はぁはぁと苦しそうに息を荒げるキョーコ。  
眉をひそめて必死に空気を探すようにしている姿が愛しい。愛しすぎて…  
この子のすべてを手にしたいと強く思い、いつも無我夢中で抱いてしまう。  
そして実際に得るのは渇望。  
まだ、足りない。もっともっと、キョーコが欲しい。一体俺はどうしてしまったのか…  
こんなに誰かを求めたことがなかった。だからどうしていいのかわからない。  
 
「キョーコ、大丈夫?」  
 
繋がって上から組み伏せた状態のまま、彼女の頬を軽く叩く。  
キョーコは「ん…」と小さく唸り、何度もゆっくりと瞬きをしながら目を開けた。  
 
「激しすぎたね、悪かった」  
 
襲ってきた強い後悔にさいなまれて、いたたまれない気持ちになってくる。  
小さくか細くて、そのうえ純粋な心を持ったこの少女を前にすると、  
自分が穢れていることを強く自覚する。  
 
「ごめんキョーコ」  
 
それでも―――この髪の一本一本も、この小さな耳も、瞼も、頬も、この唇も…  
誰にも渡したくない。一秒たりとも頭から消したくない。  
いつもいつも、手にしていたい。そう思いながらキスを落とす。  
すがるように唇を貪っていると、キョーコが何か言おうと声を漏らした。  
が、責める言葉が出るのが怖くて、無視して舌に吸い付く。  
 
「んー…ぅ…ん、つるが…さ…」  
 
強く胸を押し返されて、観念した俺は唇を解放してやる。  
が、その代わりにと首すじに吸い付いた。  
悔やむ心とは裏腹に、キョーコの身をよじらせる動き、その呻き声が妙に色っぽくて、  
さっき果てたはずのモノが彼女の中で再び力を取り戻していく。  
 
「やだ敦賀さ…ん…また…」  
 
キョーコの肌が再び桃色に染まっていく。  
彼女を女にしたのも、こうして色気を教え込んでいるのも他でもない自分なのに、  
俺はその彼女に翻弄されるかのようにまた我を失っていきそうだ。  
あるいは…この子にはもともとそうした「オンナ」の魅力が備わっていたのかもしれない。  
男を夢中にさせる魅力?  
そう思うとますます、自分の腕から手放せない。  
醜い独占欲がまた高まってきて、思わず力を込めて胸を揉む。  
 
「あ…ん…もぉ、つるがさんってば…一度で済んだこと、ないんだから…」  
「キョーコがイヤならやめるよ…もうしたくない?」  
 
舌の先で直線を描くように首すじを舐め上げ、耳まで登る。  
耳の形を覚えこむように丁寧に味わいながらそのまま質問すると、  
キョーコはくすぐったいのか身をよじりながら、俺をからかうようにくすくすと笑った。  
 
「イヤ、って言ったら、んふ…やめられるんですか?」  
「ほんとにイヤならやめるよ。キョーコが嫌がることは、したくない」  
「ふふ、じゃあ、イヤです」  
「ほんとに?」  
「…んー、ウソ、やめないでください。それに…」  
 
キョーコは目を覗き込んだ俺の両頬に軽く手を添えて優しく微笑む。  
 
「イヤなことなんて、されたことないです。敦賀さんにされること、全部好き」  
 
この笑顔には…もはやため息しか出てこない。  
 
「キョーコ…ダメだよ、あんまり俺を甘やかさないでくれ」  
「考えすぎ、です。それより…このまえのこと、OK、ですよ」  
「このまえのこと?」  
「このまえの…敦賀さんのおねだり、です」  
 
このまえ俺は、ふたりで出かけたい、と提案したが、キョーコはダメだと頑なに拒んだ。  
俺たちの関係はまだ公表していない。  
発表したい気持ちは大きいが、キョーコはまだ新人、いろいろと問題もある。  
ひとつひとつ、社長と相談の上で決めなくてはならない。  
デートひとつ取ってもそうだった。  
 
「社長さんに相談したら、むしろ仲良く歩いてるところを撮られるなら歓迎だろ、なんて言われて。  
 そういう問題でもない気がするんですけど…でも…敦賀さんとどこかに行きたいし…」  
「どこがいい?」  
「うーん、あまり人が多くないところってどこですかねぇ」  
「多くてもいいよ」  
「だめです。あぁ…ん…」  
 
そろそろ我慢できなくなってきて、少し腰を動かして反応をうかがってみる。  
キョーコのほうもまた濡れ始めてきたらしく、くちゅ、と小さく音が聞こえた。  
 
「ダメ?俺はいろんな人に、見て欲しいけどな、一緒にいるところ」  
「ゃあ、はぁ…ん…ダメ…ダメ、ですよ…まだ、ダメ、そのうち…ね?」  
「そう…じゃあ、そのうち、どこに行きたい?」  
「んー、遊園地、とか…」  
「絶叫マシーンとか?」  
「いえ、そういうのはいいんですけど…ん…観覧車、乗りたいです、敦賀さんと」  
「観覧車で、こういうこと、したいの?」  
 
ゆっくりと大きく腰を回す。  
キョーコの中は俺の言葉に反応してきゅっと締まる。  
いい反応だ…これだからつい、意地悪なことを言ってしまう。  
 
「やだ…もう、ちがいますっ!ただ乗って、空から…街とか…見たいだ、けぇ…はぁ、や、やだ…」  
「そっか…でもキスはしたいな」  
「観覧車で、ですかぁ?」  
「そう」  
「だめですよぉ、見えちゃいますもの」  
「誰も見てないよ」  
「見てますっ。敦賀さんは目立つんですから。…んー…ぁあ、ん…やだ…きもちぃ…ああっ!」  
 
キョーコの両足をまっすぐ伸ばして持ち上げて、下からゆっくりと突き上げる。  
激しく突き続ける時のように強烈な快感とは違うものの、  
なんともいえない心地よさが脳天を長く突き抜けていく。  
 
「じゃあ…一番上なら、誰からも見えないよ」  
「あ、ああっ…え…一番…うえ?…ゃあっ、あ、ん、んーーっ」  
「そう、一番、上」  
「ほんとに、見えない…なら、あ、ぃや、んぅ…だ、だめ、また…きちゃ、うぅ…っ」  
「じゃ、約束。観覧車の一番上で、しよう」  
「するって…ああっ、やだそん、な…っ、あ、あぁっ…ね、ねぇ…するって、キス、でしょう?あっ、やっ…」  
「さあ…どうだったかな」  
 
キョーコの中の締め付けが高まる。  
動きをさらに大きくすると、ぐじゅぐじゅと卑猥な音が耳に届く。  
 
「ん、ん、あぁっ!や、やだっ…キス…だけっ…あ、あ、あぁ、んっ!んーっ!」  
 
それ以上言わせないようにと唇を塞ぐ。  
そろそろイかせてあげようね、キョーコ…。  
奥まで行き着くよう両足を両手でしっかり持ち上げて、なるべくゆっくり…しかし大きく回しながら突き上げる。  
何度も何度も、徐々に突き上げを高くしていくと、キョーコの呻き声が迫ってくる。  
拒むかのように首を振り、必死に唇から逃げて息を荒げて喘ぐキョーコ。  
一番淫らで…一番魅力的な瞬間だ。  
 
「ん、んっ!んあ!や、やだっ、だ、だめぇ!まっ…待って!きちゃう、から、やめっ…!やめてっ!イヤ!イヤなのっ!」  
「嘘はダメだよ…イっていいから」  
「ゃあっ、あ、あ、ああっ!やだ、イっちゃうっ…!イっ…ちゃ…あ、ああっ!ああっ…―――!!!」  
 
乱れたキョーコを整えてやりながら、どこに連れていってあげようかと考えていたら、  
ようやく喋れるようになった彼女が突然我に返ったように話を戻す。  
 
「ね、ねえ敦賀さん、キスだけ、でしょう?」  
「なにが?」  
 
そうだ…海を見に行くのもいいな。  
 
「なにが?じゃありません!観覧車の話です!一番上でって…」  
「いやらしいキョーコがキスだけで済むわけがないじゃないか」  
「なっ!なんで私がっ…!敦賀さんでしょう?!」  
「俺はいつでもやめてあげる、って言うのに、続けさせるのはいつもキョーコだろう?  
 海にしようか、初デート。ドライブして、夕陽見て」  
「うぅ…いいです…けど…」  
「じゃ、明日は海で決まり。観覧車でするのは、またいつかのお楽しみってことで」  
 
実際には…きっとキスだけで一周終わるだろうな――そう考えて、ちょっと残念に思う。  
慌てふためいて身を起こそうとするキョーコを抑えて、キスで説き伏せながら。  
 

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