「監督! 待ってください!」  
撮影が終わった夜八時。  
新開は、スタッフに明日の撮りの大まかな指示をした後、スタジオを出ようとしていた。  
「どうしたんだ、琴南さん」  
「明日撮る私のシーンをカットするって、どういうことですか。私の演技にどこか問題でも  
あったんでしょうか?!」  
「慌てなくていいから、とりあえず鏡を見なさい。女優さんだろう」  
急いで着替えてきたらしく、スカートが斜めになり、綺麗な黒髪があちこちにはね上がっている。  
「す、すみません。いえ、でも、一言どうしても申し上げたいのですが!」  
撮影初日から琴南奏江という少女は、演技熱血を全面に出してスタジオ内を圧倒していた。  
若手では最近にないプロ根性を持っていて新開も割合気に入っているのだが、時折演技以上の  
領域に踏み込んでくるきらいがある。  
「社長から何かストップが掛かったんですか?」  
「宝田さ、宝田社長には今まで作品自体にまで口を挟んでもらったことはないね。あの人が選ぶ逸材だから  
配役にはある程度妥協はできても、一線はちゃんと守ってもらっているからね。  
どこの誰だろうと俺が作り上げる世界を壊される筋合いはない。勿論、君にもだ」  
垂れ気味の目が一瞬鋭くなり、奏江は口ごもった。  
「君の演技がどうのこうのの話じゃないんだ。脚本家と話し合って決めたことだから。明日は  
次のシーンに備えて温存していなさい。一つ出番が減るぐらいで映画での君の存在に影響はないはずだ」  
「……はい、すみません。出過ぎた真似をしました。  
ただ私の演技が通用しているのか確認をしたかったので、つい」  
(ふーん? 不安だからこそ、懸命になっていたか。良い心構えだ)  
新開は、子供らしくもある奏江の一途な一面に小さく笑った。  
 
「まぁ、一度追加された自分のシーンを、すぐまた取り消されたと聞いたら、誰でも焦る。  
だが、気にするな。君の事だから余程気合を入れて練習を重ねたと思うんだが、  
明日の予定だったシーンはない方が、おそらく君の為にもなるはずだ」  
慰め半分、真実半分のつもりで言った台詞だったが、奏江の目がきらりと光った。  
「それは、やはり私ではこの役どころが不足だったと?」  
美しい猫目で「一体私の演技のどこが駄目だったっていうの」と無言の圧力をかけてくる。  
周囲のスタッフが、ちらちらと奏江を見ている。  
先日の撮影で新人俳優風情が監督に対し、キスシーンがないから撮影が上手く進まないのだと  
直訴し通ったことで、一部の人間から反感を買っている節がある。  
やれやれと新開は、コミュニケーションに大変不器用そうな少女の肩を叩いた。  
「君は少し息抜きをしたらどうだい。キョーコちゃんもそうだったが、肩に力が入りすぎているよ。  
ぴちぴちの十代、高校生でしょ」  
「ぴちぴちって……監督、おじさん丸出しですよ」  
「はは。そうずけずけと本当のことを言えるのは学生の特権だ。羨ましい限りだよ。  
まず今日は帰って充分に休息をとりなさい。監督命令」  
「そ、そうしますが……あの、監督。大変図々しいんですが、途中まで送ってもらうことはできませんか」  
新開は、奏江の顔をまじまじと見た。  
「それは何かのお誘い?」  
「そんなわけあるわけないじゃないですかっ」  
拳を震わせる奏江に、新開はしれっと答える。  
「いや、言ってみただけ。怒らない怒らない。問題は、あいつか。困ったな」  
新開はスタジオの隅に隠れている男に一瞥をくれた。  
「映画の撮影が終わるまで、君の神経が持ちそうにもないしな」  
奏江は足元に目を落とし、憂鬱そうに頷いた。  
 
問題なる男とは、今回の新開誠士の映画で主役を張る男優であった。  
奏江よりも年上の二十四才、今年デビューを果たしたばかりの芸能人としては遅咲きの部類の人間だった。  
二浪した大学を卒業後、たまたま応募していた美男子コンテストで準グランプリに入賞し、  
二時間ドラマや月9ドラマの脇役で出演、運良く、新開の新作映画で主演を射止めるに至った。  
「宝田さんではないんだけど、スポンサーの関係があるんだ。ちょっと共演者に言い寄るからと言って、  
主役の彼を簡単に切るわけにもいかないからな」  
新開は苦々しそうに笑う。  
「演技もまあ及第点ぎりぎりだし、金持ちのぼんぼんの設定にぴったりとした顔と雰囲気持ってるから、  
難癖もつけられない。その上、大手菓子メーカーのイメージタレントとして抜擢されている。  
撮影といえば、すでに全体の三分の一は終わっているときた。大人の事情、わかる?」  
肩を竦める新開を、奏江は冷然と見上げた。  
「大手芸能プロダクション・LME社長の力も、絶対ではないからね」  
「わかってます。LMEの力も身を持って知ってます。別に首を切って欲しいとか、そんなことを  
望んでいるわけではありません。よっぽど言い寄られたほうが、きっぱりばっさり断れますし、  
簡単なんですけど。ただ、あの人に『家』まで付いてこられたくないんです。んもー、イラつく。  
あ”ー、本当になんでいきなり『家』なのよっ、ムカつく、ムカつくわ」  
きぃぃと奏江の金切り声に、新開は少し苛め過ぎたかと目を眇めた。  
「大人の事情を、純粋に役者であろうとする君に言うべきではなかったかな。  
ま、君であれ彼であれ、大事な出演者と映画をスキャンダルまみれにするつもりはない。  
今夜は俺が送っていこう。彼も監督である俺相手に、口出しもしないだろうし。明日からの対応は  
LMEサイドにきちんと話して、何か対策を考えないといけないかな。じゃ、行くか」  
新開はあとはよろしくとスタッフに手を振ると、ポケットから車の鍵を取り出し、奏江の腕を取って、  
自分の方へと引き寄せた。陰に潜んでいた男が、更に身を隠した。  
「ところで、さっきから『家』『家』って気になるんだけど。  
『家』以外だったら、男に付き纏われても大丈夫なのかい。琴南さんは」  
実のところ『家』が散らかっていて男を上げられないとか、既に男と一緒に住んでいてバレたら困るとか  
案外そんな理由じゃないのかと笑う新開に、奏江は、この男はもしや自分の秘密に感づいているのでは?  
油断はできないと気配を殺して、彼が掴んだ自分の腕を睨みつけていた。  
(ふっ、家族に秘密にしていた一人暮らし用のアパートの所在地がついにバレて、  
今はあいつらの巣窟と成り果てているところなんて、……死んでも見られてなるものですか!)  
 
「で、自宅はどこにあるの? 俺はこの後予定もないんでね。ちゃんと送り届ける」  
「い、いいえ。途中までで結構ですから。監督にそこまでご迷惑をお掛けできませんよ」  
奏江は引き攣りながらも笑った。  
(新開監督。私の秘密は、あなたにも知られるわけにはいかないのよ! ふふふ見たら最後、地獄へ落とすわよ〜)  
奏江の心境を知ってか知らずか、新開はハンドルを軽快に切る。  
「遠慮するな。夜道だし危ないだろう。別に送り狼になんてならないから安心しなさい」  
新開は先日、演技テストの一環で奏江がしたキスにもさほど動揺も見せなった。  
彼に対してその面では安心している。敦賀蓮以上に女関係は謎だが、浮いた噂があまりない。  
特に共演女優との恋愛報道は一度としてない。軽薄そうにも見える容姿であるが、公私混同をしない態度に  
奏江は一目置いていた。奏江を恋愛対象と見ていないからか、こうして助手席に座っていても  
スタッフも色眼鏡を使って見ることはなかった。なにせ一回り以上離れた年齢だ。自分の兄よりも  
余裕のある大人であるところが、また奏江の気に入るところだった。  
ただ、マンモス家族に占拠された自宅を見せるまで、心を許したわけではない。  
「あ、そうだわ。夕飯の用意でお店へ行かなくちゃ。私って馬鹿ね。あ、監督、そこの駅前で結構です」  
わざとらしく手を叩く。台詞も思わず棒読みになった。  
「お弁当貰ってこなかったのか」  
「ええ、うっかり」  
嘘だった。  
(脂っこい内容だったから、残したんだけど。映画撮影中に体形を少しでも変えたくないのよね)  
新開は奏江の態度を透かし見たのか、急に黙り込んだ。  
「あ、あの?」  
「つけられているな」  
「え」  
バックミラーを調整して、親指で後ろを指す。  
奏江は後方を振り返り、覚えのあり過ぎるその車種にぞっとした。  
「奴だろう? こうなると本当にストーカーになるな。家は特定されたくないだろ」  
「ええ、勿論です」  
恐怖よりも先に怒りの感情を出す少女に、新開は苦笑する。  
(剛毅なんだか、強がりなんだか)  
「じゃあ、少し寄り道をしていこうか」  
「は?」  
「俺も腹が減ったんでね。夕飯付き合ってくれる?」  
家を見られるよりはいいかと奏江は、再び後ろを振り返って承諾した。  
 
新開が連れて来たのは、ホテルの最上階にあるレストランだった。  
馴染みらしく、ウエイターが恭しく頭を垂れた。  
「急に悪いね」  
新開の挨拶にウエイターはさらにかしこまる。  
案内された席は、都内の夜景を見渡せる大きな窓際だった。  
「……監督と新人女優で噂になったら大変ですよ」  
ふかふかした椅子に腰を落ち着けた奏江は小声で忠告するが、新開は肩を竦めるばかりだ。  
「それはないだろう。俺は世間では蓮と同様とまではいかないが、クリーンなイメージだし、第一君と  
男女の仲になったと報道されたら、それこそ冗談か洒落にしかならないだろう。お笑い報道として  
かえって映画の宣伝になれば万々歳だ」  
(ちょっ、ば、馬鹿にしている?! 確かにあなたから見れば私は生意気な小娘程度でしょうけど!)  
新開は赤ワインを頼みかけて、奏江の険悪な視線に、注文を取り消した。  
「お酒なら大丈夫です。私、タクシーででも帰りますし、監督が気を遣わないでください」  
新開は少し考えた後、自分には食前酒を、彼女には搾りたての季節のフルーツジュースをと依頼した。  
食事が進み、酒も飲んでないのに、奏江は新開に絡みだしていた。  
「だいだいですね、なんで私のシーンがカットなんですか。納得できる理由を教えてください」  
娼婦という役を任された時から、どんなシーンでも覚悟は出来ている。色気のある場面がある方が  
観客も喜ぶのではないか。それを削るとはいかがなものか。  
「君は本当に仕事が好きで、プライドが高いんだな」  
良い作品を作りたいという奏江の気概に、ワイン二本分のアルコールも手伝ってか新開の顔が綻んだ。  
「ではカットしたシーン、是非やらせてください。一度見てからでも」  
「あのね、だからさっき言ったように」  
新開は、横目で斜め隣の席を透かし見た。  
「わかった。ここでは何だから、移動しよう」  
突然席を立った新開に首を傾げながらも、奏江は彼の視線を追って表情を強張らせた。  
 
新開はホテルのフロントで鍵を受け取ると、奏江を連れてホテルの一室に引きこもった。  
「気づいたか?」  
「はい、いましたね」  
「いつも、彼はここまでするの」  
「いえ今日ほどでは」  
「なるほど。俺がついていたからか」  
新開はベッドに座り込み、奏江を見上げた。  
「俺はもうアルコールが入っているから運転は無理だ。だからと言ってタクシーで一人きりで、安心して  
君を帰すというわけにもいかないだろう。君は一人暮らし? ご家族はいないのか」  
「い、いますけど」  
「じゃあ、迎えに来てもらったほうが」  
奏江は、憤怒の表情手前で堪えた。  
(で、できるわけないじゃない。きっと面白がって、家族総出でやって来るに決まっているわ。  
そして私の女優生命が終わり、お笑い人生に取って代わられたらどうしてくれるの?!)  
「私もここに泊まります」  
奏江の宣言に、新開の目が据わる。  
「それこそスキャンダルになったら、どうするんだ」  
「監督自身が、お笑い報道にしかないらないって言ったじゃないですか」  
「冗談じゃない。単に食事をするのとは違うんだぞ」  
「別の部屋に泊まりますよ?」  
新開は天井を振り仰いだ。  
「当たり前だ。俺は今まで食事程度なら個人でも団体でも気軽にしてきたが、この状況はいただけない。  
迎えが嫌だと言うなら、俺がタクシーを使って家まで送り届ける」  
「や、やめてください!」  
新開は帰るぞと奏江の手を取り、部屋のドアを半分まで開きかけ、留まった。  
「くそ」  
「どう、したんですか」  
「奴が張り付いている」  
げんなりした新開が、ドアを後ろ手に閉めた。  
「君の家族が迎えに来るのが一番の解決策なんだがな」  
奏江の仏頂面に、新開はさらに大きなため息をついた。  
 
「大体なんで急に、こんな目に合わなくちゃいけないのよぉ、信じらんないっ。ファンに付き  
まとわれるなら、まだ譲れるけど。どうして同じ芸能人に犯罪まがいのことをされるわけ?」  
奏江は憤然としているが、監督である新開はこの出来事には少しばかり感心していた。  
「多分、先日のキスシーンで、君は奴を役だけでなく本気で惚れさせたんだろう」  
(蓮以外にも、実生活にまで共演者に影響を与えられる役者がいるなんてな)  
新開はとりあえず部屋に備え付けられている椅子を引っ張り出して、奏江に与えた。  
「早く家族に連絡を取ったほうが、君のためだぞ」  
「ひいては映画のためですよね」  
新開はやれやれと首を振り、小さな冷蔵庫から缶ビールを取り出した。  
奏江には、炭酸飲料水を放り投げて寄越した。  
「もしかして監督はカットしたシーンを撮影することによって、さらに彼のストーカー行為を助長させると  
思って取りやめたんですか。だったら私、嫌ですからね」  
少女はプルトップを押し上げ、缶に口をつけると、一気に飲み干した。  
「俺は役者に気を遣うような監督ではないよ。いい場面を撮るためなら、子供でもいびり倒す」  
新開は自分のビールをちびりちびりと飲んでいたが、奏江のぼんやりとした様子に、まだ半分以上  
残っているビール缶を机の上に置いた。  
「どうしたんだ、琴南さん」  
「何だか、ぼーとしてきて、身体がかっかっしてきたんですけど」  
申告した症状に新開は慌てて立ち上がり、奏江が持っていた缶を取り上げた。  
「何てことだ。お酒だったか。まずいな」  
目の焦点が合っていない少女は、椅子の上から今にも転がり落ちそうだ。  
新開はひとまず、少女を抱えベッドの上へ横たえた。  
それから彼女の持ち物からケータイを探そうと、カバンをあさり始める。  
「こうなったら、とっとと帰ってもらわなくちゃな」  
「なーにーをー、してーるーんですかー」  
奏江が新開の手を力いっぱい掴み上げた。  
そして酔っ払い少女はにぃーと笑い、新開をベッドへと引きずり込んでいた。  
 
「認めませんよー。私は世界一の女優になるんですからねー」  
頬を赤く染めて酒臭い息で、驚く新開を押し倒していた。  
馬乗りになり、新開のワイシャツのボタンをぷちぷちと外していく。  
(お、おいおい。何をする気だ)  
「恥ずかしいのを我慢して、兄貴のエロビデオまで見て研究したっていうのに。今更やめる?  
冗談じゃないわー。覚悟してくださいねー? 監督ー」  
新開のシャツを肌蹴させると、今度はズボンのジッパーに手を掛ける。  
「琴南さん!」  
奏江は長い髪をかき上げ、耳へとかけた。それから下着の中に隠れていた新開のモノに手を添えて、  
いきなり美しい唇で咥えた。  
「待て、おい」  
男が逃げないようにと後ろ向きになった奏江は、丸い腰で仰向けになった男の胸を押さえつけ、  
彼自身をしゃぶり出した。ちゅっくちゅっく。少しざらついた感触が、新開を刺激する。  
「やめ、なさい」  
酔いが回っていて力が思うように出なかった。  
「やめて、いいんですかー? 監督のすごいことになってますよー、直立不動になってまーす」  
くすくすと笑いながら、奏江は新開をちゅうちゅうと吸い上げ、顔を動かして上下に扱く。  
お気に入りの玩具を見つけたかのように、懸命に愛でようとしている。  
「気持ちイイー? ねー気持ちイイー? やだ、ぴくぴくしてる〜。  
ビデオじゃモザイクだらけでわからなかったけど、そっかー、こうなっているんですねー。  
あ、あれも試してみよう?」  
奏江はまるでおままごとでもするかのように嬉々として、自分のブラウスを脱ぎ始めた。  
ブラを外すと、たわわな胸が零れ落ちた。その豊満な胸の間で新開の反り返ったモノを挟み込む。  
「ええっと、確かー?」  
柔らかな肌が新開の硬くなった中心を包み込み、揺れ動いた。  
「ほら、どう?」  
(……くっ! 俺は何をされるがままになっているんだ!)  
少女の身体を押しのけようとするが、彼女がそれを許さなかった。  
 
両胸を挟む手に力が込められる。新開を捕らえて離そうとしない。  
起りつした先端はちろちろと舌で、舐め上げられる。なんとも柔からかな感触に新開は呻いた。  
「監督今イキそう? イきそうなんですかー? 顔射? 顔射なの〜? ほらほら脈打ってるわっ、  
私ってすっごーい、もっと? もっと?……なっ!?」  
笑い続ける少女が急に、声をひそめた。  
新開が、奏江のスカートの中へと手を差し入れていたのだ。  
「ん……いぁっ」  
湿った下着を指先で撫で上げていた。触るか触らないかのぎりぎりのラインで秘処に触れていたかと思うと、  
奏江のショーツをずり下ろして、指を少しずつ入れた。  
「やっ……なっ……」  
奏江の動きが完全に止まった。  
「ほら、動け。さっきまでの威勢はどこに行ったんだ?」  
力が抜けたのをいいことに、新開は奏江の腰を持ち上げ、彼女の花芯に唇を寄せた。  
「匂いが少しきついかな?」  
「はぁっ……や、やだっ、嗅ぐなんて……」  
「腰を突き出して、君が誘ったりするからだろう?」  
舌を差し入れ、れろれろと掻き混ぜる。柔らかい微細な感触に、奏江は首を竦めた。  
「いぁっ、はぁっ、んぅ」  
「さぼってないで。俺をイカせるんじゃなかったのか。せっかく練習をしてきたんだろうが。  
女優魂はどこへ行った」  
 
新開の挑発に、奏江のスイッチが入った。覚悟しなさいとばかりに胸を押し付け、新開を陥落しようとする。  
丁寧に丁寧に胸で擦り合わせて、男を絶頂へ導こうとする。新開の震える吐息を聞いて、再び口で愛撫を始める。  
ただし、先程までの余裕は彼女の中に残されてなかった。顔を赤くし涙目で、快楽を追い求める。  
新開もどこまで彼の理性で動いているのか、奏江の花芯に果物を食べるように喰らいつく。  
「こんなに、たらたらと涎を垂らして……いやらしいな……君が男に溺れてどうするんだ? もっと  
俺をやり込めないと駄目だろ。それとも普段はクールな顔をしてて、下着の中は常時濡れているのか?  
ああ、ここ、強くしてやろうか? …ん。君のちょっとしょっぱいな」   
「あぁんっ、やっ……そん、な、味を確かめないで、くだ…さい、私は普通の、高校生、  
女優、ですっ、しかも……や?! 犬みたいにべろべろ舐めな、いでぇ、なに、ぁっ、ん、んぅぁ、  
だめったら……っ、いやぁ…きつ、い、吸わないでよぉ……もー、いやぁっ」  
「ここは台詞の羅列じゃなくて、アクションで観客を魅せなければいけないだろう? 俺を翻弄してみなさい」  
新開は、奏江の腰を自分の顔の前に抱え込んだ。  
「ひぃぁっ……な、に?」  
少女の赤く腫れ上がった肉芽を指で揉み出す。実験でも繰り広げているかのように、淡々とした  
表情でその割れ目へも指を差し入れる。舌よりも強い刺激に、少女は首を大きく振った。  
「だ、だめ、そんなの……私は、娼婦なのよっ?! ……や、やめてぇ……ぁあっ、はぁっんっ、いやぁっ  
私が、私がぁ……するぅ…」  
奏江は、突き出した腰をゆらゆらと動かす。それでも『高慢な娼婦』であることに拘っているのか、  
男を振り返り、上気した顔で唇を噛んで耐えている。  
(ちゃんと誘えているじゃないか)  
新開はスカートだけを辛うじて身に纏った彼女の姿に、ほくそ笑んだ。  
(だが)  
新開が命じると、奏江は命令通りに再び彼自身を扱きだした。表情こそ見えないが、黙々としゃぶり続ける様子はわかる。  
「正面向いて、俺の上に座って」  
念のためにとコンドームを奏江の手で被せさせた後、彼女の身体を引き寄せた。  
一方、新開の肉欲をまざまざと見せ付けられ、彼がリードして行為を強いられたことに屈辱を感じたのか、  
これから初めて性交することになるのだと怖気ついたのか、奏江の腕には力がこもる。  
「跨るんだ」  
「い、いや」  
「俺を納得させるんじゃなかったのか」  
「でも、こんなの」  
 
奏江はぎゅっと目を瞑り、天井を向いた新開のモノへと自ら腰を下ろしていった。  
先端が入った時点で、恐ろしさに拳を震わせる。  
「俺は何もしないぞ」  
奏江は顔を背けながらさらに身体を沈めこみ、半ば辺りのところで腰を回した。  
圧迫感と痛みで少し冷静さを取り戻し、絶対に目の前の男を這いつくばらせてやると歯を食い縛る。  
「男を憎んでいても、全面に出すな。どういう役柄か忘れたか」  
新開の言葉に、奏江ははっとして微笑んでみせた。彼の両手を取り、自分の胸を掴ませる。  
「『私が欲しいんでしょう? どうしたの、婚約者に遠慮しているの? うぶな彼女にはわからないわ。  
今夜は二人で楽しむのよ、今夜だけよ。さあ、私をめちゃくちゃにしなさいな? ほら』」  
奏江の目は淫靡な『娼婦』の目になっていた。脚本通りの言葉に、新開も主人公の台詞を返す。  
「『僕が愛しているのは君だけだ。君に出会ってしまった時からもう決まっていた。もう』」  
「『可愛いこと』」  
そこで、奏江は男の上で腰を打ち下ろした。  
役に入っていたためか、自分が処女であることも一瞬忘れていたのだ。  
「はぁっん?! あっ、ぁあっ」  
衝撃に、息を呑む。それでも主人公を虜にしようと腰を動かした。  
「いっあぁっ、あっ、……んぅっ、あっ、あっ、だ、だめっ……」  
苦しみに素が出て、新開の両肩を力いっぱい握ってしまう。台詞も出てこない。  
新開は奏江の胸を揉んだ。たぷたぷと上下左右と揺れる胸から時折手を移し、腰から背中へかけて撫で上げる。  
「ひぃあっ……」  
奏江の腰の動きに合わせて、背中に何度も手を這わせてみる。  
(この子、ココが弱いのか)  
苦悶の中にも彼女の一瞬の快感を見抜いて、新開はにやりとした。  
律儀に男の快楽を引き出そうとする奏江を繋がったまま抱えて、ベッド脇にある机から備え付けの羽根ペンを  
取り出した。新開の動きで衝撃が深まったのか、奏江は呻く。  
しかし羽根で背中を擽られると、それもわずかだが吐息に変わった。  
 
新開はベッドの端に座り、奏江を正面に抱えたまま注挿を続けた。  
奏江がイイ動きをすれば、羽根で彼女の背中を刺激した。それを知ってか、奏江は腰を大きく  
グラインドさせたり、細かく動いたり、スピードを変えたりして、新開の与える快感を欲した。  
「はぁっん……うぅんっ……あぁっ、ああっ……」  
男は少女の胸の谷間にキスをし、吸い上げた。  
「えっ? あっ」  
反射的にのけ反り、ベッドから落ちそうになる。不安定な体勢に、思わず新開にしがみ付いた。  
「せっかくいいものを持っているんだから、ココも開発しようか?」  
動きを止め、羽根を背中にさわさわと添わせると同時に、硬く震える乳首に舌を這わせる。  
唾液を染み込ませるような様子で、胸の尖りに舌を巻きつける。  
だんだんと胸は、新開の唾液で光りだした。キスの跡があちこちに残る。  
何度も同じことを繰り返している内に、乳首をねぶるだけで奏江の花芯が新開を締めつけるようになった。  
次に、ペン先で奏江の乳首をコリコリと撫でた。  
冷たさと硬質な感触に首を竦め、きゅっと新開のモノを奥へと引き込む。  
新開は面白そうにコリコリ、コリコリと乳首を攻めた。桜色の乳首はインクのために黒く染まっていく。  
胸の尖りの陥没した中で、ペン先を細かく左右に震わせた。  
「ぁっ、ぁあっ」  
そして奏江は嫌がるどころか、また腰を小刻みに動かし出した。  
「あんっ、あぁんっ……監督ぅ」  
新開はペンでしばらく愛撫を続けていたが、やがてそれを投げ捨てて、  
直接指先で胸の尖りを弾き、彼女を突き上げてやる。  
 
「ぁっ、はぁっ……やっ、『まだ、まだよ。こんなんじゃ足りない』……んぅ……はっ……」  
無意識の内に頭に叩き込まれた台詞が出ていた。  
「じゃあ、満足するように心掛けよう」  
新開は、奏江の腰を引き寄せ、ベッドのスプリングを利用してさらに大きく突き上げた。  
「なっ……あっ、あぁっ……あっ、あっ、あっ、あっ、な、……に? ぁっ……やぁっ、はぁっん……っ」  
「ああ、いい具合にほぐれてきたね」  
乳首を摘まれて、打ち付けられる。乳首を摘まれて、打ち付けられる。その間隔が短くなり  
奏江も自分の動きを早めた。奏江が上下する度、ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅと淫猥な音が流れ出す。  
中心を黒く染められた大きな胸は、激しく動き回る。カーテンを閉めずにいた窓に、二人のまぐわう姿が  
はっきりと映し出されていた。  
「ぁあんっ……んぁ……、やっ、いやぁっ……そ、そこ、そこがイイ……っ! きてぇっ……きてぇっ  
…監督ぅ……はやくぅ……ココ、ココなのぉっ……」  
「さすが、淫らな娼婦だっ、ほら、コレがいいのかっ?」  
「うん、うん、ソレなのぉ……」  
新開が突き上げる度に奏江は何度も何度も頷く。  
「あっ、ぁあっ? い、……ぁぁっ」  
「んっ」  
「やぁっ」  
突然、少女は男の上でがくがくと震えだし、とろんとした目をして果てた。  
男も、ぶるりと身を震わせていた。  
「……んんぅ……『もっとぉ、もっとよぉ』、ぁあっ……はぁっ、『はや、く』……ぁあっ、はぁっん」  
半ば気絶しながらも抱きつき、台詞を続けている。腰もゆらりゆらりと揺れている。  
(及第点。だが男を誘えていても、君は男を落とす娼婦であって、落とされちゃいけない役なんだがね)  
新開は、意識を無くしながらも自身を締めつける奏江の花芯の余韻を楽しんだ。  
 
 
朝だった。  
奏江は二日酔いのためか、頭を抱えていた。  
「大人をからかうもんじゃなかったね。酷い目にあっただろう?」  
(自分であんな状態の彼女を喰っておいて、俺もたいがいだな)  
本当は本番までするつもりはなかったのだが、途中から抗えなくなった。  
「新開監督。やっぱり私、この役向いてないのかもしれません」  
新開は目を見開く。  
(それが仮にも男女の関係になった朝に言う台詞か? なんてきっぱりしている子だ。  
いや、そもそも俺のことは恋愛対象としては、範疇にないということか)  
「本当に大丈夫なのか。好きでもない奴相手に、虚しかっただろう」  
「映画でも私は主人公を憎んでいる役ですから、好都合です。ただ、恋愛感情ははっきりいってありませんが、  
今でも監督のことは尊敬はしてますから、気にしないでください。  
それに撮影に、私情は持ち込むつもりも毛頭もありません。監督も今まで通りにしてください」  
気だるそうな顔をしながらも、瞳の色は強かった。  
(いい根性している。この子に惚れるなんて厄介だろうな。でも初めてがコレで精神的に大丈夫か)  
奏江は気の抜けた表情で、再びうつ伏せていた。  
新開は罪悪感で、胸が痛み出していた。いつの間にか、彼女に嘘はつきたくないと思った。あくまで彼女は  
作品を作るもの同士、対等でありたいと望んでいる。  
「琴南さん。君のシーンをカットしたのはね、あまりやり過ぎると、観客がかえって引いてしまうからだ。  
いくらリアルでもね。いや、リアルだからか。  
先日の濃厚なキスシーンだけで君の魅力は十二分に伝わると判断したからカットしたんだ」  
奏江は、がばりと起き上がる。ふるふると裸の肩を震わせ、口をぱくぱくさせる。  
(そ、そんなこと、さ、最初からそう言ってよね!? 何のために私は)  
「私は私は……んもー、監督の馬鹿! いやっ、信じらんないっ」  
少女の目に初めて涙が滲み、新開は彼女の肩を抱き寄せた。  
「すまなかった」  
 
ひとしきり泣いた後、新開が今度はパッケージをよく確認したミネラルウォーターを差し出した。  
「ところで、さっき君のケータイが鳴っていて出てしまったんだけど。君のお姉さんらしい人が出て、男と  
一緒にホテルにいると感づかれた。その後、君のお兄さんらしい人が出て、首洗って待っていろと怒り出した」  
「それで」  
「待っていると答えた」  
奏江は冷や汗を流している。  
「まさか、この場所を教えては」  
「教えたさ。二人でホテルを出て写真を撮られるわけにもいかない」  
「な、なんてことを!」  
これからホテルで起こる騒動を想像して、こめかみを押さえる。  
「監督、……いち早くここを立ち去ってください。今すぐに!」  
「いや、君が家族と一緒に出て行くのを見届けなくては安心できない」  
「あいつらが来たら、大スクープにされますよ?!  映画の話題なんて吹き飛んじゃうんですよ?!  
私もおしまいだわ! 監督も大事な映画をスキャンダルまみれにしたいんですかっ!」  
新開は聞いているのか聞いていないのか艶然と微笑み、奏江の太腿を撫でた。  
「……や、やめてください? 監督。もう演技は」  
「演技ではなくて、ベッドの上に、君を一人残していくのも惜しいと思って」  
「は?」  
「お兄さんたちが到着するまで、時間はある。ちゃんとしたくない?」  
奏江は手をついて、ベッドの上を逃げた。  
「わ、私はもう……」  
嫌悪感はないが、困惑する少女の顔があった。  
「駄目?」  
「は、はい」  
(まいった。本当に、恋愛感情はさっぱりなんだな)  
新開は肩を竦め、中年男の片思いの始まりの予感に苦笑し、奏江の頬に唇を寄せた。  
「では、将来の大物女優に敬愛を込めて」  
「は、え?」  
薄い唇が肌をかすめる。  
子供らしい初々しいやり方に、奏江はしばらくベッドの上で、昨夜以上に顔を真っ赤にしていた。  
(な、なに? 私、一体なんなのこの動悸は〜?!)  
琴南奏江、彼女の春ももうすぐかもしれない、秋の日の朝であった。  
 

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