「ただいま帰りました〜」
誰もいない部屋に虚しく響き渡る声。
そうだった、敦賀さんは今日から地方ロケで3日間留守なんだ・・・。
敦賀さんと付き合う様になって、一緒に暮らし始めて一ヶ月余り。
一人で過ごすには広すぎる部屋が余計に淋しさを募らせた。
とりあえず、シャワー浴びよう。
脱衣場で服を脱ぎ、熱いシャワーを首筋に当てる。
敦賀さんはあの時、よく私の首筋を攻めてくる。
そこが私の“スイッチ”だと知っていって、
キスをしたり、舌をそっと這わせたり、そのまま耳たぶを軽く噛んだり。
そうされると、身も心も蕩けそうになるの。
首筋だけじゃない、私の身体は全身くまなく敦賀さんの色に染められていた。
敦賀さんの手で“女”になったあの日から、その色は日増しに濃くなっている。
身体の奥の甘い疼きを誤魔化そうと、シャワーの勢いを強くした。
昨夜あんなに愛し合ったのに、あれから24時間も経っていないのに・・・・。
何だか自分が凄く淫らになった様で、微かな罪悪感に苛まれた。
浴室を出て、パジャマに着替え、ドライヤーで髪を乾かす。
今日は朝迄パジャマ着たまま眠れそう・・・、ふとそんなことを考えてちょっと可笑しくなった。
そうだ、冷蔵庫に何か飲み物あるかな?
冷蔵庫を開けると、敦賀さんの綺麗な筆跡で「キョーコの分」
というメモが貼られたスポーツドリンクのペットボトルがあった。
敦賀さん、優しいな――。
良く冷えたスポーツドリンクが、私の火照った身体に染み渡っていく。
今日は疲れたし早めに寝よう、そう思って寝室に向かった。
幾度となく敦賀さんに抱かれてきた場所――。
一人でこの部屋にいると、それぞれの夜が鮮やかに思い出されて、つい顔を赤らめてしまう。
そう言えばさっきから、何だか身体の芯が又熱くなってきたみたい・・・。
私、どうしちゃったのかな――?
気が付くと、私はパジャマの前をはだけ、自分の乳房にそっと触れていた。
敦賀さんがいつもしてくれることを、自分の手になぞらせようとする。
小振りな乳房を揉みしだき、中指と人差し指で乳首を挟み転がす様に・・・。
「あ・・・・・」思わず声が漏れる。
でも、自分で慰めた経験の殆ど無い私の手の動きは
ぎこちなくて、物足りなくてもどかしい。
もっと、もっと――何かに追い立てられる様に、
私の手はついに茂みに伸びようとした。
刹那、枕元の携帯が震えた――メール、敦賀さんからだ。
『ごめん、今仕事終わってホテルに帰ってきた。
キョーコは何してた?』
『敦賀さんのこと、考えてました』
流石に正直には言えなくて、そう返信するけど嘘じゃないわよね。
『俺もキョーコのこと、ずっと考えてた』
嬉しい・・・。凄く幸せな気持ち。と同時に身体の芯が又ジンと熱を増す。
『キョーコ、お願いがあるんだけど』
『何ですか?』
『キョーコの裸を写メールして欲しい』
私は絶句した。
だって、私の身体の火照りはさっきから一層激しくなり、もはや私は
パジャマを脱ぎ捨て、生まれたままの姿になっていたから。
やだ、何だか見透かされてるみたい――。
でも、写メールなんて恥ずかしすぎる、絶対無理よ。
『そんな、無茶言わないでください』
『見るのは俺だけなんだから、別にいいだろう?』
そんなやり取りを数回繰り返し、ついに私は折れた。
携帯のカメラのレンズを裸の自分に向けて、撮影ボタンを押す。
恥ずかしさの余り、ちゃんと映ってるのかろくに確かめず、敦賀さんのアドレスに送信する。
すぐに敦賀さんから返信が来た。
『視線逸らしちゃダメだよ、ちゃんとこっちを見て、撮り直し』
敦賀さんに言われるまま、私は新しい写メールを送信する。
『何で胸隠すの?折角綺麗なのに。もう一回撮り直し』
敦賀さんの注文は止まらない。
『次はもっと下の方映して欲しいな』
――何でこんな意地悪な人好きになっちゃったんだろう?
でも逆らえないの、大好きだから――。
身体の火照りと羞恥心で、おかしくなっちゃいそう。
その時、携帯に今度はメールじゃなくて電話の着信。
「キョーコ?」
「敦賀さん・・・・」
「素敵な写真ありがとう、ちゃんと保存しといたから」
「もう、敦賀さんのバカ・・・」
「写真のキョーコ、凄くそそるよ、まるでしてる時みたいないやらしい表情してる」
思わせぶりな間を置いてから、敦賀さんが言った。
「・・・・・・・もしかして、自分でしてた?」
「―――!!」
息を飲む私に構わずに、敦賀さんは続ける。
「キョーコ、冷蔵庫にあったポ○リ飲んでくれた?」
一瞬何のことか分からなかったが、すぐに思い当たった私は答える。
「ええ、お風呂上がりに戴きましたけど・・・」
「あれにね、キョーコの大好きな魔法をかけといたんだ」
「魔法、って――?」
恐る恐る聞く私に、彼が事もなげに答える。
「キョーコが気持ち良くなるお薬を入れたんだよ」
その言葉で全て納得がいった。あの飲み物には“媚薬”が入っていたのだ。
「今、どんな感じ?」
「身体が熱くて・・・・・変になりそうです・・・」
「どうにかして欲しい?」
「・・・・・はい・・・・・お願いだから助けて下さい・・・」
「じゃあ、俺の言う通りにして。自分ではどこまでしてたの?」
「・・・・・・む、胸を触って・・・・」
「下はまだ?」
「・・・・・・はい・・・・・」
「じゃあ触ってみて・・・・・・どう?濡れてる?」
そんなことは触る前から分かっていた。
熱くなったそこに手を伸ばすと、溢れ出した蜜が指に絡み付いてくる。
「あぁん・・・・」
「いやらしい声だね、その様子だと下の泉は大洪水かな?」
「あ、いや、言わないで・・・」
「下は触ってなかったって言ったのに」
「だって・・・・」
あなたのせいです、あなたが私をこんな風にしたんです・・・。
「そのまま、もう少し手前の方に・・・」
敦賀さんに言われるまま、手を動かす。
そこにはいつも敦賀さんが執拗に攻める肉芽があった。
「擦ってみてごらん」
敦賀さんの指使いを思い出しながら、言われた通りにする。
「あああぁーーーー!」
身体中を電流の様な快感が駆け巡った。
「気持ち良いんだね?」
「あ、そんな、はぁ、だめぇ・・・」
私は夢中になって敏感なそこを擦り続けた。
もう少しで達しそうになった、その時――。
「ストップ」
敦賀さんの声に思わず手が止まる。
どうして?後少しなのに・・・・。
「俺がいいって言うまで我慢するんだ」
「そんな、ど・・・して――?」
「簡単にイッたんじゃつまらないだろ?」
その後、しばらく敦賀さんの「いい」と「ストップ」に翻弄され続けた。
「お願い、もう、許してください・・・・」
このままじゃ気が狂いそうだった。
「さあ、どうしようかな」
じらす様な口調の敦賀さんと対照的に、私は泣きだしそうな声になっていた。
「お願い・・・・、お願いですから・・・」
「お願い、だけじゃ分からないよ、キョーコはどうしたいの?」
「・・・・・・イキたいです、お願い、イカせて――!」
「じゃあ、今度は指をあそこに入れてごらん。
中指と・・・・人差し指も入るよね?
それで二本の指を動かして、掻き混ぜる様に・・・」
「ひゃぁん、ぁあん、いい、いいのぉ・・・」
「自分のあそこの中はどう?」
「も・・・・・とろとろ・・・・で・・・す・・・」
「そこがいつも俺のモノを食べてる、いやらしいお口だよ」
「あぁ、そんなこと、言っちゃイヤ・・・・」
「イヤなんて言っても、本当のことだろう?」
敦賀さんの声と、まるで自分じゃないみたいな淫らな声と、
秘所が奏でるくちゅくちゅという、かすかな水音――。
凄い、もう、何にも考えられない・・・。
「あぁ、もうダメ、イキそう・・・」
「いいよ、イッて」
「はぁ、ああぁ、ん、ダメ、イク、イッちゃう――!」
何かに操られたように激しく指を動かした私は、痺れる様な快感に意識を手放した――。
少しして繋いだままだった携帯から、敦賀さんの呼び掛ける声が聞こえてきた。
「キョーコ、キョーコ、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい、私ったら」
「いや、いいよ、気持ち良かったんだね?」
「はい・・・・、でもやっぱり、敦賀さんにされる方が、ずっと気持ちいいです・・・」
「帰ったらいっぱい可愛がってあげるから、覚悟してて」
「はい、待ってます」
電話を切った私は、夢でも敦賀さんに逢えたらいいな、なんて思いながら眠りについたのだった。