れ込みに目線をあわせた。  
 
 キョーコはドアの前にいた。  
「今、開けまーす」  
 さっきまでの不機嫌なものとはうってかわった柔らかい声。  
 誰だよ。この不破尚様を差し置いてアイツが歓迎する相手って。  
 もしかして男か?  
 キョーコなんぞと密会しようとする物好きがいたとは驚きだな。  
 俺は好奇心に負けて、その物好きの顔を見てやろうと心に決めた。  
 
 扉の向こうから現れたのは――。  
 
「争うような声が聞こえたけど、誰かいたの?」  
 
 ――っ、っ、つ、敦賀蓮っ――!?  
 なんでコイツがキョーコの楽屋に来んだよ。  
 たかだか1回ドラマで共演しただけだろ、事務所が同じなだけだろ、  
 俺は認めてねーが芸能界の頂点に君臨するイイ男なんだろ!  
 それがなんでこの色気もクソもねー女の楽屋に!?  
 俺の驚愕をよそに、キョーコはヤツを楽屋に招き入れ、内側からドアを施錠した。  
 
「だ、だ、誰もいませんよっ。電話があっただけですっ」  
「ふぅん、電話ね。誰から?」  
 てめえ何すごんでんだよ。  
 キョーコが誰と話していようが関係ねーだろ!  
 おまえも何か言ってやれ、キョーコ。  
 心の中で煽りたてるものの、キョーコに届くはずもなく、アイツの口を付いたのは予想外にしおらしい言葉だった。  
「使ってもいないサイトの利用料を請求されたんです。  
 いきなり怒鳴られるし、怖くて、負けちゃいけないと思って……」  
「そうか、それは怖かったね」  
 キョーコの泣きそうな顔をみるなり、般若から菩薩の顔に変わる敦賀蓮。  
 サムっ。  
 単純だな、あんた。そんなミエミエの嘘に騙されやがって。  
 そんなんでよく実力派俳優なんて言われてるな。やっぱりてめえは顔だけの俳優だぜ。  
 声にならない罵詈雑言を並べ立てていたら、ヤツがこっちを見た。うわっ!? やべぇ、気付いたか?  
 しかし、ヤツはすぐに視線をそらした。  
 ふー、危なかった。  
 
 ……って、何で隠れる必要があるんだ、俺。  
 
 
「ドラマの調子はどう?」  
 二人は座敷に上がらずに、縁に肩を並べて座った。  
 なんだこの親しげな雰囲気は。なんか……ムカツク。  
「はいっ、おかげさまで順調です。だからちょっとだけ多めに休憩もらっちゃいました」  
「そう、良かった。じゃあ……しようか?」  
 
 はぁ? しようって、何を。  
 まさか――っ、何ってナニ? おいおい、アンタどんな趣味してんだよ。まさかキョーコと?  
 
 だが、俺の予想を裏切らず、敦賀蓮はキョーコを部屋の壁に押し付けると、  
 唇を奪い、たくし上げたスカートの中に手をのばしていきやがった。  
「はぁ、あはぁっ、ん……。つるがさ、だめ、――ひゃん!」  
 
 !!!?  
 すんのか?  
 今、ココですんのか?  
 ちょ、待てよキョーコ。よがってねーで、おまえは嫌がれ。  
 どうせこの男のことだから、女と見れば見境なしに楽屋に連れ込んでヤリまくってるに決まってんだ。  
 おまえが好きこのんでその相手をしてやる必要なんてねーんだよ!  
 嫌がれよ、抵抗しろよ、お得意の心霊現象を起こしてその手を振りほどけ!  
「だめっ。時間、ないもん」  
 ほら、キョーコもそう言ってんだし、いいかげんその手を離せスケコマシ!  
「休憩はいつまで?」  
「メイク直しがあるから1時半には……」  
「大丈夫。30分もあれば充分ヤれる」  
 ヤれるって、てめ、もしかして早漏かよ。  
 ……じゃなかった、突っ込むところを間違えた!  
 おいコラ、敦賀蓮! 俺のモンに何しようとしてくれてんだよっ!  
 ちくしょー。殴りてえ。こっから出てって、二目と見られねーツラにしてやりてえ。  
 なのに金縛りがとけなくて声も出せねー。う”がーっ、むかつくっ!!  
 
「ちょ……、まって! やだ、つるがさん、はふぅっ」  
 俺がこの部屋にいるせいか、キョーコの拒否りかたは尋常じゃねえ。  
 なのに、ヤツはキョーコの抵抗をものともせずに口をふさぎ、パンツを膝まで下ろし、  
 まだ十分には潤っていないキョーコの****にいきなり挿入しようとしている。  
 
 ――でかっ、黒っ!!  
 スラックスから取り出されたソレを見た瞬間、俺の頭は衝撃で真っ白になった。  
 そりゃ190cmもあれば***もそれなりにでけえような気はしてたけどよ、  
 そそり立ったヤツの***はどう小さく見積もっても20cmはある。  
 おまけになんだその色は……。どれだけヤリまくってりゃそんな色になんだよ。  
 ま、負けた。  
 そりゃあ抱かれたい男ナンバー1にも選ばれるわ。  
 なんだこの敗北感。  
 
 …………。  
 
 納得してどうすんだよ俺っ。がんばれ俺。あんなのが何だってんだ。  
 でかけりゃいいってもんでもねーよ。男ならテクだろ! これには俺だって自信があるぜ。  
「ごめんね。時間がないからこのまま入れるよ」  
「やぁっ、ダメ……、おくすり飲んでな、……!?」  
 待て待て待て待てぇえっ!  
 生かよ。生なのかよ。  
 俺だってゴムの1個や2個、常備してるぜ。ってか、普通ちゃんと付けるだろ。  
 紳士と言われてる男が生って、そりゃねーだろうがよ。  
 俺がテンパっている前で、ヤツはキョーコの片足を上げさせると剥き出しの***をぶち込みやがった。  
 
 キョーコは嫌がるかと思いきや。  
 
「はぁあぁん。イぃっ! もっと、もっと奥に、キて、きてぇっ!!」  
 
 うっわ。何その反応。  
 ここまでの流れで多少は想像がついてたが、キョーコ、おまえ、俺の知らねえ間に女になってたんだな。  
 あんなでけえものを挿れられて、痛がるどころか腰を振ってよがってやがる。  
 1回や2回の経験じゃこうはならねえ。  
 はっ!  
 もしかして、コイツとはもう何度もヤってんのか?  
 あんなにでけえ***を突っ込まれても悲鳴を上げねえのは、あのサイズに慣らされてるから。そうなのか?  
 キョーコはAVばりに声を荒げてヒィヒィ喘ぎまくっている。  
 敦賀蓮はこれまたAV男優ばりのお宝でキョーコを突き上げる。  
 やべえ、なんかムラムラしてきた。キョーコのくせに、なんでこんな色っぽい声が出せるんだ?  
 って、俺も夢中になって見てる場合じゃねーよ!  
 幼なじみと大嫌いな男がヤってるところを見て興奮するなんて、俺は変態か?  
 
 興奮したり落ち込んだりと忙しい俺をそっちのけにして、あいつらはどんどん盛り上がっていく。  
「すきっ、つるがさ……すきぃ! はうぅん! はぁ、んふぅっ、ああっ、ソコ。ソコがィイっ!」  
「俺も、キョーコが好きだよ。キョーコだけを愛してる。キョーコは?」  
「わたひも、あいしてりゅ。ひゃぅっ……、らから、もっと、ひゃん! わらひを、めちゃくひゃにシてぇっ」  
「言われなくてもっ」  
 ヤツの首にしがみついたまま、キョーコの躰はガクガクと揺すぶられる。  
 大きく開け放たれた口からは、より強い快楽をねだる言葉ばかりがこぼれる。  
「キョーコ、そろそろじゃない?」  
「や、あぁっ、ィクっ! やだ、はぁっ、あふぅっ――っ」  
 内股をビクビク引きつらせたと思うと、キョーコの躰が弓なりにしなった。  
 持ち上げられた方の足の先がピクピクと小刻みに痙攣している。  
 まじかよ、こんな短時間でイキやがった。  
 どんなテク持ってんだよ、この男!?  
 
「今日はやけに感度がいいね。勝手に一人でイっちゃうなんて、いつもならお仕置きものだよ」  
「だって、つるがさん、ぬれてなぃ……のに、入れてくるんだもん」  
「ごめんね。もしかして痛かった?」  
「っんん、キモチいぃ……れす。らから、もっと……」  
「了解。こんどはもっと激しくしてあげるね」  
 !?   
 まだやんのかよ。  
 てゆーか、キョーコのやつ、完全に俺のことなんて忘れてやがるな。  
 今さら思い出されたところで気まずいだけだろうけどよ、  
 そろそろ俺もこの光景を見せつけられるのは勘弁して欲しいんだけど?  
 ガキの頃から俺の後ろをくっついてきてた幼なじみが女になっていたと知っただけでもショックはでかいのに、  
 何が楽しくてこの男との濡れ場を見せつけられなきゃなんねーんだ。  
 憤死しちまいそうなほど頭に血がのぼっているのに、  
 俺の***までもがビンビンに反応していて、それが余計にムカつくぜ。  
 
 
 やつらは靴を脱いで座敷に上がった。  
 敦賀蓮は***を天井に向かって屹立させたまま足を延ばして座り、  
 手招きされたキョーコは、ヤツに導かれるまま後ろ向きに大股開きでまたがる。  
 その腰がどんどん落ちていって……。  
 くちゅっ、じゅぷっ。  
 そんな卑猥な水音を立てながら、キョーコのナカにヤツの***が飲み込まれていく。  
 着衣でヤってんのに、なんでこんなにエロいんだ。  
 ちくしょう。***が疼いてたまんねーよ。  
 右手を使ってでもヌキたいのに、やっぱり体が動かねーから、俺は生唾を飲むことしかできなかった。  
 
 二人の情事はまだ続いている。  
「スカートの裾、汚さないように持ってて」  
 繋がった二人の姿が鏡に映る。  
 壁に押し付けられているときは重なった体に隠れていたおかげで、  
 俺はまだ頭のどっかが素股でヤってんじゃないかと思い込もうとしていたが、  
 大開帳したキョーコの****に敦賀蓮の極太***が出入りする生々しい光景までもが鏡に映し出され、  
 かすかな期待は粉々にうち砕かれた。  
 キョーコを捨ててから早二年。  
 後悔とキョーコへの想いから、その罪を贖いたいと考え始めた矢先だったのに。  
 まさかその想いにこんな形で引導を渡されるとは……。  
 けなげに尽くしてくれたキョーコを踏みにじったことに対して、今頃になって罰が当たったんだろうか。  
 
 ヤツの手がキャミソールをまくり上げていく。  
 染み一つないきれいな白い肌。  
 これがもうヤツのものなのかと思うと、悔しさよりも先に羨ましさがこみ上げる。  
 そうだよな。あのとき俺がキョーコの手をふりほどかなかったら、  
 ここでキョーコとヤっていたのは俺だったかもしれねーんだよな。  
 俺はヤツに突き上げられてアンアン啼かされるキョーコから目をそらすことができず、  
 かといって正視することもできず、脳内でヤツの存在を自分に置き換えた。  
 無骨な手でブラを上にずらし、豊かな胸の膨らみを鷲掴みにする。  
 ……ん?  
 違和感が俺を現実に戻した。  
 キョーコ、おまえそんなに胸がでかかったか?  
 俺の知るおまえの胸は背中と変わらねーくらい真っ平だったはずだよな。  
 いつからそんなエロい胸になったんだ。  
「胸、また大きくなったんじゃない?」  
 俺の疑問を代弁するかのようなヤツのセリフ。まさか俺の思考を読んだんじゃねーよな。  
「……んっ。このまえ、あはぁ、んふぅっ、いしょぅさんに……Dって、いわれた」  
「それは俺のおかげかな」  
「わかんな……っ。でも、コレはすきぃっ!」  
 掴まれた胸をゆさゆさと揺すられて、下からは***に抉られて、なんて顔してやがんだよ。  
 その顔、マジでクる。  
 ムカツク敦賀蓮の存在を消して俺がハメたつもりで想像すれば、この顔と声だけで抜けそうだ。  
 手さえ動けば今すぐにロッカーの中ででも……。  
「ああっ、あっ、あっ、あんっ……」  
 下からの律動にあわせてキョーコも腰を揺らしている。  
 くちゅくちゅという淫らな音に合わせて、切ない喘ぎ声が漏れる。  
 この業界に入ってそれなり遊んできた俺の目には、キョーコがかなりの場数を踏んでいるのは明らかだった。  
 もしかして、キョーコに限ってヤリ**なんてこたぁねーよな……?  
「ちゃんと鏡を見て」  
「やぁっ、はずかし……もん」  
「俺のがキョーコに食べられてるよ。まったく、君はどうしてこう食いしん坊なんだろうね」  
「つりゅがさんが……わはひを、こんにゃからだにしたんらから……」  
 乳首をこねくりまわしていた指が結合部のちょっと上にある小さな突起をつまんだ。  
「――――っう」  
「そろそろ一緒にイこうか」  
 そう言って、いっそう激しく腰を振る。  
「……はひぃ、はぁ、はぁん、はんっ」  
 キョーコはもう何も考えられなくなったのか、必死に腰振りに合わせて喘ぐだけ。  
 気持ちよさそうな二人の吐息が小さな部屋に充満している。  
「キョーコ、中で出していい?」  
「だめ……、いしょぅ、汚されたら、こまる……から」  
「ごめん、もう出るっ」  
 ヤツの体がブルっと震えたかと思うと、それきり激しかった律動がピタリとおさまった。  
 
「だめだって言ったのに……。敦賀さんのばかぁっ」  
「でも気持ちよかっただろう?」  
「ぅん」  
 同時に昇天した二人はほどなくして復活したが、俺はもうぐうの音も出なかった。  
 敦賀蓮は避妊もせずにキョーコに中出ししやがった。  
 取り出されたヤツの暗黒***はドロっとした白濁液をまとわりつかせ、粘っこい糸を引いていた。  
 ヤリすぎだ、てめーら!  
「キョーコ。お掃除して」  
 お掃除って、ソレを舐めろってことかよ。  
 表じゃ紳士ヅラしてても、ヤることはえげつねーのな。  
 って、キョーコは嫌がるどころか頬を染めて股間に顔を埋めてるしっ!  
 ヤツはヤツでキョーコのケツを自分に向けさせて、****に指を突っ込んでるしっ!  
「はふっ、はぁん……ひゃ、も、やめ……ひゃぅっ!」  
 ヤツの指がキョーコの****からぶちまけた****をかき出す。  
「だめだよキョーコ。せっかくキレイにしてあげてるのに、ぬるぬるが溢れてくるよ」  
「ひゃん! らって、つるがさんのゆび、きもひイィんらも……んふぅ、ぁはぅ!!」  
 キョーコはよがりながらも二人分の粘液で汚れた***の周囲を小さな舌でピチャピチャと舐める。  
 **をやわやわと手で揉んでその裏側まで舌を這わせ、  
 ヤツの***に手を添えて、裏筋をなぞるようにして舐め上げた。  
 舌の運びに迷いはない。キョーコのやつ、慣れてやがる。  
 いつもこんなことヤってんのか?  
「はぁっ、ぃイよ! あいかわらず、……上手だね」  
 唇で吸いながらくびれを一周し、キョーコは最後の仕上げとばかり亀頭にしゃぶりついた。  
「キョーコの顔にかけたくなったな。顔射してもいい?」  
「だめっ。メイクさんに怒られちゃう」  
「でも、キョーコをもっと俺で染めたいな」  
「全部飲んでさしあげますから、今はこれで我慢してください!」  
 キョーコは頬をへこませて、ちゅーっと先端を吸った。  
 お返し、とばかりにヤツはキョーコの****をクチャクチャと音を立ててすする。  
「も、やだぁ、……、はぁ、きもちよすぎっ。……っあん! おそぅじ、できな――」  
 
 まだ続くのかよ……。  
 ホントに勘弁してくれ。  
 つーか、てめーらそろそろ時間切れじゃねーのかよ。  
 と思っていたら、スラックスのポケットに入れられていたヤツの携帯が震えた。  
「ごめん。社さんからだ」  
 奉仕を続けるキョーコに断って、ヤツは通話ボタンを押して電話に出る。  
「……はい、キョーコの楽屋にいます。……、そうですね、15分後には必ず。はい、大丈夫です」  
「これから移動ですか?」  
「そう。15時から富士でバラエティの収録があるんだ。番宣のためとはいえ、苦手なんだよね」  
 
 ヤツが答えるのと、ドアがドンドンと叩かれるのはほぼ同時だった。  
「お取り込み中わるいんだけど、時間が迫ってるから、そろそろいいかしら」  
 ドアの向こうからキョーコのマネージャーらしき女の声。  
 見張りっスか? ごくろーさんです……。  
「はい、もうすぐ終わります」  
 キョーコは顔をあげて返事をし、「ちゃちゃとお掃除しましょうね」と言ってずぷっと深く咬え込んだ。  
 
「キョーコ、今夜……」  
 口内で再びヤツがイった後、二人は名残惜しげに衣服の乱れを改めた。  
 あれだけ激しくヤっていながら、二人の着衣に汚れはない。  
 手慣れすぎだぞ、敦賀蓮っ!  
「ダメ」  
 キョーコはヤツが言い終わる前に、これから続くはずのお願いを却下した。  
 何を言おうとしたのか知らねーが、ザマーミロ。  
「まだ何も言ってないよ」  
「お泊まりしないかって言うんでしょう? 私、明日から地方ロケなんです。  
 まだ準備していないから、帰ったら大急ぎで詰めなくちゃいけないんですからねっ」  
「俺は早上がりだから、キョーコが好きそうな服と下着を買っておいてあげるよ。  
 化粧品は俺の部屋に置いてあるやつを詰めればいいし、これで準備は問題ないね」  
「6時に羽田集合なんです。敦賀さんのお相手なんかしていたら身が持ちません」  
「移動に13時間かかるんだろう? 機内と車内でたっぷり寝られるよ。  
 だから、ね? 3週間分、キョーコを補給させて」  
「や、です……。敦賀さん、絶倫なんだもん」  
 絶倫って、やっぱりそうなのか、てめえ。なんとなくそんな気がしてたよ、ちっ。  
「キョーコが名器だから何度でもイケるんだよ。  
 でも、キョーコは嫌なのか。もしかしたら、俺は欲求不満になっちゃうかもしれないね。  
 そうしたら、俺、キョーコ以外の女の人に解消してもらうよ? それでもいいの?」  
「そんなの、やだぁっ! 敦賀さんは私のなの。ほかの人としちゃダメ」  
「俺もキョーコのものだよ。だから、ね?」  
「うう……」  
「ちゃんと空港まで送ってあげるから」  
「……夜は寝かせてくださいよ?」  
 おいっ! いつの間にか、こっちもその気になってやがるし!  
 それに何だ、名器って。聞き捨てならねーな。  
 ちくしょー。キョーコのことを捨てるんじゃなかった。  
 コイツがこんなにイイ女になるなんて、知ってたら捨てたりしなかったのに!  
 だけど、俺はモノでもテクでもヤツに勝てる自信はなくて、  
 俺自身にいたっては、過去の過ちがある分だけ圧倒的に不利なのはわかりきっている。  
「キョーコが俺を満足させてくれたらいくらでも眠らせてあげるよ。じゃあ、仕事が終わったら連絡して」  
「はいっ」  
 二人は楽しそうに今晩の予定を話しながら、部屋を後にした。  
 
 ……敗北感いっぱいの俺を残して。  
 
 
 俺はしばらくの間、金縛りが解けていることにも気付かなかった。  
 
 
 この後、俺は携帯から祥子さんを呼びだして助けを求めたが、  
 ダイヤルロックが解除できずに大騒ぎとなるのは、また別の話……。  
 
 
 
         ―― 終わりやがれ ――  
 

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