今日はキョーコが来る土曜日。蓮は無意識に上機嫌だった。
しかし今日は、少し遅いな…ちょっと心配になってきたところでチャイムが鳴る。
「待ってたよ、遅かったね」
「…こんばんわ」
入ってきたキョーコはなぜか暗い。
「どうした?何かあった?」
黙って首を振るキョーコ。
蓮の心配はますます募る。
キョーコは今まで、誰にも頼らずに生きてきた。辛いときほど否定する。
「何もないわけがないだろう?そんな顔をして…」
胸を痛めてキョーコの頬に手を当てる蓮。
キョーコの瞳はみるみるうちに涙が溜まり、一粒落ちる。
それを合図とするかのように、ぽろぽろと、次から次へと…ついにキョーコは号泣し始めた。
一瞬あっけに取られた蓮だが、わけもわからず抱きしめる。
結局キョーコは30分以上わんわんと泣き続け、そのまま泣き疲れて眠ってしまった。
最初は何事かと内心おろおろしていた蓮だったが、
しゃくりあげながらなんとか話した内容を解するに…
要するに。恋人を残して若くして病気死んでしまう悲劇ヒロイン、の台本をもらい、
すっかり感情移入してしまったということらしい。
泣き腫らした目ですやすや無邪気に眠るキョーコを見つめながら、
今日はお預けか…朝まで待つか。
深いため息をして苦笑する蓮だった。